第九十話 戦闘・・・蹂躙終了
どうもHekutoです。
修正等完了しましたので投稿させていただきます。今回は前回よりコンパクトに収まりましたので、ほどほどに楽しんで頂けると思います。
『戦闘・・・蹂躙終了』
名も無き異世界を巡る太陽が、今日も山岳地帯に目覚めの光を行きわたらせ、謎の光と奇声で恐怖に身を震わせていた生き物たちに平穏をもたらす。
「なんという惨状か、これはひどいと言わざるを得ない」
そんな山岳地帯の一角では、荒涼とした山の山腹で周囲を見回したユウヒが、バッグを下げた肩をいつもより幾分落としながら、くすんだ遠い目で小さく呟いていた。彼が見渡す周囲には妙にひび割れた大地に点在する不動の氷塊、その脇に同じくピクリとも動かないゴブルやオークが転がっており、ユウヒの目に分かる限りで死人はいないものの、死屍累々という言葉が良く合う惨状となっている。
「何言ってんだい! この半分はアンタの手柄じゃないかい」
「そうだっけ?」
しかし、この光景を作った原因の半分はユウヒ一人によるものであり、残りの半分はラミア騎士団やオークレディースの複数人によるところで、まるで無関係な人間の様な表情で呟くユウヒに、コズナは突っ込まずにいられ無かった様だ。
「何を飄々と・・・怪我はないか?」
「それはこっちのセリフだよ、あっちこっち怪我してるじゃないか」
コズナに突っ込まれても、口笛でも吹き始めそうな表情で首を傾げるユウヒは、背後からかけられた声に振り返ると、困った様な表情で見下ろしてくる副団長を足元から顔まで見上げて眉をしかめる。何故なら、ユウヒが見上げた副団長の顔には小さな傷がいくつも赤い線になっており、露出している腕にも細かな傷がいくつも刻まれていたからだ。
「ん? あぁ問題ない、よくある掠り傷だ」
ユウヒの指摘に細く鋭い眉を上げた彼女は、自分の体を見回すと柔らかな笑みを浮かべ笑う。
「いやいや、綺麗な肌なんだから気にしろよ・・・ほら、傷薬だ塗っとけ」
「ぅむ・・・そうか、すまない感謝する」
騎士である為小さな生傷は慣れっこであるようだが、ユウヒの様にしかめっ面で心配してくる相手は今まで居なかったのか、それとも彼の言葉だから琴線に触れたのか、僅かに頬を赤くするとどこか戸惑い気味にユウヒから傷薬の入った陶器の容器を受け取る。
「ぶひ、あたしの事は心配してくれないのかい?」
そんな二人の様子を見ていたコズナは不満そうに鼻息を漏らすと、腕を組んでユウヒを見下ろす。
「そっちはほぼ怪我無いだろ・・・ほれ打ち身用だ。少量で効果があるからみんなで使ってくれ」
「あら、催促したみたいで悪いねぇ」
しかし、ユウヒが振り返った先に居るコズナを含めたオーク女子の体には傷らしい傷は見当たらず、唯一それらしい傷と言えば彼女達の拳に出来た内出血くらいなもので、その痣は全て雄オークの顔面をぼこぼこにするとき出来た怪我である。そのことを知っている、と言うより見ていたユウヒは、呆れながら打ち身用の薬をバッグから取り出し投げ渡す。
「別にいいさ、そっちの目的は達成か?」
「・・・後は帰って折檻するだけよ」
「まだやんのか・・・」
買ったわけではなく自作の薬である為、特に出し渋る気も無いユウヒが肩を竦め問いかけると、早速薬を塗りつけていたコズナは目をぎらつかせ低い声を洩らす。今にも薬を入れた陶器の入れ物を握りつぶしそうな怒気を漏らすコズナに、ユウヒはドン引きした表情で肩を落として彼女の夫のなれの果てに目を向ける。
「去勢しないだけましよ! ぶふん!」
「こわ・・・そっちは?」
モザイクが必要になりそうな様相でピクリとも動かないコズナの夫は、去勢と言う言葉が聞こえた瞬間ビクリと震え、目の前の夫婦の姿にいろいろ考えさせられたユウヒは小さく恐怖を呟くと、それらに背中を向けて副団長を見上げ問いかけた。
「あそこだ」
