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47話 ノアキネー村のギルド②


透子の魔力が流れ始めると、石盤は晴天の海のように青く青く鮮やかに輝きだした。


「「「おおおおー 凄い!」」」


青い輝きは部屋中に放散しまるで青色のライトがステージに当てられて空間が青く染まりその中に光の屈折によるキラキラ光るものがただようイルミネーションのようになった。


「なんてきれいな青だろう」

「凄い魔力を感じます」

「ああ、これほどの大きさの水魔法は初めてだ」


3人がウットリと見つめていると、やがて青の輝きが収束し始める。


「えっ? 赤です!」

「うそ! マジか!」

「信じられん」


石盤の色は青から赤へ入れ替わるように燃える(くれない)に染まった。

そして発火した紅は3DCGのように焔が石盤から立ち上った。

焔は一瞬激しく燃えて直ぐに鎮火するように収束して石盤に戻り、入れ替わるように現れた黒が塗りつぶすように広がり密度を深くし闇に染まった。


石盤が漆黒に染まると、ギルド長も副ギルド長も補佐員も石盤を凝視したまま、無言で見つめた。


(闇の祝福ないです、って散々言い張ってきたけど、完全にばれたから使えなくなっちゃうな。ヨギリの精霊様、派生精霊で闇属性持ってたとは思わなかったからね~ できればかくしておきたかったわ)

透子は内心溜息をついた。


そして漆黒の中央から1点の白銀の輝きが輝矢のごとく現れ、瞬く間に広がり幻想的な雪のスターダストの幻が部屋中を眩しく輝かせていた。


「あーなんか綺麗だね~」

透子はのんびり言った。


「細かい雪のようだけど、冷たくないね」

クーリンはスターダストを触ろうと手のひらで追った。


「幻だからじゃない? 雪というよりスターダストだし」


「スターダストって?」


「寒い雪が降った翌朝、朝日でキラキラ光る雪の塵みたいなのを言うね」


「へー、そうなんだ。」


「そろそろ、いいですか? 魔力止めて、もう色変わらないと思うので」

透子が3人に向かって聞いた。


「「「・・・・・・」」」

3人は口をポカンと開けたまま、放心していて反応がない。


透子は呆れたように言った。

「クーリン、ちょっと誰かつついてみて!」


「・・・わかった」

クーリンが放心中のギルド長の服を引っ張ると、ようやくダリーが戻ってきた。


「ギルド長!魔力止めますよ」


「ああ、いい」

ダリーは生返事を返しながら、部屋中を見渡して首を振った。


透子が魔力を止めると、スターダストの白銀の輝きは収束して消滅した。


「おい、大丈夫か!」

ダリーが部下に声をかけると、ボケーと放心していたキーボルトとユータクも覚醒した。



ユータクは興奮して言った。

「青から赤、そして黒、更に白銀! 4属性か、初めて見た!」


「いや、白銀は氷雪魔法だから、水魔法の上位だ。3属性だ」

ダリーが否定した。


「黒は何となくわかる! だが、赤はない!対立属性じゃないか!」

キーボルトが叫ぶ。





「じゃあ、次はクーリンの番ですね」

透子は思いっきりスルーして、次に進めようとした。


「待て! まだカードを入れ替えていない」

ダリーが言う。


「いや、そこじゃない!」

キーボルトが叫ぶ。


「そうです! あっこれトーコ殿のカードです。あっ上位の氷雪魔法がトップメインに来ています。水魔法はセカンドメインです。闇魔法と火魔法がサブにありますよ!」

ユータクが石盤からカードを外しながら、言った。


「サードメインじゃなくて、サブなのか? ちょっと見せてみろ!」

ダリーがカードを受け取り、表示された文字を見た。


「本当だ!闇魔法と火魔法はサブだな? 何故だろう? 何の派生魔法だろう?」

キーボルトはダリーの横から覗きこんで、首を傾げた。


「トーコ殿、闇魔法と火魔法を得た状況を説明してくれないか?」

ダリーは、カードをヒラヒラさせながら、真顔で詰め寄った。


「はあぁ、わかりました」

トーコは観念したように言った。


「アリク里でですね、湧き水を探してほしいと頼まれまして、山壁を調べていましたらいたんですよね、精霊が。全体的には青色の水の精霊なのに髪に赤のメッシュが入った赤い爪の精霊で、聞くと『温泉の精霊』だそうで、その場にいた5人が『温泉湯を出す魔法』の祝福を貰いました。温泉の精霊のなぞかけに正解したので、祝音も貰っちゃいました。」


「温泉の精霊か! そうだドワーフの自治区にいたな!」

キーボルトが興奮して言う。


「あー 聞いた事あるわ、湯治村の精霊のことか!」

ダリーが頷きながら言った。


「温泉の精霊ですか? 何ですそれ?」

ユーリクが聞いた。


「派生精霊だよ、10のうち7か8くらいはメインの魔力なんだけど、残りは違う魔力を持っている。滅多にいないんだけど、派生精霊の祝福を得ると2属性の魔法が使えるようになる。サブの魔法はずっと小さいけど、ないより在ったほうがいいという」

