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20話 闇の精霊魔法


部屋に戻ってしばらくすると、マリーさんがきて、風呂をどうするか聞いてきた。


離れに風呂があるが水は入れてないので、水魔法で入れれば、マリーさんが火魔法で沸かすそうだ。

いつもはコータスが水魔法で給水するが、ショックで落ち込んでいて今夜は使い物にならないらしい。


せっかくなので風呂に入ることにした。

透子はそのまま適温のお湯を入れればよいので、説明して火魔法は断った。

風呂小屋は6畳くらいの脱衣所と3畳くらいの洗い場と3畳くらいの木の湯船で、広々として極楽極楽。

木の何ともいえない良い香りが立ち上ぼり、リラックスしてる。天然のアロマ効果だろうか?

そうだ!湯槽欲しいな、約120cm×80cmで深さ60cmくらいの風呂、なんとかマジックバックにはいらないかな?・・・そういえばマジックバックの口より大きいものって、どうやって出し入れするんだろう?

マリーさんの用意したソープは灰汁で汚れは落ちるけど、全くアワだたなかった。

泡ソープが欲しい。


異世界に転移してからの初めての風呂なので、お湯がすっかり垢で汚れてしまって申し訳なかったのでお湯を蒸発させてきれいなお湯と交換しておいたら、マリーさんにすごく喜ばれた。


