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ワールズダスト ~現世に現れし黒き森~  作者: Hekuto
第一章 救出と救済

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第八十七話 その者ふとましく

 どうもHekutoです。


 修正等完了しましたので投稿させていただきます。ほどほどな文字数となっていますので、お暇のちょっとしたお供にでも楽しんで頂ければ幸いです。



『その者ふとましく』


 名も無き世界の魔王領、そこは緑にあふれた山岳地帯・・・であった。しかし今では見る影もなく荒れ果て、人の手が入った場所以外で濃い緑を見ることは無い。


 緑に満ちていた泉の畔は僅かな緑を残して立ち枯れた木々が乱立し、季節ごとに色鮮やかな光景を作り出していた山々は、枯れ木や岩で一年を通して硬質で寂しい光景を作り出している。


「おかしいでしょ・・・」

 そんなアップダウンと足場の悪い山を走り続けるラミアの集団の中、中央で守られるように走る数人の中から、不満と困惑の感情が籠った声が漏れ出していた。声の主はヘリアンと言うラミアの女性、本来は騎士ではないが今は騎士見習いと言った風貌である。


「なにが?」


「あんたのことに決まってるでしょ!?」


「ええ!?」

 そんな彼女は鬱憤の溜まっていそうな鋭い目を前に向けると、きょとんとした表情で振り返り問いかけてくるユウヒに大きな声で噛み付く。今日初めて出会ってから何かと噛み付かれていたユウヒも、何の発言もしていないのに噛み付かれたことには流石に驚いたのか、目を見開き驚きの声を洩らす。


「なんで息一つ切れてないのよ! もう何時間走ってると思ってるの!?」


「ふむ、何時間だろ?」

 彼女がユウヒの何に鬱憤を溜めていたのか、それは森を抜けて一度休憩を入れてからは小休止程度の休みを入れてもほとんど走りっぱなしの状況に、持久力に定評のあるラミア族である自分ですら息を乱し始めて居るにも拘らず、何故かただの基人族にしか見えないユウヒが息一つ乱していないからであった。


 八つ当たりが半分を占める感情をぶつけられたユウヒは、左手首に巻かれた腕時計に見えるが全く時間を教えてくれない装置に目を向けると、再度ヘリアンに向き直って首を傾げる。


「ユウヒ殿は本当に基人か? その体力と魔力は魔族と言われた方が納得できるのだが・・・」


「最近よく言われるな」

 ヘリアンが口にした疑問は周囲のラミアも薄々感じていたようで、周囲の警戒をしながらもヘリアンの声に苦笑を浮かべ合っていた。そんな荒れ地を走り続ける集団の先頭から騒ぎを気にして下がって来た副団長は、日の暮れ始めた空を見上げるユウヒにラミアを代表して疑問を口にし、問われたユウヒはその疑問に苦笑を浮かべる。


「ユウヒさん、もしかして何か魔法を、いえ獣人魔法を使ってませんか?」


「お! 正解!」


「あんた獣人だったの!?」

 ラミア達の疑問にユウヒが答えを口にするよりも早く、その答えに辿り着いたのはラミア族のキエラであった。ユウヒに明るい声で正解だと言われたことに納得した表情を浮かべた彼女の言う通り、ユウヒはいつもの魔法の他にもう一つ獣人族特有の魔法を併用していたようだ。


「いや? 普通の人間であるつもりだけど、正確には獣人の使う身体強化系魔法の真似かな?」


「教わったのですか?」

 ユウヒが使っていたのは、クマが獣人に教えてもらいながら習得しようと試みている獣人魔法と言われる身体強化、その模倣とも言えるものである。


「見様見真似? 割とコストパフォーマンスが良いんだよね、元々使ってた移動用の魔法を併用するとすごく楽だし、さらにコスパが良いんだ」


「・・・」

 この世界でその魔法を使えるのは獣人だけだと言うのが獣人魔法と言う名の由来であり、知る者の間での常識であるのだが、ユウヒは神様印の魔法の力で容易く模倣してしまったのだった。


