24話 湧水
絶壁の壁のどこからか出ているとおもわれる湧水源を、クーリンとともに絶賛調査中の透子です。
(確かにこの辺一帯が湿っているから、にじみ出ている箇所があるはずだけど、わかんないなぁ・・・)
「クーリン、どう? それっぽいところ見つかった?」
「もっと上のほうから流れているっぽいけど、わかんないなぁ~・・・・・・壁昇れないし」
「あのあたりっぽいけどねぇ?・・・・・・高さが足りなくてわかんないね」
「場所がはっきりわかれば、水路を広げられるけど、手当たり次第掘るわけにもいかないんだよな」
「・・・でしょうね~」
透子とクーリンは特に薄っすらと湿っている壁の上の方を指さしてしゃべっていたら、透子に依頼をしたクマのお父さんエルトがソワソワと聞いてきた。
「あのー精霊様、見えましたかね?」
「ん、精霊様?」
透子は聞き返す。
「湧水や泉は、水精霊様が好むそうで近くを飛んでいるらしいっすよ!」
別のクマのお父さんマックが言った。
「今、指したあたりに精霊様飛んでいるのが見えたんじゃないかね?」
エルトが聞いた。
「トーコさん水の加護持ちですよね、水の精霊様とコンタクトがとれれば湧水わかると思うんだが、見えるとこにいないかな?」
ウサギのお父さんビルが補足した。
「んん? あっ!! もしかして、壁見てほしいって、湧水じゃなくて、水の精霊様??」
「あー、そうそう、どちらかといえば水の精霊様だな」
マックがサラッと言った。
「えぇー、先に言ってくださいよ! そーゆー事は! 湧水の出口探ししてたよー」
「いやぁ、一生懸命探してくれていたから、いいにくくてな」
エルトが申し訳なさそうに言った。
「そうそう、ようは見つかればいいからな」
マックも同意した。
「湧水探しはご苦労さんだけど、何かを指したから精霊様見たかなと思ったんだがな?」
ビルが言う。
「はぁ・・・」
「で、水精霊様いたかね?」
エルトが聞いた。
「んー見えるところにはいないですね」
「・・・・・・いるけど、見えてないとかないか?」
ビルが追及する。
「あー、それはあるかも?」
「加護持ちでも、見えないのか?」
マックが聞く。
「コンタクトしたことのある精霊様なら見えるけど、ここの精霊様はおそらく初めましてだから、見えない可能性が高いね」
クーリンが答えた。
「そうなの?クーリン」
透子が聞く。
「うん、渡来者の一番のハードルは、守護精霊を認識することなんだって。トーコは割と早くタッキー様を認識してコンタクトとれたでしょ! だからすぐ精霊魔法も使えるようになったし、従者もついたんだよ! それってほんとはすごい恵まれた事なんだよ!」
「精霊様を認識しないと祝福されないもんな」
エルトも頷いて同意した。
「そうなんだ・・・」
「そうだよな、俺なんかガキのころに穴掘りして遊んでたら精霊様と目があって祝福されたからな」
マックが思い出すように言った。
「あーそうだった!おまえ落とし穴めっちゃ掘ってたもんな!」
ビルも思い出したように言う。
「えーそれってもしかしなくても、土の精霊様?」(落とし穴・・・そんなんでいいのか祝福?)
透子が困惑したように聞いた。
「そうだぞ」
マックは言う。
「だいたいヒグマ族は土精霊さまだな?」
エルトも言った。
「水の祝福持ちのヒグマ爺さんはガキの頃から魚取りがうまくて川に入り浸っていたから、水の精霊様の祝福を得られたらしいのだ」
ビルが言った。
「うちの妻は、ガキの頃川でおぼれかけて、水の精霊様の祝福を得たんだ」
マックが言った。
「トーコさんはさ、初めて水精霊様を認識したきっかけはなんだったのかい?」
エルトが聞く。
「あーそういえば??・・・・・・」
透子はこの世界に来た当時の出来事を思い返した。
(確か、滝壺の風景が素敵だったので、写メに撮ろうとタブレットのレンズを向けたら画面に映っていたんだっけ! 初めは裸眼で見ると何もないのに、レンズ越しで見ると精霊が手を振っていた!)
