3話 透子改めトロ子と勝手に命名されたが承諾してないから
川沿いの雑木林を、透子とコツメカワウソのクーリンは進んでいく。
透子 木の根につまずき、コケそうになる。
(危なィ!・・・・・・セーフセーフ?)
クーリン・・・・・チラッと見る
少し行くと、透子 バレーボール大の石につまずく。
(ヤバッ!・・・・・セーフセーフ?)
クーリン・・・・・チラッと見る
しばらく歩くと、木の実を踏んづけて足がすべる。
(おっおーっと・・・・・フゥーと! 後ろに倒れかかった体勢をどうにか気合で前に重心を戻す)
クーリン・・・・・チラッと見て、立ち止まって首を傾ける
再び歩きを再開
木の根につまずき、コケそうになる。
(危なィ!・・・・・・何とかセーフ?)
クーリン・・・・・チラッと見る
歩き再開
ラグビーボール大の小岩に足を取られる。
(ゲッ!・・・・・ハァーっ、今度こそ転ぶかと思った!)
クーリン・・・・・チラッと見て、立ち止まって呆れたように肩を下ろす
更に進んで行くと、踏んだ小枝の先が遠心力で跳ね上がり、反対足のスネを打つ。
(いってぇー!)
あまりの痛さに蹲る。
(ズキズキする~ 泣きそう)
「クーリン、クーリン、クーリンってば! 速いよ! ちょっと待ってよ!」
「・・・・・」
「クーリン、ちょっと休憩、休憩しよう」
蹲ったまま懇願した。
数メートル先行していたクーリンはやれやれという仕草で透子の近くまで戻る。
「あのさ~透子って、ホントはトロ子って言うだろう? こういっちゃなんだけどさ、こんなにどんくさいやつ初めて見たよ!」
「イヤ!転んでないから!! ちょっと軽くコケただけだから!!」
「・・・軽くって、何回コケてるのさ? コケ過ぎだろ! よく転ばないな!」
「反射神経だけは昔からよいんだよね! 運動神経は全然ダメなんだけど、反射神経のおかげで大怪我はしたことないんだよね。かすり傷はいつの間にか増えてるけどね~」
「人族はそんなに長い足してるんだから、普通は楽々乗り越えて行くはずなんだけどな??」
「足が長いなんて、・・・・・ありがとう♪」
「・・・褒めてないから~・・・ってか、トロ子は足短いんじゃね??」
「・・・酷い!!・・・・・それにトロ子じゃないから!!」
「・・・すこし待ってろ!」
クーリンは、林の中を走り去っていく。
(木漏れ日はなんとなくヒーリングだけど、日が暮れたら怖いわ。クーリン早く戻ってこないかなぁ。今夜どうなるんだろう?人里までたどり着けるのかな?)
「ガサッ」
「ヒッ!」
「ザッザッ」
「ウ・・」
「シューシュー」
(へっへび!! )
草むらから蛇が鎌首を上げて威嚇する。
座り込んだままの状態で固まる。
サァーッ・・シュタッ・・ガブッ!・・ブンブン・・ブンブン・・ブウンブウン・・コロン・・ペタン・・ピクピク・・ピクピク・・タン・・・
颯爽とクーリンが現れて、蛇の喉元に噛み付いて左右上下にふりまわし、蛇の頭が地におちて、体と尻尾はくねくねしていたが力尽きた。
「・・・クーリン!スゴイッ!かっこいい!!」
「大丈夫だった?」
「うんうん、怖かったよー」
クーリンに抱きつく、一人で心細かったこともあって半べそになった。
「トロ子、この蛇どうする?もって行く?」
「えっ、これ?」
「食べてもいいけど、うまくない。魚や貝のほうがいい」
「・・・食べれるのか? あ~なんか沖縄じゃへび料理いろいろあったかも」
「人族も森で狩りして蛇を採るが、食べずに持ち帰る。薬の材料にするらしい。」
「あ~あったね、そういえば薬や酒になってたわ」
「じゃあ持って行きなよ」
「え~いやいや・・・でもね」
「でもって、なんだよ」
「・・・蛇が材料になるのはわかるけど、どうすればいいか知らない。」
「・・・人族は狩りした物をお金に交換する。お金があるといろいろな物と交換できると聞いている。他の種族は物と物で交換するが、人族はお金がないと困るそうだ。トロ子はお金持っているのか?」
「・・・・・持ってません、たぶん?」
「たぶんって?」
「クーリンは私が水門を通ってこの世界に来た別の世界の人であることを知っている?」
「ウンディーネ様に召喚された時、透子と人族の情報とコミニュケーションスキルを加護としてもらったからしってるよ」
「今、私が持っているのは、私がいた世界のものでこの世界のものはない。お金もあるけどこの世界で使えるかわからない、たぶん無理だと思う。」
「そうだね、俺達は必要ないけど、人族はあればあるほどよいと聞いている。お金ゼロじゃやばくないのか?」
「ヤバイです・・・・・」
「じゃ、蛇持って行けよ」
「・・・・・」
ちらっと蛇の死体見る。
「お金必要だろ?」
「うー・・・」
もう一度チラッと見る。
「・・・なんかさ、俺が狩ってやったのに失礼じゃね!?」
