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第十二話 決行前 ①

「村川神? 沢下山付近の伝承のこと?」

 この人は牧田美奈子さん――――他でもない、俺を祓ってくれた人だ。

「ご存知なら話は早いです。僕らはその、子孫……末裔? を探しているんです」の榊山が言った。


 *


「俺たちよりもオカルトな人間。霊媒師の美奈子さんだよ」

 榊山が心当たりと言ったのはそれだった。

「……俺たちは一体何度あの人にお世話になるんだ」

「それは思ったけど、でもあの人しか心当たりは無い。ネットで村川神の情報が出てもその末裔の情報は出てこない」

 納得せざるを得ないが、あんまり関係ない人を巻き込みたくない。

 しかし、川村が早速連絡して、許可を貰ってしまったので行くこととなった。


 これが昨日の話。

 つまり美奈子さんの元に来たのは過去へ飛んで2日後のことになる。


 *


「村川神に子孫がいるなんて相当ヘビーな内容よ? 地元のオカルト好きもそんなに知らないことよ。あなたたち成長したのね」

 勝手に感動されても困るのだが。

「どうしてそれを知ったかは興味がないけど、その人間を探しているっていうのは興味深いわ」

 福田さんがお茶を持ってきた。前あったよりも更にふくよかになった気がする。

「単刀直入に言うとね、それは玲奈ちゃん。あなたよ」

「え? わ、私!?」

 珍しく、川村が同様している。

 俺と榊山も驚いた。勾玉と同様、灯台もと暗しって感じだ。

「そう。玲奈ちゃん、お母さんやお父さんは玲奈ちゃんがあんまり危険なことしないようにこういうことを隠してたの。なんせ、玲奈ちゃんはこう見えて好奇心旺盛だからね」

「そうだったんだ」と川村は呟く。

「玲奈ちゃんに未来予知の力があるのもそのせいなの。でも村川神の血はどんどん薄くなってきていたからあんまり強い力は付かないだろうと思われてたのよね。でも、古くからの遺伝子が上手い具合に揃っちゃったから、割と強めな力が玲奈ちゃんに授けられたの。だからこそ、隠してたのよね」

「愛だなぁ」と榊山が言った。何を知ったように言ってやがんだ。

「じゃあ、叔母さんは? 叔母さんも村川神の子孫だから霊媒師としていられるってこと?」

「ちょっと違うわね、私はただ単に霊感体質ってだけよ」

 ほんとにオカルティックだな。と俺は思う。もはや、霊感云々ですら驚かなくなっている自分のことは棚にあげて。

「ま、これでオカルト部の活動も捗るんじゃないの? 遠いところからここまできて、玲奈ちゃんが求めてた人でしたなんて、味気ないかもしれないけどね」

「正直そうですね」俺は苦笑する。

 ともあれ、こうしてピースは揃った。あとは『未来物語』を探して見つけるだけだ。未来物語は沢下村の神社にあるわけだから、沢下山の集落跡をくまなく探さなければならない。

 俺たちは美奈子さんに礼を言ってすぐに帰った。長居する必要は無い。


 そういえば集落跡で見つけたあの本はどうなっているんだろうか。

 俺は美奈子さんの家から帰る途中に榊山に訊いた。

「榊山、最後に必要な『未来物語』なんだけどさ、お前、集落跡から本持ってったじゃん? あれ、どうした?」

「それ、僕も思ってたんだよ。未来から帰った時は手元に無くて」

 最後の最後はさすがに上手く行かないか。

「でも、3つの必要なもののうち、あっという間に2つが見つかったよなぁ」と榊山が言った。

「見つかった、というより知らなかったって感じよねー」と川村。

「残すは『未来物語』だけか。……未来物語を探すのは明日にする。大烏が街に出るのも時間の問題だからな」

「だったら、今日でもいいんじゃない?」と川村が言った。

「違うよ、このまま世界線を作り直したら俺たち、寂しいだろ? 最後の思い出作りくらいしよう。というか、する。これが最後の部長命令だ」

 県庁所在地の倉沖市で俺たちは降りて、カラオケに行った。

「人生最後の娯楽がカラオケってのはなんかなぁ」と榊山はやや不満気だ。

「仕方ないだろ? これしか浮かばなかったんだ」と俺は反駁する。

「じゃあ、プリクラとかは?」と川村。

「男入れんの?」

「あ、そっか」

「写真取るならプリクラじゃなくていいんじゃないか?」と榊山。その後こう続ける。

「携帯で撮って、それをコンビニでプリントすればいいだろ?」

「そうだな。こいつにプリクラのデコレーションとかさせたらどうなるかわかったもんじゃない」

「お? 久山、それは俺の美的センスの分からないガキが言うセリフだぜ?」

「1周回る前に疲れきってるセンスだろ?」

 そんな感じで3時間のカラオケもすぐに終わった。3人が知っている曲が少なかったのだ。つまり、各々が各々に知らない曲を聞かせるというとんでもないカラオケになってしまったが、1周回って盛り上がったので良かったと思う。

「久山君はそこまで歌上手くないのね」と川村に勝手に期待されて勝手に裏切られている。俺が歌上手いという話はどこから湧いたんだ?

「川村は声綺麗だけどな」と榊山が言った。それは確かに思った。

「あ、褒められた。うれしー」

 ほんとに嬉しいのか?

 次にファミレスに行った。まだ時間はあるが、腹は空いてないのでドリンクバーで1時間粘った。もっといても良かったが、榊山がドリンクバーを全部混ぜるとかくだらないことをしてきたので帰ることにした。いくらなんでもティーパックまで入れるのは馬鹿だと思う。迷惑だから調合者本人に飲ませた。

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