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6、試行錯誤

「くそっ・・・・!」


野兎の後を追って森を駆け回る。

50メルト先にはリセとおじさんが文字どうり網を張ってる。

俺の仕事はそこまで追い込むことなのだが、それがなかなか難しい。

まず足場が相当に悪い。

覚悟を決めて足を踏み下ろさないととても走って移動することができない。

野兎にとっては自分の庭のようなものなのだろう。

素早い動きで茂みに飛び込んではこちらの目を振り切ろうとする。

空間魔法のおかげで見失うことはないにせよ、そろそろこちらの体力も限界だ。

日々運動してないツケが回ってきている。視界が開けたのが最近だから、仕様がないけど。

そもそも俺がこいつを逃がしていなければこんなことにはなっていないわけで。

正直野生動物を舐めていた。


********** **********


俺たちはいま、昨日行った村を越えて、さらに北へ歩いている。

あと300メルトもすれば、森に入るようだ。


「ケルン!森の中にはケージ型の罠が九つ設置されてるわ。見える?」


言われて正面に向いていた視点を俯瞰に切り替える。

木の葉が邪魔で地面までは見えない。

視点を上空から下げる。

葉が茂っている木の上部から幹のあたりまで。

地面が見えた。

うーん。

地面を注視しながら視点を移動させる。

白黒で描かれる視界にそれらしいものはない。


「ごめん、わからない。大まかな場所を教えてくれる?」


「分かったわ。一つ目は、・・・」


リセから罠の設置場所についての説明を受ける。

森の中央を横断するように川が流れていて、俺たちはいま川沿いを歩いている。

森に入ってしばらくすると傾斜が生まれ、高さ200メルトほどの小さな山地が広がる。

罠は傾斜が始まる手前、それぞれの設置場所を50メルト程度離してまばらに置いてあるらしい。

そこでふと思いつく。


「ねぇ、獲物がかかっていない罠って回収する必要があるの?」


「いえ?おびき寄せるための餌の交換は必要だけれど、昨日の朝したばかりだしいらないと思うわ。」


「ケルン君。動物は新しいものに警戒するんだよ。

仕掛けたばかりの罠にはめったにかかってくれないのさ。

同様に、獲物がかかった罠にはかかった動物の匂いが染みつく。

それにもほかの動物は寄ってきたがらない。人間と肉食動物を除いてね。」


「だから、獲物がかかってない罠の交換はそれが壊れない限りいらないよ。あまりにも獲物がかからないときは罠の設置場所を考える必要があるけどね。」


おじさんから補足が入る。

なるほど。匂いか。

獲物のかかった罠を放置すると肉食のやばいやつが来ると。

肉食ということは人間も捕食対象なのだろう。

そういう意味で害獣扱いなのか。

一つ一つケージを確認するのはいささか面倒だな。

なんとかできないものか。


「獲物がかかっている罠だけ感知できないかやってみます。」


「動物も魔素を持ってるんだよね?」


「え、ええ。もってるわ!」


リセとおじさんが息をのむのがわかった。

空間魔法が使えるようになってからあまり時はたっていないが、徐々に慣れてきたように感じる。

なんとなくだができる気がしたのだ。

目を閉じる(・・・・・)

俺は魔法の種類を感知できた。

つまり魔素から魔力への変換過程で、

それがどんな事象を世界にもたらすのか感覚で読み取ったということだ。

では魔素自体の感知も可能ではないのかと思う。

もしかしたら魔素を感知することで、視界を白黒で表示できているのかもしれない。

ともかく、俺が試すべきは空間魔法でどんなことができるかだ。

もともと理論がわかって使えているものではないのだ。

必要だったから、視界が見えないと駄目だと思ったから使えるようになっただけのこと。

できることを増やす。

理論がどうとかは後から考える。

自分は他人に圧倒的に劣っているのだから。


----むしろ勝っている点が多々あるのだが、人づきあいを初めたばかりのケルンの自分の相対評価はこんなものだった。


平静を保っていた俺の神経が熱さを訴えてきた。

魔素って熱いんだな。

リセとおじさんの熱源を感じる。

感知範囲を自分を起点に薄い膜状に伸ばす。

・・・ん?地面の下から無数の熱を感じた。

リセとおじさんに比べたら感じる温度はだいぶ低い・・・と、思う。

ミミズなんかの魔素だろうか?