「タブレットのレンズだ!」
「タブレットのレンズ?」
クーリンが聞き返す。
「「「タブレットのレンズ? なんだそれは?」」」
エルトとマックとビルもハテナ???マークを顔に浮かべて聞き返す。
「そうよ! タブレットのレンズ越しに見たら精霊様が手を振っていたの!」
透子はマジックバックの口を開けて、手をいれて「タブレット」を呼んだ。
タブレットを取り出すと起動させて、アプリをタッチしてカメラをセットした。
そして、壁を映した。
「いた!」
透子は叫んだ。
青目青髪で前髪の半分とあほ毛が赤い精霊様がビクっとしてこっちを見た。
透子とレンズ越しで目が合った。
透子は視線を外さないまま、手を振ってみた。
精霊様も手を振りかえした。
「こんにちは!」
透子が挨拶をする。
精霊様がニコッと笑った。
透子が画面から目を外して、裸眼で見ると精霊様がはっきりと見えた。
クーリンも透子の視線を追って何度か瞬きすると、薄っすらと徐々に青目青髪で前髪の半分とあほ毛が赤い精霊様が見えてきた。
「水の精霊様?」
つぶやくように言った。
「「「精霊様がそこにいるのか!!」」」
エルトとマックとビルも透子とクーリンの視線のさきにいるであろう精霊様を見ようと注視した。
「挨拶して!手を振って!」
透子が精霊様に視線を外さないままみんなに呼びかける。
四人は慌てて、ぼんやりとして見える輪郭に向かって手を振った。
「お目にかかれてうれしいです」
「はっ初めまして?」
「こーこんにちはっ」
「精霊様、よろしくです」
・・・・・ミストシャワーがキラキラとあたり一面降り注いだ。
「「「「おー祝福だ!」」」」
エルト・マック・ビルは大喜び!
クーリンと3人が、精霊様をはっきりと見て認識した。
「「「「おおぉ・・・精霊様」」」」
「「「「ありがとうございます!!!!」」」」
「トットーコも! ぼけっとしていないでお礼!」
クーリンが慌てて近寄って、ポンと背中を叩いた。
「あー ありがとうございます?」
クーリンにせつかれて、反射的に言った。
青目青髪で前髪の半分とあほ毛が赤い精霊様はクスクス笑った。
「あなた、水の精霊王様の加護持ちね! 良かった会えて。誰かが私を見つけてくれるのを待っていたのよ!」
「トーコです。タッキー様にお会いしました。タッキー様が精霊王なのですか?」
「いいえ、タッキーは水門の守護精霊の一人、そうあなたは渡来者なのね・・・そしてまだ精霊王には会っていない・・・」
思案するように言った。
「そうです。」
トーコは精霊様を見つめた。
「あのー 私はビルと言います。あなた様は水の精霊様でよろしいのですか?」
ビルが割って入って訪ねた。
エルトとマックも祝福をもらったのはうれしいが、精霊様の髪を指して首を捻っていた。
(そーだよねぇ、まさかおしゃれってわけでもなさそうだし、ほとんど青だから水の精霊様系統だと思うけど、なんか亜流がまじっているっぽいよね?)
