くだらない世界の光と接触
「こいつ、仲間かばってる俺かっけぇみたいな顔してやがる」
「てめぇを必要としてる人なんかいねえのに何熱くなってんの?」
ナイフで胸を突くような言葉が俺に投げかけられる。でも、俺は何も言い返さない。言い返しても復元できない、復元されない。くだらない世界にはバグが多い割にセーブ機能すら付けてくれない。こんな世界、誰が望んで作ったのだろうか……。
「……きてよ、悠!起きてよ!」
俺は寝ているふりを続けているうちに本当に寝てしまったらしい。それだけならいいのだが、目の前には昨日、見た目に合わない身体能力を見せつけていた少女がいた。朝日奈 咲優だ。
「……昨日に続き今日は何だ?」
学校で寝るのが気持ちいいのか、既に放課後の時間になっていた。できるだけ面倒事に巻き込まれないように俺は早く帰りたいアピールをするべく、カバンに教科書を入れ始めた。それと同時に彼女が話し始めた。
「私、昨日、いじめられている子を助けたでしょ?それから主犯達が私に矛先に向けてくるようになったのよ。どうすればいいと思う?」
まぁそうなるわな、と俺は思った。それとなぜ昨日無視した俺に話しかけてくるのだろうか……。とりあえず何か案を出せば帰ってもいいだろうと思い、俺は言った。
「昨日みたいにまた全員蹴り倒せばいいんじゃないか。」
彼女は呆れた顔をしていた。
「昨日無視したくせにしっかり見てたのね。ついに傍観者になるまで落ちたとは……」
「落ちた?何の話だ?」
いきなり、昔を知っているかのように煽られたので俺は動揺した。
「いや、あんたが弱虫だって言いたかっただけ。とりあえず、蹴り倒す案は無しで!とりあえず上履き洗うの手伝ってよ。」
偏見かもしれないが陽キャ女子は陰キャ男子をを煽るくせがありそうなので今回は流すことにした。というよりか、煽られたことより上履きを洗う方が面倒くさかった。
「なんで俺が手伝ないといけないんだよ。」
「え、悠 以外教室にいないじゃん。」
確かに他の奴らは部活動やらなんやらで教室は空っぽだった。家の用事があるだの、病院に行くだの、帰宅部の俺が言ってもすぐに疑われるであろうに言い訳は使いたくなかったため、俺は渋々朝日奈の頼みを聞くことにした。今日はくだらない夢を見るわ、頼み事をされるわで辛い日になりそうだ。