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第十一話 多数決 

 俺たちは登山コースを下りると、そこには榊山がいた。

「あ! 久山! 心配させやがってこの野郎。ドーナツチャラにしろよ!?」

 榊山が叫んだ。そうか、榊山は登山コース入り口まで来れたんだな。

 俺たちは学校へ向かった。あんなことがあったけれど、時計はまだ昼前だ。

 時間感覚の狂いに頭を混乱させながらも学校に着くと、早速部室に入り、榊山に今までの経緯を話した。

 過去へ行ったこと、トキ神、村川神、大烏、世界線。さっきまで体験していたことを説明した。


「過去? お前らも時間旅行したのか?」

 と榊山が言った。

「も?」俺は聞き返す。

「そうなんだ。僕も実はあの時、時間旅行したんだ」

 その後、俺たちは榊山の時間旅行記を聞いた。がその中で気になったのは

「佐々田利奈が生きてる?」

「うん。少なくとも死んだという記事は見ていない。だから、俺は佐々田利奈はパラレルワールドに飛んだんではないかと思ってる。……でもさ、そうなると、変だよな。村川案介は過去へ飛んで、佐々田利奈はパラレルワールド。じゃあ原本巡は?」

 確かにそうだが。

「分からないよ。でも、私たちが話したいのは世界線のこと」と川村。

「大烏を殺すために世界線を作り替えるってやつか? まあ、大体わかったけど、これ、今日で決めるのは難しいだろ。各々持ち帰って明日決めようぜ?」

 榊山がそう言ったので、決断は明日となった。

「お互い、色々あったんだし、今日は休もうぜ? 1晩寝ればある程度脳みその整理ができるだろ」

 というわけで俺たちは帰ることにした。しかし、時間感覚が狂うな。2日過ごして15分しか経ってないなんて。


 その日はその後特に変わったこともなく、翌日を迎えた。


 * * *


「じゃ、部長の俺から直々に投票をとる。入れていい票は『大烏を放っておく』か『世界線を作り替える』だ。」

 各々紙に書き、四つ折りにして箱に入れる。箱に入れる必要があるあるのか分からないが、誰が何に入れたかが分からないようにする。そのために『大烏』と『世界線』と書かれた紙に丸をつける方式にした。

「今から開票するけど、どんな結果でも恨みっこなしだ。特に『世界線を作り替える』という結果になればもう、それに向かって動く。その逆も然りだ」

 俺は箱から1枚目の紙を取り出す。

 1枚目は『世界線』に丸が付いていた。

「じゃあ、世界線に1票だ」

 2枚目。2枚目は『大烏』に丸がある。

「次は大烏に1票。引き分けになってるけど次の1枚で決まる」

 最後の1枚は

「……世界線に1票。2対1。……オカルト部、最後のテーマは『世界線再構築』だ。大烏に入れた人には納得行かないと思うが、多数決にすることは全員が同意している」

 こんな大掛かりなことを多数決で決めるのはたぶん不適だろう。それは3人ともわかっていることだが、このオカルト部は先輩がいた頃からジャンケンと多数決で物事を決めていた。最後の判決もそれに則りたい、というオカルト部のエゴが働いたのだろう。

「世界線再構築か。わかった。やってやろうぜ、久山、川村」

 と榊山が言った。

「そうね。オカルト部としての最後の仕事、頑張ろう」と川村。

「ああ。頑張ろうな」

 ということで、最後のテーマは世界線再構築となった。


「具体的にはどうやるんだ?」と榊山が聞いた。

「沢下山にある、本がある。『未来物語』っていう本なんだけど、それを取ってくる必要がある。それを指定されたページ通りに捲ればいいんだけど、他に勾玉と村川神の血縁者がいる」

 榊山は腕組みをして唸って、こういった。

「勾玉ってどんなの?」

「詳しい形とか色は分からないけど、守護の力と時間の力が込められているらしい」

「多分それ、僕持ってる」

「え?」

 俺と川村は驚いた。鬼門のひとつが解決しようとしているからだ。

「僕さ、隠すつもりは無かったんだけど、この勾玉を拾ったんだ。これのおかげで玉朱っていう守護霊が憑いたんだ」

「それ、俺達も見えるのか?」

「勾玉に触れば」

 俺は勾玉に触れると、青い狛犬がそこにいた。

「うぉ、まじか」

 驚いたが、俺は今まで異形の存在に食われたり過去へ行ったりしているから今更狛犬にはそこまで驚かされない。

 川村も見えるようになったらしい。

「え、えと、玉朱、さん?」俺は恐る恐る狛犬に話しかけると

「いかにも。儂が玉朱じゃ。お主らの話は聞いておる。その勾玉というのは儂のことじゃろう。儂はトキ神によって作られた存在じゃ。村川神が持っていた力を持たぬ勾玉に込められたのが儂じゃ」

 なるほど、これは確かに本物だ。

「儂はお主らの決断に何かを言うつもりではない。この榊山堺の決断に従うまでじゃ」

 おお、守護霊らしい。

「それじゃあ、残る鬼門は村川神の血筋だね」と榊山は言った。

「そうだな。でも、どう探す?」

「それなんだけどさ、俺にはひとつ心当たりがあるんだ」

 榊山は得意気にそう言った。

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