11話 一休の話
一休は、透子に向き合った。
「トロ子はこの世界にきて、どれくらいじゃの?」
「昨日だよ」
「なるほどのう、2日じゃ、知らぬのもあたりまえじゃの。・・・さて、クーリン。 そちはトロ子にどのような話をしたのじゃ?」
「・・・どのような話って? とりあえず、里に向かって川をくだって、金に換えられるモノを採取して、街を目指して行こう、ってとこだけど?・・・あとは、水の精霊様の加護があるから、水の精霊魔法が使えるけど、イメージが大事って話かな・・・」
ちょとんとした顔をして、思い出すように答えた。
「・・・足りんじゃろうが?!」
あきれたように一休は頭を振りながら言った。
「・・・そうかな?」
クーリンは、首をかしげた。
「トロ子よ、まず、そなたが疑問に思っていること、知りたいことから、ワシが知っていることを答えよう。その後に、これから必要であろうことを話そうと思う。それで、よいかの?」
一休は透子の目を見て、聞いた。
「はい、それでお願いします」
透子もほっとして一休に応えた。
(さすがじい様、だてに長生きしてないわ、これで、この異世界のことがようやくわかるのね・・・亀なのが残念だわ、これが犬とか猫なら申し分ないんだけどね~)
・・・内心どこまでも、モフラーな透子であった・・・
「・・・なんか、不埒な気配がしておったが・・・まあ、よい、無視しよう。で、何から知りたいかのう?」
「はい、ええっーと、ここがどういう世界で、どういう場所にいるのか?・・・からです。名前とか、位置
など地理的な情報がほしいです。」
「フム、世界の名前は知らぬのう。精霊様なら知っておるかも知れぬが・・・場所はのう、イーストニア大陸じゃ、イーストニア大陸の東端のやや北よりじゃな、茸を取った山は、ノアという。
ここはノア山の西南の森で、昔は泉の森といわれていたが、今はどうかのう? だいぶ泉が消えたようじゃ・・・ワシもこのあたりに来たのは4~500年ぶりくらいかもしれぬ。
以前よりも森がかなり小さくなっているようじゃ・・・理由はわからぬ。
精霊様の滝の川は南へ流れておる。ノア山から流れるいくつかの川と合流しさらに南へと流れて、海に至る。 ワシはその海から上って来たのじゃよ。
この川沿いには小さな里やそこそこの町が点在し、大きな街もあるようだが、寄り道はせんかったのでなぁ。今はどうなっておるやら?・・・人属は、国という名の縄張り争いが絶えんからの、たまに陸に上がると支配者が変わり名も変わっておるのでなぁ・・・特に、ヒューマンとリザートマンと獣人は、縄張り拡大意識が強くてのう。 魔人や翼人のように温厚にならんかのう?」
(ちょっとちょっと!気になる単語が出てきたんだけど!超、気になるんだけど! 獣人って!獣人って! ・・・もしかしなくても、けも耳しっぽ二本足であるく人だよね! さすが異世界! やばっ!興奮する!まじかっ! 聞かなくては!)
「はい! 獣人について聞きたいです!」
透子は目を輝かせて、ランランとして、手を挙げて質問した。
クーリンは胡乱な目で透子を見た。
一休は、あっけにとられた。
「あっ!ついでに、ヒューマンとか、リザートマンとか、魔人とか翼人ってのも説明よろしくです!」
透子はワクワクとした昂揚感で一休に督促した。
クーリンはあきれた顔をした。
一休は苦笑いをしながら、心得たように聞いた。
「トロ子のいた世界には獣人はおらんかった。リザートマンも魔人もかの?」
「そ そうです! いなかったです。ヒューマンは、もしかしたら私のことですか?」
「そうじゃ、トロ子はヒューマンじゃ、じゃが、知っておるのはなぜかな?」
「ゲームや物語ですね。架空の。 そこにでてきます。」
「ゲームとはなんであろう? 架空とは?」
「えっ? ゲームとは? (なんて説明しよう? 難しいぃ・・・) 架空とは、実際にない夢のような・・・空想?上の頭の中で考えた・・・現実でないこと。で、ゲームは遊びのひとつで、架空のというか現実でない戦いで勝敗や順番を決めることです・・・たぶん? (合ってる?・・・大丈夫?)
