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1   社畜 転移する



高校生活それは、これからの人生を決める大事な時期であり、自己を育むための時間だ。


お金がない代わりに、自由と時間がたくさんあった。


その時間を将来のためと言い聞かせ、血の涙を流しながら勉強に費やし遂に大手の企業への就職を


つかんだのだった。


家庭の事情で大学へ行けないと早くからわかっていた俺は、高校で勉強しないと入れなかったのだ。


そう将来のため、将来のため、将来のため、将来のため…


そんな事考えていた高校生の俺を今無性に殴りたい!


彼女作っとけよ!遊んどけよ!友達作っとけよ!


何故こんな事を考えるか、それはこの会社がドがつくほどのブラック企業だったからだ!


超過労働、サービス残業当たり前。終電ギリギリで帰り、また早起きして会社に出勤し、


休日出勤も当たり前なんだ。労働基準法はどこいった!?


訴えてやろうかと思うような労働環境でそれでも辞めずにやってきたこの一年、本当に社畜として


頑張っていると自覚しております。


そんなことを思いながらも仕事の真っ最中なのである。


あと5分で昼休憩だ。今日は真っ先にエレベーターに乗って外食に行こう。そう決めた。


昼休憩の音楽とともに立ち上がりエレベーターに向かって走った。上司が俺の名前を呼んでいた気が


するが、知らんな、今の俺はだれにも止められねーぜ!


エレベーターの前につくと同時にエレベーターが止まった。ラッキー!ついてる。


ドアが開くと同時にむさいおっさん、略してむっさんが降りてきた。


…嘘だ。わが社の社長が後ろを向き手を振りながら出てきた。


俺はさっきまでだらんとしていた顔と身なりを整え、社長に礼をした。


社長は俺のことを気にするでもなく去っていった。


ちっなんだよ、中指をたてたい気持ちを押し殺しながらエレベーターに乗った。


そこでふと考えた、社長…いやむっさんは誰に手を振っていたのだろうかと。


前を向いてみるとそこには一凛の花が咲いていた…。


制服を着た、高校生らしい少女が不機嫌そうに立っていた。


そう、不機嫌そうにだ。どんなに可愛くても不機嫌ならば恐ろしいものである。


思わず会社で援〇かと深慮したが、俺には関係ないことなので取り敢えず関わらない事にした。


何も言わず、立ち尽くしているとエレベーターが揺れだした、するとキンッという音とともに床に


魔法陣が浮かび上がり、エレベーターの中は光で包まれた。


そこで俺が思っていたことは、閃光弾を受けたらこんな風になるのかなというどうでもいいことだった。


そこで俺の意識は途切れた。







「知らない天井だ」


と言ってみたかったのにそこには天井すらなかった。


そう空は青々としていて見ている範囲でもたくさんの自然を見ることができるそう、ここは所謂


RPG世界でいう草原というところに違いない。


そこで俺は仰向けになって寝ていた。


こ、これは小説でよく見る異世界というやつなのでは?


と淡い期待をもちながら周りを確認してみる。


そしてひとつ違和感に気づく、隣に女の子が寝ているのだ。


そしてその女の子はエレベーターにいた不機嫌そうな少女だった。


少女はまるで絵画の中から飛び出してきたかのような、美しい表情をしていた。


元々可愛い子が寝ていると何かグッとくるものがあるよなー。


そう思った時悪意が頭をよぎらなかったといえば嘘になる。


だがその悪意を理性で耐え忍ぶそれこそが真の草食動物インパラのあかしだ。


うるせー!だれが草しか食えねーチキンだ!


とノリツッコミをしてもさみしいだけだ。


と考えていると、彼女の目が開きこちらを見ていた。


「お、おはよーございま…」


「きゃー!変質者ー!!」


こっちが笑いかけて挨拶してるのに顔面を殴られた。しかもかなり痛い。


「なんですか!なんなんですか!!なんで私が寝ている隣にいるんですか!?」


「あれ?なんで私は寝てたの?さっきまでエレベーターの中にいたはずなのに。」


「床が光って…あれ?」


わかりやすい慌てふためきをありがとう。


「状況は分からないだろうが、ひとまず落ち着いて。」


左の頬をはらし、口から血を流しながらも笑顔でいう俺。


「ち、血が出てますよ!ごめんなさい、びっくりしちゃって手が出ちゃいました。」


「挨拶しようと思ったら殴られるとは思ってなかったなー。」


少女の顔がしゅんとしていく。きっと俺の笑顔が冷たかったんだろう。


「まー、大丈夫。こういうのには慣れてるから。」


極めて明るく、ぱんぱんと左頬を叩きながら改めて少女と視線を合わせる。


「そ、そうなんですか?本当にすみませんでした。」


ペコリと首を傾けながら謝罪する少女に、


「取り敢えず、この借りはどこかで返してもらうから…。」


多分鏡で見るとあんまりだと思うくらいの胡散臭い笑みがはりついていたのだろう。


今度は恐ろしいものを見るような目つきで少女は俺を見返していた。







取り敢えず自己紹介をしようという俺の発言によってそういう運びとなった。


「俺の名前は水上みかみ しん、職業は所謂サラリーマン、20歳だ。」


「私は、常森つねもり 姫乃ひめの と申します。高校2年生です。」


それだけの情報交換後、シンとした空気が流れた。


やっべー何話したらいいのかわからないや。


と脳内で会話シュミレートを行っていると


「水上さんは落ち着いていらっしゃる様子ですけど今の状況がわかっておいでなんですか?


