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44話 ノアキネー村


ノアキネー村は2mくらいの丸太を横繋ぎ合わせた柵に囲まれている集落だった。


入り口には見張りの高台があり、兵士のようなヒグマ獣人がいた。



「よう、ニールじゃないか、休暇は終わりかい」


「おう、そうだ。こちらのお客人の案内とガキどものお守りだよ」


門番の兵士が透子とクーリンをチラッと見た。


「じゃあ、決まりなんでな身分証を見せてくれ」


ニールは身分証を見せながら言った。

「こちらのヒューマンは、領都から通達のあった渡来者のトーコさんだ。カワウソはトーコさんの従者のクーリン。身分証はないのでノアキネー村で発行してもらう予定だ。うちの里長の確認書を発行したそうだ」


「なっ! 渡来者だと!」


「トーコです。こちらがアリク里のホータンさんから預かった確認書です」


「クーリンです。確認書です」


「うむ、見せてもらおう」

門番の兵士が確認書を見ていると、『渡来者』を聞いて詰め所から慌てて出てきたもう一人の兵士に渡した。

その兵士は確認書にサッと目を通すと、駆け出していった。


「そっちの2人は?」


「「はい」」

コークとラータンは身分証を見せた。


「よし、いいぞ・・・ようこそノアキネー村へ、ゆっくり休んでくれ。渡来者と従者の2人は村長が会うだろうから案内するのでちょっと待っててください」


「あ、はい」


「トーコさん、おれたちはギルドの近くの『湖畔の宿』に泊まる。夕食の頃に村長の家にいくから、今後の予定を話そう」


「うん、わかった。どうもありがとう」


「じゃ、あとで!」


「じゃ、あとで!」

コークがニールの真似する。


ラータンがコークを小突く。

「クーちゃん、トーコさん、またあとで!」


「うん」

「じゃね」



「では、お2人は、こちらで休んで待っていてください」

門番は、椅子を出してきた。


「あら、助かるわ、ありがとう」

透子はにっこりと笑った。


「あっ、いえ」

若い門番は平静を装ったが、耳の後ろが赤くなった。


・・・クーリンはジト目で見ていた。




「お待たせしました。村長が会いますので、ご案内します。」

戻って来た兵士、キツネの獣人は言った。


「はい、お願いします」

透子が返事をして、クーリンはペコリを頭を下げた。


キツネの兵士は長く豊かなフサフサしっぽをユッサユッサさせて、先導して歩く。


後ろを行く透子は黄色のような亜麻色のようなしっぽに釘付けである、時々上にある二等辺三角形の耳を

チラ見する。

何となく手がグーパーして指がワキワキし始める。


キツネの兵士は何かを感じて、振り返る。

透子はサッと手を引っ込めてニッコリと笑って、「どうかしましたか?」という。


兵士は首を傾げて「いえ、なんでもないです」という。


兵士が前を向いて歩き始めると、透子はまたしっぽに近寄るようにして、手をワキワキさせていた。


クーリンは透子の服を引っ張って、無言で首を左右に振った。


透子は声を出さずに言った。

「わかってるから!」


クーリンは透子の服引きながら

「ホントに?」

と、怪訝な顔で声を出さずに言った。


「チョットだけなら」

透子は無言で言って腕をしっぽの方に伸ばす。


「ダメだったら!」

クーリンが無言で言って阻止しようと腕に縋りつく。



突然バサッとキツネの兵士は体ごと振り返った。

「何かしてありました?」


「いっいえ、なんでも」

透子は咄嗟に腕を体の後ろに回して、視線をさまよわせた。


クーリンは振り回された腕の反動で滑り、コケそうになっていた。

兵士がそれを見て言った。

「おい、大丈夫か?」


「あっ、なんとか!」


「ちゃんと前向いて歩いたほうがいいぞ」

残念な子を見るように言った。


「・・・・・・」

クーリンはふくれっ面で透子を睨んだ。


透子は素知らぬふりである。




村は、道沿いの両脇に家が適当な間隔を空けて並んでいる。

江戸時代の宿場町が間延びしたような感じだ。

木造平屋の店の何かの絵を描いた看板が並んでいた。


暫く歩くと、兵士が振り返って言った。

「あそこがこの村のギルドだ。槍と弓の看板が見えるだろう。ハンターギルドとそれ以外のギルドの総合窓口がある。身分証は村でも発行するが、定住地が決まってないならギルドに登録するほうがいいと思う。難しいことは村長と相談してくれよ」


