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42話 獣道

5000文字超えたので切りの良いところで分けて加筆しようかと思いましたが、本筋の進行がかなり遅くなっているのでそのまま分けずに投稿しました。

お楽しみいただけたら嬉しいです。


ノアキネー村に向かって獣道を5人は歩いて行く。


先頭をニール、トーコ、クーリン、ラートン、コークでの順で進む。



ズルッ

「あっ、おっとと・・・・・・ホーッ」


「「「・・・・・・」」」


ニールが後ろの透子をチラッと見て何事もなかった様に前を行く。



しばらく進むと・・・


グザッ、ザー

「うわっ、ああー・・・・・・ホーッ」


「「「・・・・・・」」」


ニールが後ろの透子をチラッと見て何事もなかった様に前を行く。



また少し進むと・・・


ゴツッ、ズー

「えっ、あぁー・・・・・・ホーッ」


「「「・・・・・・」」」


ニールが後ろの透子をチラッと見て何事もなかった様に前を行く。



更にまた進むと・・・


ズズズルルーッ

「おおーっ、っとととと・・・・・・ホーッ」


「「「・・・・・・」」」


ニールが後ろの透子をチラッと見て少し首を傾げながら何事もなかった様に前を行く。


・・・以下同文、繰り返す




「なっなあ、クーちゃん、トーコさんって、普通に歩けないヒューマンなの?」

ラートンは前を行くクーリンにヒソッと声かけた。


「はぁ~・・・・・・」

クーリンは眉間をもみながらため息をついてラートンの方に振り返った。


「なんだかすごいよな!クーちゃん、何度も滑ったりコケたりしながら一回も転んでないぜ」

コークがラートンの肩越しから顔を出して言った。


「・・・まあな」

クーリンは半目で答えた。


ズルッ

「あっ、おっとと・・・・・・ホーッ」


「クーちゃん、ほら、またトーコさん気躓いてフラフラしたけど転ばなかったよ!」


「そうだよな、クーちゃん、あれだけ引っかかってて転ばないのがすごいよな!」


「・・・そうだね」


「ねっねっ、クーちゃん、ヒューマンのメスってみんなあんな感じなの?」


「んなことないだろ、なあクーちゃん、町にいるヒューマンに比べてトーコさんちっこいからさ、1歩が短いから引っかかりやすいんじゃないか?」


「それ言ったら、クーちゃんのほうが背が低いじゃん」


「そこはさ、クーちゃんはトーコさんよりずっとすばしっこいからさ」


「・・・あーそうかもね」



ピタっと、ニールが止まった。

そして後ろを振り返って、透子をジッと見た。


「あ あの、何か?」

ニールの視線を受けて透子は戸惑うように聞いた。


「速いか?」


「えっ?」


「歩くの速いか?」


「いや、それほどでも」


「ほんとか? 速くて歩きにくいんじゃないのか?」


「あーそれは、足場が悪いからね、速さじゃないから~」


「後ろのガキどもが1歩が短いとか言っていたが、大丈夫なのか? 俺は気が利かないから困っているなら遠慮なく言ってくれないか」


「あー、なんか失礼なことズケズケといっていたわよね~ 普通に歩けないヒューマンとか、ちっこいとか短いとか・・・」

透子は後ろの3人を胡乱な目で見た。


「「・・・・・・」」

2人は目をそらした。


「あっあのさ、シールド張ってアイスロードスケート?の氷雪魔法で走ったほうがいいんじゃね? 速いし」

クーリンは話をそらすように言った。


「うーん、白ヤギさんならそれでもいいけど、ヒグマさんはどうかな?・・・私はアイススケートの方がいいけど、走れるのかな? 風属性なら大丈夫そう?」

透子は困惑しながら言った。


「おいおい、どういう意味かな? 俺たちの足が遅いとでもいうのかい?」

「そうだよ、ヒューマンより遅いはずないだろ!」

ニールとコークが不満そうに言った。


「気に障ったらごめんなさい、ヒグマさんが走るのを見た事がないから知らないの、白ヤギさんと比べてどうなんでしょう?」

透子は申し訳なさそうに聞いた。


「俺は風属性だから速いぜ、そうだな風属性じゃないヤギに負けることはないな。俺らは3人とも風属性だが、ラートンより俺の方が速い、というか里で俺より速いのはフータスとビルくらいじゃないのか? 基本的に里を出てガーディアンやハンターをやっている奴は鍛えているから身体能力は高めだぞ」

