雨の日と少女と猫
ある雨の日の事でした
梅雨入り前の日の事でした
雨は鼠色の天蓋から、しきりにたれ落ち、町の路地を濡らしていました
ある少女が、ある街の、ある路地を通りかかりました
昼間から歓声の絶えない酒場の勝手口に、山のように積まれた段ボールに少女は躓いてしまいました
段ボールは咽かえるようなアルコールと食べ残しを辺りにぶちまけました
酒瓶の弾ける音に驚き、少女は逃げるように駆け出しました
あるゴミ捨て場の中に、数匹の子猫が捨てられていました
彼らにしては、何のことだか分からないようですが、確かに捨てられていました
捨てられた猫は五匹でした、内の三匹は既にその目を開きません
残った二匹がエサを求めて泣きました、か細い声は雨に紛れてだれにも届きませんでした
ある少女が、路地から飛び出しました、不幸なことに濡れた地面に滑って転んでしまいました
ゆっくり起きると、雨以外の音を聞き取りました
ゴミ捨て場に一匹の猫を見つけました、その周りには既に四匹の猫が横たわっていました
少女は猫を見下ろして、か細い声でただ
「同じだね」と言いました。