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2   鬼畜な道のり



人がいるところを目指して歩き始めた二人だったが、婦女子の足にはキツイ道のりであった。


踏み固められているといっても、ごつごつしており石も当然のように落ちており、時々上り坂あったりと


現代の道とは比べものにならないものだった。


そのため、水上が常森のことを気遣い、数回の休憩をはさみ、歩き続けた。






水上は焦っていた。


突然どうしたと思われるだろうが、聞いてほしいんだ。


食料もほとんどなく、予備知識もない状態で放り出されたら、男一人の場合は何日か絶食とか、


虫と雑草食べましたとかもあるよ?でもね今回のは違うよ?


女の子がいるんだよ?お嬢様が!そんな展開になってみやがれ、泣きながら草を食べるお嬢様…。


やべぇ、ちょっといいかもとか思っちゃった。


何故こんなことを考えているかというと今、日が沈み始めてるんです。


歩き始めは真上にあった太陽らしき恒星が、今は山に隠れだしているのです。


信じられますか?お嬢様をこれだけ歩かせてしまう鬼畜仕様。


今とか疲れすぎてお嬢様無言だもの。


こう勝手な事を考えている間にも歩を進めていた。


すると小さな小高い坂の先に目的の物を発見した。


「おい、お嬢様!町、いや村を発見したぞ!」


心底うれしくてハイテンションで伝えてしまった。


「えー、はい、とてもよろしいと思います。」


わかのわからない格好でわかのわからない事を言い出すお嬢様。


これは相当にやばい状況なので、目的地も発見したことだし、最後の休憩を行うことにした。









木の木陰で火照った体を涼ませながら、休憩することにした。


「ほら、お嬢様水を飲んで、ゆーっくり休憩しよう。」


水を差し出す水上。


「あ、ありがとうございます。あと、お嬢様って呼ぶのやめてください。私にはちゃんとした名前が


 あるんですから。」


少し休憩したら回復したようで、疲れた顔をしながらもきりっとした声である。


「そうだ、名前といえば伝え忘れていた。」


まるで豆電球が光ったかのように、顔を起き上がらせた水上。


「何をですか?」


「俺たちの、苗字からの名前という体系は、多分こっちの世界では通用しない。


 なのでこれからは、苗字は呼ばずに名前だけで呼び合おう。」


「えっとそれはつまり欧州的な習慣の可能性が高いということですか?でもそれでしたら、苗字は後に


 つければよろしいんでは?」


「こういうのは、苗字があるのは貴族だけっていう、テンプレが存在するんだよ。」


なんのくもりもない瞳で言い切られたため、常森もいいかえせなかった。


というか、この世界は自分の価値観とは違いすぎるため、目の前の色々知ってそうな男に頼るほか


なかった。


「…ていうことは、水上さんは私のことをヒメノと、私は水上さんのことをし、シンさんと呼べばよろしい


 のですね?」


ちょっと頬を赤くしながら言うの可愛いね。


ヒヒっと口元が気持ち悪く歪んでしまうが、ここで一つ問題が発生するのである。


あれ?俺がヒメノと呼び捨てにするのか…


そう考えた瞬間、何故か体温が数度上がった気がした。


滲み出る汗、特に手汗が酷い、握りしめた掌が軽く水に突っ込んだかのような湿り具合になっている。


だが、だがしかしだ。俺と彼女は3歳ないし4歳離れた関係なのだ。


ここは一つ、年上の威厳としてこんなことではてれないぞというところを見せておかねばなるまいて。


ふふ、ここは平常心でいこう。


ちなみにこの間0.5秒なのであった。


「あぁそういうことだひ、ヒメノ。」


無理だったーーーーーー!!!全く同じことしてるーーーーーー!!!!


ふぅ、と息を吐き出し。


「さぁ次の話だ。」


さっさと話題転換することにした。








「次は、村に入る時だな。」


「何か気を付ける事があるんですか?」


「身分を詐称する。」


自信満々の顔でそう宣言した。


「えーと、それはつまり私たちの職業である学生や会社員では通用しないからということでよろしい


 でしょうか。」


「中々鋭くなってきたねー、そーいうこと。今回詐称するのは、旅人だね。どこから来たって言われたら


 東の国から来ましたって言っとけばオッケーだから。」


全くもってテンプレだぜ。


「なるほど、旅人ならばその時代背景に合わない服装だったとしても、他国の文化として受け入れられる


 可能性があるわけですね。」


フムフムと納得したように頷くヒメノ。


「そーいうことだな、ま、一番恐ろしいのは文字も読めず言語通じないことだけどな。」


サラッと言ってのけた重大事項に過剰反応する


「そ、それではコミュニケーションもとれないじゃないですか!どーするんですか!」


顔を近づけていい匂いを漂わせてくる


「まー、大丈夫だろ、言葉が通じないときは、それに対応する魔法とかアイテムとかがあるはずさ。」


また、ヒメノには理解の出来ないことをいうシンなのであった。


「それと、面倒ごとは嫌だからひ、ヒメノの顔を隠させてもらう。」


おうおうかわいい嬢ちゃんじゃねーかとか面倒で仕方ない。


「そ、そんなに酷い顔ですか私!?」


真剣に泣きそうな顔をしている。


「それ本気で言ってる?」


単純に本音で言っただけなのだがそれがより深くヒメノを傷つけたようで、


「もう、いいです。こんなに顔のことを罵倒されたのは初めてです…。」


頬を膨らませて、悲しそうにしていた。


今まで、自分の可愛さに自覚なかったんかい!


普通、小学校 五年生くらいには


あれ?私他の人より可愛くない?


ってなるんじゃないの?


なに?純粋培養の天然さんなのかな?


まー、こんな子に顔のことで罵倒するなんて、小学生の男子か、嫉妬深い女子くらいのもんだろう。


なんとか否定してやりたいが、ここで


"酷いんじゃねぇ、可愛すぎるのが悪いんだよ”


とかハーレム系主人公みたいなこと言えねーよ!


なのでどうしようか考え、


「別に酷いとかは言ってないし、思ってないけどそのくらいでめそめそするなよ、


 自分の価値は自分で決めて、自信もって生きて行けよ!」


ごめんなさい、この程度が精一杯だったみたいです。


その言葉にヒメノは


何も言わず俯いたままだった。


あっるぇぇーー、これほど純粋な無視は久しぶりにされたなー。


何故か、目から液体が流れそうです。


しかし、傍から見た少女の口元は少し笑っているように見えなくもなかった。




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