第八話 時間旅行 ②
僕が知っている沢下山高校生失踪事件の被害者は村川案介、原本巡、佐々田利奈。なんだけど、未来ではその事件すら検索結果に出なくて、代わりに村川案介と原本巡が交通事故で死んでいる。佐々田利奈は行方不明。
というか、西暦を見ると僕らの時代から3年後だ。つまり、失踪事件から8年。交通事故が起きた日付と失踪事件が起きた日付もほとんど一致している。
うーむむむ、隠される理由がよく分からないし、隠すとしても佐々田利奈を被害者一覧から消す理由もよく分からない。
どうにかして、佐々田利奈の居場所を突き止められないだろうか。8年ってことは当時高校2年の彼女は現在、25?
電話帳に電話番号を登録する年齢じゃなさそうだしなぁ。
……。
何か、いい方法……。あ、でも、大丈夫かなぁ。
僕が思いついたのは名簿屋を使うことだった。
いくらかかるか分からないしなぁ。
まずは電話帳にしよう。それならまだお金がかからない。そして、住所が特定出来る。……いきなり見ず知らずの人間に8年前のことを教えるなんて無理そうだけど。
多分、この辺にいるといいんだけど。
電話帳、電話帳。あった。
あ、なんだ個人名から検索出来るのか。未来の電話帳検索も凄いな。えーっと、佐々田利奈っと。
あれ、出てきた。これはラッキー。この近辺だし、多分本人だ。
……今日はすこぶる運がいい気がする。
隣の市。倉沖市か。県庁所在地だ。そりゃそうか。
僕はここに長居する理由もないのでさっさと出ることにした。理由はもうひとつあって、隣の部屋で盛られたというのもある。うるさかったので壁を叩いてやったら店員に注意された。僕じゃなくてこんな所でする欲求不満な奴らを注意しろ。
1日で注文したが3時間くらいで出てきたらお金が返ってきた。良心的。
外は眩しかった。暗いところに長い間いたら目も眩む。
さっそく駅へ向かう。ネカフェは駅前なのですぐに電車に乗り、倉沖市に向かう。そういえば僕は制服なんだった。やっちまったなぁ、制服姿でネカフェ入っちまった。……僕個人が注意されないし、生徒指導は未来で行われるから関係ない関係ない。
倉沖なんてそんなに行かないからよく分からないけど、地図でも見れば何とかなるだろ。
電車は倉沖市内へ入った。
一気に都会感が増したようなそうでも無いような。
地図アプリはアップデートしないと使えないようなのでやめた。駅に地図なんてあるのかなぁ。
倉沖市駅で降りる。新幹線も止まる駅だし、ここからならどこへでも行けるだろ。
路線図とにらめっこしながら行きたい所を探す。地名は大倉区泉三丁目。それだけメモしてきた。多分、地下鉄市内線の泉駅でいいだろ。
市内線って乗り換えないとダメなのか。南北線に乗って、倉南で降りて、市内線にようやく乗る。倉南に来るなら倉沖市まで来なくて良かったじゃんか。畜生。
市内線で倉南から泉まで4駅。僕は地下鉄に久々に乗ったので若干ワクワクしながら到着を待った。
泉駅。
降りたら改札を出てすぐの地図に張り付いた。張り付いたっていうか長いこと見ていた。ようやく三丁目を見つけたのですぐに向かう。携帯で写真もしっかり撮った。
駅を出ると3時だった。時間感覚がかなり狂い始めてきた気がするけどまあいいや。今は僕の時間を整理するよりも佐々田利奈に会うことが先決だ。
アパートまではそこまで遠くなかった。こういうのを灯台もと暗しと言うのかもしれないが、そんなことはどうでもいいので佐々田利奈の部屋を探す。204号室のポストに佐々田というなまえがあるので多分204。しかし、僕は204号室には向かわず、隣の203号室に向かった。
理由は簡単。見ず知らずの人間が訪ねてきて、いきなり過去のことを聞き出すなど不可能だからだ。だから、隣の人でワンクッション置くことにより、この問題を解決出来る。
203号室の扉を叩くと、おばあさんが出てきた。
「はいはい、おや、学生さん? 何の用だい?」
「あ、はい。あの、このアパートに佐々田利奈って人が住んでるらしいんですけど、知ってますか?」
「ああ、知っておるよ。……しかし、なんであの子に用があるんだい?」
しまった、それを考えていなかった。うーん、うーん。
「ぼ、僕の姉が佐々田さんの友人で、忘れ物があるから取りに行け、と遣わされました」
ど、どうだ?
「おやおや、大変だねぇ。しかし、あの子が家に友達を呼ぶような子でよかったよ」
……? どういうことだ?
「ど、どういう意味ですか?」
「あ、ああ、これはあの子に内緒だけどね、挨拶はするけどすごく暗い子なんじゃ。どうやら高校生の時に友達を亡くしたみたいでねえ、可哀想だけど、引きずりすぎな気もするねえ」
……おかしいな。
「ありがとうございました」
「あ、今日は留守みたいよ? 言うの遅れてしまったけど」
「あ、そうですか。ありがとうございます。また来ます」
「はい。気をつけてね」
おばあさんは扉を閉めた。
僕は駅に戻りながら頭を混乱させていた。




