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30話 会談


透子の「帰りましょう」発言に、巫女たちは仰天した!


「どういうことですか? あなたはこの神殿に滞在するために来たのではないですか?」

カーナが狼狽して透子に聞いた。


「違いますよ」

透子は冷ややかに返す。


「「「「「「・・・・・・・・」」」」

4人の巫女は顔を見合わせた。


「「「「どういうことです!?」」」」

フクロウの長老たちを見た。


「「「・・・・・・」」」

長老たちは口をパクパクするが、巫女たちの勢いに恐れをなして、返答することができない。


「でっでは、何しに来たのですか?」

カーナが透子を見て聞いた。


「何かしに来たのではなく、アリク里で話し合いの最中に、ダーというフクロウに問答無用で拉致されて、ここに連れてこられただけです。」


「「「「「「・・・・・・・・」」」」

4人の巫女は顔を見合わせて、ダーを見た。


「「どうゆうことです??」」

カーナとジーカが冷たい視線でダーに追及する。


ダーは、顔面蒼白で口をパクパクするが、答えられない。


「フクロウどもは誘拐犯じゃな!」

一休が爆弾を投下した。


「「「「「「・・・・・・・・」」」」

4人の巫女は顔を見合わせて、絶句した。



警備隊長のイーサがいち早く復活して言う。

「あっあなた方はとても誘拐されてきたようには見えなかった。何か誤解があるのでは?」


「誤解があるのは、巫女であるあなた方です。フクロウたちの話をしっかり聞いたらどうです?」

透子は言う。


「しっかり聞いたとも!」

イーサが即座に返す。


「では、何と言ってましたか?」

透子は4人の巫女に目線を合わせて問う。


「此度の渡来者は闇の精霊の加護持ちではなかった。」

視線で問われたルーナが答えた。


「それで」

透子がカーナに問う。


「代わりにトーコさん貴女をつれてきた」

カーナが答える。


「私は代わりではありません。拉致されたと言いましたよ。私が大人しくフクロウたちに付いてここまで来たのは、話が終われば危害を加えることもなくアリク里に安全に返すとダーが約束したからです。つまりこの神殿に滞在する予定はありません」


「・・・・・・」

カーナは驚いて黙り込む。


「だが、あなたは闇の精霊の祝音か祝福持ちだろう? 卵の孵化の話は長老たちから聞いていないのか」

イーサが苛立つように聞く。


「里でカイザーミミズクの卵の話は聞きました。だけど、私が闇の精霊の祝音か祝福持ちだと、だれがいいましたか? フクロウたちが言いましたか? よく思い出してください。」

透子はジーカを見て、ルーナに視線を移す。


巫女たちはフクロウたちを見ると、3羽とも首を横に振る。

巫女たちは視線を漂わせながら、思い返すようにルーナを見た。


ルーナは思い出して顔面蒼白になり冷や汗をかいていた。

「まさかと思うけど、トーコさん貴女、もしかしてだけど・・・精霊魔法の属性は闇ではない・・・とか・・・そんんなことないわよね?」


「・・・なぜです? フクロウたちが渡来者を探していたことは、依頼者であるあなた方は知っていたはずですよね? そしてアリク里に滞在する渡来者を見つけたが闇ではなかった。

里で属性が違うこと理由に断られたフクロウたちは、あきらめきれずに拉致した。

もうおわかりですよね?

そう、私がその渡来者です。

では、属性は?

渡来者には同眷属の従者が付く・・・ということは、ご存じですか? クーリンと一休がその従者です。

さあ、私の属性は何ですか?」

4人の巫女を一人一人見て説きながら、最後にルーナに問いた。


「・・・・・・水ですか!?」

ルーナはカワウソとカメを見て、残念そうに答えた。


「そうです。 つまりあなた方が勝手に闇だと誤解した、ということです・・・では、フクロウの皆さん、話は終わったので、そろそろ里に帰りましょうか?」

透子は切り上げようとした。


「お待ちください! あなたが水の渡来者様なのはわかりました。ですが、闇の祝音か祝福持ちでもありますよね?」

カーナが食い下がる。


「そっそうですよ、なによりもその黒目黒髪が語っています。」

ジーカも慌てて言う。


透子はまたかと疲れたように言った。

「闇魔法はありませんよ・・・水と氷雪魔法です。 私が生まれ育った国のほとんどの人・・・ヒューマンは黒目黒髪です。そして魔法が存在しない世界でした。 こちらにきて初めて水の精霊様に出会って魔法が使えるようになりましたから」


「「「「・・・・・・」」」」

巫女たちは落胆したように絶句した。


「では、納得していただけたようなので、帰りましょう!」

透子は立ち上がりかけた。


「まっ待ってくだされ、まだ話は終わってはおらぬ」

ダーが言った。


「そうじゃ、巫女長様、王の卵を時が来るまでトーコ殿のお預けしたらどうじゃろう」

ローが提案する。


「ツーサ様がお亡くなりになり、地魔法で冬眠を維持するのは困難になりつつあります。キーサ様お一人では、いずれ枯渇する。後任は未だに土魔法。ヨギリ様の保護があるとはいえ、厳しい状況です。」

