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25話 温泉と精霊


温泉とは何ぞや? という説明を3人の中で一番理知的なウサギ獣人のビルさんがマックさんに説明していた。

3人の中でリーダー格は一番ガタイが大きいエルトさんで交渉ごとのまとめ役でもある。

マックさんはちょっとオラオラな感じがある脳筋らしいが、マイハニーに頭があがらないそうだ。

もう少ししたらベビーが生まれるのを楽しみにしている新婚さんだ。


スパーニ様は、ずっとこの山の温泉水脈にいるらしい。

里の住人が見つけてくれるのを期待して、誰かに合うといつもウロウロして、去っていくとガッカリしていたそうだ。

驚いたことにスパーニ様が精霊になって、獣人やヒューマンに会えて祝福したのは初めてでとてもうれしいと言っていた。

昔、誰にも気づいてもらえなくて、たまたま山の中の温泉に浸かっていた獣人ではない獣の子ザルと目が合ったときにうれしくて祝福をしたら、子ザルの何かが変わってしまい、群れから追い出されて死んでしまったそうだ。

それから、ずっーとずっと獣人の里の近くで見つけてくれるのを待ってたそうだ。




「クマの獣人かタヌキの獣人に気づいてもらおうとアプローチしていたけど、子供がこないから厳しいな、と思っていたのよ。 大人は既に祝福持ちでしょ! 主属性以外は反応鈍くなるからね~  まさか、ヒューマンに見つけてもらうとは思わなかったわよ。まあ、渡来者で同じ系統の加護持ちだからラッキーだったなって思う。 おかげで5人も祝福できるなんてね!」


「あー、クマとタヌキは温泉に浸かっているイメージありますもんねぇ」

透子が言う。


「えー、そうなのか?」

クーリンが聞く。


「いやー この世界はわかんないけど、前の世界では温泉入ってた気がする、見た事ないけど、聞いたことあるかな?」(TVで見たかも?)


「ふーん、そうなんだ」


「でも、温泉ったらやっぱヒューマンでしょ! なんでヒューマンのとこ行かなかったの?」

透子がスパーニに聞く。


「えっ? なんで? 見たことないけど」

クーリンが言った。


「はっ? ヒューマン温泉入るよね?」

透子が聞き返す。


「そうねえ~ 小屋になっているところでキコリやハンターが入っているのは見たことあるけどね、あとはドワーフかな? ヒューマンは平野にいて山にはほとんどいないから合う機会がないわね。」


「えー温泉大好きだけどね。ここにくる前はよく友達と温泉旅行に行ったよ。露天風呂とかよかったよ」


「はぁ? メスのヒューマンが裸で露天風呂はないだろ? 獣人だってメスは露天風呂入らないぞ」

エルトがビックリして言う。


「そうだ!メスが裸でいいのは、体毛があるガキのうちだけだ! 妻の裸を見ていいのは俺だけだ!」

微妙に違う方向に行くマック。


「トーコさんは大人になったばかりだから。子供のときの話だろう?」

ビルがさりげなくフォローした。


「えっ? そういうわけでもないんですけどね?」

(えー、大人になったばかりって? 私いくつに見えているんだろう? 日本人若く見えるっていうけどね・・・・・・)




「ところでだね、話を戻すのだが、われらがここにいるのは、里の水不足をここの湧水で補いたいからなのだが、この壁の湧水の出所をスパーニ様教えていただけないだろうか」


「いいわよ!」


「「「おおー ありがとうございます!」」」


「で、どこですか?」


「んー あそこよ!」


「あー、だいたい合ってたね」

透子が言った。


「ああ」

クーリンが追従した


「高さがあるな、背が足りないな」

エルトが言う。


「クーリン飛ぶ? 放り投げようか?」

透子が手をワキワキさせながら言う。


「おい! やめろよな、木の枝がないとこは無理」

クーリンがあとずさる。


「なんでカワウソが飛ぶんだ?」

マックが聞く。


「クーリンね、風の祝福持ちなの」


「「ええー?」」


「それはめずらしい!」

ビルが目を輝かせて言った。


「もしかしてビルさん、風の祝福持ち?」

透子が聞く。


「そうだよ」


「クーリンお仲間だよ!」


「うっ うん」

ちょっと気まずそうに返事した。


「あれっ?クーリンはトーコさんの従者だよね? なのに風?」

エルトさんが聞いた。


「クーリンは水の眷属だから主が水で、二番が風、それに温泉が三番かな?・・・・・・何気にすごいね」


「おーそういうことか! それは凄いな!」


「いや、それ言ったらトーコが一番だろ! 何ぼけてるんだよ!」


「ん? そうかな?」


「そうだよ! 水と氷雪は加護持ちで温泉は祝福プラス祝音!」


「「「おー そうだ!!」」」


「あーでもなんか皆同じ系統だよ! エルトさんとマックさんは土と温泉、ビルさんは風と温泉、系統が違う方がバラエティがあって応用が利く感じだけどね」


「そうか、だがあなたが作ったスノースライダーは見事だった。俺は若いころ商人の護衛で旅をしていろいろな精霊魔法の使い手をみたが、あのような氷雪の使い手は初めてだ。複数の属性持ちが優遇される傾向があるが、加護持ちならば一つの系統を極めるのもありだと思う」