「流石、精霊の伴侶ですね」

 キエラが答えを出したことで、周囲から様々な質問や不満をぶつけられ始めるユウヒ、そんな彼の背中を見詰めるキエラにとって、精霊の伴侶であるユウヒであれば成し得ても可笑しくないと納得できている様で、彼女のユウヒを見る視線にはそれまで以上に尊敬の念が宿っている様に感じられる。


「予定よりも移動距離を大分稼げたのでありがたいが、ユウヒ殿そろそろ日が暮れ始めるのでこの辺で休もうと思う。その前にもう一度姫の場所を調べてもらえないだろうか?」


「おう! まかせろ」

 それからさらに十数分姦しく走ると、次第に遠い山の山頂へと日が片足を入れ始め、地に沈もうとする日を黄色い目で確認した副団長は手で指示を出して隊列を停止させた。全体の停止に合わせて足を止めたユウヒの目の前まで戻って来た副団長は、この日の移動をここまでにするらしく、野営に入る前にもう一度お姫様の位置をユウヒに確認してもらう様だ。


「・・・疲れた」


「よく頑張りました」

 そんなユウヒの後ろでは、蛇の体を大きく揺らしながら息を切らすヘリアンが、荒れた大地に転がる大きな岩にしな垂れかかって疲労を口にしており、彼女を労うキエラは頬を伝う汗に夕暮れの日の光を反射させながら、へたり込むヘリアンの為に鞄から水筒を取り出している。


「リミア姫の位置を示せ【指針】」


「・・・」


「真っ直ぐだな・・・【範囲限定】【ターゲット限定】【探知】」


「もう何なのよコイツ」


「あらあら」

 キエラから水の入った器を受け取りながらも、リミア姫の事が気になるのか魔法を使うユウヒを見上げるヘリアン。しかし、副団長が真剣な表情で見つめる前で息一つ乱さず連続して魔法を使うユウヒの姿に、げんなりとした表情を浮かべると小さく悪態をつき、そんな彼女の姿にキエラは困った様に微笑む。


「むぅ・・・」

 一方、これまでと違う魔法を連続して使ったユウヒは、枝の指し示す方向をじっと見据えて小さく唸る。


「・・・・・・見えた。やっぱり、これは移動してないな」


「何が見えたのだ? まさか」

 しばし唸りながら目を顰めていたユウヒは、自然と胸の前で組んでいた腕を軽く解くとそのまま顎に手を添えて呟く。ユウヒの姿をどこか不安そうに見つめていた副団長は、一向に結果を口にしないユウヒにじれた様で、少しだけにじり寄ると急かす様に声をかける。


「おう、お姫様の位置を特定出来たぞ」


「ほんと!?」

 良くない方向の想像をしていたのか不安そうな顔だった副団長は目を見開き、げんなりとした表情を浮かべ器の水を口にしていたヘリアンは、ユウヒの言葉を耳にした瞬間勢いよく飛び上がって岩の上に上がると、今にも飛び掛からんとした勢いと声でユウヒを見下ろす。


「おう、えっとうん。この先の山を一つ越えた先にある山の尾根で止まってるな」

 不安定な岩の上に登って見下ろすヘリアンを慌ててラミア騎士達が支えて下ろす中、驚いて若干腰の引けたユウヒは、視界の中に今も表示される情報と周囲を見比べながら大体の位置を伝える。


「この先の山は、なるほど確かそのあたりには昔の村跡があったはずだな」


「こんな場所にか?」


「魔族と言っても多数の種族が居るからな、住みやすい場所も様々だ」

 岩の上から下ろしてもらったヘリアンが、ユウヒの示した方向を見ながら両手を祈るように組んでいると、同じ方向を見て考え込んでいた副団長が、そこには村の跡地があると言う。ユウヒの疑問の声に振り返った副団長曰く、魔族と一括りに言ってもその生態は様々な為住みやすい場所はそれぞれ違うのだとか。


「なるほどね、【限定解除】・・・・・・おや?」

 【探知】の魔法で見えた場所は、人間が生活するには少々標高が高いうえに移動を考えても不便そうな地形をしていた様で、副団長の言葉と彼女たちの姿を再認識したユウヒは、様々な魔族の姿を想像しながら発動中の魔法を一部解除する。