どうも感知の感度が高すぎるみたいだ。

調整は後でいいか。俺は構わず感知範囲を広げる。


・・・あれ?なんかリセが熱くなってる。いや、言い方がおかしいかな。

リセの魔素が熱くなってる。


「リセ?」


一旦視界を開いてリセを見る。

なんだかぼーっと俺のほうを見ているようだ。


「な、なに・・?」


スカートの端をつまんでもじもじしている。


「い、いや、なんかリセが熱いなって思って。」


「えっ・・?」


俺がそういうとリセは頬を両手で抑えて困っている様子だ。

どうしたんだろう?


「えっと、だいじょぶ?」


俺はリセに近づいて、頬を覆っている両手の上から自分の手を重ねてみる。


「ひうっ!?」


ビクッ!とリセが震えたかと思うと体を硬直させた。

実際に感じる体温も、俺のそれよりも熱いように感じるな。


ゴホン!とおじさんが咳払いをしたかと思うと、

うにゃあと頓狂な声を上げてリセが素早く俺から距離をとった。

なんなんだ??


「は、早く罠を調べてよ!!」


しばらくチラチラとこちらを見ていたかと思ったら、おもむろに顔をこちらに向けて言い放つ。

わかったよ。

俺は再度集中する。今度は視界を閉じずにやってみる。

感知範囲の拡大に合わせて視界も広げてみる。

ちょうど視界の範囲内と感知範囲が重なるように調整した。

これで獲物が視界内に入ると同時に熱を感じるから、見逃すことはないだろう。

意識が木々の合間を縫って飛翔する。

こうして視ると森にはいろんな生物が潜んでいるな。

感知範囲を傾斜が始まるところまで広げた時、頭痛を感じた。


「痛っ。」


ここが限界か。

半径300メルトの扇型が俺の感知範囲らしい。

感知目標物いかんによっては感知範囲も前後するだろう。

大きな魔素を持つものを感知しようと思えば、

ほかのいわゆる微生物が持つ魔素のような小さいものは感知から外していいんだから。

そこらへんは慣れかな。

そんなことを思いつつ、傾斜が始まる地点以外の視界を切る。

同時に、切った視界の範囲内の魔素感知をやめた。

ここから傾斜の地点まで獲物は感知できなかったのだから、その情報は捨てていいだろう。

あんまりたくさんのことを考えると、脳がパンクしてしまう。それと同じだ。

扱う情報量があまりに多いと、頭痛という形で脳が限界を訴えてくるのだろう。

傾斜が始まる地点からまた魔素感知をしていく。

そうしてしばらくして、


----見つけた。


「獲物がかかっているケージは三つあるみたいです。」


「それじゃあ一人一つのケージを回収しましょうかい。ケルン君、場所を教えてくれ。」


お、これはアレ(・・)を試すいい機会ではなかろうか。


「分かりました。手を出してもらえますか?」


「うん?ほれ。」


「リセも。」


「え、ええ。」


リセとおじさんの手をつかむ。

に”ぃあ!とリセが奇声を上げた。

おじさんは苦笑気味だ。


「ちょっとリセ!暴れないで!試したいことがあるんだ。」


言いつつリセの手を掴んでいる右手を強く握る。

暴れていたリセがおとなしくなった。

よし。

俺はずっと思っていた。

父さんや母さんが見ている景色が俺に伝わればいいのにと。

言葉だけではわからないことが多すぎて、とてももどかしかった。

昨日初めて自分の見てる景色を言葉で伝えようとした。

自分でもうまく伝えられたとは思わない。

だから手段を変えよう。


俺が今見てる景色は、獲物が入った三つのケージと現在地だ。

これを魔法で伝えるんだ。

目を閉じた(・・・・・)

真っ暗闇に白で立体図を描く。

さっき見たものを狂いなく。正確に。

目を開けた(・・・・・)

うん。一致した。

体の中の魔素から魔力を練り上げる。

練り上げた魔力に立体図のイメージを流し込む。

同じ魔力をもう一つ作り上げる。

二つの魔力を同時におじさんとリセに流し込む。


・・・これじゃだめだ。放出された魔力はイメージを伝えて霧散してしまう。

イメージを記憶できないといけない。

流し込んだ魔力はまだ俺の制御下を離れていない。


そうか!

