第八十八話 オークキング強襲 前編
どうもHekutoです。
修正等完了しましたので投稿させていただきます。皆様の日常にささやかな笑いを提供出来れば幸いです。
『オークキング強襲 前編』
名も無き異世界の魔王領でユウヒが出会ったオーク女子、そんな彼女達からの話しに受け答えしていたユウヒは、急に円陣を組んで相談し始めたオーク女子達から視線を外すと沈み往く夕陽を精霊達と眺めていた。
「ねぇえ? ユウヒ君って言ったかしらん?」
「ああ、そうだけど・・・何かあったのか」
どこかアンニョイな気分に浸っていたユウヒであったが、円陣を解いて近づいて来たリーダーと思われるオーク女子に呼びかけられ、僅かに後ずさりながら何かあったのかと首を傾げる。
「ちょっといくつか質問していい?」
「なんだ?」
どうやらオーク女子達は、ユウヒが伝えたオークとゴブルの目撃情報を聞いて色々思い当たる節があった様で、その予想の正否を確かめる為にいくつか聞きたいことが出来た様だ。妙にニコニコとした表情を浮かべるオーク女子にユウヒは怪訝な表情を浮かべ、ラミア達も自然とユウヒを見守る様に見詰め始める。
「先ず、あなたの妹さんが襲われたのよね?」
「そうだな、まぁ必死に逃げて何とか捕まりはしなかったけど、なんでもえらくしつこかったらしい」
オーク女子の質問に頷き、ルカ達から聞いたことも踏まえて当時の状況について話し始めるユウヒ。そんなユウヒの話しはじめを聞いただけでもラミア達は眉を顰め、同時にユウヒを同情的な目で見詰める。
「それでお仲間って言うのは男の子かしらん?」
「一人はそうだが、妹とほか三人は女だな」
さらに質問を進めるオーク女子にユウヒは聞かれるままに答え、周囲の女性達の表情を伺って不思議そうに首を傾げた。
「うふふ、もしかしてその子たち美人なの? あなたたちの美的感覚的に」
「んー・・・まぁそうだな、割と美人な方だな」
ユウヒが質問に答えれば答えるほど笑みを浮かべた口元がヒクついて行くオーク女子、そんな彼女からのさらなる質問に眉を寄せたユウヒは、若干視線を彷徨わせながらも頷き美人だと答える。確かにそれぞれタイプの違う美人ではあるものの、それなりに長い付き合い故か今更考えると妙な恥ずかしさがあり、また同時に周囲で耳を澄ましている精霊も気になってしょうがないユウヒ。
「妹さんも?」
「まぁ俺が言うのもなんだが可愛い方じゃないかね?」
そんなユウヒの感情など気にした様子も無く、何処か血走ったようにも見える目でユウヒを見詰めながらさらに質問を続けるオーク女子に、ユウヒは苦笑いを浮かべながら何処か恥ずかしそうに答える。
そんなユウヒの様子を、キエラは微笑ましげに見詰めヘリアンは目を細めて何とも言えない表情でユウヒに横目を向けており、周囲のラミア達はどこか興味深そうな表情でユウヒの答えを聞いていた。
「んふふ、もしかしてだけど・・・スレンダーだったりするのかしらん?」
「そだね、食っても太らない体質のが2名に普段から陰で努力してダイエットしてるのが1名? 妹は小食で元から小柄な方だからなぁ」
どういった意味があって今の様な質問をしているのかさっぱり状況がつかめないユウヒは、微妙に気恥ずかしさ感じる質問の連続に、心を落ち着けながら引き攣った笑みのオーク女子に一つ一つ答えていく。
『・・・・・・』
一方、ユウヒの何気なく答えた内容に周囲のラミア達は妙に反応すると、何処か羨ましげな反応を示す者が多い。
それはラミアの身体的特徴故にしょうがない事で、人の上半身と蛇の下半身を持つ彼女達は、体を支え不整地な場所でも難なく走破することのできる下半身を維持するために良く食べる。さらにここまで問題なく走り続けて来た姿を見てわかる様に持久力も優れており、それは下半身に蓄えられたエネルギーのなせる業であるが、食べた物は体全体に万遍なく溜まる為、彼女達は常に上半身のシェイプアップに余念がない。もしそれを怠れば上半身も下半身の様にふとましくなることは自明の理であり、それは彼女たちの美的感覚的に在ってはならない事であった。