ニールが言うと、コークがそうそうと言わんばかりに頷いていた。


「そうなのね、じゃあクーリン、そうする?」


「いいんじゃね、爺さんも言ってたけどここなら精霊魔法おおっぴらに使っても大丈夫し、町に行ったらそうもいかないだろ?」


「うん?どうするって? まさか精霊魔法使って走る気か?」

ニールは驚いたように言う。


「そうしようかなぁ~、と思ってまーす」

透子は超かぁるく言った。


「えームリだろ! 俺たち結構速いぜ!」

コークが言う。


「クーちゃんとトーコさんは水属性ですよね? 風属性の走りについて行けるとは思いませんが」

ラートンも言う。


クーリンは指を立てて左右に振りながら言った。

「ち、ち、ち、ち、そうでもないんだよね~、俺、第二属性、実は風なんだ。 里に来る前に爺さんにガッツリ風魔法鍛えられたから、結構速いよ。まっフータスとビルさんにはまだかなわないけどね」


「えっ、そうなんだ! クーちゃんの走り見たいね!」


「ふーん、楽しみだな。クーちゃん、勝負するか!」


「いやいや、ちょっと待て! クーリンが風属性持ちなのはわかった。だけどトーコさんも風属性持っているのか?」


「いえ、ないけど」


「じゃあダメだろう?」


「トーコは氷雪魔法でデコボコの地に氷を張って平にして滑るように走るんだよ、俺と走り比べで里まで来たんだ。かなり速いよ」


「そ、そうなんだ」

「へーあの氷雪魔法で・・・」

「あー広場にあった冷たい滑る坂のやつだよな?」


「じゃあ、そういうことで、行きましょう!」


「いやいや、ちょっと待て!」


「まだ何かあります?」


「俺が先頭で疾走したら、後ろがついてこれなくて見失った!じゃ困るだろう? コークとラートンは村に行ったことがあるので後から来れるだろうが、君たちはそうは行かないだろう?」


「うーん、そうですね、じゃあ私はニールさんについて行くので、クーリンはコークとラートンについて行くってことでどうです?」


「いいんじゃね、魔力切れしたらラートンの背に乗せてもらうよ」


「えーっ? そういうおちなの?」


「ニール兄、取り合えず野営地まで行くってことでいいんじゃないのか?」


「はあぁ、ほんとに走るのか、じゃあおまえらちゃんとクーリンの面倒みるんだぞ」


「「おう」」

「・・・・・・」(面倒って、なんだよ!)


「じゃあ、私が先頭で行くので、ニールさんは後ろから指示を出してください。行きましょう」


「いやいや、ちょっと待て」


「まだ、何かあるんですか?」


「地に氷を張るんだろう? 張った氷はどうなっているんだ? 俺はその氷の上を走るのか?」


「あー、どうします? 私が通り過ぎた後消すことも出来ますし残すことも出来ますけど?」


「・・・そんなことまで出来るのか?」


「残しておいて!氷の上を走ってみたい」


「そうだな!俺も氷の上を走ってみたい」


「いいよー、じゃあちょっとの時間残るようにしておくねー 森に影響がないように溶けるようにするから」


「じゃあ行くね~」

『アイスロード・スケート』

透子が詠唱すると、獣道に沿って白銀の氷道が出現し、颯爽と滑りだして行く。


「「スゲー!!」」

コークとラートンは感動して声をあげ、ニールはボーと見とれていた。


クーリンは無言のまま風を纏い、透子の後を追いかけて行く。


ニールはクーリンが過ぎ去った風で再起動して、慌てて風を纏い追いかけて行く。

「おい、おいていかれたぞ!」


ニールの声でコークとラートンも慌てて風を纏い追いかけはじめた。




「fufufu- nnnnn~ rarara~ fufufu- nnnnn~ rarara~」

透子は調子にのって、ハミングしながらご機嫌で滑走していく。

緩やかな下り坂が、いい具合に楽々とスピードに乗せてくる。


(ひゅー!最高! やっぱスケートよねぇ、もう歩いてるとコケてばっかいるから疲れちゃって、あー良かった楽々 クーリン、ナイス!)




ニールは焦っていた。

トーコは靴の下に氷の刃を付けて見た事もない滑るような走りで氷上を滑走して行くが、ちっとも追いつけないのだ。

むしろ距離が開いていると言っても良いくらいだ。

ニールはガーディアンの中でも瞬足で、緊急伝令を務めるほどなのに追いつける気が全くしないのだ。

氷道が続いているから迷うことはなく追いかけていけばいいのだが、この先の分岐でトーコが間違えたらあさってな方向に行って面倒なことになる。

後ろを見ると、クーリンが少し離れてついてくる。

少年たちは更にもっと後ろだ。

3人とも既に人化を解いて、4つ足で疾走している、ほぼ全力だろう?

緩やかな下りカーブでトーコの姿が消える。

ニールは瞠目して、人化を解いた。

本気の身体強化に突風のブーストをかけて行く。

トップスピードにのせて走りようやくトーコの後ろ姿を視界に捕らえると、咆哮した。


「グウオーウオオーーーン!」



透子は咆哮にビクっとして、振り返ると、カーブのかなり後ろに大ヒグマが怒涛のように爆走してくる。

他の3人は見えない。

(あー、あれ絶対ニールさんだよね? みんなおいてきちゃったか!やべー。怒っているかな? もしかしなくても説教案件だったりして?)

