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13話 2日目の夜


「グーッ・・・ググーッ・・・グッグーッ!」

透子のお腹が威勢よくなった!!


一休とクーリンは顔を見合わせて笑った!


「だって!もう大分時間がたって 夜じゃない! お腹が空いたのよ!」

透子は赤くなってそっぽをむいた。


「そうじゃな、飯にするとしようかの。クーリンは先に大分食べておったようだが、どうする?」


「たべるよ! みんなが食べるのを見ているだけはヤダよ!」


「えー、あれだけドカ食いして、まだ食べるんだー」


「カワウソは大飯喰らいなんじゃよ! トロ子のマジックバッグに入っている魚をだしておやり」


「・・・はーい!」


「・・・どうも」


透子はクーリンに魚をだしてやると、お弁当バッグをとりだした。


(あー、これでご飯の食べおさめか、これからはご飯たべれなさそうだしなぁ~、この世界がいわゆるラノベの中世ヨーロッパっぽい世界感だったら、パンはあっても米はないだろうし・・・ご飯食べれなくなるのはつらいなぁ・・・ なんたって朝晩ご飯党で、昼はアラカルト派だからなぁ・・・ご飯は1食でもいいからっ毎日食べたいんだよねぇ~・・・)

「はぁ~」

ため息をつきながら、透子はお弁当箱のフタをあけた。


「・・・・・・」

中身を見て、首をかしげてしまった!

なんとなくフタをしめてみた・・・

そして上段の箱をとりあげて、下段の俵にぎりをおそるおそる見てみた。


「うん! ちゃんとある!」

反対に首をかしげた・・・


下段に上段をかさねて、もう一度そーとフタをはずした。

・・・おかずは健在だ! 

「なんであるんだー!! おかしいだろう!!」

おもいっきり、さけんだ透子。


透子の叫びに、ビックリするクーリンと一休


「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

肩で息をする透子


「おちつけ! どうしたのさ?」

クーリンが聞く。


「騒々しい子じゃな、食事のときくらい落ち着かんかい」

一休が胡乱な目で言う。


「昨日、このお弁当を半分食べた・・・で、今残りを食べようとしたら、全部ある?!」

??? な頭で、事実を話した。


「・・・んなわけないだろう? 昨日俺にくれたよね?!」

クーリンがお弁当箱を覗きこむ。


一休も覗きこむ。

「どれどれ、ふむ、いろいろとカラフルで詰まっておるのう。 上がおかずで下はなんじゃ?」


透子はフタをおいて上段をずらして下段を見せた。


「ほう、めずらしな・・・ これは白飯ハクハンを棒にしたものかのう?」

一休はのほほんと聞いた。


「知っているの?お米を炊いてできたご飯で握った俵にぎりだよ」


「お米?炊いて?握る?・・・(なんか昔聞いた言葉じゃ? はて? 思い出せぬ?)それに似た白飯はイーストニアの南西にある地域で食べる人族がおるでのう」

記憶を探るように一休は言った。


「えーあるんだ!お米!・・・らしきもの?」


「ハクハンじゃ、野菜と一緒に、スープに入れたり、焼いたりして食べていたな・・・」


「あー、そうなんだね」

(ピラフとか雑炊にして食べているのかな? パエリアとか?・・・スペインやイタリアに近い?)


