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32話 初討伐?


透子が放った冷凍食品マイナス20度の氷雪魔法は白い螺旋帯のようにワイバーンに向かっていき、その巨体を包み込んで白銀の輝きを太陽のフレアの如く光放った。



『 カ ッ チ ー ン 』



ワイバーンはそこだけ時が止まったかのように、固まった。


やがて


再び時が流れだすと、巨大な体がゆっくりと傾き固まった状態で落下し始めた。



「ワイバーンが墜ちてくるぞ!」


「墜落の衝撃に備えろぉー!」


「落下点から離れろ!」


「逃げろぉー」


「木が倒れるぞ!」


「よけろー」



『 バキ バキ バキ バキッ! ド ッ ダ ー ァ ー ン!! 』


ワイバーンは木々を薙ぎ倒しなから、地に伏した。




「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」


「・・・・・・死んだ?」


「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」


「・・・・・・死んだ?」


「おそらく?」


「・・・・・・やったか?」


「たぶん?」


「確認しろー」


「はっ!」


警備隊の斥候が、ワイバーンを確認しに向かった。



「しっ死んでいます!」


「本当か?」


「本当です!  死んでいます!」


「間違いないか?」


「間違いありません。 カチンコチンに固まっています!」



「「「「「 ヤ ッ タ ァ ー ♪ 」」」」」



森の木々に隠れた、ミミズクやフクロウ達が歓声をあげなから、ワラワラと這い出てきた。


ワイバーンの周りに集まってきた。



ワイバーンは、透子の冷凍食品マイナス20度の氷雪魔法魔法でカチンコチンに凍結して、冷凍マグロのように白い霜を纏わせながら冷気を放っていた。



透子は、体の中からゴッソリと何かが抜け出したような脱力感にとらわれて、ゆっくりと膝をついてしゃがみ込んでいた。


「大丈夫かの?」

一休が声をかけた。


「うっうん、なんとか・・・力がゴソっと抜けた感じだけど」


「あれだけの威力のある上位魔法を放つたのじゃ、急激に魔力が減ったからじゃろうて、しかし一発で仕留めるとは...良くやったのう!! 無理せず休むがよい」



「トーコ、大丈夫か?」

クーリンも心配そうに覗き込む。


「うん、少し座っていれば大丈夫と思う」



カーナが近づいて、透子の傍で跪いた。

「この度は、あの憎きワイバーンを退治してくださり一同のものを代表してお礼申し上げます。誠にありがとうございました。」

拝礼するように頭を下げた。


これを見た他のミミズクやフクロウたちも、次々に透子に向かって跪いて頭をたれた。


透子は何となくいこごちが悪いような居たたまれないような気分になり、慌てて言った。

「皆さん、頭を上げてください。皆さんが無事で良かったです。姫様も見つかりました。問題がなければ少し休んで戻りましょう。カーナさん確認をお願いします。」


「本当にありがとうございました。お疲れでしょう。少しお待ちくださいませ。」

カーナが再度お礼を言いながら立ち上がって、他のものに指示をはじめた。


向こう側から姫とヨギリ様がイーサと警備員を従えてやってきた。


「トーコ、ワイバーンを退治してくれてありがとう」

リーナ姫がお礼を言った。


「どういたしまして! 無事で良かったわ」


「トーコ、ありがとう。姫を守ってくれて。我の加護を与えよう」

ヨギリ様が言うと、青ベースに黒が混じったミストシャワーがキラキラと月明りに反射しながら降り注いだ。


(ん?スパーニ様の時は青ベースに赤が混じっていたなぁ、青ベースに黒って何だろう?ヨギリ様って何の精霊?)

