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第十話 決断は少年の手に ④

「久山君。久山君は理系だから分かると思うけど、『世界線を作り替える』と『大烏を放っておく』というのは排反事象なんだよ」

「なんで数学で例えるんだよ」

 俺は苦笑する。そんなことはわかってる。同時に起こりえないことはわかる。

「ここで決めないと、だめなんだよ」

 川村は悲しそうな顔をした。

「俺はこういうときに榊山の意見を聞いてみたい」

「私も」

「じゃあ、そうしよう。未来に戻ったら榊山も交えてこの話をする。3人になれば多数決で決まる。国会でも使われる手段なんだから文句ないだろ?」

「そうだね」

 俺は喜助さんを呼んだ。


「なるほど。未来にいる仲間と相談したいか。それがよいじゃろう。では、世界線の作りかたを教えよう」

 おじいさんは俺たちに世界線の作り方を教えてくれた。

「君たちにこの本を送る、そしたらこの本を指定する順にページを捲ればよい」

 本は「未来物語」という名前だった。

「中身は書いておらん。後で書く。これを儂らは納屋に置いておく。そうして未来のこの場所に来ればきっとこの本が置かれておろう」

 そうか、過去の建物が残れば本も残る。

「良いか? よく記録するのじゃ」と言われたので俺は生徒手帳にメモの用意をした。

「ページは見開きで4,2,8,6,1,10,4,10ページの順に開くのじゃ」

 俺はメモした。

「間違えても危害は無いから安心するのじゃ」

「それだけですか?」

「操作はこれだけじゃ。じゃが、必要な物がある。勾玉じゃ」

 勾玉? と俺は訊く。

「そうじゃ。トキ神の力が込められた勾玉でな、守護の力と時間の力があるというのじゃがどうすれば時間移動できるかは知らぬ。この神社にあるが、現物は見せられぬ。じゃが、この神社に置いてあるから、未来で取りに来るのじゃ」

 勾玉もメモする。

「あとは『村川神』の血筋じゃ。これは難しいかもしれぬ。村川神は元々人間じゃったし、人間の娘と結婚し、子を産んだのじゃ。儂らも村川神の子孫であることは伝えたな?」

 そういえば。勾玉はともかくとして、血筋はどうすれば見つけられるのだろうか。

「ここが鬼門じゃな。血筋であれば誰でも構わぬ」

 その血筋の人が世界線創成に賛成するかな……? 正直、そこが問題だと思うんだが。

「これまでじゃ。これ以上のことはせんでも良いがこれが整わなければ成功できぬ」

「ありがとうございました」と俺と川村は礼を言う。

「おそらく、夕方には未来に帰れるだろうからそれまで、ゆっくりしていきなさい。夕方になったら着替えてここに来なさい」

 俺たちは堅太郎の家へ向かった。


 案の定、俺と川村は堅太郎たちと遊ぶことになったが、これも最後だと思うと少し寂しい。

 遊んだのはかくれんぼだ。

 楽しい時間はすぐ過ぎるというのはよく言ったもので、すぐに夕方になってしまった。

「やだ。聖兄ちゃんも玲奈姉ちゃんも帰って欲しくない」

 と堅太郎はただを捏ねた。俺もただを捏ねたい気持ちになったが我慢する。

「堅太郎、聖君も玲奈さんも、おうちがあるのよ?」

「でもやだ」

 俺は何か彼のために残せるものは無いかと考えた。せめて、写真でもあればいいんだが。写真。携帯があるけど、使うことはできない。

 あ、

「じゃあ、堅太郎、これをやるよ。俺の写真」

 俺は生徒手帳の身分証明書をあげた。

「あ、なるほどね」

 川村も同じことした。

「写真? 色つきの? でも高価なんじゃないかい?」と堅太郎の母親は不安そうに言う。

「大丈夫です。沢山あるのでだからさ、堅太郎、これで俺たちの顔を覚えてられるだろ?」

 堅太郎は頷いた。

「じゃあな、頑張れよ?」

「うん、頑張る」

「いい子だ」と俺。「みんなと仲良くね」と川村。

 俺と川村は堅太郎たちと別れを告げた。

 神社に向かう前に小屋をみて、忘れ物の確認。忘れ物はないようだ。

「なんか、寂しいね」

「まあな」

「身分証明書の再発行面倒だね」

「そうだな」

 俺と川村は神社に向かいながらちょっと寂しい気分になったが、それもすぐに払う。出会いと別れは必然だ。

 神社には喜助さんだけがいた。

「あれ? おじいさんは?」

「師匠は早速、世界線を作る本を作ってます。儂らがしてやれるのはこれくらいだって」

「本当にありがとうございます」

 と俺は言う。

「じゃあ、早速帰るけど忘れ物は無い?」

 俺と川村は「大丈夫です」と答えた。

「わかりました。お2人が時間移動した15分後の沢下山麓に転送します」

「え? 喜助さん、転送できるんですか?」

「はい。でも師匠には内緒です」

 喜助さんも俺たちに協力してくれている。

「では、行きますね。目が覚めたらそこは沢下山麓です」

 喜助さんが何か唱えると俺たちは白い光に包まれて、目が覚めるとそこは


「沢下山だな」

 俺と川村は沢下山登山コース入り口から少し入った辺りにいた。

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