「・・・」
そんな現実故に、ユウヒの語った食べても太らないと言う体質にラミアが羨ましげな表情を浮かべている一方で、オーク女子は急に黙り込んで震えだす。
「あ、そう言えばネシュ族が救援に駆けつけてからは増員されたとか、しつこくなったとか言ってたな」
「・・・ギルティ」
彼女達が黙り込んだことに首を傾げたユウヒは、そう言えばとネム達ネシュ族少女達から愚痴混じりに聞いた話を思い出しそのことを付け加える様に伝えると、オーク女子のリーダーは小さく低い声で呟く。
「ん?」
顔を俯かせ低く小さく呟いたオーク女子に、ユウヒは訝しげな声を洩らしながら彼女達に目を向けたものの、顔の角度と日が落ちてきたことで暗くなってきたこともあってその表情を伺うことは出来ない。
「確定ね」
「オーク族の悪い癖だな」
どんな表情をしているか分からないものの、そろって顔を俯かせたオーク女子達からは妙な圧力を感じ、どうしたのかと周囲のラミア達に目を向けると、彼女達は彼女達で呆れが多分に籠った顔で呟いており、状況が今一つ飲み込めないユウヒはもう一度オーク女子に目を向ける。
「ぅぉぉぁあいつらぁ! やっぱり嫁探ししてやがったかぁあ!!」
「うおう!?」
ユウヒがオーク女子のリーダーに目を向けた瞬間、目の前で火山が噴火した。俯いたまま体を震わながら低く唸るような声を出し始めたかと思うと、急に体を仰け反らせ天高く吠えるオーク女子。
「ブッコローッス!!」
『ブッコローッス!!』
「こわ!」
体を起こし目にギラギラとした野生の怒りを燈らせたオーク達は、リーダーの叫び声に呼応するように声を揃え空に向かって吠え始め、何度も轟く魂の叫びにユウヒは思わずヘリアンの後ろに下がって様子を伺う。
「うるさいわね」
一方ヘリアン達ラミアは、揃って耳を塞いで鬱陶しげな表情を浮かべ、猛々しく吠え続けるオーク女子達を見詰めていた。
「ど言う事?」
「あぁオーク族と言うのはな?」
不機嫌そうに尾の先を地面に打ち付けるヘリアンの後ろで、ユウヒは困惑した表情を浮かべ副団長に目を向け、その視線に気が付いた副団長は未だオーク女子達が叫び続ける中ユウヒの耳元に顔を寄せて事情を説明し始めるのであった。
一方その頃、遠く離れたハラリアの集会場でもオークの生態についての説明がなされていた。
「へー攫って嫁にするんか、典型的なファンタジーオークだな」
それはカレー鍋の香りに誘引されて来たネムとエルフの女性神官によって行われた様で、一通り話を聞いたクマは、女性陣から視線を逸らしたまま何とも言えない表情を浮かべている。
オークに襲われたと言う経緯と、だいぶ精神的にも聞く準備が出来た事もあり、クマ達が聞くこととなったオークの生態と言うのは、オークの雄は集団を作ると他種族の女性を攫って自らの嫁にし、その後オークキングを中心とした集落を作ると言う話であった。
「薄い本に出てくるタイプなのね・・・私たち危なかったのかしら」
「・・・ユウヒが来てくれてほんと助かったわね」
「むぅルカには聞かせられんな」
ユウヒが助けに来てくれたと言う事で多少精神的ダメージが軽減された三人の女性達、しかし明るい顔で日々を送っていた彼女達の心にもそれなりのダメージは残っていた為、自分たちが襲われた理由を聞くのも今にまで延びたていた。
カレー鍋に誘われて来たついでとばかりに聞いた話は、彼女達が思っていた以上に危機的なもので、自分達に迫っていた危険を再認識した三人の表情は優れない。またルカはカレー鍋の食べ過ぎでダウンしたトラ柄ネシュ族の介抱の為、席を外していたことで話を聞くことは無く、割と生々しい話もされたとあってパフェは少し安心した様に笑う。