透子は加護を受けながら漠然と思っていた。


ヨギリ様は一休とクーリンを見た。

「その方らは、トーコの連れか?」


「そうです。従者のクーリンです。」

「一休じゃ。」

クーリンは慌てて礼をし、一休は飄々と返した。


「水の眷属だな。よし、おまけじゃ祝福しておこう」

再びミストシャワーが、透子の時よりも薄っすらと軽く、クーリンと一休に降り注いだ。


「ありがとうございます?」

「「ありがとうございます」」


「良かったわね」

「ホントに良かった」

「これで闇魔法が使えるのではないか?」


「えっ?」

透子はびっくりして、闇魔法発言の方を見た。


見られた3人はきょとん?とした顔をした。


透子はヨギリ様を見て言った。

「つかぬ事をお伺いしますが、あなた様は何の精霊様ですか?」


一同はギョとした顔をした。

クーリンと一休は、あちゃ~とした顔をした。

そして、ヨギリ様は、ブー垂れた顔をした。


カーナが慌ててきて、説明しはじめた。

「ヨギリ様は、霧の精霊様でございます。この地を霧で包み我らミミズク族をお守り頂いているのです。霧魔法は水の精霊魔法の派生型ですが、ヨギリ様の場合は特に夜にその御力を発揮する闇の魔力が混在するため、祝福を受けたものはわずかながら闇魔法も使えるようになるのです。」


(あー、なんかわかったわ。ヨギリ様って、夜霧の精霊様か。まんまじゃないか? イントネーションがビミョーに違うから気付かなかったわ。)

「カーナさん、よくわかりました。ヨギリ様、気づかなかくてごめんなさい?」

透子は困惑したように言った。

(それにしても闇魔法か、まいったな。どうしよう?)



夜霧の精霊は自分が知られていなかったショックの上、透子の困惑を感じ取って、いじけていた。

何故ならば精霊の加護は喜ばれてこそ、困惑されるような事はないからである。


「ヨギリ様、ヨギリ様、トーコはね来たばかりの渡来者だから知らないだけなの。知らないから戸惑っているのよ、知らないことはこれからしれば良いのよ。ここのみんなはヨギリ様の事が大好きなの。わたくしもとっても大好きよ! トーコもトーコの連れのものもこれから好きになるから大丈夫なの、そうでしょう?」

リーア姫は、夜霧の精霊様を慰めて、ニッコリ笑った。


透子と一休とクーリンは、まだ幼い雛ミミズクの姫にかばわれて、居たたまれない気持ちで、首を縦に何度も降って同意した。


「姫・・・」

ヨギリ様は感極まった様子で、リーア姫を見つめていた。




「トーコ殿、あのワイバーンはどうなさいますか?」

イーサが聞いた。


「どう、とは?」


「討伐した獲物は討伐者に所有権がございます。解体するなり、そのままお持ちになるかどうしますか?」


「ええっ? 解体は無理!できないから。そのまま、持っていけないし。・・・てか、ワイバーンなんて持って行ってどうするのよ」


「ワイバーンは肉もうまいし、骨や皮は武器や道具の素材になるし、いい値段で売れるらしいよ」

クーリンが言った。


「あーそうなんだ。でも、マジックバッグに入れるのは無理じゃない。」


「なぜじゃ? そのマジックバッグは無制限じゃろ?」

一休が言う。


「だからバックの口に入らないでしょうが!」

(見てわからんのか)と、透子は半ギレで言う。


「ん? ワイバーンに触れて魔力を流して、『入れ』とか『収納』とかの詠唱でマジックバッグの中にいれることができるはずだがの?」

一休があきれたように言う。


「えっ? そうなの? そういうことは早く教えておいてよ!」


「・・・やはり知らなかったのか・・・」

胡乱な目で一休はクーリンを見た。


クーリンは(しまった!)と、思って、視線をそらした。


「あのー、それで、お持ち帰りになりますか? あのまま放置しておくのはまずいのですが・・・」

イーサが申し訳なさそうに聞いた。


「お持ち帰りになりたいですけど・・・ちょっと、マジックバックに入るか? やってみます」

透子は立ち上がってワイバーンに近づいた。


(でかっ! 何メートル或るだろう?翼を広げたままだからか、大きく見える。)

透子が指で触れると、ヒヤッと冷たかった。


『ワイバーン収納』

透子が魔力を流して詠唱すると、ワイバーンはマジックバックに吸い込まれるようにその巨体の輪郭を崩して収縮し吸収されていった。


「「「「「「おおおぉー」」」」」」

その様子を見ていた一同から、感嘆のこえが上がった。


跡地は、ワイバーンになぎ倒された木々が散乱していた。




「それでは、皆様戻りましょう」

カーナの声で、一同は帰路についた。


透子も一休・クーリンと共に一同について行く、月見の池を後にする。

数歩歩いて後ろ髪を引かれるように振り返った。


夜空の月と池の月が合わせ鏡のように絵画の風景を映し出して、静粛な佇まいを魅せていた。







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