「それではここで野営を行う、準備に取り掛かれ!」


「ちょっちまち! 何か囲まれてるんだけど?」


「なに!?」

 ユウヒから結果を聞いた副団長は野営の準備を始める様に声をかけるのだが、魔法を解除した瞬間首を傾げたユウヒの大きな声に、作業を開始しようとした騎士団は一斉に動きを止めた。


「おかしいねぇ? うまく隠れてたはずなんだけど」

 ユウヒの声に動きを止めながらも周囲を警戒し始めるラミア騎士団。声を上げたユウヒと、その傍にいたヘリアンとキエラを囲む様に警戒するラミア達が今居る場所は、荒れ地に出来た窪地の中、その窪地を見下ろすような周囲にはいくつもの大きな岩が点在していたのだが、どうやらそれらはただの岩ではない様だ。


「え!?」


「何者だ!」


「別に採って食いやしないよ、まぁそれもあんた達次第だけどね!」

 突然どこからか聞こえた声にヘリアンが驚きの声を上げる中、それらの岩がもぞもぞと動き出し大きな人影へと変化する。その巨大な人影は可笑しそうに語りだすと急に語調を強めて片手を上にあげた。


「完全に囲まれていますね・・・」

 謎の巨大な影が片手を上げた瞬間、同じように周囲に点在していた大岩が次々に動き出し人の影へと姿を変えラミア達に影を落とす。それ等の影はキエラが呟いた通りラミア達の周囲を完全に囲む様に現れたのであった。





 一方その頃、すっかり日の落ちた森の中にいくつもの明かりが灯るハラリアでは、


「やっぱ鍋は皆で囲んで食べないとねぇ」


「・・・・・・」

 集会場の囲炉裏を前に機嫌よさげな声を上げるリンゴ、そしてその隣ではクマが地に伏して静かに涙を流していた。


「クマさんごめんなさい」


「いや、ルカちゃんは悪くないから、悪いのはそこの性悪ダメウーマンだから」

 大きな体をひんやりとした板張りの床に預けていたクマは、申し訳なさそうに誤ってくるルカを見上げると首を横に振ってみせ、涙を拭うと恨みがましい視線でリンゴを睨み悪態をつく。


「あんたが良いもの隠してるから悪いんでしょ?」


「ばっかやろう! あれは親友から俺へのお土産なんだから俺が一人で楽しんでもいいだろが! 大体お前らももらってただろ!」

 起き上がりながら悪態をつくクマの手には、某有名メーカーのレトルトカレーが入っていたと思われる紙箱が握られており、囲炉裏にかけられた鍋を混ぜるリンゴの周囲には複数のレトルトパウチが散らばっている。


 彼らの話しと周囲の状況を見るに、ユウヒがお土産として持って来たであろうクマのレトルトカレーの存在がリンゴに見つかり、そのまま奪われみんなのカレー鍋へと変貌してしまった様で、カレー鍋の様子を見詰めるパフェの手には〆を飾るためのレトルトご飯も握られていた。


「なんの事かしら? ポテチはとてもおいしかったわ」


「隠す気ねぇ!?」

 別にクマだけがお土産を貰ったわけではなく、皆それぞれにユウヒが勘で選んだ好みの食べ物を貰っていた様で、クマの恨み節にリンゴはこれ見よがしにポテトチップの入っていた袋を取り出しクマを煽る。


「ん? 焼きおにぎりとシーチキンマヨもおいしかったぞ!」


「もうやだ・・・」

 さらに、鍋に集中していたパフェは話を聞いていなかったらしく、しかし目の前の状況でもらった物の話しだと理解し食べた感想を述べ、その無邪気な笑みにクマ何も言えず背中を丸めるのだった。


「ごめんねクマ君、私もカレーの誘惑には勝てなかったわ」


「・・・まぁわからなくもないですが、おのれユウヒめここまで予想していたな」


「あはは」

 クマも一応は抵抗したのだが、流石に相手がリンゴとは言え女性相手に手を上げる事も出来ず、さらにパフェとメロンを味方にしたリンゴの包囲網から抜け出すことは不可能だったようだ。