「ほう、トロ子のいた世界には、そのようなものがあるのか! 実際に戦わずに勝敗や順番を決めるゲーム! とは、血が流れたり、命が失われるようなものではないのであろう?」
「ええ、血は流れないしケガはしないです。もちろん命もあります。・・・というか、遊びの一種なので。 だだし、子供だけでなく大人もします。」
「仮装をしての、模擬試合のようなものに近いかの?」
「あっ! そんな感じです。」
「なるほどのう~、そなたの世界は、この世界にないものがいろいろあるようじゃな。非常に興味深いのう~」
一休が思案するようにうなずく。
「では、話を戻すが、・・・ワシとクーリンは、四足属じゃ、トロ子は二足属じゃ、二足属を別名、人属と呼ぶ、主に陸に住み、縄張りをもって支配するのじゃ、一番多いのは獣人、次にヒューマン、魔人、リザートマン、翼人の順かの?」
「ヒューマンでないんですね?!」
「一つの種族としては、ヒューマンが一番多いがの、獣人は族種が多岐にわたるでの、説明しきれないんわ、そのうちいろいろ出会うであろう、この森でここから一番近い里に二足属の獣人がおる。種族は・・・はて?なんであったろう? クマ族かヤギ族かウサギ族のどれだったような感じかの?
ちなみにクーリンは四足属カワウソ族じゃ、ワシは四足属甲羅族や。二足と四足以外では、多足属と無足属がおる。」
(ウサギだって!! 会いたい!モフモフしたい! クマもヤギも触りたい! わー楽しみ♪)
ニヤニヤし、妄想しはじめる透子であった。
クーリンは、不気味なものを見るような目で透子を見て、更に距離をとった。
「・・・聞いておるかの?」
「は はい、もちろんです! で、魔人とは?」
(あー、ヤバいヤバい、妄想ただもれしそうだった。)
「魔人は、ハーフリンク族、エルフ族、ドワーフ族、角族、鱗族かの。」
(キター! エルフ!! ドワーフ!! もうそのまんまファンタジーの世界じゃん!!まじかっ!!)
心の中で叫ぶ透子、しかし、ただ漏れしているため、さらに胡乱な目をクーリンからそそがれていた。
「・・・魔人も見たことはないが、知っておるようじゃの」
一休の言葉に首を縦に何度か頷き返した。
「リザートマンは竜種の二足属じゃ、ただし、魔力の高い竜が、リザートマンに変身している場合もあるの。あと、翼人はその名のとおり翼がある、姿はエルフに似たものが多いがヒューマンに似たものもおるな。どちらもあまり町や街にはいないの。少数で山里か湖沼里におるのう。 だだしリザートマンのオスは闘魂心あふれているゆえ、若者は豊かな物や金を得るためヒューマンや獣人や角族の争いに加担するものが多いようじゃ。」
「ふーん、なんとなく属と族種がわかってきた。確認だけど、お金を使用したり服を着ているのは二足属? もっていないのはそれ以外?」
(洋服とお金は、知能と経済の証明だよね、地球で動物は服を着なかった。ペットは別だけど。・・・でも、クーリンと一休は知能はあっても経済はなさそう。現にお金をもっていない・・・必要としなかった。 それは四足属だから?・・・服はどうなんだろう?)
「フム、よい質問だのう。二足属で陸にいるものはほとんど服をきている。きていないのは、水の中に住むものと空におるものかな? 陸におるものは四足属も町や街に入るには服をきるな。金と服と身元証明がないものは街や町にはいれぬ。 つまり我らは身元証明と金を里か村で手に入れる必要があるということじゃの。」
「お金は、採取した茸を売ればいいけど、身元証明はどうすればよいの? それにクーリンの服は?」
困惑した顔で、聞き返す透子。
「クーリン、水の精霊様に召喚されたときに基本的な知識と情報はいただいたのであろう? そのあたりはどうなのじゃ?」
一休は、クーリンに問う。
「タッキー様は、川を下り最初の村ノアキネー村の村長に会い、水の祠に行くように言われた。 祠には二足属の地域に必要なものが用意されているから受け取るようにとのことだっだ。 採取したものもこの村でお金に交換できるそうだ。あと、何か困ったことがあるときは水の祠を訪ねるように言われました。」
「そうか、水の祠は以前とあまり変わりないようじゃの。」
一休ほっとしたように言った。
「じゃあ、そのノアキネー村に向かうのね?!」
透子は明るく言った。
一休とクーリンは頷いた。
「トロ子よ、他には何が聞きたいかのう?」
一休がたずねた。
「!! そうそう!! シルフィード様って誰? 風じゃないの? 天の精霊様って? 風魔法とか?精霊魔法の種類とか? 魔族は魔法使えるのよね? ヒューマンとか獣人とか他はどうなっているの? プリーズ!」
透子は、魔法のことを思い出して、テンションが上がってきた。
「興奮しすぎじゃ、 おちつかんかい! (あの子とはだいぶ違うのう)全くしょうがないのう。 ・・・その様子では、魔法も初めてのようじゃな。 (あれだけ非常識な水の精霊魔法をぶっぱなして・・・いや、知らぬからこその非常識かのう?) それでは、 基本的なことから、話すとしようかの。」