ビルは言った。


「うん、そうだね。ありがとう。ビルさん」

透子がお礼を言うと、なんとなく場が和んで優しい空気になっていた。

スパーニ様は気持ちよさそうにニコニコしていた。




「えー、ちょっと話ずれているけどさ、それで、湧水どうするんだ?」

少し空気が読めていないマックが聞いた。


「あのー湧水の何を悩んでいるのかしら?」

スパーニ様が聞いた。


「場所がわかったので、出口を広げてもっと沢山水が流れて、水を汲めるようにしたいのです。」

エルトが答えた。


「あら、そんなこと!」

スパーニ様が壁に向かって空中に円を描いて中央を指し示すとほとんど青に赤が混じった光る螺旋の放水が壁を行き当たると拡散した。

すると、ホース状の水が壁から噴出した。


「「「おーおおお! 湧水だ!」」」


獣人さんたちが手を伸ばして湧水に触った。


「「「熱い!」」」

手を引っ込めた。


「あーほんとだ。湯気が立っている」

透子がそーと指先だけ触れた。


「これ、温泉水なんじゃね?」

クーリンも真似する。


「・・・・・・だろうね? だってスパーニ様だもんね?」

透子が同意した。


「あー、そうか、温泉の精霊様だからか」

ビルも言う。


「なるほど、じゃこれは温泉水なんだな」

エルトが言った。


「じゃあ、飲めないのか?」

マックが聞いた。

みんなが一斉にマックを見た。


「・・・なっ何? 何だ?」


「いやぁ、なんでも・・・」

エルトはとぼける。


「マックが真理を突いたから、みんながちょっと驚いただけさ」

ビルが代弁した。


「・・・なんだよ!」




「で、どうなんです?この湧水は飲めるのでしょうか?スパーニ様」

ビルが聞いた。


「温泉水は飲めるところと飲めないところがあります。ここのはあまり飲まない方がよいでしょう」


「えっ?」

「ん?」


「あー、そうなんだ」

透子は理解した。


「どういうことだ?」

エルトは聞き返す。


「飲めるけど飲まない方がよいってことだろう?」

ビルが言った。


「わかりにくい? 飲めるか?飲めないか?ちゃんと説明しろ!」

マックが焦れた。


「だから、飲めるけど飲まないほうがよいから、風呂とか洗濯とか洗い物とかに使えってことさ」

ビルが補足した。


「飲んじゃダメなのか?体に悪いものがあるのか?」

マックが聞く。


「あのね、マックさん、温泉水には体に良いものと消化しにくいものがまじっているの。温泉水は基本的に体に良いものだから、触ることや風呂に入ったりするのは良いの。

だけどね、食べ物ではない金属のようなものが溶かされて混じっているから、少しくらい飲んでも大丈夫だけどね、沢山飲むと消化されないで体の中にたまって、具合が悪くなったり病気になったりする可能性があるから、飲まない方がよいと言ってるのよ。」


「「おー すばらしい! いい説明だ!」」

エルトとビルが感心して、クーリンもスパーニ様もニコニコと頷いていた。


「わかった!・・・おい!おまえら トーコさんを見習え!」

マックは言った。



みんなは交代で温泉水というか温泉湯で手や顔を洗ったりして湧湯を楽しんだ。


「なあ、このまま垂れ流しはもったいないなぁ」

「ああ」

「そうだな」


「じぁあ、貯められるようにしたらどうです?」

透子が提案した。


「樽か桶を持ってくるのか」

エルトが聞く。


「それでもいいですけど、ここの湯の落下地点を中心に穴掘りして固めて石か木で回りを囲って露天風呂にしたらどうですか? 穴掘り得意なんですよね?」


「おーぉ! いいな」

「よし、やるか!」

エルトとマックはすっかりやる気満々。


「いやいや、ちょっと待て、どうせやるなら、しっかりしたのを作ろう! お前らだけでなく土魔法と地魔法の強いやつらをつれてきた方がよいから!」

ビルがストップをかけた。


「あー、そうだな。里長にも話して見てもらうのが先か」

エルトが言った。


「風呂を作るのね? うれしいわ、子供達を連れてきてね。私に気づいてくれたら祝福するわ!」

スパーニ様はニコニコして言った。


「よろしく頼みます」

ビルが頭を下げた。


「「よろしくです」」

慌ててエルトとマックも頭を下げながら言った。




しばらく露天風呂のサイズや位置などをアレコレ話しながら、時々違う方向に脱線したりしてワイワイ楽しい時間を過ごした。



「陽が傾いてきたから、今日はこれで引き揚げよう」

エルトさんが撤収を示した。

「「おう」」


「スパーニ様、今日はありがとうございました。」

「「ありがとうございました」」

3人がお礼を言った。


「明日も待っているわ」

ニコニコして返した。


「スパーニ様、私とクーリンは今夜は里に泊まり、明日はノアキネー村に向けて出発します。今日はお逢いできてよかったです。本当にありがとうございました。」

「ありがとうございました」

透子とクーリンも別れを告げてお礼を言った。


「そう、トーコとクーリンは街を目指して旅をするのね? ヒューマンは精霊魔法を研究していろいろな使い方をしていると聞くわ。私の温泉魔法の祝音をうまく役立ててくれるとうれしいわ!」


「はい、いろいろ試してみます」

ぺこりと頭を下げた。




透子は何度も振り返って、手を振った。

スパーニ様は姿が見えなくなるまで、ずっとそこで見送っていた。







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