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第八話 時間旅行 ①

 目が覚めると、そこは沢下山の麓。ちょうど登山コースの入口だった。

「あ、あれ? さっき、倒れて……」

 倒されたような言い方をしたが、自分で倒れた。

 玉朱が喋り出した。

「すまぬな、事が事じゃから説明を後回しにした」

 さっきの「伏せろ」かな?

「儂はおぬしの守護霊ということは分かっているじゃろうが、その『守護』の仕方を話しておらぬかった」

 そういえば。気にしたことも無かったけど。

「儂はとある神の力により生まれた存在じゃ。それ故にその神の力を微弱ながら持っておる。しかし、その神を教えることは出来ん」

「なんで?」

「掟だからじゃ。すまぬな。さて、本題に戻るが、儂はおぬしを守るために力を使った。それにより儂らは未来に来ておる」

「へー……え?」

 未来に来ている? 危ない、危ない、危うく納得するところだった。

「まぁ、儂を作った神の力もバレてしまうかもしれぬが、ともかく、儂らは今、未来に来ておる。あの状況から逃走するためにな」

「な、なんで未来に来たの? 時間を移動した理由が分からない」

 それが逃走のための力、だとしても未来をチョイスした理由も聞きたい。

「うむ、時間を移動した理由は簡単じゃ。それが儂の力だからじゃ。しかし、未来に向かってしまう理由はよく分からぬ。まぁ、過去に戻ることは出来るから安心するのじゃ」

 玉朱にも分からないってことね。まぁ、咄嗟の判断から未来に来てしまったんだな。

 それと、

「さっき、何があって『伏せろ』って言ったの?」

 それが最大の疑問だ。

 なんの理由もなく玉朱が未来に連れてくるはずがないからな。

「それも話さねばならぬな。少し前に、霊的な何かが来る、と言ったが、実はあの時点でその何かが危険なものだということは薄々気づいていた。しかし、薄々程度の理由で危険と判断し、おぬしが慌てるのを防ぎたかったために少し誤魔化してしまったのじゃ。それについては謝ろう」

 ふーん。まぁ、落ち着いて行動することは遭難した時には大切だからな。

「分かった。それなら大丈夫」

「感謝する。さて、儂がおぬしに伏せろ、と言ったとき、何かがおったのじゃ。儂らの傍に」

「何がいたの?」

「しっかりとは見ておらぬ。すぐに危険と判断したからな。しかし、たぶんあれは烏じゃないかと思うのじゃ。ただの烏じゃなく、人間の大きさ並のな」

 倒れる前にふと見えたアレか?

 人間くらいの大きさの烏。中々信じられる話ではないが、玉朱がこういうなら本当だろう。そもそも、玉朱の存在自体が信じられない話なんだから大きな烏くらいいてももう驚かない。

「あの烏が儂らに何をするかは分からん。いや、分かるつもりはない。ただ、あの烏からは強大な力、それも悪い力が感じられたのじゃ」

 それで、未来に逃げてきた、のか。

「ありがとう。僕は玉朱を信じるよ。その烏が悪いものであっても、良いものであっても、僕はかすり傷ひとつもせず逃げてこれたんだから、そこに感謝するよ。ありがとう」

「礼などせんでもよい、儂はおぬしの守護霊じゃ。これが定めなのじゃからな……ただ、もうひとつ謝りたいことがあるのじゃ。儂も久々に力を使ったから、すぐに過去には戻れぬのじゃ。力を貯める為に丸1日欲しい。それでもよいか?」

「全然大丈夫だよ。僕も未来を探索してみたかったし」

 玉朱はありがとう。と言った。

「未来ってどれくらい未来なの?」

「分からぬが、以前と発展度合いが変わらないから長くても5年くらいじゃろう」

 5年後。つまり、僕は大学生になっているわけか。タイムパラドクスとかあるかもしれないからあまりうろつくのはやめるか。

「さて、どうするのじゃ? 1日とは言えずっと外にいるのも退屈じゃろう」

「ネットカフェに行く」

 金はある。貯金の4分の3を持ってきた。

 暑さは凌げる。そして、1番楽しくて、すぐに1日が経つ。万が一泊まることになっても大丈夫。

 僕は人生初のネットカフェを未来に経験することになった。

「玉朱はもう、勾玉に戻ってていいよ」

 玉朱を勾玉に戻し、駅の方まで歩いて、ネカフェに向かう。

 しかし、本当に大差ないな。5年も経っていないのかもしれない。……エレベーターの検証をした団地は無くなってるけど。あ、向こうの方になんか高い塔が出来てる。まぁ、興味はないや。

 携帯はアップデート通知が沢山来るけど、過去に戻ったときに不都合か起こりそうだから無視する。

 時間軸通りにまたこの時代に来れたときのお楽しみにしよう。

 そうして、ネカフェに着いた。今もしっかり残っているらしい。


 初めてでよく分からないので適当に料金表通りの額を払って個室に入った。

 さて、何をするかな。飲み物を取ってきて座る。これは、いい。ネカフェ難民なるものがいるのも頷ける。過去に帰って嫌なことがあったらここに来よう。

 その後は適当にブラウザゲームとかネットサーフィンをした。しかし、5年も経てばブラウザゲームも進化するんだな。僕らの時代のアプリゲームレベルのものがブラウザで遊べる。

 そういえば、僕らが研究している失踪事件はどうだろうか。

 沢下山高校生失踪事件っと。あれ? 検索結果0件。

 誤字はないし、何度リロードしてもURL1つ出てこない。

 なんでだ? 未来とは言え、0件は変だな。……。他の情報、他の情報。被害者の名前。えーっと、村川案介、そんな名前。

 こっちで検索すると、それらしい記事を一つだけ見つけたが。

 うーん、交通事故の被害者ではないしなぁ。

 村川案介という名を僕は交通事故の被害者という形で見つけた。そこには原本巡の名もあった。

 あれ、佐々田利奈の名前がない。うーん、どういうことだ?

 理解が追いつかない。整理しよう。

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