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46話 ノアキネー村のギルド


透子とクーリンは、村長の家に2~3日滞在させてもらうことになり、陽が暮れるまで村を散策することにした。


・・・ということで、槍と弓の看板を見つけてさっそくギルドにやってきた。


透子はゆっくりとドアを開けた。


中に入るとフロアの右側は掲示板でA4サイズ木の札が並んでいて絵と文字が書かれていた。


左側は丸太の椅子が適当に置かれていて、2人組と5人組がそれぞれ固まって談話していたようだった。


正面にカウンターがあり、受付嬢らしい若いヒューマンの女性と妙齢のクマの女性が座っていた。


トーコは2人と目が合うとヒューマンの女性に会釈して、クマの女性の所に行った。


「えっ? そっち?」

ヒューマンの女性があっけにとられて呟いた。


「こんにちは」

透子はクマのお姉さん?にあいさつした。


「はい、こんにちは、初めてですね。ご用件は何でしょうか?」

クマのお姉さんは聞いた。


「ギルドの登録に来ました。2人です」


「身分証を何かお持ちですか?」


透子とクーリンは顔を見合わせる。

「アリク里からきました、今夜はノアキネー村の村長のお宅に泊まる予定ですが、村長に聞いたら身分証はギルドで作ってもらうほうが良いと言われて来ました」


「あっ! じゃあ、あなた様は! ちょっとお待ちください、ギルド長を呼んでまいります」

クマのお姉さんは慌てて立ち上がって、奥に駆けて行った。


「えっ? あのー」

透子が止めるまでもなく後ろ姿を見送って、取り残されたクーリンと見合って肩をすくめた。




少し待つと奥からドタドタドタとふくよかな体を揺らしながらクマのお姉さんは戻ってきて言った。

「ギルド長がお会いになりますので、奥へどうぞ」


カウンターの脇の通路を案内されて透子とクーリンはフロアから奥の廊下へ出て突き当りのドアの前まできて、お姉さんがノックをすると、中から渋めの声がした。


「入れ」

ドアが開くと横にはヤギ獣人の若い男がいて部屋へ招かれた。

「どうぞ」


部屋の奥中央のデスクには、目の鋭い背の高い中年男が座っており、なぜか鳥のアホ毛みたいなのが頭に刺さっていた。

デスクの前のソファには、ヒューマンのがっちりとした中年になりつつある男が座っており、中に入ると座っていた男たちは立ち上がり言った。


「「ようこそ、」」

「あなたが先程ニールと来た渡来者殿だな?」


「初めまして、トーコです。」

「従者のクーリンです」


「ギルド長のダリーだ」

「副ギルド長のキーボルトだ」

「補佐員のユータクです」


「こちらへどうぞ」

透子とクーリンは示された方に腰を下ろした。


ギルド長がお誕生日席に、キーボルトとユータクは透子達の真向かいに座った。



ダリーがトーコをシゲシゲと見まわしていた。

「なるほど、フクロウどもが闇の渡来者だと期待しただけある黒髪と黒目だな」


「そうですな、これだけ見事な漆黒は滅多にお目にかかれないでしょう。いろいろなギルドを回りましたが黒豹の獣人で会ったことがあるだけで、ヒューマンでは初めてですな」

キ-ボルトが同意する。


「・・・・・・」

透子はまたか、と思って、ゲンナリする。


ユータクがわざとらしく咳をする。

ダリーとキーボルトは顔を見合わせて、ダリーが目線で示すとキーボルトが話はじめた。


「えー、トーコ殿、まずはギルドに登録を希望でしたね。渡来者は元の年齢がいくつであれ、門を渡りし時に15歳として精霊様に加護を授かる。この世界に来て1年を過ぎてなければ15歳である。そしてギルドの正式登録は成人になる16歳からで、11歳以上成人前は見習いの登録になる。見習いの登録は銅ランク以上の伝導者が必要だ。」


「・・・15歳ですか!?(マジっすか!!)ありえない!」

トーコは驚愕した!! なぜなら専門学校3年を卒業して治療院に就職して4年目に入った25歳、成人も成人式なんかとっくに終わった四捨五入すればアラサーとも呼ばれる年齢に差し掛かっていたからだ。


(あー、そうだった。やべー言ってなかったな。精霊様から渡された情報ではトーコは元は25歳の売れ残りだった。)

クーリンは内心冷や汗をかいていた。


「いや、本当だ。過去に来た渡来者たちも15歳になっているそうだ。精霊様の加護によるのだ。火の渡来者ゴロー殿も元は20歳だったそうだが、15歳にもどっていたそうだ。」


