7話 氷の精霊魔法
川辺では透子の放水ショー?が、魚の群れを直撃したらしく、同じような魚がピチピチと跳ねていた。
(どうしよう?
あー、クーリンが昨日捕った魚に似ている。
食べられるよね⁉
持っていくか。)
バックを開け、ビニール袋を呼ぶ、半分だけ出して、口を大きく開けてバックのヘリにかけた。
(このまま、魚ほうりこめば重くならないはず?)
ピチピチ跳ねてる魚のしっぽを掴んで、バックに入れると弾き反された‼
(あれ? 入らない?)
ビールを取り出して、魚を入れて、バックに入れると、また弾き反された。
「えー 何で?」
何度やってもはいらなかった。
「もしかして、容量オーバー? えー、もう一杯になったの?」
「生きているからじゃろ」
辺りを見回す。
「ん? 気のせいか 」
「せっかく釣れたのにもったいないな~、クーリンが帰ってくる前にバックに仕舞えたら証拠隠滅O.K. だったのにな。何で入らないのだろう?」
「だから、生きているからじゃ!」
また辺りを見回す。
「ん? 空耳かな? 誰もいないよね⁉」
「このままじゃ悪くなっちゃうからな、くさらせるのはもったいない、どうしよう? そうだ! 冷凍にしてみよう!」
「まっ待て!!」
「冷凍食品の魚のイメージだね! マイナス20℃冷凍!」
「やっヤバイ! シールド!」
カチーンと音がするかのように、魚と川が一斉に凍りついた。
冷気が漂って、霜が降りてくるようだ。
「・・・・・・何だか、またヤっちゃった感が満載なんだけど⁉」
「バカもん!!さっさと解かんか?」
「えー だっ誰?」
「いいから、早く解かんと、上流からの流れが氾濫するぞ」
「えっ? はっはい! 解凍!」
ゴーーとものすごい勢いで川の水が流れて行く、大雨の洪水のようだ!
「・・・全くなんて無茶をしよる、呆れたもんじゃ‼」
「えー、どこ?」
「ここじゃ、ここ」
「ここって? どこ?」
「下じゃ、下を見んかい」
・・・下を見ると、小岩の横にバレーボールくらいの亀がひっくり返っていた!
「・・・・・・」
「ボケっと呆けてないで、手伝わんかい#」
「あー、甲羅を反すんですよね?」
「そうじゃ」
「はい」
透子は亀を起こした。
「あ~、酷い目におうたわい!」
「はぁ~何だかスミマセン」
「先ずは、その辺に散乱してる魚をそのマジックバックにしまったらどうじゃ?」
「? さっき入れようとしたけど、入らなかったんです」
「それは生きてたからじゃ、今は死んどる。そなたが冷凍したからの」
「・・・マジックバックは生きているものは、入らない?」
「そのようじゃ」
「量が一杯だからではない?」
「フム、その場合もある。しかしそのバックは門を渡りし物、門を渡りし事は何かしら特別な加護が付く、前に会った渡り人のバックは、無限の容量であったの。何やら別の機能もあったが、はて?何であったかの?・・・まあ、とにかく入れてみたらどうじゃ」
「入れてみます」
透子は亀の言う通り、魚の尾をもってバックに入れてみると、スゥーと入りフェードアウトした。
散乱した魚を次々とバックにしまい、全ての魚を回収した。
「終わったようじゃな」
「あっ、はい」
なんとなくみつめあう・・・
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あの~、亀さんはどうしてここにきたんですか?」
「そなたの水魔法に巻き込まれたのじゃ」
「すっスミマセンでした!」
「ホッホッホッホッホ! 冗談だ。巻き込まれたのは、予想外じゃがの・・・フム? 好奇心?」
「好奇心? えー‼ なんかなんかじゃないですか?」
「ん、そういえば、そなたの従者はどうしたのか?おらんの?」
「今は狩りに行ってます」
「そうか、そなたのようなそこつ者を野放しにするのは、よからんな」
「・・・」
「何で私の事を知っているんですか?」
「人が水門を渡る事は実に珍しい、有るのは海門だ。川門とはわしが生きている中では初めてじゃ!」
「はあ~」
「そなた、名は?」
「水沢透子です」
「透子が名だな? 水沢が家名か?」
「そうです」
「ならば、人里では透子でなく、トーコとなのるとよい」
「なぜです?」
「人は真名に縛られる、真名を知られる事はよくないのだ。 家名も水沢を崩したほうがよいであろう、ミサーワとかミズッサーとかじゃな、全く違う名でもよいが、透子はそこつ者だから偽名はバレやすいであろう?」
「・・・わかりました」
「なんじゃ、不服そうじゃの」
「・・・そこつ者って!」
「・・・そっちかの?」
「だって!」
「自重せん氷魔法なぞ、使うからじゃ」
「そんなつもりじゃ・・・」
「つもりがなくても、使ったのじゃ! そして透子の氷魔法を浴びたもののほとんどが凍りついて死んだのだ。わしのように防衛ができるもの以外はな。」
「うぅ~ぁ・・・ぐすっ・・・」
「泣くでない、これは教訓じゃ、川も海も自然に凍るのは表面上だけじゃ、氷下には水が流れて生物が生きている、それを忘れてはならぬ。氷魔法は強い攻撃力がある、使い方次第で簡単に死ぬ、死んだら終わりじゃ元には戻らぬ。精霊たちは力の暴力を恐れ、王は許さぬ。」
「ごめんなさい!ごめんなさい・・・ぐすっ・・・」
「透子はこの世界にきたばかりのヒナじゃ、悪意はない故、この事は見逃されるであろう⁉ ・・・だが、精霊王は知らぬわけではない。猶予が与えられたにすぎぬ。そなたの力は強い故、よく学び、自重せよ!」
ガサッ ガサガサッ
「トロ子! 氷魔法使ったな⁉ 何やらかしたんだよ!タッキー様から御叱りが来たよ!」
「クーリン・・・ぐすっ」
「泣いてるのか⁉ 何があった?」
「ぐすっ・・・」
「ようやく、戻ってきたか❗ 透子の従者だな?」
「誰だ?」
「フム、そやつもまだ拙いな、大人とはいえまい!」
「だから誰だよ! どうしてトロ子といる?」
「透子の水魔法に巻き込まれたあげく、氷魔法の犠牲にかろうじてなりそこねた、死に損ないの亀のジジイじゃよ。」
「うっ・・・」
「このようなそこつ者を野放しにしては遺憾の! そのような事がないようにするのは従者の役割であろう?」
「ううっ・・・」
「狩りをするなら一緒に行くべきじゃの、この娘は一人にしてはならぬ。魔法の制御も出来ておらぬ故、何をしでかすかわからぬ。」
「うっううっ・・・」
「実際には、川の水を散々引っかきまくり流れをかきまくりしたあげく、魚の群れの進行を妨害して陸へほうり上げて、陸上げした魚に困って、冷凍魔法をわしが止めたにも関わらず施行して、魚だけでなく、川も底まで丸ごと凍結しよったわ!」
「・・・とっトロ子・・・なんて事を・・・」
「わしが直ぐに解除させたから、上流からの流れが氾濫せずにすんで大事にいたらなかたが、いなかったらどうなってたと思うかの? クーリンとやら。」
「・・・申し訳ありません」