一休がもの珍しそうに見つめているので、透子は言った。

「食べてみる?・・・あー、そうじゃない!そうじゃないよ!それじゃないぃ!」

突然思い出したように叫ぶ。


「なっ、なんなんじゃ? 」

一休は透子の勢いに驚いてたじろく。


「っつ! だから! ・・・ねっ!」

クーリンを見た。


「??? ・・・わかんないけど?」

クーリンもチョトンとする。


「昨日食べたよね? 半分!!」


「あーそうだったな、半分あとで食べるとか言っていたような気が・・・」

思い起こすようにクーリンが言って、顔を見あわせて、また弁当を見た。


「・・・ちがうやつ?」


「・・・同じやつ」


「・・・ちがうだろ? 2個目のやつじゃね?」


「・・・1個しかないから! 2個目ないから!!」


「・・・中身が減るならわかるけど、増えるはずないだろう?」


「・・・だよね?」


「・・・・・・怖っ!」


「・・・ホラーやめて!」


「ホラーって?・・ほこら?」


「イヤイヤ、そうじゃなくて! ほこらでもないから・・・」


「・・・・・・・」


「・・・・・・・」


透子とクーリンはなんとなく背中がゾクゾクしたような気がした。




二人?のやり取りを聞いていた一休は、とても懐かしい思いになった。

「おそらくそのマジックバックのせいやろう? 門を渡りし時に戻ったのであろうよ」


「???・・・門を渡りし時に戻った?」

透子は困惑して聞き返した。


「そうじゃ! 異世界の袋の持ち物は日をまたぐ時、門を渡りし時に戻っていたようでの・・・前にあった渡来者も袋の中身が減らないと言っておった。 トロ子のバックもそうであろう? その箱のメシも門を渡った時に戻ったのであろうよ?」

一休は思い返すように、言葉を重ねた。


透子はビックリして目を見開いた!

(リセットした!ってことか。・・・昨日飲んだ水筒の中身は?・・・入っている、満タンだ!・・・ケチャップは?・・・戻っている!・・・)

「まっまじっすか?!」


「へー、毎日そのメシが食べれるってことか! 便利だな!」

クーリンはお気楽に言った。


「そっそうだね! ・・・そういうことになるんだよね・・・えっえーっ?!」

透子は動揺した。


「トロ子は生魚は食べれないんだろ! ヤバイと思って果実探しまくったけど、いつでも食べもんがあるって安心だな! 食糧採集できなくて飢えて死ぬやつとかゾロゾロいるからなぁ!」

クーリンはさりげなく食糧事情の真理をついた。

  

「そっそうだよね・・・」

(日本みたいにお金があればなんでも買える、食料も余っている、捨てるくらいにある世界とは違うんだ・・・それにお金だってもっていない! クーリンが言わなければ茸とか果実や木の実を採ることも換金できることもわからなかった。・・・飢えて死ぬとか、考えたこともなかった。アフリカとかのニュースの世界でしかなかったわ・・・これからはこのマジックバックが生命線だ、このバックさえあればなんとかなる!絶対に手放さないようにしなければ!!)

透子はマジックバックを胸に抱きしめた。


「フォフォフォフォ! クーリンに言われて、バックを握りしめて、何やら悲壮な顔をしておるが、精霊様の加護持ちじゃ、簡単に死ぬようなことはあるまいて! 精霊魔法を使えるようになればどうにかなるもんじゃ・・・」

一休は愉快そうに笑った。







夕食を食べ終わって、それぞれくつろいでいるとき、透子は思った。

(そろそろ、風呂に入って着替えたいなぁ・・・この世界、風呂あるのかな? 桶にお湯で拭くとかかな?・・・いや、それより重要なのは、着替えだ!着替えがない!! 洗うにしても、裸はイヤだな・・・あいつら、一応オスだし・・・雨かっぱに着替えて?洗う? 明日までに乾くかどうかも不安だわ。・・・とりあえず、タオルで体拭いて、下着だけ洗ってみよう)


透子はパーカージャケットを脱いで雨ポンチョを羽織って、白ポロシャツ黒ズボンの中の下着を脱いだ。


何やらゴソゴソと始めた透子を、クーリンと一休がボーと見ていた・・・

目があった!


「こっち見るな! あっち向いてて!! 見たら蹴飛ばす!!」

透子は強気で言った!