キーボルトが説明した。


「5人と言ったな。もしかして、クーリンも温泉の精霊の祝福を得たのか?」

ダリーが聞く。


「そうですね。お湯が出せるようになりましたよ」

クーリンが返した。


「なるほど、温泉魔法は水魔法に火属性が混じっているのか、後の3人はアリク里のもんか?」


「そうですね」


「おい、後でニールを呼んで裏をとれ」

ダリーが命じる


「わかりました」

ユータクが了解した。


「で、闇魔法はどうしたんだ?」

キーボルトが聞いた。


「それはですね、ワイバーンの話知っています?」

透子が一から説明するのが面倒くさくなって端折って聞いた。


「討伐したそうだな、ニールから聞いたぜ、氷雪魔法で一発だとか!さすがトップメインにくるだけあるな」

ダリーが答える。


「そのお礼だとかで、『夜霧の精霊様』から貰いました」

更に端折って言った。


「トーコのおこぼれで、『夜霧の精霊様』に祝福されました」

クーリンも追従した。


「・・・『夜霧の精霊様』か、内容を省略しすぎだろう?」

ダリーが苦笑しながら言った。


「ミミズクの巫女たちのあの地は『夜霧の精霊様』が守っていた。俺もなんとかワイバーンを退治したいとずっと思っていた。ニールに話を聞いてほっとした。長老たちの肩の荷も少しは降りただろう。俺からもお礼を言う。ありがとう」

ダリーは頭を下げた。


「えっ?あの? はい、どういたしまして?」

透子は突然のお礼に、アタフタしながら疑問符を浮かべた顔で返事した。


ダリーは顔を上げて言った。

「俺はワシの鳥人だ。あの失われた山森は故郷でもある、空を羽ばたく者として感謝している」


「そうだったんですね」

透子はあの地を思い出して、しんみりとした。


「ということは、闇の魔法は『夜霧の精霊様』からということだな?」

キーボルトが確認するように言った。


「そうみたいですよ、使ったことないからどんな魔法かわかんないけどね」


「宝の持ち腐れだな」

ダリーが苦笑した。


「あのー『夜霧の精霊様』も派生精霊なのですよね?『夜に霧を出す魔法』ですか?」

ユータクが聞いた。


「あーそうみたいなんだけどね、『夜霧の精霊様』はあの地を隠すために関係者以外を迷わせる、目くらましに使っていたらしいのね。私、夜は寝ているし、水の結界があるから今のところ不要かな?・・・申し訳ないけどね」

トーコがあっけらかんと言った。


「おいおい、貴重な闇魔法を何てこと言うんだ! 火水風土と違って、光闇は手に入れたくても滅多に得られるものじゃないぞ、特にヒューマンにとってはな」

キーボルトが憤慨して言う。



「トーコ殿はまだこちらに来てまだそれほどでもないんだろう?」

ダリーが話題を変えるように言った。


「そうですね、何日くらいたったたかな?20日はくらいじゃないですか?」


「そうか、それにしてもその短期間でよくそれだけの精霊様の祝福を得られたな。『ノアキネー村方面に渡来者が現れた可能性が高いから、見つけ次第丁重に保護するように』との通達がきたときは、既に山か森の中で野垂れ死んでいるんじゃないかと思ったぜ」

ダリーはニヤリと笑う。


「あーそういう認識なんですねぇ、森で会ったワグマの皆さんにも大分心配されましたよ」

透子も思い出し笑いしながら言った。


「ちなみに精霊様の加護を貰ったのは何日ぐらいたってからだ?」

キ-ボルトは聞く。


「ん? 川に落ちたなぁーって気を失って、気が付いたら滝つぼのほとりにいて、なんだか綺麗だなーって思って、写真を撮ろうとタブレットのレンズを覗いたら、大人の精霊様のまわりに小さい精霊様がワラワラといて、目が合ったので手を振ってみたら向こうも手を振って、滝つぼの水を飲むジェスチャーをするから飲んでみたら、直接見えるようになって会話ができるようになったよ。・・・だから、その日のうち? そのあと暫く話して、クーリンが召喚されたからね」


「??? シャーシンをトローとタブレトのレーズを覗いた、というのがなんだかわからないが、とにかく覗いたら精霊様を見たということか・・・」


「それが本当なら、歴史上最速で加護を得た渡来者かもしれません」


「ああ、そうかもな?・・・なんかこいつの能天気ぶりに捜索隊を出すか検討していた俺らがバカみたいだな」


「ギルド長! こいつはダメです!」

キーボルトが諫めた。


「・・・あのー、そろそろ次いきません?」

透子がそらすように言った。


「次?」


「だから、クーリンの番!」


「あっ! そうだった」


「おい、始められるか?」


「大丈夫です」

ユータクが返事した。

「では、クーリンさんこちらへどうぞ」


クーリンは透子と場所を入れ替わって、石盤に手を置いた。







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