「分かりました!分かりました。持っていきます、持っていきますよ!!」
「じゃさっさっと、そのバッグに入れろよ」
「・・・」
なんとなく仕方なさげに、ショルダーバッグをあける。
(流石に直に入れるのは無理だから、なんか袋がいるね。コンビニの袋あったかな?・・・あいかわらず白くモヤっているから見えない・・・・・呼んでみるか。)
「コンビニのビニール袋」
現れない
「・・・・・」
(あれっ? 入ってなかったっけ? イヤ雨が降りそうだったから、濡れたものように2~3枚ビニ袋いれたはず。 あっ!!もっと具体的に示せってやつ? ビニ袋のサイズなんか覚えてないわ。適当にストックからもってきたしな。しょうがない。サイズ別に呼んでみるか。)
「ビニール袋L」
現れる、掴んで取り出す。
「・・・初めてみるな、その白い袋。だいぶ薄いが大丈夫か?」
「・・・」
(あーもしかしなくても、ビニール存在しない?・・・ということは蛇を売る時ビニールは出したらダメか)
「クーリン頼みがあるんだけど」
「何?」
「蛇を包むの何かないかな?」
「葉でいい」
「は?」
「だから、葉だよ」
木の葉を指す
「あそこに大きい葉があるだろう」
「あーはいはい、葉・・・ね、いいよ葉で、2~3枚落とせる?」
クーリンが枝から大葉をかじって落とす。
「ありがとう・・・ついでにその蛇を咥えて葉の上に置いて」
「・・・自分で置けばいいだろう?」
「・・・触るの無理」
「しょうがないなぁ」
クーリンは蛇を喰らえて葉上に置く
透子は葉を重ねてずりらして面積を広げて蛇がはみ出さないよに包む。それからビニ袋に入れて、ショルダーバッグに閉まった。
「ほら、トロ子」
クーリンが姫リンゴに似た果実を渡す。
「ありがとう、どうしたのこれ」
「見かけたので採ってきた、甘くて汁がうまいよ」
クーリンが採ってきた果実はほんとに姫りんごのような見た目で噛むと梨のようなジューシー感だった。
次から次へと運んできて、クーリンと3つずつ食べてもまだ10個残っていた。
「そのバッグに入れて持って行ってよ。それマジックバックだろ?」
「マジックバッグって?」
「ウンディーネ様が人族はマジックバッグを作る人がいて、中に魔法が施されていて中の物が入れた時の状態のままに保ち重さもかからないと聞く。山や森に入る人族がもっているのを見たことがある。
特に門渡り人の持つバッグは機能がこの世界のモノより良いそうだ。多く入るし何か付加付きだそうだ。」
「へーえぇ、そうなんだ。これマジックバッグっていうんだね」
果実をショルダーバッグにしまう。
「トロ子、そろそろ行こう。」
「うん」
何度も何度も躓いたりコケそうになったり、小枝で傷を増やしながら、何故か一度も転ぶことは無く、川沿い岸辺を歩いたり雑木林を歩いたりして人里を目指して進んでいく。
「・・・・・クーリン!クーリン!、ちょっと早いよ!休もうよ!」
「・・・・・」
「ねぇねえクーリンってば!!」
「・・・・・」
「なんでそんなに急いでるの?・・・もうくたびれたよ」
(ホント・・・もうホントに都会っ子なんだから・・・こんな大自然の中歩くの、中学校の林間学校以来ないから~・・・スニーカーで良かったわ、靴ずれか足豆できそうだわ~)
「この先をもう少しずっと行ったところに洞窟がある。日が沈むまでにたどりつかないと、野宿になる、夜は危険が多いから木の枝上で寝るか川中で寝ることになるけど・・・」
「!!??・・・・川中で寝るの不可能だし・・・」
「地面で寝るのはやめたほうがよいよ。夜行性の地属性の何かに捕食されるかもしれないよ。」
「地属性の何か?って何???ちょっと怖いんだけど!」
「だから、獣とか、蟲とか、植物とか・・・いろいろだよ」
「俺もトロ子も水属性の加護だから、水のあるところのほうが安全だよ。特にこの川はウンディーネのタッキー様の領域だからさ。」
(ぶぶっ!! タッキーって!某J事務所のアイドルみたいじゃん!)
「ウンディーネ様って名前あったんだね?」
「ウンディーネ様は、何人かいるから名前ないと判りにくい」
「ふーん、なるほどね、・・・・・まさか滝つぼにいるからタッキーとか?」
(うわっっ・・・自分で言って寒いわ!)
「・・・どうだろ?初めてあったからわからない、ただ名前は水の精霊王さまがつけたらしいよ」
「そうなんだね・・・」
「・・・・・・」
「洞窟ならあの辺にもあるじゃん、ダメなの?」
「ちょっと休むくらいならいいけどさ、寝れないね。寝たら死ぬかも?水ないし・・・」
「・・・その洞窟は、水があるの?」
「そうだよ。俺らのような両性モンのねぐらだよ。加護があれば襲われないから寝ても大丈夫」
「わかったよ・・・でもちょっとだけでいいから、休憩たのむよ」
「しょうがないなぁ、ほんとに少しだけだよ、もう陽が傾きはじめているから~」