俺は魔力を魔素まで分解した。

おじさんとリセの魔素に同調させる。


魔力から魔素を作ることができたわけだから、

魔力に流し込まれたイメージをうまく取り出せたのではないだろうか。

そして、その魔素を定着させれば、俺のイメージが記憶として定着するのでは?と考えた。

これでイメージは二人の記憶に残ってくれるはず。

いけたか・・・?


「ど、どうかな?伝わった?」


「「・・・・」」


反応がない。

二人とも目を見開いてピクリとも動かない。


「すっっごいわ!!!!!」


リセの感情が爆発した!

尊敬、憧れ、喜び、期待。

感情がダイレクトに伝わってくる!

魔素を同調させているからか、感情が流れ込んできた。

慌てて手をおじさんとリセから離す。

だが、興奮しているリセによって両手を掴まれた。


「すごい!すごい!なんなのこれ!?こんな景色見たことないわ!それに景色の中を自由に動ける!ケルンはいつもこれを見てるのね!!」


怒涛の勢いとはこのことだ。

目まぐるしく感情が変わる。

俺がどんなにすごいことをしているのかを、

言葉よりもずっと如実にょじつに伝えてくれる。

こんなに他人に認められているのを感じるのは生まれて初めてだ。

やばい、胸がいっぱいだ。


「それに、ケルンがどんなに伝えたいことを持ってたか分かったわ。ありがとう。伝えてくれて。とっても嬉しいわ。」


そういって彼女は微笑む。

ああ、今のこの感情をなんと形容したらいいだろう。

いや、しなくていいのか。だって、もう。


----伝わるんだから。


----こちらこそありがとう!リセがどんなに俺をすごいと思ってくれてるかわかった。


リセの目を見て伝える。


----! う、うん、ケルンはとってもすごいわ。


感情の応酬がとても心地いい。

俺のことを認めてくれている人だからだろうか。

もっとリセのことを知りたいな。

そんな俺の感情に、彼女は焦ったようなくすぐったい様な、複雑な思いを返してくる。

でも嫌がってる感じじゃなくて。

それがまたうれしくて。


「あー、儂は邪魔ですかな?」


その声で我に返った。

俺とリセは両手を握り合ったまま見つめあい、

そのままずっと動かなかったように見えたことだろう。

まるで恋人同士がするそれのように。

リセが慌てて手を放す。

手を放す直前、ものすごい羞恥の感情が流れてきた。

俺は離れる瞬間、なんともいえぬ寂寥感を感じた。

たぶんそれがリセにも伝わってる。

俺たちは伝わった感情を確認するかのように、

同時に目を合わせて、被ってしまった行動を恥じてまた、うつむいて頬を染めたのだった。



俺は立体地図のイメージを用いて、獲物が入っているケージがどれかをリセとおじさんに伝えた。

二人は目を閉じて確かめていたが、どうやら不足なく地図の情報は書き込まれていたらしい。

三人で手分けしてケージの回収を行うことになった。

俺は一番東側のケージに向かう。

ケージ回収後は一旦集合する運びとなった。

集合地点は回収するケージが俺とおじさんの間にあるリセがいる場所だ。


俺はケージがある場所までやって来た。

森の中は木が生い茂っていて進むのに苦労するな。

ケージの中にはぐったりとしている物体がいた。

直径30セルチ程度の卵状の毛玉に耳がくっついたようなやつだ。

野兎と言うらしい。

お肉だ。

じゅるり。

取り敢えず近づいてケージを持ち上げる。

ケージには獲物が入ると入口が閉まるような仕掛けがされているらしい。

結構重いな。

野兎はピクリとも動かない。

死んでいるのか寝ているのか。

どちらにせよ暴れてくれないのは好都合だ。

そう思い、俺はリセがいる場所へと向かう。

エリーさんの手にかかったこの野兎はどんな素晴らしい味を俺に伝えてくれるのだろうか。

そんなことを考えながら、150メルト程度の道無き道を掻き分け歩く。

それにしてもリセとおじさんはよくもまあ、こんな森の中で道が分かるものだ。

俺は空間魔法があるからいいとしても、彼女らは迷ったりしないんだろうか。

長い間狩りをしているのだろうな、と思う。

何とは無しに自分の広がった生活区域について、しっかり学んでいかないと、と言う感情が芽生えた。

ん?どうやらリセがこちらに気づいたみたいだ。

手を振ってる。

こっちも手を振り返す。


「うわっ!?」

----急に野兎が暴れ出した!?