「子供には少し刺激が強すぎますね」
パフェの呟きにメロンは苦笑を洩らすと頷いて彼女の呟きを肯定する。
「獣人族の里もたまに狙われるのにゃ」
「うへぇ」
一方クマはそのままネムの話を聞き続けており、彼女達獣人の里もたまに被害を受けると聞き、いろいろと想像したクマはしかめっ面で感情のまま声を洩らす。
「でも今回は数も異常だったと言う事で男手に調査してもらってるそうです」
「あいつら女の匂いなら山一つ先でも嗅ぎつけるからにゃ」
またエルフの女性神官によると、女性だと危険なため男性達によって調査が進められていると言う。なんでもオークの男は山を挟んでも女の匂いを嗅ぎ取りやってくるらしく、厄介ごとを招きこまない為にも男性だけで調査を進めるようだ。
「はぁ・・・あれか? オーク族は男しか生まれないとかあんの?」
ネムとエルフ女性により説明された内容を頭の中でまとめたクマは、ため息を吐きながら考え込むと、年齢制限が必要な創作物に出てくるようなオークを想像して二人に問いかける。
「いえ、ちゃんと女性も、と言うよりオーク族は基本女系の一族ですね」
「女系?」
しかしその予想は実際とは全く違うもので有った様で、首を振って否定したエルフ女性の言葉にクマは眉を寄せて首を傾げた。
「はい、代々オーク族は女性が中心になって里や集団を維持します。男は地位が低いそうで、その事に嫌気を感じたオークは男だけの集団を作って他種族の女を攫う様になるとか」
元々この世界の魔族であるオークは女性の出生率が高く、数の少ない男は総じて立場が弱い。
また中には女性によって取り合いが行われ賭けや勝負の商品扱いを受けることもあり、そういった低い立場に鬱屈した感情を溜め込んだ彼らは、キングを中心に一斉に蜂起すると里を抜け出し他種族を襲うと言った行為に出るのだと言う。
「はた迷惑な種族ねぇ」
それらの説明をクマと一緒に聞いていたリンゴは呆れかえった表情を浮かべると、頭を振ってそう呟く。
「オークの男はオークキングを中心に放浪するそうです。まぁ昔の話なので、魔王が誕生してからはあまり聞かなくなりましたね」
「なるほど、魔王が居なくなって縛りが緩くなったからまた始めたと」
リンゴが呆れかえった話も、魔王が健在で有った頃はそれほど多くなかった様で、魔王が勇者に討たれるまでは獣人達も今ほどオークの存在を気にしてはいなかった。
「それは何とも言えませんが、今の魔王領はいろいろと荒れてますから・・・」
しかし魔王が討たれた今では魔王領もすっかり荒れ果て、エルフから昔の話を聞いた獣人達は、オークや危険性のある魔族の動向に神経を研ぎ澄ませる必要が出て来た。実際に襲われる里が増え始めた事により、現在はネム達の様に部隊を率いて森を巡回する獣人の里が増えていると言う。
そんなオークや危険な魔族対策の部隊であるネム達に出会ったことが、現在に繋がっているユウヒはと言うと、叫び疲れて休憩しているオーク女子を横目に、一通りの説明を副団長から聞き終えていた。
「なるほどね、なんとなくわからんでもないが迷惑な」
「わかるの・・・」
副団長の話を聞いていたのはユウヒとヘリアンの二人で、キエラからの補足説明も聞き終えたユウヒは、微妙に不憫なオークの気持ちも分からなくも無く、しかしどのみち迷惑だなと肩を竦め呟くが、その呟きはヘリアンの耳に届いた様でジト目を向けられてしまう。
「そんな顔されても、人心掌握は締め上げるだけじゃだめなのさ」
手空きのラミア騎士達が野営の準備を行っている中で、ユウヒは自分に向けられるジト目に苦笑いを浮かべると、母の知り合いに教えられたことのある人心掌握術を思い出し、言い訳交じりに説明する。
「ふむ、確かにその通りだな」
