第一話 オカルト部へようこそ! ①
ここからが本編です
入部届を出してしまったからには出席せねばなるまい。よりにもよってオカルト部なんて、陸上部の方がよっぽどマシだ。
部室は狭く、椅子が4脚、それに囲まれた机が1個。あとは本棚。ああ、さらば輝かしき高校生活。
と嘆いた時期から1年。今年は新入部員ゼロだった。
「そりゃそうよねー。こーんなオカルトじみた部活に誰がはいるのかしらねー」
「俺も入りたく無かったよ」
「先輩がいた頃は良かったけど、いざ先輩になったらって心配だったけど、今年も好き勝手出来そうだから良くない?」
「おいおい、榊山。それはねーだろ。部長である俺の気持ちも考えろ再来年の4月までに部員が来なければ廃部だぞ?」
しかし、榊山は別に良くない? と返してきたのでもうこいつとはこの話題はしないことにした。
「でもさ、なーんで先輩は久山なんかを部長にしたんだ? 1番オカルトっぽい川村の方が適任だろ」
「ええ? どこが」
「未来予知」
そう、この川村は未来予知が出来る。というと語弊があるらしく、少し先の未来、と言うより事象の結果が見えるらしい。
文化祭の模擬店のカジノでルーレット一点賭けを15連続当てたのもこの能力のおかげらしい。だからただの強運では無いことは示されている。(この一件のせいで川村は模擬店カジノを出禁にされた。)
他にも鳥の糞が落ちてくるのを注意したり、次に来る車のナンバーをピタリと当てたりしていた。
「未来予知って言ってもそんな遠い未来なんて見えないよ。せいぜい10分後くらいが限界。」
「でもカジノ出禁は相当だぞ」
「久山、お前部長辞めてこいつにその座を譲れ」
「もう、決まったことだし生徒会に書類出すのもめんどい」
我々オカルト部はその名の通りオカルト現象を研究し、そして、実験し、その最中に死のう!という部活だった。死にたくないのであんまり過激なことはしないようにしている。
「でさ、これから何やるの?」と川村が言った。
「うーん、どうする?」
オカルティックなことはもうやり過ぎていてネタがもうない。
「ひとりかくれんぼ、とかは?」と榊山。
「去年のこの頃に先輩がやってその後1週間休んだじゃん? ちょっと止めとかない?」と川村。
「じゃあさ、百物語」と俺。
「百物語? 季節じゃなくない?」
「でもやったことないじゃん。去年の夏は肝試しだったし。」
「うーん、榊山君はどうなの?」
「僕は賛成。ちょうど最近は怪談ブームでね」
川村は少し悩んだ顔をして呟いた。
「あんまり怖い話好きじゃないんだよね」
俺はそれを聞かなかったことにしたし、榊山もそうした。理由は特にないが、触れるとダメな気がした。それだけだった。
しかし、他に案は無かったのでそれで決まりとなった。
* * *
春に怪談。字面だけだと違和感の塊だな。
百物語のするのだから怪談のストックは貯めておかなければならない。幽霊系、サイコ系、色々あるけど、やっぱり幽霊系の方がいいか。
ネット検索するよりもたまには近くの図書館にでも行くか。
と、意気込んだのは良いものの図書館で一体どんな話を持ってくればいいんだ? 冷静に考えれば怖い話の本なんて小学生向けのあれとかしかないし、そんなので当然我々高校生が震えるなんて思えないからなぁ。
……作るか。ベースは小学生向けの本でいい。そこに脚色しちまえばこっちのもんだ。
ということで高校生らしくないが、図書館まで行って小学生向けの怪談を集めてきた。大人向けのもあったが、我々はオカルト部。知っている可能性も低くない。だから敢えて、こういうものを原案にするのが丁度良いのだ。と自分に言い聞かせてその日は怪談漬けとなった。
結局、学んだことと言えばいくつかの原案と、怪談を作る難しさ、そして、リメイクしなくても怖い話があったこと。
まさか、結構怖めの話もあるんだな。普段はネットの話とか読んでたから分からなかったけどこういうところにも怖い話はあるのか。収穫、収穫。
というか、百物語って本当に百も物語を話すのか?
気になったので榊山に電話する。
すぐに出た。
「もしもし? 榊山?」
「どうした? なんか久山から電話するなんて珍しいな。恋の相談か?」
「違う。」
からかいを無視して本題に入る。
「なあ、例の百物語だけど、本当に百個も話すのか?」
「まさか、一人3,4個程度じゃないの?」
「なら良かった、それだけ気になってさ。」
わかった、期待してるぜ。と榊山が言って切った。
3,4個か、これは厳選しなければだな。というのももう案は7つくらい存在していて、そのどれもが適度に怖い。まあ、リメイクするからその手間が省けたのは良かったが。
「でも、どれも捨て難いんだよねー。」
俺は部屋の天井に向かって嘆いた。