マーが言った、


「そんなことは、言われずともわかっています」

カーナが返した。


「わしらも闇魔法を提供することはやぶさかではござらんが、先程、トーコ殿の蓄光石に込める氷雪魔法をみたが、そのパワーは我らは足元にも及ばず。流石に渡来者は規格外じゃ。氷魔法で冬眠を維持していただくほうが安全に守られるであろう?」

ダーが問いかけていく。


(・・・あー、ひょっとしてコールドスリープ?ってやつかな?)

透子は卵の冬眠の話を聞いて思った。



巫女たちとフクロウの長老たちは、王の卵の事で、ああでもない、こうでもない、と言い始めて、透子達がゲンナリし始めた頃、にわかに廊下が騒がしくなってきた。



『バサバサッ・・・』

「・・・・・・さまぁ~」


『バサバサッ、バサバサッ・・・』

「あちらを探せ」


『バサバサッ・・・』

「・・・さまぁ~」


『バサバサッ、バサバサッ・・・』

「こちらにはいらっしゃいません!」


『バサバサッ・・・』

「姫さまー」


『バサバサッ、バサバサッ・・・』

「向こう側はどうなった?」


『バサバサッ、バサバサッ・・・』

「おいでになりません!」


『バサバサッ・・・』

「姫さまー、姫さまー」


『バサバサッ、バサバサッ・・・』

「この奥は見たのか?」


『バサバサッ・・・』

「あっ! こちらの奥は・・・」


『バサバサッ、バサバサッ、バサバサッ・・・』



廊下の騒がしさが近づいてくると、警備隊長のイーサが立ち上がった。

「見てまいります」


イーサが扉を開けると、ミミズクの警備員と侍女がいた。


「何事だ! 今、ここでは重要な話をしているのだぞ!」


「はっ、申し訳ございません。姫様が先程から姿がなく行方不明です。」

「・・・ほんの少し目を離したときに、いなくなったのです! 申し訳ございません。」


「何?! 館内にいないのか?」


「捜索中です! ただ今、手の空いてる者でお探ししている状況です!」


『バサバサッ、バサバサッ・・・』

「・・・館内にはおられないようです! 」


『バサバサッ・・・』

「大変です! 中庭にヨギリ様の気配が強くあります」


「何?! 姫様は外に出られたのではないか?」


「すぐ確認いたせ、跡を追いかけろ!」


「はっ、捜索隊を出します」

『バサバサッ、バサバサッ・・・』


「イーサ、姫様が外に出られたのか?」

事務長ジーカが聞いた。


「ヨギリ様に呼ばれたのかもしれぬ。森の中であればよいのだが・・・」

巫女長ルーナが言った。


「今宵は月明りが満ちております。月見の池に行ってないであろうか?心配です。」

巫女副長カーナが不安そうに言った。


「あやつが現れるかもしれぬ、池にも捜索に向かわせます。」

イーサが退出した。

『バサバサッ、バサバサッ・・・』

『バサバサッ、バサバサッ・・・』

『バサバサッ、バサバサッ・・・』




急にあわただしくなり、羽音が去って行くと妙な沈黙が場を漂わせていた。


巫女たちはソワソワして、フクロウ長老たちは不安そうな困惑的な表情をしていた。


「あのー、姫様って、カイザーミミズクの王族の方ですか?」

透子は沈黙を破って聞いた。


「そうです。カイザーミミズクの王妹の姫様です。」


「王様の妹さんは生き残っていたのですね?」


「いいえ、レーア様、王妹殿下は卵を守って亡くなられました。姫様はレーア様の忘れ形見でございます。」


「・・・姫様のお父様は?」


「王の側近でありましたので、王の盾となり王を守って最後を迎えられたと聞いております。」


「じゃあ、もしかしてその姫様だけがカイザーミミズク王家の生き残りとか?」


「さようでございます」


「ちょっと、のんきにこんなところで座っている場合じゃないんじゃないの? 姫様探さないと!」


「そうなのです!!」


「そうなのですって? なんでさっさと探しにいかないのよ?」


「姫様は心配じゃが、トーコ殿を放っておくわけにはいかないゆえ・・・」

ダーがすまなそうに言う。


「じゃあ、みんなで探しに行こう!」


「「「「「「えっ?」」」」」」


「えっ? じゃない! ほら立った立った。行くよ」


「「「「「「・・・・・・」」」」」」


巫女たちと長老たちは、顔を見合わせて戸惑いながら座を立ち、管内では透子にせかされて、外に出ると次第に自ら姫の捜索に率先していた。


一休はバックのポケットに入ったまま、成り行きを見守り、クーリンは何かをあきらめた顔で透子について行った。








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