「別にそこまで無理させてたつもりないんだけどねぇ?」
ユウヒの説明を聞いてもヘリアンが訝しげな表情を消す事の無い一方、副団長は同意するように大きく頷くとユウヒを感心した様に見詰め、話を聞いていたオーク女子リーダーは首を傾げて不思議そうに呟く。
「それにしてもその話し、まるで最近あちこちで聞く誘拐事件と似て・・・」
そんなオーク女子達の不思議そうな顔にユウヒが呆れていると、彼にジト目を向けていたヘリアンは肩を落としてなんとなしに頭に過った言葉を口にして、自分で呟こうとした言葉に目を見開く。
『・・・』
「・・・ぁ」
途中で止めたその言葉は周囲で野営の準備をしているラミア達の動きを一斉に止め、また近くで燃え盛り始めた焚火の光でオレンジ色に照らし出されたユウヒの横顔も停止させ、僅かに開いたユウヒの口からは小さな声が漏れる。
「どうしたのん?」
「実は―――」
一斉に動きを止め視線で語り合うラミア達に、きょとんとした表情を浮かべるオーク女子リーダー。まるで錆び付いた機械の様なぎこちない動きで振り返った副団長は、彼女に説明する為にゆっくりと口を開く。
「・・・誘拐オークを指し示せ【指針】」
そんな副団長の説明が始まる後ろでは、周囲のラミアから視線を受けたユウヒが静かに一つ頷き、すっかり使い慣れた枝を魔法のキーワードと共に放り投げ、投げられた枝は宙に浮かぶと僅かにぶれるも一定の方向を差す。
「・・・リミア姫を攫ったオークを指し示せ【指針】」
枝を見詰めもう一度別の対象をユウヒに求められ投げられる枝は、該当する相手がいない場合は動かず地面に落ちるはずであるが、しかしその向きをピタリとリミア姫が居るとされる方角と同じ位置を指し示していた。
「・・・オークのお姉さんお姉さん」
「・・・なんだい」
枝の動きを見詰めたユウヒは、星の出始めた空を一度仰ぎ見るとラミア達に頷いて見せ、副団長の説明でなんとなく状況を察したオーク女子リーダーに呼びかける。呼びかけられたオーク女子は低い声で返事をすると幽鬼のようなゆっくりとした動きでユウヒに振り返った。
「そんな怖い顔で見られても、お名前を聞いても?」
揃ったピースが次々と繋がり穴を埋めはじめ、不機嫌から思わず目の据わる彼女に、ユウヒは困った様に笑うと名前を問いかける。
「あたしかい? あたしはコズナってんだけどそれがどうかしたのかい?」
「ああいや・・・あ、問題ないな」
急に名前を問いかけられてきょとんとした表情を浮かべるオーク女子、もといコズナは、自らの名前を告げると首を傾げるのだが、ユウヒが聞きたかったのは別の人物の名前であったらしく、しかし彼女の名前でも問題ないことに気が付くと宙に浮かぶ枝を手に取り周囲に視線を送り頷く。
「?」
「えっと、コズナさんの旦那さんを指し示せ【指針】」
「ほんと、どれだけ魔法使うのよ・・・」
「恐ろしいですね」
訝しげな表情で首を傾げるコズナの前でユウヒは核心に迫る為に何度目かの【指針】を唱え、その姿に呆れるヘリアンと恐ろしいと言いながらも笑みを浮かべるキエラ。エルフほどではなくとも、ある程度魔力に対する感度を有するラミア族の二人は、すでにユウヒが平均的な魔族の保有する魔力十数人分を消費している事を感覚で理解しており、それ故に呟かずにはいられないのであった。
「【範囲限定】【ターゲット限定】・・・OK把握。ラミアのお姫様のリミアさんを攫ったのは、この先に居るコズナさんの旦那でほぼ確定」
周囲のラミア達が二人同様の気持ちを抱き見詰める中、見詰められているユウヒはその視線を気にする事無く淡々と魔法を連続使用していき、自らの勘が正しいことを確認すると、コズナと副団長の二人に振り返り僅かな苦笑いを含めて現実を告げる。
「・・・・・・あぁぁんの駄目男!! なんてこと仕出かしてんだい!? イマスグブッコロシテヤル!」
