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23話 里の住民


突然、出現した巨大な白っぽい建造物に里の住民は、びっくりしてフリーズしている。

それでも子供を外で遊ばせていたお母さん達は、すぐに動き出し広場に集まってきた。


エナさんが走ってきた。

「あれは何なのー?」


「あーエナさん、あれはスノースライダーといって雪を固めて作ったもので、滑って遊ぶ遊具です」

透子はニコニコと返事した。


「スノースライダー?」

「滑って遊ぶ?」

「なんなの?あれ?・・・遊具?」

お母さん達が口ぐちに言い合い始めた。


「危なくないの?」

別のクマのお母さんが聞いた。


「滑って遊ぶものなので、スピードがでると小さい子はちょっとあぶないかもしれないけど、出口のところで受け止めてあげれば大丈夫だと思います。大きい子は楽しいと思います」

透子は説明した。


「これは氷みたいね? 冷たいわ」

別のお母さんが、雪像を触って言った。


他のお母さんたちも恐る恐るしながらベタベタともの珍しそうに雪像を触った。


「すごいわね! 水の加護持ちは」


「水と違うんじゃない? 氷よね?氷魔法?」


「あら、雪を固めたって言ってたわよ」


「そうそう、水の上位魔法よ!・・・・・・・・確か、氷雪魔法じぁなかったかしら?」


「あー、あったあった! 聞いたことあるわ。氷雪魔法」


「北のエルフが使う魔法よね?」


「北のエルフの血すじかしら?」


「それを言ったらドワーフじゃないの、どう見たって!」


「ドワーフなら火か火炎魔法でしょ?」


「みてくれはドワーフっぽいけど、北のエルフも混じっているんじゃないの?」


「あーヒューマンはそんなとこあるわね! 種族に見境なしだし」


「ヒューマンはブレンドしまくっているのがいるからねー」


と、お母さん達の井戸端会議が花盛りで、透子は思いっきりネタにされていた。


(ドワーフっぽいって、どーゆー意味だ!! 大体ほんの一週間くらい前にこの異世界に来たばかりで、エルフもドワーフもお目にかかっていないわ!! 血筋のわけないだろーが# 純潔の人間!というかヒューマンだ!)

透子は言いたい放題のお母さん軍団に眉間にシワを寄せて内心憤慨してきた。


「おい、落ち着け! 悪気はないから」

クーリンがヒソヒソと話してそぉーと慰める。


「あってたまるか!」

透子もヒソヒソと返した。




「おーい! どうなっているんだ?」

「大丈夫かー」

里の外周りにいたお父さん達が口ぐちに叫びながら慌てて駆け寄ってきた。


「なっんなんだ、それは?」

「氷か??」

外から戻ってきたお父さんたちがびっくりしてスノースライダーを指さして聞いてきた。


「子供たちが滑って遊ぶのに良いかな?と、思ってスノースライダーを氷雪魔法で作って見ました。」

透子はしれっと答えた。


「氷雪魔法?・・・・・・・・氷と雪か?」

「スノースライダー?」

「魔法でこんなものも作れるのか?」

お父さん達もモゴモゴ言いながら戸惑っていた。



「みなさぁーん!それでは、どうやって遊ぶのか? 見本を見せますねー」

透子は雪像の階段を昇っていく。一番上まで行くと、下で見ている子供たちに手を振った。


子供たちはポカンと見上げている。

お母さん達は井戸端会議を継続しながら、見上げていた。

お父さん達は興味深そうに腕を組みながら見つめていた。


透子は座って足と手で助走して滑り降りようとした。

(お尻が冷たい!) 

シールドを張った。

(・・・・・・・・氷の摩擦で滑りが悪い!)

透子は雪像の滑り面にツルツルの付加魔法を重ねた。

ようやく螺旋のカーブを曲がるごとに加速がついて、最後の直線で加速がアップした。

そして斜面が終わり、地面と平行になると減速したが止まりきれずストンと滑り台の先に飛び出した。


(んー減速平行面がちょっと短いかな? 小さい子が飛び出すと危ないから、もう少し伸ばそう)

透子はもう一度手をワシ手にして、ブリザードを放出し雪を凍結・硬化して減速平行面を伸長した。


「「「「おー、凄い! そうやって作ったのか!!」」」」

お父さん達とお母さん達から、感嘆の声が上がった。


「クーリン、一緒に滑ろうよ!」

「おう!」

透子が声をかけると、クーリンが走って昇って行った。


クーリンが快走して滑り終わると、透子が滑りおりた。

こんどはバッチリである。


「じゃあ、みんな滑ってみようか!・・・誰から行く?」

子供たちを見廻した。


子供たちは好奇心で目を輝かせてはいるが、お互いに牽制しあっていた。


「俺が先に滑っていいかな?」

ウサギのお父さんが立候補した。


「どうぞどうぞ!」

透子は階段を譲った。


ウサギのお父さんはピョンピョンピョンと階段を軽快に昇りながら、ロップイヤーな耳をミョンミョンさせてオーバーホールのお尻からポンと出ている短いしっぽもフリフリ揺れいる。


(おっさんよ! おっさんだとわかっているけど!!・・・あの耳としっぽは反則だ! ヤバイ!!)