 エレベーターにのっていたら突然光って、全く別の場所に移動しているなんて…。」


「まー、有り体に言えば異世界召喚にあったということだな。」


「異世界召喚?」


常森さんは本当にわからなそうに首をかしげている。


あー、オタクじゃないとわからないか。なんだかオタクっぽいことを言うのが怖くなってきた。

え?きもwとか普通に心をえぐること言い出すからね女の子って。過去の経験がそう言っている。


「えーと、自分達の世界とは違う成長をとげた世界に、連れ去れたと考えたらいい。」


「私たちの世界と違う?つまり別の世界に来たということですか?」


「おそらくそういう事だな。確証はまだないが。」


うーん、よくわかってないみたいだ。何かを考えて、何か閃いて。


「それってこれからどうするんですか!!」


顔を近づけながら叫んでくる。


「こういう場合は近くの村などに行くのが先決だな。食料の問題もあるし。」


そう、こういうわからない場所に来た時や遭難した時などに、一番重要な問題は食料だ。


何が食べれて、何が食べちゃいけないものなのか、現代の人はほとんどわからない。


しかも、俺たちの場合は多分異世界なのだ。予備知識が一切ない以上知っている人に聞くのが一番手っ取り早い。


「何か食べ物や飲み物は持っているか?俺はカロ〇ーメイトを持ってるが。」


夜食用に朝買っていたカロ〇ーメイト、口はパサつくがとてもうまいんだよなーこれが。


ポケット等を漁り、申し訳なさそうに発言する。


「ごめんなさい、水が一本だけですね。」


なぜか落ち着いていたがなぜだろう。まーそれはいいとして、現在の食料カロ〇ーメイト二本入り


と水500mLの飲みかけ…。これ一日持つかな?そして俺はが女子高生の飲みかけの水を飲めるのか。


精神的に無理そうな今まで彼女がいない水上なのであった。


「他の所持品はあるか?」


「えーと、ハンカチとティッシュぐらいですね。他は車に置いて来ちゃいました。」


悲しそうに俯いていた。


「俺は財布とケータイと、ボールペンが数本…。」


そういった瞬間少女が勢い良く近づいてきた。


「ケータイ!?ケータイがあるのですか!?それで助けを呼べば…。」


「期待してるとこ悪いが、最初に確認して圏外だとわかっている。」


「そ、そうなのですか…。」


わかりやすくしょんぼりする少女。


「まー、頑張って帰る方法を探そう。テンプレだと魔王を倒せば帰れるかもしれないから。」


「はい…。」


不承不承といった感じでうなづいた。


「というわけで食料はほとんどないので、急いで人がいる村とか町までいこう。」


歩き出そうとすると


「でも、どうやって人がいるところにいくのですか?」


不思議そうに首を傾げた。…可愛い


だがそんなことを思っていることをおくびにもださず、


「あっちに草が生えてないところがあるでしょう?あの道を進めば街か村につくはずです。」


そうテンプレだった。そこからどっちの方向に行くか迷ったが、感で進むことにした。






そこから小一時間、俺たちはぽつぽつ話しながら歩き続けたが、人の気配が全くしなかった。


そして自分の体に特殊な力の気配も全くしなかった。召喚されて即チート系の異世界じゃないみたいだ。


考えていたのと全く違うんだが?なんだかんだで力に目覚めてどうにかなるやつじゃないの?


最初は今までモブにもなれなかった自分に、主役の番がついに来たと内心思っていた俺だが、


話していくうちに主人公の可能性が出てきた常森 姫乃がいるため精々脇役かなと思い出した今日この頃


だって、この常森さん。俺の務める会社の社長の娘で所謂お嬢様というやつで、


才色兼備、文武両道で部活の書道では全国に名をはせるくらいだとか。


ちなみに今聞き出した情報はわが社の社長の娘ということだけで、他は上司から新人歓迎会の時に、


社長が来られた時用にと覚えさせられた情報だ。


ま、来なかったが…


「水上さん、私たち元の世界に帰ることができるのでしょうか?」


不安そうなお嬢様。


「大丈夫だ。俺に任せて。」


安心させようと極めて明るい声をだすと、お嬢様は俯いて黙ってしまった。


何故だろう、何か悪いことでも言ったのだろうか。女子の心が全く分からない俺であった。

























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