リセの足元には血抜きをし終わった野兎がいた。

同胞の死に対しての慟哭(どうこく)か、はたまた恐怖かはわからないが、動物は死に過敏に反応する。

そして動物は人間を含め狡猾である。

暴れ出したタイミングは野兎にとっては最適で、ケルンにとっては最悪であった。


リセに手を振っていた俺は片手でケージを持っていた。

野兎の暴れる勢いに耐えきれずケージを落としてしまう。

出入り口が落とした拍子に少しだけ開いた。

兎は体をねじ込ませ、自ら回転しながらこじ開ける。

脱兎の如しとはよく言ったものだ。

一度逃げ出せば、捕まらない。

一瞬だった

俺はただ、逃げ去るのを眺めていただけだった。


「ケールーンー?」

ジト目のリセがこちらを見ていた。


作戦会議だ。

野兎脱走劇のすぐあと、おじさんが合流した。

言わずもがなとどめ刺しは終えていた。

なんと言うか、俺がなにかしら失敗するのは織り込み済みだったらしい。

鞄の中に、高さ2メルト、長さ8メルトの巨大な網をおじさんが持って来ていた。

そのほかにも、傷薬、魔法具、etc...

森に入るのだから用意するのは当たり前らしい。

兎を網に追い込む役は俺がやることになった。

兎の位置が分かるのは空間魔法を使える俺だけであるのに加えて、

逃したのに他人にやらせるというのは忍びない。


そんなこんなで、冒頭へと回帰する。


********** **********


野兎の飛び込んだ茂みをその辺で拾った枝で叩く。

そうすると音に驚いた野兎が飛び出してくるって寸法さ。

ただ、飛び出してくる方向をこっちで誘導しなければならない。


・・・なかなかうまくいかない!

くっそ、明後日の方向に飛び出した!


野兎を追って走る、というより早歩きに近い。

うぅ・・・足場だけでもどうにかしよう。


そうだ。こういったときは魔法に頼ろう。

起こすべき事象を思い描く。

空気を固めて靴底の周りを覆ってはどうだろう?

よし、やろう。

さっきのイメージ転送で魔法のコツをつかんだ気がする。

魔素から魔力への変換の際に、起こる事象を魔力に書き込めばその事象が起こる。

事象の大きさは魔力量によって変わるみたいだ。ここら辺は感覚だろう。


片足を上げておく。

足の裏の魔素を使うイメージで魔力を作る。

魔力で空気を囲うという事象を書き込んだ。

空気を中に内包する球体が出来上がる。

それを足の裏に押し付ける!

靴底を覆うような空気の塊の出来上がりだ。

よし。

歩いてみる。

この間約3セク程度だ。


「ん?」


・・・あれ?

あまり変わらないな? なんというか、ただ靴底が高くなった感じだ。

白黒の視界には、元の靴底の白線の下に、真っ白い帯状の粒子が映し出される。

片足を上げて、靴底を触ってみる。

固いな。空気を固めるとここまでの強度を出すのか。

もっと綿のようにクッション性があるのかと思った。


・・・待てよ?

何も足に固定する必要はないんじゃないか?

これだけ固いのなら、作れるんじゃないのか?

舗装された道を。


靴に固定された魔法を解除しようとして、やめた。

ふと思った。これはもったいないなと。

せっかく魔素を使って魔力を作り、空気を固めたのに、無駄になってしまう。

なんとか再利用リユースできないものか。


さっきのイメージ転送のように魔素に戻してもいいけど、空気を固めるという工程がいる。

ここで必要なのは、変形と固定だ。

足元にブロック状の空気の塊を作る。そしてそれを固定する。

そうすれば即席の足場の完成だ。

うーん。

要するに、すでに起きた事象を書き換えるってことだろ?


魔法を使って魔法を書き換える・・・?

