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第三話 お祓いしよう ②

 それからしばらくして、

「おじいさん。具体的には、ってちょっと難しい?」

「えっと、なんだろう、優しい、と言うより、なんか、凄そう? ごめんなさい、上手い表現が見つからなくて」

「いいよ。なるほどね、例えるなら、仙人、神様、雷オヤジ、のどれ?」

 雷オヤジで思わず笑いそうになるが堪える。

「なんでしょう、仙人と言うより、神様なのかなぁという感じです」

「神様ね。それじゃあ、続きをお願い」

「はい、おじいさんがそう言った後に……ここからがイマイチよく分からないんですが、目が覚めたら、と言うより気がついたら、と言うんでしょうか。いつの間にか5階でエレベーターを降りていたんです」

「降りていたって言うのは、その階にいたってこと?」

「そうです」

 またもや美菜子さんは少し黙ってしまった。

 一体何を考えてるのだろうか、聞いても分からないから訊かない。

 しばらくして美菜子さんは口を開く。

「そして、無事に帰れたってことね。ここまでは玲奈ちゃんから聞いた通りだけど、何か伝え忘れこととかある?」

 俺は鎖骨の黒い跡についても言うことにした。まあ、バレる気がしたし。

「俺……じゃなくて僕、2人に心配かけたくなくて、当然家族にも言ってないんですけど、実は鎖骨の辺りに大きな歯型見たいな、ちょうど喰われたときの歯型のような黒い跡があるんです」

「なるほどね。痛みとかは?」

「ないです。あれから1度も。でも洗っても消えなくて、の、呪われたとかそんな感じですか?」

「うーん、見てないから分からないけど、まだ痛みとかが無いならまだ、大丈夫なのかしら……悪い夢とかは?」

 ないです、と答えた。

 それどころか快眠だ。

「ありがとう。他に言ってないことはない?」

「ないです」

「じゃあ、またお友達のところ戻ってなさい。少し時間がかかるから。黒い跡については言わなくても大丈夫よ」

 はい、ありがとうございました。と言って退室した。

 あのふくよかな男性(福田さんと言うらしい)に案内されてさっきの座敷に戻る。案の定そこには2人がいるのだが、ジュースとお菓子を頂いてやがる。

「あ、おい、ズルいぞお前ら」

「ま、まて、まだ手を付けてないんだ。ほら、沢山あるだろ?飲み物は流石に飲んだけど」と慌てて榊山が弁明する。しかし、

「さっき、ひとつくらいならバレないだろって食べたけどね」と川村が漏らした。

「おい! 川村。それは言うなって。あ、いや、久山、ち、違うんだ。」

 俺は呆れたが、特に咎めず

「まあ、いいや。ドーナツ5つ頼むぜ」と言った。

「お前、何かある度に1個増やすつもりだろ」と榊山が言うので俺は「ならさっさと奢れ」と言った。


 * * *


 しばらくして美菜子さんが来た。

「久山君。もしかしたら君は何かに憑かれているかもしれないわ」といきなり言い放った。

「え、まじですか?」

 言われた身とは思えない返事をしてしまった。他の2人も驚いている。

「本当よ。でも安心して、今まで、目立った体調不良が無いならまだ弱いってこと。今日にでも退治出来るかもしれないけど、どうする?」

 当然、僕の答えは「はい。お願いします」だった。


 除霊には2人も付いてきた。なぜ付いてくるかだが、僕に憑いている何かが暴れたとき、僕の体を抑える要因として必要らしい。だからあの男性もいる。男性だけでもいい気がするのだが。

 着いたのはさっきの部屋だ。

「じゃあ、着替えてくるから少し待ってて、みんなは着替えなくて大丈夫だから」

 なるほどこれからナントカ装束というのになるんだな。

 再び現れた美菜子さんはやはり何かの装束だった。

「いい? これから除霊をする。けれど、除霊出来ないかもしれない」

「え、それ、大丈夫なんですか?」と榊山。

「大丈夫。何が憑いているかを見るだけだから問題ないわ」

 と言った。

 あ、そういえば、

「勝手なイメージですけど僕、服着てていいんですか?」

 鎖骨の跡を見られたくないから脱ぎたくは無いが。

「霊体は物体と干渉しないからね。大丈夫」

 なら、良かった。

「じゃあ、ここに寝転がって。3人は久山君を囲むように座ってて」

 仰向けに寝転がる。……。何だこの光景。3人から覗き込まれるって……。

「久山君は落ち着いて、目を閉じで深呼吸して……。寝ても構わないわ。目の前にロウソクが揺れているのを想像するの」

 ロウソク……。ダメだ百物語を思い出してしまう。まあ、今更思い出し笑いもしないか。


 気づいたら寝ていた。凄いな霊媒師。

「もう大丈夫、目を開けて」

 目を開けるとやはり景色は変わらず3人から覗き込まれるといういまいちよく分からない景色だった。

「ごめんなさい、俺、寝てました」

「大丈夫、大丈夫。その方が私としても楽だったわ」

「で、どうでした?」

 美菜子さんはこう答えた。

「大丈夫。除霊しなくてもすぐに消えてくれるわ」

「本当ですか?」

「うん。そうよ」


 かくして除霊は終わったのだ。いまいち釈然としないが、プロが大丈夫と言ったのだから大丈夫なのだろう。

「今日は本当にありがとうございました。1000円でお祓いしてもらうなんて」

「除霊、だけどね」

 美菜子さんは笑った。

「良かったな久山」と榊山が言った。

「ああ」


 * * *


「美菜子さん。良いのですか? 私としては久山君にはまだ何かが憑いてるように見えますが」福田がそう言った。

「良くないわ。でもこれは私の役目じゃない。私は久山君がエレベーターで会った『女』の方は祓ったわ。でも『おじいさん』の方は分からなかった」

「おじいさん……。美菜子さんはどのようにお考えで?」

「私の実家……というよりも川村家に頼むべき問題かもしれない」

「川村家、というと玲奈ちゃんの家ということですか」

「そう、私はあれは『トキ神様』でないかと思ってるわ」

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