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48話 ノアキネー村のギルド③


クーリンが名を詠唱して魔力を流し始めると石盤は青く輝き始めた、石盤から放出される輝きは力強く海の青さに石盤を中心とした空間をコバルトブルーに染めた。


「「「ほう・・・」」」


それは透子程の圧倒的な大きさはない、しかし空間を染める輝きこそが異常な大きさを示す故、ギルドの3人は感嘆と驚きを持ってその先の変化を見つめていた。


コバルトブルーは徐々にその色合いを濃く深くしながら、海の底に沈んで行くように変化し石盤に収束されていき、紺から濃紺にそして黒に変化した。


石盤が漆黒に染まると、小さなともし火が立ち上がった、そしてともし火の赤は直ぐに燃え広がり石盤を赤く染めた。


「「「おおおー」」」


(へー、クーリンは私と色の出方が違うんだね~ 青色も微妙に色合いが違うし赤と黒も順が逆だった。)

透子は魔法観賞も面白いなぁと、漠然と思いながら見物していた。


赤い火は一瞬の突風によってサッと吹き消された、そして石盤は風の新緑に染まった。


「うっ! か風魔法か!」

「マジか! 信じられん」

「4属性です! ギルド長今度こそ4属性ですよね?」


新緑は薄く薄くまるでそよ風のように空中に溶けてその存在を希薄化していく、そして入れ替わるように、空のスカイブルーが石盤を満たしていき、あふれ出た青はやがて晴天の青空のような爽やかな空間を演出した。


「「「・・・・・・」」」

ギルドの3人は、またもやポケーっと口を半開きにしながら、放心していた。


「・・・そろそろ止めていいですかぁー」

クーリンは、ギルド長に向かって声かけた。


「・・・・・・」


フリーズしたままのギルド長に溜息ついて言った。

「トーコ!ギルド長覚醒してやって!」


「あー、はいはい」

ギルド長の目の前で手のひらを左右に振って見たけどフリーズしたままだったので、脇腹をくすぐってみた。


「ひっえっ!」

変な声と共に身をよぎって覚醒した。


目があった透子は言った。

「クーリンが止めていいかって、聞いてますけど」


「えっ? ああ、いい」


クーリンが魔法を止めると、スカイブルーは拡散して消滅した。

石盤は何事もなかったように沈黙した。


キーボルトとユータクも夢から覚めたような顔をして戻ってきた。


3人はジッとクーリンを見つめた。


クーリンは背中に変な汗をかきながら、じりじりと後退しながら言った。

「・・・なっなんです?」


ユータクはハッとして、石盤にはまっているカードを取り出して見た。


「ギルド長、トップメインが水属性、セカンドは風属性、サブが闇と火です! 4属性です!ギルド長ほんとに4属性ですよ!」

ユータクは興奮しながらカードをギルド長に渡した。


「そうか! 見せてみろ」

ギルド長はカードを受け取り見て、クーリンをもう一度見て首を傾げてからカードを見て、思い返すように目をつむった。


キーボルトは横からカードを覗き込み、ぶつぶつ言いながらクーリンを見て、手を額にあてながら考えこんだ、そして思い当たったように聞いた。

「クーリンと言ったね、君はカワウソ族のようだが、祖先に鳥族のものがいるのかね? その背には隠された羽か翼があるのかな?」


「「あーああ!」」

ユータクは、納得したように言う。

透子は(なるほどね~ そういう考えになるのか! それにしてもクーリンに翼か♪ いいね!似合うかも)と、あさってな考えをしていた。


クーリンはギョッとしてあわてて答えた。

「えっ? なっないです! どっちも!」


ギルド長は目を開くと言った。

「じゃあ、お前はどうして風属性があるのだ? 普通水の眷属は空は飛べない、例外は海原を駆ける鱗族の羽があるものくらいだ。カワウソ族は海ではなく川が生息地だろう? なぜ祝福を受けることができたのだ?」


「えー それはですね・・・トーコのせいというか、偶然そうなったというか・・・」

クーリンは迫りくるギルド長の迫力と好奇心満面で迫りくる副ギルド長に押されて、更にジリジリと後退つつトーコに目線でどうにかしろと示しながら、しどろもどろに言った。


透子は肩をすくめて言った。

「クーリンね、私が水魔法で防御の練習している時に加減を間違えて、跳ね飛ばしちゃったんですよ、ポーンと空中に空に向かって高ーくね、助けてーって叫んでいて、こっちはどうしよう?と焦っていたのに、クーリンったら風の精霊様と目があったとかで、空中でそのまま祝福を貰って風で近くの川まで飛ばして貰ってポチャーンと川に落下して無傷だったんですよ! こっちは地面に落ちて死んじゃうんじゃないかって、死ななくても大けがしたんじゃないかって、心配していたのに!」