その後ろ姿がコミカルで透子は内心悶えていた。


透子の悶えを敏感に察知したクーリンはうろんな目で見て、さりげなくとばっちりを食らわないように距離をとりつつ後退した。


ウサギのお父さんはロップイヤーな耳をまるでツインテールのように後ろにたなびかせて、スノースライダーを滑り降りてきた。

「おー 気持ちいいな!」

ウサギのお父さんは滑り終わって満足そうに言った。


フリーズから解けた男の子たちが

「「「やりたい!」」」」

「「「僕も滑りたい!」」」

口ぐちに言い始めた。


「いいよ! 滑りたい子は階段昇っていって!」

透子がGOサインを出すと、歓声をあげながら男の子たちが駆け上って行った。


「他にも滑りたい方がいたら、遠慮なく階段を昇ってください。一つだけ約束です。前の方が滑り終わってどいてから、次の方はスタートしてくださいね! 前の方にぶつかると危険です。ケガします。それだけ守ってください」

透子はみんなによく聞こえるように言った。



「階段は危ないから、走らないで! ゆっくり昇って! 

そこ! 階段でふざけないで、落ちたらケガするよ。

こらっ! 追い抜かさない。順番を守れ!」

透子はまるで引率の先生みたいになっていた。


始め見ていた女の子も男の子たちが歓声上げて滑って行くのを見て、ウズウズして階段を昇り始めた。


「一人で滑るのが怖い子は、お父さんお母さんか兄弟姉妹とタンデムで!・・・・・・タンデムというのは大きい人が後ろで膝の間に小さい子を挟んで前にして腰回りを離れないようにホールドして一緒に滑ることですよー。」

透子が説明すると、迷っていた子もお母さんや兄弟姉妹で一緒に何組かが階段を昇り始めた。


(やっぱり滑り台って、楽しいよね! 童心に帰るわ♪)

透子はニコニコと様子を見守っていた。






「あのー、ヒューマンさん?」

クマのお父さんが声をかけてきた。


「トーコです。トーコと呼んでください」


「トーコさん」


「ハイ、なんでしょう?」


「その魔力を見込んで、お願いがあるんだが・・・」


「どういう内容でしょう?」


クマのお父さん達は顔を見合わせてうなづいて言った。

「ここから歩いて15分くらいのところにある山肌を見てもらいたいんだ」


「山肌?ですか」

透子は予想外のことを言われてちょとんとした。


「今から一緒に行ってくれないか?」


「それは構わないけど、山肌を見るだけですか?」

透子は疑問符を浮かべて聞き返した。


「そうだ」


「できれば、そっちのカワウソ君も来て見てほしい」


「カワウソ君も水魔法が使えるだろう?」


「俺のは祝福だし獣人だから、トーコのような大きな放出系魔法は使えないぞ」

クーリンは念を押した。


「山肌を見て欲しいだけだから」

クマのお父さんは言った。




透子はお母さん達にスノースライダーで遊ぶ子供達の見守りを引き継いでもらって、クマのお父さん達と山肌に向かった。




そこは、山の切り立った絶壁の下だった。


「この壁を見てくれ。他は乾燥しているのに、このあたりだけ濡れているだろう?」

クマのお父さんが壁に手を触れながら言った。


「どこかに湧水が出ているようなんだ。これを見つけたい」


「あー水問題ね? 川はちょっと離れているんだっけ?」


「一番近いところでも30分はかかる。しかも足場が悪い。足場の良い川岸まで行くと1時間以上かかる」


「水魔法の使い手は3人いたが一人は高齢で寝たきりになってしまって、里長のところと、俺の妻しかいないがうちのは今妊娠中で、あまり無理はできないんだ」


「ここで水場が確保できれば、量にもよるが、楽になることは間違いないんだが、連日交代で見にきているがどこから水がでているか?見つからないんだ!」


「あーなるほど、水が出ている箇所を見つけたい!・・・ということね」


「そうだ! 水の魔法使いなら親和性が高いからわかりやすいかと思ったんだ」


「そんなこと、やったことがないから見つけられるかわからないよ。それでもよい?」


「なんとか、夕暮れまでに頼む」


「クーリンもそれでよい?」


「ああ」


「じゃあ、こっち側から見てみるね。 クーリンは向こう側から見てね!」


壁は全体的に湿っているが、水が出ている箇所は中々みつからなかった。

ただ、乾いている場所との差は歴然としているので、どこかに水が染み出ているのは間違いがなかった。






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