「ふむふむ、感動の再会か・・・」
むごったらしい現実から目を背けたユウヒからの問いかけに、副団長は傷薬を塗る手を止めると、視線をとある方向に向け、短い言葉でユウヒの問いに答えて柔らかな笑みを浮かべる。そこには互いに抱きしめ合い再会を喜ぶヘリアンとリミアの姿があり、朝日に照らされ絵画にも見える二人の姿にユウヒも笑みを浮かべ目を細める。
「元々は優しい子なんだが、ずっと気を緩めることが出来なかったようだからな」
副団長曰く、ユウヒに対してヘリアンが見せていた態度はいつもの彼女と違うもので、気を張っていない普段の彼女は優しい少女であると言う。
「なるほど、それにしても・・・ずいぶんと節操なく攫ったもんだなぁ」
「ああ、これほど被害が大きいとは思わなかった」
副団長の説明に頷いたユウヒは微笑ましげに笑うと、今度は別の場所で抱き合う少女達に目を向け困った様に眉を寄せる。そこでは同じく互いの無事を喜ぶ少女達が居るのだが、それらは見ただけでもわかるほどに多種多様な種族で構成されていた。彼女達は全て雄オークが攫ってきた年若い少女達で、その被害の大きさには副団長も疲れと呆れの混ざった表情で肩を落として見せる。
「一応あたしたちが責任を持って送るけど、それでいいかい?」
「送るにしても一度街によって治療後になるだろうが、頼まれてくれるか?」
「オークの仕出かしたことだしねぇ」
「そうか、よろしく頼む」
彼女達はいたるところから攫われてきており、中には長い事拘束されていた事で衰弱している子もいる為、皆一度ラミアの首都で治療を受けることになった様で、コズナは夫の罪を償うために彼女達を住んでいた場所まで送り届けることにしたようだ。これには攫われた少女達の身が穢れされていない事を証明する為と言う意味も含まれており、それらの配慮には傷物にされた少女の人生が大抵良いものにはならないと言う事情が関係している。
「ふむ・・・これで一件落着と、なら俺は先を急ぐとするかぁ」
「なに? もうか」
「あたしたちお礼もしてないのよ?」
二人の会話を眺めていたユウヒは、とりあえず自分の出番はもうなさそうだと頷くと、肩掛けバッグから愛着の湧き始めた枝を取り出しながら先を急ぐと話し、その言葉を聞いた副団長とコズナは慌てた様子で振り返って驚きの声を上げた。
「魔都に急ぎたいからな」
二人の引きとめたげな表情を見上げたユウヒは、苦笑と共に肩を竦めて本来の予定に戻ると言う。
「あ、あの!」
「ん? おう、元気でたか?」
彼の言葉に申し訳なさそうな顔を見せた二人の後ろから、ユウヒ達の話し声を聞いていたリミアが滑る様に駆け寄り、慌てた様にユウヒへ声をかける。慌てたせいか妙にどもった声をかけて来たリミアに、きょとんとした目を向けたユウヒは、見上げる必要の無い彼女の目に泣き腫らした跡を見つけると、ニコリと笑って気軽気な返事を返す。
「はい、この度は私の救出に尽力していただき心から感謝いたします」
「なに、精霊達にお願いされたからな」
「精霊から・・・」
親友との再会もあってようやく落ち着いて来たリミアは、背筋を伸ばして姿勢を正すと、両手を祈る様に組み胸を押さえながら僅かに頭を下げ、ユウヒへのお礼の言葉を口にする。
そんな彼女の仕草を興味深そうに見詰めていたユウヒは、その丁寧な言葉に照れたのか僅かに頬を高揚させると、苦笑交じりに何でもない様に話しながら周囲を飛び交う風の精霊達目を向け、ユウヒの視線を追ったリミアは、精霊は見えないもののユウヒが確かに何かを目で追っていることに気が付き、驚いたように小さな声を洩らす。
「さて、魔都の方角を示せ【指針】・・・こっちか」
じっとユウヒを見詰めるリミアに周囲が微笑まし気な空気で満たされる中、ユウヒはジャージの襟を正すと森からの付き合いである枝を取り出し魔都への道を調べ始める。
「え、あの! 是非お礼をしたいのでラミアの都に」
