33話 討伐報告
神殿の館の前では、多くのミミズクたちが不安な気持ちで姫様の帰りを待ちわびていた。
池に続く回廊から姫様の一行の姿が見えると、安堵の歓声があがった。
「姫様よくご無事で、上空をワイバーンが池の方に飛んで行くのを見たときは、肝を冷やしました」
「ワイバーンの恐ろしい咆哮が聞こえたときには、どうなっているのか?と不安でたまりませんでした。」
「ものすごい地響きがありましたが、あれはいったい何が起きたのでしょうか?」
巫女長を始めとする留守番組が口々に訴え始めていた。
「皆さん、心配かけてごめんなさい。 わたくしは大丈夫よ。」
リーナ姫は神妙に謝罪して、ニコッと笑った。
「「「「姫様・・・・・・」」」」
留守番組が安堵の息を吐き、涙ぐむ者もいた。
リーア姫は一同を見回して、明るく言った。
「皆さん!ワイバーンは討伐されました!! トーコが退治してくれたのです。」
「なっなんと!」
「ほっ本当に?」
「あの、憎きワイバーンを!」
「それでは、あの地響きは?!」
留守番組が口々に戸惑いを載せながら、期待感に言い合う。
「警備隊長イーサ、報告を!」
ルーナが命じた。
「はっ、月見の池に行くと、姫様がヨギリ様と畔の岩のところで、ピクシー精と戯れておりました。捜索隊と合流し、トーコ殿と挨拶を交わしていると、上空にワイバーンが現れました。四方八方に離開しながら姫様を避難させようと森に向かっていたところ、あやつが私共の殿を狙ってきたのです。そこへトーコ殿が精霊魔法『アイシクルカッター』を放しました。魔法はあやつのしっぽに当たり、あやつは咆哮を上げて上空に逃げていきました。そして今度はトーコ殿に向かって行きました。トーコ殿は精霊魔法『レートーショクヒーニジュードトーケ』?を放しました。白銀の帯状魔法があやつを包みこんで光ると上空で停止したまま凍ったのです。そしてそのまま落ちてきました。地響きは地に落下した時の衝撃音です。ワイバーンはカチンコチンに凍って死んでいました。そこにいた全員が確認しています。ワイバーンの死体はトーコ殿が討伐者権利としてマジックバックに回収しています。以上です。」
「「「「「「ほぅー」」」」」」
「すごい!」
「素晴らしい!」
「さすが渡来者ね」
「あやつがとうとうくたばったか」
「やっと、これで安心ね」
「良かった!良かった!」
留守番組が歓声をあげながら喜び合った!
捜索隊組もニコニコしながら、喜びを分かち合っていた。
ルーナが透子の前にきて跪いて、透子の手を取りルーナの額に額づいた。
「トーコ殿、この度はワイバーンの討伐誠にありがとうございました。あのワイバーンは我が同胞を何度も餌にしている憎き敵でありました。これでこの里も落ち着いた暮らしが出来そうです。一同を代表して心より感謝をささげます。」
深く頭を垂れた。
留守番組も捜索隊も皆一斉に跪いて、頭を垂れた。
「えーと、皆さんのお気持ちは受け取りました。なんとか退治出来て私もホッとしています・・・・・・」
ミミズク・フクロウ一同、跪いて頭を垂れたままの状態を継続中・・・
(・・・どっどうしよう? もうこの状況勘弁して欲しい・・・)
一休に助けを求めるように見た。
一休は少し肩をすくめて言った。
「ルーナ殿、トーコは大きな魔法を行使して、大分疲れておるようじゃ、こちらにきてまだ日も浅く精霊魔法になれておらぬのじゃ、休める部屋に案内してもらえるかの?」
「さようでございますか。ワイバーンを倒す程の大いなる魔法、魔力切れもいたしましょう。気づかずに申し訳ございませぬ。すぐにご案内致します。」
ルーナがジーカに目配せして言った。
「どうぞこちらへ・・・お眠りになるのであればベッドルームをご用意いたしますが?」
ジーカが誘導しながら聞いた。
「座って休めれば十分です。ベッドはいらないです。」
「かしこまりました。ご案内いたします」
トーコたちを客室に案内すると、ジーカは聞いた。
「こちらでございます。お疲れ様でございました。ただいま飲み物をお持ちいたします。魔力を使うとおなかがすいたり、甘いものが欲しくなったり致しますが、軽食をご用意いたしましょうか?」
(軽食? ミミズクさんたちの軽食って何? まさが虫の盛り合わせとかじゃないわよね?! やばっ!これは聞かないと駄目なやつだ。迂闊に目にしたくない!)