ユウヒが何を調べているのか薄々理解して居た副団長は思わず頭を抱え、その隣では大きく口を開き呆けていたコズナが、その顔を見る見る赤くして行き最後には叫び出す。
「ちょっとまて! どこに行くつもりだ!」
急に踵を返したコズナを副団長が慌てて制止する中、周囲ではオーク女子達がコズナと似たような表情で怒りを露わにし、ラミア族も叫ぶことは無くとも不快と怒りの混ざった表情を浮かべている。
「どこって決まってるでしょうが! あのダメ男ぶっ殺しに行くのよ!」
「我らが姫であるリミア様も同じ場所に居るのだぞ! 勝手は許さん」
「ぐっ・・・」
制止した副団長はどこにと聞きつつも、彼女がどこへ行き何をしようとしているのか理解できており、想像通りの言葉をコズナの口から聞くと、すぐに強めの口調でもって彼女達の怒りに任せた行動を思い止まらせた。
「あーなんだ、もう暗いしこのまま感情に任せて行っても取り逃がすかもしれんだろ?」
「・・・」
怒りで頭に血が上っていても流石は多くの傭兵を束ねるリーダーだけあり、副団長の言葉の意味を理解し動きを止めるコズナ。そんな彼女の顔に広がる葛藤に、ユウヒはいつも通りどこか疲れた感じのある覇気を感じない声で提案を口にする。
「それに夜中より朝日が出る前くらいが気も緩むし動きやすい。とりあえずそれまでは布陣の把握や作戦の立案に時間を使おうじゃないか」
「・・・でもリミア様が」
依然クマが語っていた事と似た様な事を口にしながら、今動くのは得策ではなく今は別に出来る事をするべきだと言うユウヒ。彼が語る内容には頷くべき部分も多く、大半の者が理解を示している様であるが、ユウヒの後ろで不安を口にするヘリアンと同じ気持ちのラミアも数人いる様だ。
「ふむ、とりあえずまだ純潔は保ってそうな気がするんだけど?」
「・・・そうね、雄共は妙なところでロマンチストって言うか、シチュエーションを大事にするから。この先なら、たしか人の居なくなった神殿があったわね。たぶんそこに着くまでは誰も手を出さないでしょ・・・その先はわからないけど」
後ろに目を向けて彼女の言い分もよくわかると言った表情で頷くユウヒであったが、しかし不思議とその心配は彼の胸を過らず、その理由を求めてコズナ達オーク女子に目を向けて問いかける。ユウヒの問いかけに対する回答は、眉を寄せて呆れた表情の中に僅かな安堵を感じさせるため息交じりなコズナが語りだし、いつもは呆れる男共の性格も今は安心できる要素だと周囲のオーク女子を囁いていた。
「なるほど、そこで式をあげると・・・ふざけた事を」
コズナが予測した雄オーク達の行動パターンに目を細めた副団長は、小さく悪態をつくと手に持っていた槍を強く握りしめ、今にも姫を助けるために走り出したくなる感情を自制させる。
「・・・ふぅん、それは合同結婚式か何かかな?」
「え?」
「ん?」
しかしそんな彼女の自制も、続く不思議そうなユウヒの表情と言葉と、その意味を説明されると抑えられなくなり、その場に居合わせた女性達は声をそろえて怒号を放つ。何故なら、ユウヒが魔法で確認した雄オーク達の野営地には、彼ら雄オークの数倍に上る人数の女性が捉えられていたからである。
出会ってから声を荒げたところを見たことが無いキエラですら、怒りの声を上げたユウヒの情報により、怒りが一周まわって冷徹なまでの冷静さを取り戻したオーク傭兵とラミア騎士団は即座に手を組み、僅かに怯えるユウヒを巻き込み作戦会議を始めるのであった。
いかがでしたでしょうか?
名も無き異世界に住むオークの生態に少し触れてみました。どうやらこの世界の魔族も色々と事情があり大変なようです。そんな魔族の国でユウヒは無事目的を果たせるのでしょうか?
それではこの辺で、次回もここでお会いしましょう。さようならー