 申し訳なさそうな苦笑を浮かべるメロンの言葉に、日本人としてその気持ちも解るクマは、勘の良いユウヒの事なのでここまで読んでいても可笑しくないと呟き、その呟きにルカは否定したくても否定できない感情を乾いた笑いにして洩らす。


「不貞腐れんじゃないわよちっちゃいわね、もう少し太っ腹になりならないとモテないわよ?」

 その後、不貞腐れたように目に涙を滲ませるクマと女性陣が囲む囲炉裏の中には、食欲を促す香ばしい香りを放つカレー鍋が大きな鉄鍋いっぱいに湯気を上げ、その香りは集会場の中だけにとどまらず集会場周辺にまで行き渡り、獣人達の鼻腔まで擽るのであった。





 未知の香りでハラリアの一画が俄かに騒がしくなっている頃、まだ完全には日の落ちていない山岳地帯では、ユウヒが窪地の真ん中で斜め上を見上げ、


「・・・実にふとましい」

 目に映る存在に対するストレートな感想を呟いていた。


「あらやだ、口説いてるのかい?」

 ふとましいとは、ふくよかな対象を好意的に表現するための言葉であるが、名も無きこの世界では、口説き文句にも適用される様だ。


「ふけつ」


「えー・・・」

 ユウヒが見上げていた先から巨体を揺らし現れたのは、二足歩行するブタ。若干人に寄った姿の二足歩行するブタは、以前ユウヒが屠ったオークと酷似しているがそれよりも幾分、服装や装身具などの効果もあってか人間に近く見え、服装も半裸ではなくしっかりとした布地の服と革の鎧である。そんなオークは女性であったらしく、ユウヒの言葉に頬を染めると嬉しそうな声を上げ、ユウヒの背後ではヘリアンが軽蔑の感情が籠った視線を浮かべていた。


「貴様達は傭兵団の様だが、我らに何用か」


「ちょっと聞きたいことがあるのよ・・・ほかにも用事が出来ちゃいそうだ・け・ど♪」


「!?」

 副団長曰く、彼女達はオークの傭兵団であるらしいが、そんな彼女たちは聞きたいことがあると言い、今のところ特に敵対する気は無い様だ。しかしユウヒの視界にはオークに対し警戒を示す表示が点滅しており、ウィンクしてくる彼女を見た瞬間背筋に悪寒を感じとる。


「ちょ!? なんで私の後ろに隠れるのよ!」


「すまん、何か悪寒を感じて」

 妙な悪寒に思わず後ずさったユウヒは、その勘に従って一番近くに居たヘリアンの後ろに隠れ、そんなユウヒの行動にヘリアンは声を荒げたのだが、


「・・・じゅる」


「・・・いいわよ隠れてなさい」


「おう、助かる・・・」

 ユウヒの表情と舌なめずりするオークの姿を見比べると、何かを察したようにその表情を緩め、可哀そうな物でも見る様な妙に優しい顔で隠れているように呟くのだった。


「お前たちの性質は知っているが、我らの客人に手を出すのはやめてもらおう。それより聞きたいことがあるんじゃないのか?」


「そうだったそうだった。ごめんねぇ? うふん」


「・・・」

 ヘリアンがオーク女子の性質を思い出しユウヒの感じた悪寒について理解していると、副団長が槍を構えユウヒをオークの視線から隠す。そんな彼女の声に艶っぽい視線を元に戻したオークは笑いながら話を元に戻しつつ、やはりユウヒにウィンクを送ろうとするのであった。


「それでね? あなたたちこの辺で雄のオーク達を見なかったかしら?」


「雄の? いや、我らは見ていないが何かあったのか?」

 そんなオークの要件とは人探しであるらしく、どう言う経緯でユウヒ達の前に姿を現したかわからないものの、雄のオークを見なかったかと副団長に問いかける。


「そうなの・・・身内の恥なんだけどね? 実はうちの旦那達が勝手に徒党を組んであちこちで悪さしてるみたいなのよ」


「なに?」


「どうもね、東の貴族と手を組んで人攫いに手を染めてるみたいなの。最初に聞いたのは基人族の領土に出没して村を襲っているとか、そのあとは西方領域に入って東に移動中みたい」