「ちと急ぎでな、すまんが御礼はまた今度で頼む」
「そ、そうですか・・・」
その様子にユウヒが行ってしまうと察したリミアは、慌ててユウヒを引き留めようとするも、だいぶ寄り道をしてしまっていた彼にとってはこれ以上寄り道をする余裕は無かった。と言うより、いつも通りなユウヒの冴え渡る勘が、このままついて行った場合かなりの期間拘束されると告げていたのだ。
「ユウヒ君? もしかして真っ直ぐ向かうつもり?」
嫌な予感ほど良く当たると言うのは、勘の良い人間にとっては良くある話かもしれない。そんなユウヒの心配を感じ取ったキエラは、苦笑を洩らしながらその考えが正しいであろうことを察してリミアの横顔を見詰める。枝を大切にバッグへ入れたユウヒが荷物をチェックしていると、ユウヒ謹製塗り薬の効き目に驚いていたコズナがユウヒに声をかけた。
「む? そうだけど」
「それじゃ遠回りになるし、中間地点は未開拓地で魔物が多いわ・・・ほら地図出してみて」
「そうなのか、ほい」
ユウヒが枝の示していた方向を向いていることに気が付いたコズナ曰く、どうやらまっすぐ進むのは遠回りになるらしく、危険ではない道を教える為にユウヒから地図を受け取ると、大きなお腹と皮鎧の隙間からインクとペンを取り出す。
「ふむふむ、この辺が此処だからこんな感じで未開拓地が広がってるのよ。だから少し迂回してこっち側に回って、丁度この辺りから農村がいくつかあるからそこを頼っていけばいいわ」
悪事を働いていた夫を捕まえられたことで落ち着き、予想以上にユウヒが強いと分かりむやみやたらに彼の臀部を狙わなくなったコズナは、最初に出会った時と違い愛嬌のある柔らかな表情で、地図に道を描き込みながらユウヒに見せて説明する。
「なるほど・・・あまり眠れず疲れているところに野営は、確かに嫌だな。せめて軒下を借りられれば楽だし・・・だいぶ魔力も消費したし少しは節制した方がいいか」
コズナの教えた遠回りになるが安全な道には、途中に農村がいくつもあって泊る所にも困らないらしく、ユウヒ自身も今回の戦闘、と言うよりは蹂躙によって魔力の消費や仮眠による疲れもあり、彼女の提案を拒否する必要も感じない為、素直にその提案にのるようだ。
「そ、それでしたら「姫・・・」・・・ですよね」
一方、疲労を感じていると言うユウヒの言葉を聞いて黄色い瞳を輝かせたリミアは、何かの提案を口にしようとするも、その言葉は後ろから聞こえて来たどこか呆れを感じるヘリアンの声によって遮られ、振り返り見た親友の表情に、リミアは分かっていましたと言った顔で頭と尾の先を力なく萎えさせる。
「おし、このルートで行くか」
「行く前に何か御礼したいところだけど、道教えただけじゃ釣り合わないし何かないかしらね」
コズナに教えられた道順が副団長からも問題ないとお墨付きをもらえ、ユウヒが安心してルートを決定すると、副団長の隣で腕を組んだコズナが鼻息を漏らしお礼に何かないかと口にし、隣の副団長と視線を交わす。
「別になにも・・・そうだ。傭兵なんだよな?」
「まぁね、雇う?」
副団長も同じ気持ちなのであろう、コズナの視線に頷いた彼女は前を向き直り恩人を見詰める。そんな恩人であるユウヒは、首を傾げて困った様に微笑むと何か思いついたのか、顔を上げてコズナに向き直り問いかける。
「俺には必要ないけどさ、今ちょっとハラリアが不味いんだよね」
雇うかと言って笑みを浮かべるコズナと、どこか不満そうな副団長に首を横に振ったユウヒは、ハラリアの名前を出して話し出す。
「ハラリア? 獣人の都よね?」
「実は―――」
ハラリアと言う名は有名であるらしく、すぐに獣人の里だと理解した二人はユウヒの話に耳を傾けると、驚いたように目を見開き真剣に聞き入り始めるのであった。
それから十数分後、
「それじゃまたな!」