思い出すように言っているうちになんだか腹がたってきて興奮して両手でコブシを握りながらダリーに迫るように言った。


「まっまあ・・・わかった! わかったから、落ち着け!」

ダリーは両手でとりなすようなしぐさをして言った。


「ホォー、そんなことがあったのですか、それは特殊な例ですね。で、飛べるんですか?」

キーボルトは感心しながら更に迫った。


「とっ飛べません! 羽も翼もないですから!」


「あっ、クーリンは飛ばないけど、物凄い大ジャンプしますよ! 勢いを風に乗せてありえないくらい遠くへ」


「おい、トーコ!」

クーリンは咎めるように叫んだ。


「えっ? ダメなの?」

トーコが辺りを見回すとみんなが頷いた。


ダリーは苦笑いをしながら言った。

「自分の能力や魔力は自己責任だからどう言おうと自由だが、知りえた他人の情報は本人の承諾なく勝手に漏らすのはダメだな。相手がお前にとってはいい人でもそいつにとっては敵かもしれないだろ?

お前が漏らしたことによってそいつが死んだら、お前は共犯として犯罪者に落ちるぞ」


「あっ! そうですね、そうでした。クーリンごめん。」


「うん、この人達は悪用しないだろうから、でも他では気を付けて」


「しかし、すごいな。3属性でも凄いのに、4属性ですよ!うらやましい」

ユータクは本当にうらやむように言った。


「ヒューマンにはいなくもないが、獣人ではクーリンだけかもしれんな? 従者というのは渡来者を守る盾でもあるから、此度の渡来者殿は珍しくメスということもあり、精霊の祝福が受けやすくなっているのかもな?」

ダリーはカードをクーリンに渡しながら言う。


「ええ、そうかもしれないですな、それにしても、【闇の色を持つ白銀の使い手】と【多種な魔法を司る水空を駆ける従者】と言ったところじゃないですか? 」

キーボルトはニヤニヤ笑いながらドヤ顔で言った。


(げっ、何?その中二病な発言、なんかこの人ヤバいかも?)

透子は、ドン引きした。


「ヒューマンのそういう感性は俺にはわからんな。まあとにかく、トーコ殿クーリンあなた方が規格外れの魔法を持つことは、石盤が証明した。ここでの話は機密事項だ。迂闊に漏らさないようになトーコ殿。このカードは仮登録だが水の祠の試練を達成すれば正式なギルド会員になる。あなた方ならオーブを手に入れるだろう。一応、毎日ここに顔出してくれ、進捗状況を教える。今日はこれで終わりだ帰っていいぞ」

ダリーが追い払うように言った。


「そうですか、じゃあ失礼します」


「・・・失礼します」


トーコとクーリンはダリーとキーボルトに挨拶して、ユータクに連れられて退室した。


「今夜の宿は、村長宅になりましたか? それとも湖畔の宿で?」


「村長宅に泊めていただけることになりました。」


「では、何かありましたら村長宅に連絡しますね」


「ありがとうございます。お願いします」


「あと、今日はもう陽が暮れますからやめたほうがいいですが、明日時間があれば祠の入り口になる湖の畔に下見に行くといいですよ、帰りにギルドによってください」


「そうですね、ここから歩いてどれくらいで行けますか?」


「僕の足で往復が1コクぐらいです」


「えっ?1コクですか?1コクってどれくらいの長さ?じゃダメだ。ええと、1日は何コクあります?陽が昇るのは何コクで沈むのは何コクですか?」


「あーそこからですか? 1日は12コクです。陽が昇る時間が1コクで2コクが町の門が開く時間です。人の移動が始まります。3コクが仕事が始まるか交代の時間、2コク~3コクの間に朝食を食べます。5コクが昼休憩で前半後半で交代、7コクで夕暮れ仕事納め、8コクで門が締まります。8~9の間で夕食を食べ10コクまでに寝る。一般的にはそんな感じです。ギルドが混んでいるのは門の開閉前後の1コク~3コクの間と7コク~9コクの間です」


(なるほど、1コクは2時間か。でもスタートの時間が時計の針と違うのか、あとで早見表を書いてみよう)


「だいたいわかりました。明日行ってみます。道はギルドの前の村道を東へ真っすぐ行けばいいんですね?」


「ええ、そうです。1本道なので山林側に入らなければ迷わないと思います」


「ありがとうございます」





トーコ達がギルドのカウンターフロアまで戻ってくると、とてもざわめいていてどこからか怒鳴り声もきこえて喧騒とした雰囲気でカウンター前はハンターたちが押しかけていた。


透子はサッとフードを被り目立たないようにすると、察知したユータクさんの手招きでギルド職員用の出口から出してもらった。



「何かあったのかしらね?」

トーコは振り返って見た。


「おい、見るなよ。巻き込まれたら面倒だよ。あと服を買うんだろ?早く行こう」

クーリンに押されれその場を後にした。







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