「傭兵から盗賊へ転向か、まぁよくある話ではあるが・・・」

 彼女たちの話を聞くに、目の前のオークは既婚者であるらしく、そのパートナーが現在悪事に手を染めてあちこちを荒らしまわっていると言うのだ。彼女たちは聞き込んだ情報から進行ルートを予測し、そのルート上で出会った者にその都度聞き込みを行っているとの事で、そんな話を聞いたユウヒは小さく呟き、振り返って首を傾げてみせるヘリアンに頷いていた。


「しかもゴブルをあっちこっちで脅して連れていってるみたいで、結構な規模になっているみたいなの」


「・・・オークとゴブル?」

 目と簡単なジェスチャーでヘリアンやキエラと話していたユウヒであるが、オーク女子がゴブルと言う言葉を使った瞬間、ユウヒの中で何かが繋がり自然と眉を寄せて顔をしかめると小さく呟き、胸の前で腕を組み考え込み始める。


「どうしたの?」


「いやぁ・・・その組み合わせに覚えがあって」


「ほんとぉ! いやんハンサムな上に情報通なんて素敵! 濡れてきちゃう!」

 急に考え込み始めたユウヒに声をかけたヘリアンと、ユウヒに注目し始める周囲の女性達。そんな注目を受ける中、ユウヒは覚えのある組み合わせだと口にしながら自分の想像が当たっている事をなんとなく感じるも、目の前で涎を垂らすオークの勢いに思わず後ずさる。


「それで? どこで見たのよ」

 後ずさるユウヒの周りを蛇の体で守るように囲ったヘリアンは、男としての危機を感じているらしいユウヒを問い詰め、ユウヒはそんな彼女の心遣いに苦笑いを浮かべ口を開く。


「あぁ・・・元々俺は森で迷子になった妹と仲間を探しに来てたんだけどさ」


「森で迷子って何しに入ったのよ・・・」


「仲間と言うのはユウヒ殿と同じ種族なのか?」


「そうだな」

 周囲から注目されながらオークとゴブルについて話す前に、ユウヒは前情報として自分が森に、この世界にやって来た理由から話しはじめ、ヘリアンはどこか呆れた様な表情で呟き、副団長は興味深げに問いかける。


「それとうちの旦那と何が関係あるのぉ?」

 一方、オーク女子はいったいその話にどんな繋がりがあるのだと、仲間のオーク女子たちと視線を交わしながら首を傾げ問う。


「それが、見つけた時オークとゴブルに襲われてたんだよ」


「なに? 森の中でか」


「うん」


『・・・・・・』


 しかしユウヒがルカ達と再会した時の話しに至ると周囲の空気は変わり始める。副団長を始め騎士団は驚きと同時に眉を顰め、副団長の問いかけに頷くユウヒを見たオーク女子達は常に浮かべていた笑みをその顔から消す。


「ん? なにやら雰囲気が」


「もしかして」


「やっぱり?」


「でも確認してみないと、まだわからないでしょ?」

 急にその場の空気が変わったことにユウヒが首を傾げ周囲を見渡していると、いつの間にか円陣を組む様に集まりひそひそと話し合いを始めているオーク女子。


「何かあるみたいね」


「なんとなく予想は出来ますね」


「そうだな・・・」

 明らかに反応がおかしいオーク達の顔には一様にそれまで浮かべていた笑みは無く、その様子にヘリアンは蛇の尾の先を揺らしながらキナ臭げな表情を浮かべ、キエラと副団長は何か察したらしく、その顔に多分な呆れを含んだ苦笑いと疲れを見せ始める。


「ん? ・・・ふむ」

 急激に変わっていく周囲の空気に首を傾げたユウヒは、周囲を飛び交う精霊達と共に、山の峰に体の半分以上を沈めた夕陽を見上げると、疲れを感じる溜息を小さく洩らすのであった。



 いかがでしたでしょうか?


 連続して新しい未知と遭遇し、珍しく恐怖するユウヒでした。尚、クマがもらったレトルトカレーの種類は各自で妄想して頂ければと思います。


 それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー 

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