透子の剣幕に慌てて、クーリンと一休は背を向けた。


「ねぇねぇ、あいつ何やってるの? 何を見たら蹴飛ばすの?」

クーリンは一休に聞いた。


「ふぉふぉふぉ、ナニじゃよ!」

一休は意味深に笑う。


「・・・わかんないけど?」

クーリンは首をかしげる。


「フフフ・・・メスの秘密じゃ」

一休は面白そうに茶化した。


「・・・全然わかんないけど?」

クーリンはちんぷんかんぷんだった。

川で育った獣のかわうそが、人間の女の羞恥心を知るはずもなかった。

ただ、透子から漂う見るなオーラを強く感じて、振り向けなかった・・・





透子はヒソヒソとささやきあうクーリンと一休にイラッとしながら、

「40°直径50cm湯球」と唱えて、湯球をだしてタオルを濡らして何度か体を拭くと、別の乾いたタオルをだして下着の代用にした。

そして湯球に使用済みタオルと下着を放りこんで、全自動洗濯機をイメージして「イオン洗濯、洗いすすぎ10分脱水3分」と唱えた。

轟音とともに湯球中のものが回転始めた。


音にビックリした一休とクーリンは振り返った。


「・・・それは、どうなっておるのじゃ? 水球の中で布が回っておるようじゃが?」

一休は不思議そうに聞いた。


「一応、洗濯?」

透子は、自信なさげに答えた。


「洗っておるのか、水球で?」

一休は驚いた・・・水球でそのような使い方を見たのは初めてだったからだ。

通常、水球は攻撃に使うか、鍋や樽に給水するのである。


洗濯湯球は、止まったかと思うと、轟音とともに逆回転し始めた。

回って止まって、逆回転して止まって、を繰り返した後、球の底面から水が流れ出て、また回転を始めて、水をどんどん絞り上げていき、水が流れでなくなると、ブルブルと球は震えて止まった。


クーリンは、ポケーっと放心したように、その一部始終を見ていた。

一休は、不思議そうに面白そうに、シゲシゲとじっくり見ていた。


「終わったのかの?」

一休は聞いた。


「うん、洗濯はね。でも乾いてないから、干さないといけないけど、この洞窟はジメジメしてるからかわきそうにないよね・・・水魔法で乾燥は無理だよね?」

透子は問うように聞いた。


「乾燥は風魔法じゃな! 風を起こすことはできるが、どこかに飛んで行ってしまうがの・・・そよ風を長く吹かして乾かすような使い方は、人族の熟練の使い手じゃないとのう。」

申し訳ないように一休は答えた。


透子は考えた。

(このまま、バックにしまっても、状態を維持するから乾かないよね? ・・・それとも、門を渡った時にリセットされる?から、乾く? 使用中だから汚れは?・・・検証する?・・・乾かないと困るから洞窟の外に干しておく?・・・うーんどうしよう?)


思案中の透子にクーリンは声をかけた。

「なぁ、その洗濯?した布、まだ濡れているんだろ?[蒸発]しないのか?」


「それだ!!」

透子はクーリンの問いにガバッ!と、反応した。


濡れたタオルをマジックバックに押し込むと、下着を水膜で包んで、

「蒸発!」と、唱えた。

透子のイメージどおりに、水分は上に抜けていき、カラカラに乾いた。


「ヤッター!! クーリン!」

透子は嬉しさのあまり、クーリンを抱きしめようとした。


危険を察知したクーリンは、ダッシュで逃れた。


「ちっ!」

透子は舌打ちした。


「なるほどのう、[蒸発]か! 風がなくても水を抜けば乾く!か・・・クーリンは[蒸発]を使っておるのじゃな、どーして覚えたのかの?」

一休は感心しながら聞いた。


「泳いだ後、ブルブルすればある程度水は弾くが、毛が乾いたわけじゃないだろ? 前にハンターが川で水浴びしたあと[蒸発]を使って髪や服を乾かしていたのを見ていいなと思っていたんだ。・・・それで、従者になって使えるようになったか?試したらうまくいったんだ。 元は人族が使う魔法だからトロ子もできるだろうと思ったのさ!」

クーリンはトロ子を避けるように回り込んで、一休のほうに寄りながら言った。


「うんうん! クーリンありがとう♪」

透子はクーリンを抱きしめようと、にじり寄って行く・・・


クーリンはサーっと一休の背後に回り、一休を盾にした。


透子はクーリンを抱きしめて、スリスリしたくてたまらなくなり、追いかけ始めた。


クーリンは、先程ギュウギュウされて、意識があの世に飛びそうになったため、全力で回避した。


自分を盾に繰り広げられる攻防戦にゲンナリした一休は言った。

「トロ子! やめんかい! 感謝する態度でなかろう?・・・クーリンもワシを盾にするでない! 」


それでも、なかなか収まらない二人に、

「明日は移動しながら、大特訓じゃ! いい加減に休まんかい!!」

と、大音量で威圧を放ち、仲裁した。






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