「そうなんですね、ありがとう。ちなみに『湖畔の宿』って、どこですか?」


「湖畔の宿なら、ギルドの向かい側から3軒目のところにある、湖と家が書いてある看板の建物だ。」


「もしかしてあれですか?」

透子は指を指して聞く。


「そうだよ」



「あの、あんたは・・・いや、渡来者殿は、闇の精霊の加護持ちか?」


「うふふふ、そう見えます? でも従者は見た通りカワウソのクーリンなんですよ」


「ん?まさか、水の精霊の加護か?」


「当たりです。川の水門を通ってきたようです。あと私の事はトーコと呼んでくださいね」


「そうか、おれは、ギーリクという。よろしく頼む」


「はい、キツネの獣人さん初めて会いました。素敵なしっぽですね、触っていいですか?」


「とっトーコ!」

クーリンがギョとして言う。


「は? いや、触るのは勘弁してくれよ。それに俺のは魔力が少ないから1本しかないんだ」

ビックリして、透子からしっぽを遠ざけるようにして情けなさそうに言った。


「あー、もしかして魔力が多いと本数が増えるんですか?」


「そうだよ、・・・あっそうかキツネ族は俺が初めてなのか」

イラッとして返事した後、思い出したように言った。


「ギーリクさんの属性は何ですか? 色からすると光のような感じですけど、キツネ族さんは夜行性だから闇が多そうだし、火を使うイメージがあります」

透子は好奇心丸出しで聞いた。


「そうなんだよね、俺は()()()でさ光属性なのさ、夜行性のはずなのに金目のせいで夜目が効かないし、キツネ火も使えない出来損ないさ。里にいられなくなって街都市にでて兵士になったとこまでは良かったけど、代官夫人の獣人嫌いで疎まれてここに来たってわけだよ」

ギーリクはやさぐれるように、耳をへたらせて言った。


「あーそうだったのですね。なんかごめんなさい? でもほら私だって黒目黒髪で、闇闇言われたけどね、ほんとは水属性だし、見た目で判断するとか、イヤよねぇ~。 水魔法だってうまく使えなくて失敗が多くてへっぽこだって言われているし、なんか仲間意識感じるわ」

透子は内心しまった!と思いながら、自分を落としてフォローした。


「それは・・・どうも・・・です?」

ギーリクは透子の慰めているのか、どうなのか微妙な言い草に困惑しながら、その気持ちにホッコリした。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



村長の家は道の終点にあり、家の前は広場になっていた。


家の前には、丸い黒耳の中年男性獣人さんがいた。

(ワグマさんにしてはずっと小柄な感じで、垂れ目でなのでタヌキ獣人さんかな?と思ったけど、しっぽが違う。しっぽは短くて白い。形はサツマイモ?のような楕円形っぽい。何の獣人さんなんだろう?)


「ようこそノアキネー村へ、私が村長のトイトイです。あなたがこの地に現れた渡来者殿ですな?」


「初めまして、トーコです。そしてこちらが従者のクーリンです」

透子とクーリンは軽く礼をした。


「それでは、いろいろと聞きたいこともあるし、あなた様も知りたいことがあるでしょう。どうぞ我が家にお入りくだされ。今夜は当家でお泊りになるがよいでしょう」


「ありがとうございます。お世話になります」



中に入ると、広いリビングルームがあり、でかくて長いテーブルがドンと置いてあった。

30人くらいは座れそうだ。

里長さん家のこんな感じだったが、もっと広い。

透子とクーリンは村長に進められるまま、奥の方に固まって座った。


透子はショルダーバッグから皮の巻物を出して村長に渡した。

「これは里長のホータンさんから預かったもので、村長さんに渡すように言われました。」


「そうですか、拝見しよう」

村長は巻物を解いて読み始めた。


奥からメスの獣人さんが飲み物を運んできた。

「ようこそお越しくださいました、トイトイの妻のリンリンと言います。お口に合えばよいのですけど、どうぞ飲んでください」


(この獣人さんも丸い黒耳で、白いしっぽだ。ほんとに何の獣人だろうか? なんか喉のあたりまできて出てこないようなモヤモヤ感だわ)

「ありがとうございます。トーコといいます。お世話になります」


「クーリンです。よろしくです」



「お待たせいたしました。既にいろいろとあったようですな。ホータンの報告書に書いてありました。カイザーミミズクの件は私からもお礼を申し上げます。ありがとうございます。卵の保護は何卒良きなにお願い致す。」


「あ、はい、わかりました」


「しかし、ワイバーンを単独で討伐したとは、たいしたものですな。流石は渡来者殿だ」


「はあ、無我夢中だったのであまり実感ないです」


「そうですかな、ワイバーンの到来は天災のようなものでして、空を飛ぶ者や沢での被害が後を絶たないのですよ、これでしばらく静かになれば願ったりですな」


「そうですか」


「ところでこちらで先に聞きたいと思っていたことは既にホータンが聞いて書いてきましたのでな、トーコ殿でしたな、あなた様が知りたいことに対してお答えしましょう」








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