「うふふふ 正解に近いわね。私の精霊魔法はね、10の内8は水で、2は火なの。この赤い髪は火魔法を現すのよ。・・・わかったかしら?」
精霊様はナゾかけするように言った。
「「「???」」」
「クーリンと言います。もしかして、お湯の精霊様ですか?」
「「「ああー」」」
三人が納得したように唸った。
「うふふふ かなり近いけど正解ではないわね」
楽しそうに言った。
(・・・・・・なんか、答えわかったかも?山でお湯って言ったら、アレしかないだろう?・・・イヤぁ、なんかだじゃれっぽくて、かえってほんとかあやしい感じがするけどねぇ~)
「あら、トーコはわかったみたいね。他の人はどうかしら? 正解した人には私からプレゼントがあるわよ。ビルとクマの二人! あなたたちの答えは?」
精霊様は満面の笑顔とキラキラした瞳で問い返した。
「エルトといいます」
「マックです」
慌てて名乗った二人に精霊様は頷いた。
「で、答えは?」
「えーと、えーと?」
「むんんんん???」
2人は答えを捻りだそうと頑張っていた。
「・・・・・・」
ビルはまさかな?っという顔をしながら、ウサ耳をかいていると、精霊様と目が合い答えを催促された。
「えー、お風呂の精霊様とか?!」
恐る恐る答えた。
「おしい!!」
精霊様が言った。
(あーあ やっぱり! それしかないか!この山は火山だしね・・・マジでそんな精霊いるんだ)
「トーコ、答えを確信した顔してるわね! エルトとマックはどう?」
「わかりません」
「降参です」
「そう、残念ね。ではトーコ答えて!」
「温泉の精霊様?」
「正解!」
精霊様は嬉しそうに拍手すると、手から青白い湯気が立ち上がり透子に向かっていき、湯気で透子を包むと一瞬赤く光って霧散した。
「ありがとうございます?・・・・・・今のなんですか?」
「祝音よ! 温泉をよく使えるようにしたの。使い方しだいでは多くの人を楽にするわよ。うまく使うとよいわ!」
「あー、わかったと思います? 抽象的ですが多分? 温泉の精霊様」
「スパーニよ。トーコらしく役立ててね」
「はい。効用を考えてみます。ところで温泉は飲めますか?」
「そのままなら無理ね。でも使い手しだいよ」
「わかりました。いろいろやってみます」
「「「「????」」」」
4人は透子と精霊様の話についていけてなかった。
「あのー、わかるように説明たのむ!」
エルトが言った。
「「うんうん」」
マックとビルが頷く。
「・・・・・・」
クーリン無言。
「えーとね、こちらの精霊様はスパーニ様で、温泉精霊様。さっきの青白っぽいのは湯気で、赤い光は祝音で正解のプレゼントだって。・・・・・・そんな感じ」
ざっくり説明する。
「えっ!えー?」
エルトは戸惑い
「・・・・・・ざっくりすぎる!」
ビルはあきれて
「んん? わかった?・・・・・・わかんねぇ!」
マックは全くわかっていなかった。
クーリンが肩を落として、ため息をついてから、復活するように叫んだ!
「あのさ、足りないから!! 伝わってるけど意味不明でわからないから!」
「えー、なにが? わかったよね?問題ないよね?」
透子はスパーニ様を見る。
スパーニ様は、ニコニコとして頷いた。
「あのー、質問いい? ちょっと整理しよう」
ビルが言った。
「こちらは温泉の精霊スパーニ様。ここまでOK?」
「「「「OK!」」」」
「5人とも祝福を受けた。ここまでOK?」
「「「「OK!」」」」
「トーコさんは、正解したのでさらに祝音をプレゼントされた。OK?」
「「「「OK!」」」」
「使い方がいろいろある。・・・楽になったり、効用?があるとか?」
「「「・・・・・・」」」
「そうそう・・・そんな感じ」
「温泉はそのままでは飲めない。何かすると飲めるかもしれない?」
「「「・・・・・・」」」
「そうそう・・・そんな感じ」
「ダメだろう! なんで飲めないんだよ!」
エルトが復活して言った。
「あのさ! そもそも温泉って何?」
マックが聞いた。
「えっそこから?」
クーリンが驚愕した。
スパーニ様が胸を打たれたようによろめいた。
「あーあ、マックさんそれはないわ。スパーニ様いじけちゃったじゃん!!」
スパーニ様体育座りして、人指し指でイジイジと文字書いていた・・・・・・