透子は飼育係が箸でミミズをつまみながら鳥に餌付けしていたのを思い出して、一瞬、皿の上に虫がうにょうにょいるのを想像してしまった。
「軽食って、どんなものですか? ここの皆さんとは食の志向が違うような気がするのですが・・・」
「そうですね、ヒューマン族とは主食は違うかもしれませんが、嗜好品は同じものがございます。果実や木の実、焼き菓子などでございます。盛り合わせてお持ちいたしますので、お口に合うものをお召し上がりいただければよろしかろうとおもいますが・・・」
「あーそうですね、それでお願いします」
透子とクーリンと一休は、果実水を飲みながら、オレンジ色柑橘系と赤色べりー系と黄緑色のミニバナナっぽい果実、数種類のナッツ的な木の実?、ガレットのような見た目のビスコッティのような味の焼き菓子をほおばっていた。
「そういえば、夕食食べてなかったわよねー、やっとありつけたって感じだね~」
「ねぇートーコ、おれ足りない。魚食べたい。バックから出してほしいな。」
クーリンが上目づかいで透子にねだった。
「わしの分も頼む」
「・・・あのね~、よそん家で軽食頂いているというのに、それってどうなの?」
「いいじゃんか、俺たちっしか今いないし、なあ~」
「しょうがないわね・・・」
透子はぶつくさ言いながら、マジックバックにストックしていた魚をドサっとだす。
クーリンと一休が待ってましたとばかりに、食いついた。
「ねぇ、お腹も満たされたことだし、そろそろお暇したいわね」
「お暇?ああ帰りたいって、ことか、爺さんどうなんだろう?」
「ふむ、まだ本題が終わっておらぬな」
「えーもう十分働いたけどねぇ、本題って何だっけ?」
めんどくさそうに透子は言った。
「王の卵がどうとかって話じゃね?」
「あーそうだったね! もうワイバーンですっかり忘れてたよ。・・・さっきの会談で色々言っていたけど、断る方向でいいよね?」
「トーコよ、もし王の卵を預かる話が出たら、預かってみたらどうかの?」
一休が思案するように言った。
「えー、卵なんか持って歩くの大変じゃん! 割れるかもしれないし」
「マジックバックに入れておけばよかろう?」
「生き物は入らないって言ってたよね?」
「卵は別じゃ、孵化が始まる前までは大丈夫じゃ。・・・おそらくそのマジックバックが卵の保管場所として一番安全じゃろう。カイザーミミズク種の保存としては、苦肉の決断になるだろうがの」
「あー卵の冬眠とか孵化とかでもめてたもんね。でもそれって、わたしが関わらなくても良いと思うんだけど・・・・・・ミミズクさんたちで何とかすればいい問題じゃないの?」
「本来はそうなのじゃがの。今までの様子を聞いておると厳しい状況のようじゃ。このままではカイザーミミズク王の種は断絶するかもしれん。 お主はかなり精霊様に好かれているようじゃ。そして独特な魔法を使うであろう? 今はできなくても預かっておればいづれその卵を孵すことができるような気がするのじゃ。 そしてそれは滅びつつあるカイザーミミズクの未来を繋ぐことになるであろう。さすればお主自身の力となっていつかお主を助けることになるかもしれぬと思うのじゃ。・・・無理にとは言わんがの」
「んー、それは年の功ってやつだね。・・・わかった、いいよ。マジックバックに入るなら卵を預かっても。但しその話が向こうから依頼があればね。・・・それ以外はお断りの方向で、約束通り夜明け前にはアリク里に戻れるようにフクロウの長老たちと話さないとね」
「それでよかろう」
「それでいいんじゃね」
【未来のつぶやき】
7・8月と投稿数が中弛みとコンサートの遠征で少なかったため、9月は挽回しつつ3の倍数日(3・6・9・12・15・18・21・24・27・30)投稿にチャレンジ中です♪
プロット的にはアリク里は3話くらいカイザーミミズク王の卵は2話くらいの予定でしたが、書いているうちにどんどん内容が長くなってしまいまだ抜け出せない・・・36話あたりかな?
次のノアキネー村のネタが吐き出したくて詰まってきているので、ちょこちょこっとPCだけでなくタブレットでも書いて投稿速度を上げられえればいいなと思っています。
ただし、ある日突然失速するかもしれないです。
☆いつも読みに来てくださる方、ブクマして下さつた方、ありがとうございます。




