最終話 世界線を作ろう ③
青年が叫んだ辺りで大烏はもう1羽の白い鳥と闘っていた。その相手はトキだ。
「ぬぅ、トキ神よ、さっさとくたばれ、この老いぼれが」
「それは出来ぬな、ここで死ねば、あの子らが死ぬからのぉ」
大烏は顔を歪ませてこういう。
「しかし、なぜ、貴様がここにいる。あの団地の封印は解けぬはずだ」
トキは困ったような顔をした。
「それは儂の困った弟子が人間に取り憑いてまでして、封印を解いたからじゃな。おかげでお主を止められておるのじゃ」
そこに青年がやってきた。
「師匠! あの子たちはもう結界領域に入りました!」
「よくやったぞ、小僧」
とトキが笑う。
「む、村川神! この若造が、要らん真似しおって!」
「大烏、もう、お前の自由はないぞ。次に作られる世界はお前のいない世界だからな」
「黙れ! 貴様らを皆殺しにするまで、死なぬ!」
大烏が青年とトキの元に突っ込んで来た。
「小僧、ここは儂に任せるのじゃ」
「いえ、私も手伝います!」
「ダメじゃな、小僧、お主はここで儂の弟子では無い」
「ど、どういう意味ですか」
「お主はもう、休んで良いぞ」
その言葉のあと、青年は気を失って、倒れた。
それを見てトキは青年に静かにこういった。「小僧、もう二度とこんなことはするなよ」
「トキ神ィィィ!」
トキと大烏は再び闘い始める。
世界線の終わりまで。
* * *
トキ神様のあの言葉のあと、僕は目が覚めたら真っ白な空間にいた。すると、そこには
「せ、先輩! 原本さん!」
「おーい、遅いよー? 神様になったんだか知らないけど、遅刻は許されないんだからね?」
その声は紛れもなく先輩だった。佐々田先輩だ。そして、隣にいるのは原本さん。
「せ、先輩、なんでここに?」
「それはねー、あの神々しいトキが私をここに連れてきたの。ねー原本ちゃん?」
原本さんも頷いた。
「はい。でも、再びみんなに会えるなんて思えなかった」
「そうね。私も、原本ちゃんに会えたときはびっくりしたよ」
僕はいつの間にか涙を流していた。
「ちょ、ちょっと、なんで泣いてるんだよー」と先輩が笑う。
「だ、だって、また、会えるなんて、思って無かったんです」
「私も、また会えるなんて思えなかった」と原本さんも泣き出した。
「ちょっと、ちょっと、2人して泣いちゃってさ。もー、仕方ない無いな、この偉大なる先輩の胸でドーンと泣け!」
◆ ◆ ◆
世界線は遂に終わりを告げた。
その派生した世界線も全て消える。
1から始まった新たな世界線は新たな歴史を作り出す。
もう1話だけ続きます。
あと、あとがきもあります