ついでにマリーさんに聞いてコータスがいつも給水している水場に、代わりに給水しておいた。

里では水魔法で給水できるのが2人しかいないので、里長一家は後回になりコータスの魔力切れで半分も補水できないそうで、満タンにしたらとても喜んでいた。




部屋に戻るとクーリンはすでにお休みで、一休は起きていた。


「ねぇ、さっきの話だけど、闇魔法でして欲しいことってなんだと思う?」

一休に聞いた。


「フム、どうであろうかのう?」

一休も考えてみた。


「そもそも闇魔法って、どんなことに使うの? 水とか火とか風とかと違ってあんまりイメージわかないけどね?」

透子は聞いた。


「前に説明したように眠りと安息、休みと回復、夜の平穏じゃな」


「それは聞いた覚えがある。・・・じゃあ 不眠症で眠れないとか?」


「ヒューマンでは寝れない病があると聞いたことがあるが、獣では聞いた事ないがの?」


「何か休んだり、何か回復したいことがあるとか?」


「寝れば休めるし、たいてい回復するがの? 闇魔法の回復は疲労感とかじゃな」


「・・・夜の平穏を守って欲しいとか?・・・夜の平穏って具体的に何?」


「・・・騒がしくないことであるな。静かな夜じゃな」


「・・・静かな夜だよね?」


「フム・・・・・・」 


「ん?・・・なんだろう?」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・もう寝たらどうかの?」


「・・・そうだね、そうするわ」






一休は結界石を取り出してベッドを囲む4角に配置した。


「ねえ、何でシールド張るの?部屋の中だよ、大丈夫じゃないの?」

透子は怪訝な顔で聞いた。


「先程の話じゃ、闇魔法を欲しいのはここではなく、夜里であろう? 真夜中に突撃されてはかなわんからの、一応念のためじゃ!」

一休はまじめに答えた。


「ふーん、まあ、備えあれば憂いなしって言うし、いいんじゃん」

用心深いなあと思いながら 透子は言った。


一休はシールドドームを展開した。





皆が寝静まった真夜中、一休の予測通りフクロウが3羽、闇魔法の影移動を使って部屋の中に侵入してきた。

透子の眠るベッドの側に近寄ろうとして、シールドドームに弾かれた。


「これは・・・結界か?」

黒いフクロウが呟いた。


「破れぬのか?」

一番大きいフクロウが聞く。


「きびしいな・・・」

黒いフクロウが答えた。


「結界ごしに話せぬか?」

焦げ茶のフクロウが言う。


「その黒髪の者を起こさぬと無理だな」

黒いフクロウが答えた。


「起こせるか?」

大きいフクロウが聞く。


「結界がジャマだな」

黒いフクロウが答えた。


「何とかならんか?」

焦げ茶のフクロウが聞く。


「かなり強力な魔法だ・・・しかも水魔法だ」

黒いフクロウが言った。


「さすが、加護持ちか」

大きなフクロウが言う。


「感心している場合か」

焦げ茶のフクロウがあきれたように言った。



「・・・おい、隣で寝たふりしてる亀」

大きいフクロウが声掛けた。


「話がある、亀出てこい!」

焦げ茶のフクロウが言う。


「・・・顔だせ」

黒いフクロウも重ねて言う。


「・・・・・・なんじゃ、真夜中だぞ」

一休はしぶしぶ返事をした。


「黒目黒髪の娘の従者なんだろ?」

大きいフクロウが聞く。


「だとしたら、何用じゃ?」

一休が面倒くさそうに返事した。


「その娘と話がしたい」

大きいフクロウが言う。


「起こせ、というわけかの?」

一休が問う。


「そうだ」

大きいフクロウが肯定した。


「断る!」

一休は3羽に面と向かい合って撥ね付けた。


「なんだと!」

焦げ茶のフクロウが激に反応する。


「よさぬか! 我らは争いにきたのではない」

大きいフクロウがなだめた。


「・・・そうであった。すまぬ」

焦げ茶のフクロウが消沈した。


「物事を頼むならば相手の都合に合わせるべきであろう?」

一休が3羽のフクロウに対峙して、諭した。

一休の年長者特有の毅然とした威厳に3羽は呑まれつつあった。


「ヤギの里長から説得に失敗したと聞いて焦ったのだ」

焦げ茶のフクロウが言い訳するように言った。


「明日には里を去ってしまったら、手遅れになってしまう」

黒いフクロウが言った。


「なんとか我らの話を聞いて欲しい」

大きいフクロウが懇願した。


「闇魔法なら使えぬと聞いてないのか?」

一休が冷徹に返す。


「それは聞いた」

大きいフクロウが返事した。


「だが、今は、だろう? その見事な深く美しい黒髪。目も黒曜石のようだったと聞いた。それほどまでの黒を纏う娘なら闇の精霊様も好まれるであろう」

黒いフクロウが夢見るように言う。


「そうだ。まだこの地に来て浅い渡来者なのだと聞いた。これから闇の祝福が受けられる可能性が十分にあるだろう」

焦げ茶のフクロウが追従した。


「水の加護なら闇と親和性が高い。期待は出来る。話がしたい」

大きいフクロウが説得し始める。