「言っちゃったわね・・・てか足はや!」
コズナと副団長にハラリアで起こっていることを話し終えたユウヒは、とある依頼を口にするだけ口にすると、特に確約してもらうことなく山頂へ向けて走り始める。ラミア達の行軍の時には出していなかった全力を出し、手を振りつつ走り出したユウヒを、名残惜しそうに見詰めたコズナは、しかしすぐにその足の速さに驚愕の声を上げていた。
「うぅむ」
「・・・なかなか、壮大な話になったわね」
あっという間に小さくなって行くユウヒを見送るラミアやオーク達が居る中、副団長は腕を組んで悩ましげな声を洩らし始め、難しい表情を浮かべる彼女に、コズナは呆れともとれる鼻息を漏らすと肩を竦めて見せる。
「そうだな、ある程度の噂は聞いてはいたのだが・・・基人族は何をする気なのか」
何とも言えない苦笑を張り付けたコズナに、副団長は一つ頷きながら腕を解くと、ユウヒから聞いた話と自分がすでに知り得ていた情報を纏めながら、頭を振って呆れた様に話し始めた。
「私は行くけど・・・どうする?」
「一応伺いを立てなくてはいけないが、個人的には行こうと思う」
そんな二人はユウヒの話とお願いを聞いて何か行動に移る様であるが、身軽な傭兵稼業のコズナに対して、騎士と言う身分にある副団長は、何か一つ行動を起こすにもいろいろと手間が必要なようだ。
「そ、なら一緒に行かない? どうせあの子達も私たちも怪我の治療や体調が戻るのに時間は必要でしょうし」
「そうだな、そうするか。部隊の編制に少し時間がいるがなるべく急ごう」
ユウヒからどんなお願いをされたか分からないものの、お礼も兼ねて動こうとする二人には不思議な連帯感が生まれつつあるようで、囚われていた少女達の事も考えながらこれからの行動方針を決めだす二人。その周囲には自然とほかのラミア騎士やオークレディースも集まり、俄かに騒がしくなり始める。
「・・・ユウヒ様」
そんな喧騒をよそに、ユウヒが小さく消えて行った方向を見詰め続けるリミアは、鮮やかな黄色の瞳を潤ませながらユウヒの名を呟き、その後ろではヘリアンとキエラが困った様に見つめ合っているのであった。
一方、徹夜明けの様なテンションの狂いを感じながらも、順調に山頂へ向けて走るユウヒ。
<ダンナ! お礼はなにがいい?>
そんな彼の周囲には、いつの間にか少なくなった精霊達の中で唯一残っている風の精霊が数体飛び交っており、その中で代表して一人の風の精霊が何とも荒っぽい口調でユウヒに話しかける。
「なんだ? 御礼? いらんいらん」
≪・・・・・・≫
今回ユウヒにお願いをした精霊は風の精霊であった。その為、彼女達は最後までユウヒに付き添ってお礼をするつもりであったようだが、お礼は何がいいかと問いかければそんなものはいらないと言われてしまう精霊達。
彼女達の認識として、人間と言う生き物はお願いをすれば必ずお礼を要求し、最悪求めるばかりでお返しなどしない者であった。しかしユウヒは、精霊側から見ても大変なお願いを快く聞き届け、さらに最高と言える結果で終わらせたにも拘らず、心の底からそのお礼を求めなかったのだ。初めて会うタイプの人間に、精霊達は当惑するとともに妙な頼もしさと愛おしさを感じ、静かに笑顔を浮かべる。
「ん? ・・・ふむ、とりあえずあの山の山頂から滑空するか・・・っうぅぅ不味い」
妙に機嫌良さそうな満面の笑顔を浮かべはじめる精霊達を、不思議そうな表情で見回したユウヒは、気ままな精霊達の事をあまり気にしてもしょうがないと、前を向き直して後ろ手にバックを漁りだし、中から陶器製の試験官にも似た容器を取り出し栓を抜き、覚悟を決めた様な表情で中身を一気に煽り飲む。
「ぷはぁ・・・この辺りは魔力の回復が良くないな、世界樹が機能不全のせいなのはわかるが・・・はぁ」