透子は半ターンして停止し、ニールを待った。



ニールはトーコが停止したのを見て、ホッとした。

徐々ペースダウンして、トーコの傍に到着した。


「ニールさん、だよね? お疲れさま」


「はあぁー、ああ、そうだ。」

ニールは獣化を解いた。


「速すぎちゃったみたいだね、後ろ全然気にしないで滑走しちゃったよ! あの咆哮、止めてくれたんだよね?」


「あー、まあそうなんだけど、この先に分岐があるんだけどちょっとわかりにくいんだ。間違えるとあさってな方向に行くからさ、待ってもらいたかったのさ」


「そうなんだ、・・・あっクーリンだ!」


「なんだ、あいつら全然追いついてこないな?」



クーリンが透子の傍にスタッと軽やかに停止した。

「相変わらず速いね! 氷道が残っていたから迷わなかったけどさ、見失ったよ! トーコさ、たまには後ろ振り返った方がよいんじゃね?」


「あははは、やっぱり! ニールさんの咆哮聞いてそう思ったよ」


「うん、俺もそうしてくれると助かるよ。さすがに姿を見失うと引率しているこっちも焦るからさ」


「ごめん、飛ばし過ぎないようにするね」


「ああ、頼むな・・・やれやれ、やっと追いついてきたな」



暫く待つと飛び込むようにコークとラータンがやってきた。

2人は止まるとそのまま座りこんだ。


「はああああー、なにあれ、反則だよあの速さ! ちっとも追いつけなかった!」


「ぜぇーぜぇー、マジはえー、完全に姿見失ったな」


「あはははは、どうだ!すごいだろー 」


「なんだなんだ、情けねえな、お前ら!鍛錬が足りねえな」


「あー、氷が冷たくて気持ちいいー」

ラータンは氷道に顔をつけて寝そべった。


「ぜぇー、マジつめてー、あー喉渇いた」

コークは寝そべって氷を舐めた。


「はいはい、じゃあ『ミネラルウォーター』」

透子は指から少し細めの水を出して、上からコークの顔にかけた。


「うおぉー」

コークは寝そべったまま仰向けになって、飲みほした。


「あっ、ずりぃ! 俺も俺も」

ラータンはコークの隣に寝そべった。


「はいはい、どうぞ」

透子は今度は指を移動してラータンの口の上に水を流した。


「なんだお前ら図々しいな、トーコさんすまんが俺にも頼む」

ニールは背嚢から木カップを取り出して差し出した。


「はい、どうぞ・・・・・・クーリンは?」

透子は面白がって指から水を放流しぱなしのまま、クルクルとしていた。


「・・・あのな! 聞くなよ自分でやるわ」






そうしてしばしの休憩の後、再び氷雪魔法と風魔法で疾走し、予定していた森の野営地よりももっと村に近い村道沿いの野営地に陽が暮れる前に着いた。


その野営地は村と町を繋ぐ商隊の休憩地となっていて、ログハウスのような平屋建ての家が一軒あった。

中は何もなく、1フロアのみでごろ寝する感じになっていた。


里を出る時持たされたサツマイモと前に川で採った魚を焼いて食べながら、軽く談話をした。


夜の帳がおりはじめた頃、ニールさんが夜番の話をしたので、ログハウスの4隅に青の結界石を置いて一休がいつもしていたように『シールドドーム』を詠唱して魔力を流して結界を張った。


「すごいな、これが水の結界か、綺麗だな」


「ガーディアンの仕事では結界は使わないんですか?」


「普段は使わないな、交代で夜番をたてるね。結界石そのものが高価だし、放出系の魔力もかなり必要だから獣人はあまり扱えないんだ。ヒューマンの魔術師がいればできるけどな、一晩中張るなら固定が維持できる土か地の結界だね。火や風の結界は固定を術者が寝ると維持するのが難しいらしいので戦闘中だけとか短い時間だな。本当は水も維持できないはずなんだけどね?」


「あはははは、そうなんですね。この水の結界は固定せずに水を循環させて廻しているんですよ。光の揺らぎがあったでしょう? よく規格外とか言われてます」


「そうなのか?・・・そうだな、本当にそう思うよ」



そしてトーコは人数分のウォーターマットを出現させた。


「おーすげー! うちのベッドより寝こごちいいかも?」


「うわー、ブオンブオンするよ!これ水なんだよね?」


「お湯なんじゃないか? なんとなく暖かいな」


3人には大好評で、やがて5人ともぐっすりと眠った。








いつも読みに来てくださっている方、ありがとうございます。

ブクマしてくださった方、励みになります。

今後もよろしくお願いいたします。

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