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8話 亀と茸

透子のやらかした事を聞いてすっかり頭を抱え込んだクーリン。

魚とはいえ、おもわず大量虐殺をしてこれが人だったら?と、思うとゾッとして気落ちした透子。

空気は真っ暗であった。


そして、ここであえて空気を詠まないジジイ・・・


「ホッホッホッホッホ! よいよい! 若者は悩め悩め!」

実に楽しそうである。


「透子はトロ子と呼ばれておるのだな、ワシもそう呼ぶかの?」

「えっ!・・・イヤ、それは・・・ちょっと~」


「名は体を表す、と言うもののじゃ! よく似合うておる」

「えー・・・」

(何でこの亀さん、日本のことわざ知ってるの?)


「で、トロ子はこのまま下流に下り、人里を目指すのだな」

「そうです」


「ワシも一緒に連れて行くがよいぞ!」

「えー⁉」


「よろしく頼むぞ」

「イヤイヤイヤ、頼まれましても~ちょっとそれは~、歩くスピードも違いますし・・・クーリン速いんですよ、ついて行くだけで一杯といいますか・・・亀さん遅いでしょ?」


「バックに乗せれば問題ない。」

「イヤイヤイヤ、落ちますよ、それに重いじゃないですか!」


「ポケットでもよいぞ?」

「イヤイヤ、入りませんから~」


「フム、では小さくなるかの」

「えー⁉」


亀は野球ボールサイズに小さくなった。


「これならよいだろう、そのバックの脇ポケットに入れるとよい」

「えー」


透子が躊躇していると、横からクーリンが出てきて、亀さんを持ち上げてバックのポケットにいれた。


「ちょっと!クーリン!」

「なんだよ」


透子はクーリンを引っ張り、亀から離れて、ひそひそ話す。

「亀さん、連れて行く気?」


「そうだよ」

「亀さんというより、亀そのものあまり得意じゃないんだけど!」


「?!・・・生物差別するのか?・・・人属は種族によって差別意識があると聞く」

「そうじゃない!そうじゃないけど!」


「はっ? じゃ何が問題なんだ?」

「・・・もふもふ、していない!」

「・・・」


クーリン、踵を返してバックのところに行く。

透子追いかける。


「話合いは終わったかの?」

「はい」

「・・・」


「じゃ、よろしく頼むぞ」

「はい」

「・・・」


「トロ子態度悪いな、年長者を敬えよ、人は違うのか?」

「敬うけどさ、何で一緒に行く事になったの?」


「タッキー様から、元従者だったものが現れたから、助力を乞うとよいと言われた。トロ子は俺の手にあまるからな」

「・・・」




透子は観念して、亀さんに聞く。

「亀さんは、前に誰かの従者をしていたんですか?」

「そうじゃな」


「その人?と、一緒にいなくてよいんですか?」

「もうとっくの昔に鬼籍じゃな、子や孫や子孫を代々見守ってきたが、人属の争いで最後の一人も死に絶えてしもうたわい」


「・・・なんて呼べばよいですか? 名前あるんですよね?」

「フム、確かに呼ばれておったが、その名は既に縁を絶えておる。透子が新な名をつけるがよいであろう!」


「・・・じゃあ、一休で、どうですか? 有名な頭のよいお坊様なんです」

「我は水の精霊に属する亀、名は一休、水沢透子の従者と成りけり」

ミストシャワーがキラキラと降り注いだ。


「えー‼ うっそー」

「おー  イッキュウじい様 トロ子の従者に成っちゃったワ!」


「ホッホッホッホ これでまた一蓮托生じゃの、楽しみじゃ!」






「では、今日は食料を集めて、今夜はその洞窟で過ごし、明日朝に出るのじゃな?」

「そうです、まだ食が足りないので、狩らないとダメです。果実は道中で採取するとしても、あと金がないので、お金にかえられる素材が欲しい、蛇を狙ったのですがなかなか見つからなくて・・・」


「魚は十分あるぞ、100は超えるだろう。トロ子の冷凍のじゃな。全てバックにしまってある。 フム、お金に換えられて食べる物といえば、茸がよい!」

「あ~茸ですか、けっこう奥に登らないとないんじゃないですかね?」


「イヤ、確かその洞窟の裏山は赤松だろう?昔来た事がある。変わりがなければ群生地があるはず、茸は赤松を好む」

「行ってみましょう! 行くよトロ子」


(えー私の意見はきかなくていいのかな?・・・あ~いいんですね・・・そうですか?いいんですけどね・・・皆さん、従者ですよね? 私が主ですよね?・・・)






クーリンが一休さんのナビに従って、すいすいと山を登って、先導して行く。


透子は、滑ったり、つまづいたり、転けそうになったり、木にしがみついたりして、ハアハア言いながら、なれない獣道を必死で登って行く。


一休さんは、透子のバックの中だが、透子があまりにもフラフラ、ヨタヨタなので、落ちないように、バックにしがみついている。


「ねえねえ、あそこに茶色の茸、あるけど!」

「そうだな、一休爺さん、あの茸は?」

「あれは、ただの食用じゃな、薬にはならん」

「・・・」


「ねえねえ、あれは?マーブル模様の茸?」

「模様付きはダメだ」

「あれは、食べられるが、あとで痒くなるな」

「ゲッ!・・・」


「ねえねえ、あの水玉模様の茸は?」

「模様付きはダメだと言ったろ!」

「食べたら死ぬな、毒茸だ!」

「まっまじか!!」


「トロ子や、茸は模様が入っているのは、食べたあとに何か良くないことがあるのじゃ、食べるには模様のない無地を探すのだが、我らは金が必要じゃ、金に代えられる薬用の茸を見つけなければならんのじゃ」

「薬用ってどんな感じの茸?」


「あそこに見える茶茸はただの食用じゃ、あの色が赤に近くなり、青に近くなり、黒に近くなり、白に近くなりすると、薬効果が高まるのじゃ」

「ふ~ん、そうなんだね」

「へー」


「なんじゃ、クーリンも知らんかったのかい。」

「俺が知ってるのは、食べれるかダメかだよ! 茸が金になるのは聞いた話で知ってるだけさ。」




一休さんのレクチャーを聞きながら1時間位登って行くと、赤松の中に入った。


「もう少し先に群生地があったはずだが、この辺りからもチラホラと見つかるはずだ、できるだけ色の濃い赤茸を見つけ次第で採取するとよい。 採取するときは周りの土を取り除いて、根本から採取すると値が高く付くが、途中で折れると安くなる。気をつけて採取するとよい」



一休さんが見つけて、クーリンが掘る、透子が抜いてカバンに入れる。


一休さんが見つけて、クーリンが掘る、透子が抜いてカバンに入れる。


一休さんが見つけて、クーリンが掘る、透子が抜いてカバンに入れる。


一休さんが見つけて、クーリンが掘る、透子が抜いてカバンに入れる。


一休さんが見つけて、クーリンが掘る、透子が抜いてカバンに入れる。


繰り返し進んでいるうちに、ようやく群生地にたどり着く。



「うわー、凄い!赤茸だらけだ!」

「ホントに、俺もこんなにあるのは、初めて見た!」

「全く手付かずのままだの、あの頃はなんだかんだと冒険者達が採取に来て大きな茸は根こそぎ持って行かれたものじゃがの」


「ねぇねぇ見て、凄いよ、でかいよ!」

「あぁ、なんか俺と同じくらいあるわ・・・でかすぎて引くな」

「ここに採取にくるものがいなくなって、育ち放題なのであろう!」


「あっ、うまーい、味が濃厚だ。いい匂いもする」

クーリンはガツガツ食べ始める。

「あっずるい! 何食べてるの?」

透子も食べようとすると一休が止めた。

「人は茸を生では食わぬ、焼くなり煮るなりした方がよい、ここの赤茸は薬用になるから腹を壊す事はなさそうだが、合わぬ事もある。控えよ」


「焼くか煮ればいいのね・・・そうだ! 水球100℃」

バレーボールサイズの水球が湯気をあげて現れた。

透子は小枝に茸を刺して、水球に突っ込んだ!

もはや水球というより湯球の中で茸をしゃぶしゃぶのようにして、パクついた!

「おいひー」

朝、果実を食べて以来、何も食べてない腹には、いくらでも入りそうだった!

透子もクーリンに負けないくらい、茸をしゃぶしゃぶして、パクパクした。


「全くそちらは・・・呆れたわい、もう好きなだけ食べるがよい」


そうして、クーリンと透子は腹一杯に赤茸を食べて、そのまま居眠りした。




一休は、二人が寝たのを確認すると、土魔法を使って、この周り以外の奥の方の一定の大きさ以上の赤茸を次々に堀り上げる。

風魔法を使って、根本を切り放し、茸を風に乗せて集める。

透子のバックをそーと開けて、茸をそのままバックの中に送った。

茸は次々にフェードアウトしてしまわれた。

その数、10000以上、普通にあり得ない数である。


実はこの一休さん、元従者の加護持ちだが800年を過ぎて生きる亀ジジイなだけあって、なにげにチートだったりするのである。


だが、その事は二人にはまだまだ内緒だわい。





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