試行錯誤により飲み口こそ良くなった魔力回復薬であるが、未だにその味の改善には至らず、何とも渋い表情を浮かべるユウヒは、不味い思いをしたにもかかわらず、森に居た頃の様に回復していかない魔力の感触に、不満な感情を生臭い息と共にゆっくり吐き出す。
「禿山、禿山ぁ・・・どこもかしこも枯木でさびしいもんだな、まるでアミールの世界で最後に居た場所みたいだ」
そんなユウヒは、口の中の苦みと青臭さから意識を逸らすために周囲へ目を向けるも、遠い山々は軒並み土と石の禿山ばかり、近くに目を向けても枯れた木が乱立するだけで目に優しい色を見ることは出来ず、以前訪れた異世界を思い出し眉を僅かに顰める。
「そういえばあれも・・・世界樹の暴走が原因だったな、よくよく縁があるよなぁ」
初めて訪れたアミールの管理する異世界で、最後に訪れることとなった荒涼とした大地も、その原因が世界樹であったことを思い出したユウヒは、妙に縁がある世界樹と言う存在に何とも言えない気だるげな表情を浮かべる。
「まぁいくらなんでも、むこうとこっちじゃ異世界だし偶然なんだろうけど」
まるで運命に導かれる様な出会いの数々に、ユウヒはどこか薄ら寒いものを感じつつ、世界の秘密を垣間見た自分の想像を振り払う様に頭を振ると、引きつった笑みを浮かべて間近にまで迫ってきた山頂へと目を向けた。
「おう・・・荒れてるな」
<こっから先はこんなもんだぜ?>
魔法の力であっという間に登頂を終えたユウヒの視界に広がったのは、何処までも荒涼とした色をした山の群れ、ところどころ緑も見えるが大半が乾いた石と土の色である。目の前の光景に思わず呟いたユウヒであるが、口調の荒い風の精霊曰く、この先は大体こんな光景が続くと言う。
「まじかよ・・・えっと、こっちか? あー確かに農園の様な場所が転々と見えるな」
風の精霊から語られる事実と、黙して頷く他の精霊達の姿を見まわしたユウヒは、砂埃舞う眼下の光景に困った様に頭を掻く。しかしそれも束の間、いつも通りのやる気なさ気な顔に戻って地図を取り出し、視界に表示される方角に手元の地図を合わせ、これから向かう予定の農村を遠くに確認する。
「だいぶ緑は薄そうだけど、とりあえずあそこを目指してぇ【飛翔】」
確認を終えたユウヒは、柔らかな羊皮紙に描かれた地図をバッグに突っ込むと、軽くその場で跳びはねながら今日はまだ使ってなかった【飛翔】の魔法を唱え、ふわりと軽く宙に浮く。
<案内するぜ!><あんたには良いネタの礼があるからな!>
「まさか・・・おまいら! また何かうわさを広めたな!?」
自分達とさして変わらない動きで宙に浮きあがったユウヒを、楽しげに見詰める風の精霊達は、ユウヒの服を掴むと軽く引っ張りその体をゆっくり空へと浮かせ始めるが、言葉遣いの荒い風の精霊コンビの言葉を聞き表情を引き攣らせたユウヒに、慌てた顔で飛び退き始める。
<<あーあーキコエナーイ>>
「またんかい!」
声を荒げるユウヒに全く悪びれる事の無い風の精霊達は、自分たちの耳を軽く押さえると、聞こえているにもかかわらずユウヒの言葉が聞こえないと言いながら、後ろ向きで空へと舞い上がり始めた。その姿には流石のユウヒも色々な意味でイラっと来たらしく、魔力の燐光を僅かに振り撒くと勢いよく空へと舞い上がる。
≪アハハハ!≫
その後、魔力の消費を抑えてゆっくり飛行する予定であったユウヒは、空を自由に舞い逃げる精霊達の楽しげな声に包まれながら、大空でドッグファイトする戦闘機の様に、機敏な動きで風を切り進むのであった。
いかがでしたでしょうか?
戦闘ではなく蹂躙が終了した様です。氷に関してはユウヒの仕業ですが、地面のひび割れは大半がコズナ達の鉄槌によるものであるとか。一騒動終えたユウヒは、この無事魔都まで到達できるのか、また次回をお楽しみに。
それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー




