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くだらない世界に1つの光

桜が新入生を祝うように舞散っていた季節から少し経った、俺はいつも通り自分の机を枕替わりに寝たフリをしていた。

昼休みということもあり、学園カースト上位層の陽キャ共が大声で会話をしている。俺からしてみればちっとも楽しくないのだが、陽キャは楽しんでいるようだ。

だが、俺もあんな風に会話を楽しんでいる時期もあった。今思えばバカバカしい薄っぺらい会話であったがそのときの俺は楽しかったのであろう。

あれは、中学3年生の夏休み前だっただろうか。いつも話していた1人の元友人がハブられるようになった。俺はなぜその子がいじめられているのかわからなかったため、毎日その子の荒らされていた机の片付けを手伝っていた。

だが、これが理由で俺の学校生活は変わってしまった。よくある話だが、いじめられているやつを擁護して俺に火の粉が飛んだのだ。 そのときから俺は人間関係はくだらなく、脆いものだと気づいたのだ。

そして、残りの中学校生活はほぼ今と変わらず、寝ているだけだった。いじめは俺の反応が薄かったからか、2週間ほどで止んだ。親の転勤もあり、現在、俺の過去を知るものはこの高校にはいない。それが唯一の救いであるように感じた。


--------------


6限目の授業が終わり、HRが終わったあとすぐに帰りの支度をし、教室を出た。このときの俺はあんな面倒事に巻き込まれるなんて思ってもいなかった。


それは、教室を出たあと下駄箱へまでの廊下を歩いているとき、突然、学園カースト上位層のクラスメート、朝日奈(あさひな) 咲優(さゆ)に話しかけられたのだ。

「いじめられている子を一緒に助けて!」と。

これはなんの嫌がらせかと思った。なぜこの世界は人の嫌がるイベントを起こすのだろうと。どうやら、俺が入学した高校、そして生まれた世界はハードモードだったらしい。

「ねぇ!聞いてんの!早くしてよ!」

どうやら、俺は動揺して意識が飛んでいたらしい。そのまま意識が戻らない方が俺的には得だった。正直、この学園で陰キャな俺が協力しようがしまいが何も他者からのイメージは変わらないため、協力する理由がゼロだった。だから俺は無視してもう一度足を動かした。当然、彼女からのバッシングが飛んだ。

「あんた、いつも寝てるのは良いとして人を助けることもできないとか、人間失格じゃん。」

と言って彼女は走って行った。返す言葉もないため、返事を待たず走って行ってくれたのは好都合だった。

でも彼女が走っていった方向は俺も向かうはずだった。下駄箱へのルートだった。嫌な予感しかしないが、靴なしで帰る勇気はない俺はそのまま歩き続けた。


そして、下駄箱付近まで近づいた俺はいつもと様子が違うことに気付いた。人集りができて騒がしい。その理由は当然、先程のいじめの件だ。そこには水をかけられてずぶ濡れの被害者であろう少女と今どき存在するのかと思うようなガングロメイクをした加害者であろう3人、向き合い側に先程の朝日奈がいた。俺はそのとき、朝日奈が俺と同じルートを歩いてしまうのではないかと考えた。人間はすぐに自分の体験した内容と重ねてしまうものだ。この世界の構造はよくわからない。善の行動をしたのに悪の扱いにされることがある。意味不明だ。報われない努力をするくらいならしない方がマシだ。


だから、俺はさっき朝日奈の話を無視した。報われない努力をしようとする朝日奈を目の前にして俺はいじめ現場へと無意識に歩いていた。


だが、朝日奈の方が先に動いていたようだった。ガングロ3人にドロップキックと回し蹴りをかまし、3人が怯んだところで朝日奈が水浴び少女を引っ張り走っていった。朝日奈の身体能力が並ではなく異常だったが、そんなことより、俺はまた自分の無力さに気付くことになってしまった。


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