頭がこんがらがりそうだ。

手のひらの魔素から魔力を生成する。

なんとなく足からより器用に魔力を扱える気がする。

起こしてほしい事象をイメージする。

変形前に戻したいというのが本音だ。

だが、それはすべての発動後の魔法を発動前の状態に戻すことだ。

そんな汎用的な魔法は今はいらないし、やり方も思いつきすらしない。

圧縮した空気塊をもとの球体に戻せばいいんだ。

すなわち、圧力をなくす。

魔法を行使する。

俺の靴底にくっついていた空気塊は果たして、球体に戻った!


同時に、地面に倒れ伏した・・・。

いやぁ、失敗失敗。

いきなり玉乗りしろって言われてもできないよな。


気を取り直して空気塊の空間固定に移る。

こっちは簡単だ。

俺は火の壁を作り出せるんだから。

足元の空気塊を直方体に圧縮。

動かないように魔力を全方位から押さえつける。

俺はさっきの経験を活かし、恐る恐る足を直方体の上に乗せた。


「うぉぉ・・・!」


立った。立てたぁ・・・!

言い知れぬ感動が今、俺を包んでいる。

あ。

兎追ってたんだったな。

俺は慌てて魔素感知で兎を見つけ出した。


********** **********


ケルンが兎を追い立てに行ってから、15ミン位は立っただろうか?

私はまだ顔の顔の熱さを感じている。


「うぅ~・・。」


顔をこねくり回してにやけるのを抑え込む。

私は今、二つのことに喜んでいるんだと思う。


一つはケルンが見たこともない魔法を見せてくれること。

お父様とお師匠様から教わったことが魔法のすべてだと思っていた。

事実、それだけの知識を自分に叩き込んだつもりだ。

ケルンはそんな凝り固まった考えを吹き飛ばしてくれる。

とっても楽しい。

王宮にいた頃、兄や姉たちといるときはこんな感情は生まれなかった。

自分が王になりたいように、彼ら彼女らも同じように憧れていたんだ。

いわばライバルだ。

蹴落としあう関係。

それに比べてケルンはどうだろうか。

彼は私を特別扱いしない。ライバルでもない。力があるのに増長しない。努力を怠らない。

自然と尊敬できるすごいヒトだ。


二つ目は彼が私のことを煩わしく思ってないこと。

魔法を通して伝わってきた彼の感情はとってもあたたかかった。

あの時の私は尊敬やら興奮やらなにやらがごっちゃになってしまっていた。

何を伝えてしまったのかはっきりしていない・・。

今でも胸の鼓動が思考に靄をかけてる。

ドキドキしすぎてどうにかしてしまいそう。


そんな彼だけど。

初めてのことだと失敗することもあるみたい。

兎を逃がして呆然としてた。

抜けた顔してたから少しおかしかったわ。

ふふっ。


「お嬢様、ご機嫌ですな。」


ヅィーオが少しにやけながら言ってくる。


「わ、悪い!?」


「いーえ、楽しそうで何よりでございます。」


むぅぅ・・。今日はなんだかおかしい。

ケルンが絡むと変な言動をしてしまう。

手を掴まれたとき「に”ぃあ!」とか言った覚えすらあるわ・・。


「一人で大丈夫かしら?」


「動物を誘導するのは案外難しいですからな。お嬢様も初めての時は1アウ位かかっておりましたよ。」


そういえば狩りを初めてずいぶん経つ。

初めて狩りをしたのは屋敷から発った直後位だったかしら。

そんなことを思いながらヅィーオと私で網を持っていると。


ガザッ!!

あ。

兎だ。

網目の間に足が絡まったらしく、暴れている。

すかさず魔法を使って拘束する。

使う魔法は雷魔法lv1『スタン』だ。

当たると少しピリッとする。

雷魔法は五大魔法のそれではない。

お父様が開発した新しい魔法系統だ。


この魔法の肝は当たり所だ。

私は兎の目に狙いを定めて『スタン』を放つ。

指先から青白い稲妻が迸る。

狙いたがわず兎の左目に当たった。

兎は硬直した。


直後。

ケルンが天から降ってきた!!



切りのいいところまでと思って書いていたら、かなり長くなってしまいました。

ご容赦を。


メルト=メートル

セルチ=センチ

セク=秒

ミン=分

アウ=時間


ケルンの魔法

・空間魔法

空間認識

空間固定 


・その他

イメージ転送 

魔法の書き換え 

熱線、火の壁



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