「ヒューマンは闇を厭う者もおる。勧められぬ」

一休はイヤそうに言った。


「頼む。話だけでも聞いて欲しい。」

大きいフクロウが再び懇願する。


「そうだ!話をする場が欲しいのだ。」

黒いフクロウも願った。


「この通りだ。従者殿、ミミズク族の大事なのだ」

焦げ茶のフクロウも下手にでて頼み込もうとした。


「おい!」

黒いフクロウが焦げ茶のフクロウを咎めた。


「ミミズク? お主らはフクロウ族ではないのじゃ?」

一休は怪訝な表情で聞く。


「ミミズクの長から託されたのだ」

ため息をつくように大きいフクロウが答えた。


3羽のフクロウは懇願するように真剣に一休を見つめた。


一休は3羽のフクロウの顔を1つ1つ見定めて、観念したように言った。

「・・・・・・わかったわい。話の場を設けるようにいたそうぞ」


「「「誠か?」」」

3羽のフクロウは弾かれたように一休を見返した。


「嘘は言わぬ」

一休は真顔で返す。


「ならば、いつ?」

大きいフクロウは問う。


「明日、つまり次の夕陽が沈む頃でどうじゃ?」

一休は問い返す。


「承知した」

大きいフクロウが嬉しそうに承諾した。


「「夕陽の沈む頃!」」

黒いフクロウと焦げ茶のフクロウも嬉しそうに見合わせて言った。


「では真夜中じゃ、ワシも寝たい。帰りたまえ」

一休はフクロウ達を追い払うように言った。


「ジャマしたな、我らにとっては来たかいがあった」

大きいフクロウが一休を労うように言う。


「「そうだ」」

黒いフクロウと焦げ茶のフクロウも同意した。


3羽のフクロウ達は闇魔法を展開して再び影に潜って家の外に出て飛び去って行った。


(やれやれ、面倒な事にならねばよいが・・・まっそれも一丁・・・面白くあるかも知れぬか? フォフォフォフォー・・・)

一休は甲羅の中に潜った。







翌朝、クーリンが起きてから、透子が起きて、最後に一休を起こした。


「朝食たべたら出発する?・・・次はノアキネー村を目指して行くんだよね?」

透子が一休に聞く。


「それがのう、もう1日この里に滞在して欲しいのじゃ」

一休がすまなそうに言った。


「それはいいけど、どうしたの?」

透子は意外そうに聞く。


「真夜中にきたのじゃ」

一休がつかれたように言った。


「えっ? ホントに?・・・全然気づかなかった!」

透子はビックリして聞き返す。


「来たって、何が?」

話の流れがわからないクーリンは説明を求めた。


「・・・・・・あれじゃよ」

一休がもったいぶって言う。


「あれって何?」

クーリンが聞き返す。


「だから真夜中に来るやつらじゃ。」

一休がさらにもったいぶって言う。


「えー? 真夜中に来るやつらって?」

クーリンはホラーな想像をして恐る恐る聞く。


「だから、夜動き回るやつら・・・だよね?」

透子は面白そうに煽る。


「ひぇ~ もうやめて! トイレに行けなくなるから」

クーリンがギブアップした。




「・・・なんの話をしておるのじゃ?」

びびるクーリンを見て、怪訝な顔をして聞く。


「・・・だから、お化け?もしくはアンテッド?」

クーリンが一休に返す。


「・・・アルク夜里の夜行性の獣人の話をしておるのじゃが・・・」

あきれたように一休は言う。


「そうだよねぇ、真夜中に突撃するかも?って話だったよね?」

透子はニヤニヤしながら言った。


「へ?」

クーリンはきょとんとする。


「やだー、クーリンってば、お化け苦手なんだねー」

透子はクーリンの勘違いをちゃかして言う。


「・・・別に、苦手じゃないけど」

クーリンは勘違いを取り繕うように言う。


「うふふふふ、・・・そういう事にしておこうか?」

透子は楽しそうに笑った。


「なんだよ!」

クーリンはふてくされた。



「で、どうだったの?」

透子は本題に戻して一休に聞く。


「トー子と話しがしたいそうじゃ」

一休は淡々と答えた。


「ふーん、何の話?」

透子は重ねて聞く。


「詳しくは知らぬが、ミミズク族の事らしい。」

思い返すように言う。


「へー、じゃ来たのはミミズクさん?」

以外そうに透子は聞く。


「イヤ、フクロウ3羽」

一休は答える。


「ほー、フクロウさんなんだ」

透子は言う。


「だじゃれ?」

クーリンが横やりに聞く。


「えっ?」

透子は何のことやら?と聞き返す。


「ホーと鳴いて、フクロウ3(さん)

クーリンがおどけて言う。


「ぶっ! あはははは・・・そうだねぇ」

透子にヒットして笑った。


「・・・真面目な話なんだがのう?」

一休が困ったように言う。


「ごめんごめん!」

透子が謝罪した。


「夕陽の沈む頃、来るそうだ」

一休は予定を告げる。


「そうなんだ、じゃあ今夜も泊めてくれるよう話さないとね。 朝食の時に里長さんに頼むね。」

透子は了解した。




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