「はあぁ、そーですか・・・えーっ?本当に15歳?」

透子は現実逃避しそうな頭を振りかぶって、チラッとクーリンを見た。


クーリンはそろりと透子から距離を取りつつ、首を縦に振った。


「クーリン! 知っていたでしょ!! 何で言わないの?」

透子はガバッとクーリンに向いて鋭く追及した。


「ごっごめん! 忘れていた。この通り」

クーリンはソファの上でひれ伏した。


「むうぅ・・・」

透子は不貞腐れたようにうなった。


「あー、そろそろ話を続けてもよいかな?」

キーボルトが言った。

「だれか、銅ランク以上の伝道者になってもらえる者がいるなら、すぐ登録できるが」


「同ランク以上の伝道者ですか、ニールさんはどうなんですか?」


「ニールは銀ランクだがガーディアンギルドだ。この村にはハンターギルドしか登録はできない。」


「同じギルドでないとダメということですか?」


「そうだ、伝道者はいわゆるギルドにおける師匠で、見習いは弟子というわけだからな、若い者は直ぐ自分を過信したり甘く状況を判断して命を落とす。それを防ぐための制度だ」


「・・・・・・」

透子は無言でうなづく。


「だだし見習いには特例事項がある。精霊様の加護持ちの者は強い大きな魔法を使うことができる可能性が高いため、祠の巫女の試練を達成してオーブを授かれば、正式登録が受けられる。」


「祠の巫女の試練 ですか?」


「そうだ。力が全てとは言わないが、ある程度以上の実力者が年齢が足りないからと言って伝道者から1,2、3と初歩を教わる必要はないだろうということだ」


「そうですね」


「祠の巫女はこの国には3か所、光の巫女と風の巫女と水の巫女がいる。そしてこの村の近くに水の巫女の祠があるのだ。どうする? わざわざ危険なところに行かずとも既に水の精霊の加護を受けているから一年待つか伝道者を見つけるほうが安全だし、嫁入り前のメスがムリすることもないがな」


「そうなんですけどね~、なんかクーリンが滝の精霊様から水の祠に行くように言われたようなんです」

透子はクーリンを見る。


「ええ、そうです。従者になったとき、渡す物があるからに水の巫女に会いに行くように言われました」


「そうか、巫女に会うなら試練を達成しないと会えんぞ」

キーボルトが言う。


「そこを何とか、試練なしで会える方法ありませんか?」

透子が縋るようにギルド長を見た。


「わからんが、ないと思う。聞いた事がない」

ダリーが溜息をつきながら言った。


「じゃあ、明日は、水の祠の試練かな? クーリン」

透子は同意を求めた。


「それは、無理です」

ユータクが遮るように口を挟んだ。


「あー、順番待ちか!」

キーボルトが言う。


「順番待ち? そんなに加護持ちの未成年がいるんですか?」

透子は驚いて言う。


「いや、違う。成年のチャレンジャーだ。水の属性が欲しい者が試練を受けに来るのだ」

キーボルトが言う。


「あー、もしかして試練を達成すると加護が授かるとか?」


「違う、オーブだ。オーブを媒介にして魔力を流すとオーブの属性に変換されてその属性の魔法が使えるようになる。使っているうちに属性の魔法に惹かれて精霊が寄ってきて祝福を与えることがあるようだ」


「そうなんですね、じゃあ、明日は誰かがその水の祠に入る予定ですか?」


「明日というよりも今、入っているパーティーが出てきて、次に入る予約をしているパーティーが入ってでてきたら、入れます。 今、予約をすればですけどね」

ユータクが説明した。


「その祠は1パーティーしかはいれないのですね?」


「そうだ」


「どうする? クーリン?」


「待つしかないんじゃね?」

クーリンは肩をすくめて言った。


「やっぱ、そうなるのね~」


「だねー、それまでの間、いろいろ聞いて情報集めしたらどう?」


「そーだねー、わかった。じゃあ、予約お願いします」


「そうか、じゃあ、仮登録をして次々番の予約を受けようか、ユータク用意して持ってきてくれ」

ダリーが指示した。


「はい」

ユータクが退出し、白い石盤を持って戻ってきた。


「この石盤に手を置いて名前を詠唱しながら魔力を流してもらいます。魔力を流すと現在保持している属性が大きいものから順に色が盤上に現れます。最後まで残るのは最も強い属性の色です。なお犯罪歴がある場合はデスマークが現れ、妖気に侵されているものは色がマーブルになる」


「では、トーコ殿から」


「はい」

透子は石盤の上に手を置いて、『透子』と詠唱して魔力を流し始めた。






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