第八十一話 とある街の騒がしさ
どうもHekutoです。
修正等完了しましたので投稿させていただきます。暇の合間にでも楽しんで頂ければ幸いです。
『とある街の騒がしさ』
街とは、多数の人々が集まり様々な活動する場所である。この定義で行くならば、ネットの世界もまた街のようなものと言えるかもしれない。そんな街の一角では、うらぶれてもめげない者達が今日も交流を行っている様だ。
【生存】黒き森研究避難所【戦略】2スレ目
1:名無しの研究員
ここは強制捜査で潰されたドーム研究板の研究員専用避難所です。
研究成果の報告・連絡・相談・和める雑談及び、生存報告以外は別でお願いします。
尚、煽り耐性が低い研究員が多く在籍しているのでそういった行為はお控えください。
900踏んだ人は次スレを立てる事、強制捜査が入った場合は生きてる人が立てる事。
2:名無しの研究員
1乙
3:名無しの研究員
避難所開設したはいいがまだ2スレ目って最近全然進まないな
4:名無しの研究員
だいぶ捕まったんだろ
5:名無しの研究員
海外は活発なのに日本取締り厳しすぎだろ
6:名無しの研究員
逆に海外がゆるゆるすぎんだろ? この間もどっかの国で何人も被害が出てるってニュースでやってたし
7:名無しの研究員
ゆるゆるおパンツすっとんとん! そんなお前らに新情報だ! 泣いて喜べ!
8:名無しの研究員
7<通報しますた
9:名無しの研究員
ちょwまだ何もしてないしwww
じゃなくてこれ、この写真を見てくれ! 動画もあるぞ!
10:名無しの研究員
おいグロ貼るなよ
11:名無しの研究員
ちげーしロリ画像だろ?
12:名無しの研究員
これ何処のドーム? 警備多すぎってか何か怪しい人までうろうろしてるんですけど海外?
11<(なんでロリだと思った?)
13:名無しの研究員
看板見ろよ日本だろてか自衛隊居る時点でわかんだろ
12<(ロリコンだからだろ)
14:名無しの研究員
これはなんというAV
12 13<(了解通報しますね)
15:名無しの研究員
ガタッ!(ロリとちゃうでロリもいけry)
16:名無しの研究員
ガタッ! ・・・確かにAVだな
17:名無しの研究員
確かに猫も居たが注目するところがおかしい
ここ知ってるけど今こんなことになってるのか何があった?
18:名無しの研究員
明らかな過剰戦力。問題が発生したとしか思えない
19:再度お尻噛まれし研究員
こっちも最近動きがあったんだけど・・・写真は没収されますた
20:名無しの研究員
無茶しやがって・・・それで脱げ女は?
21:名無しの研究員
脱げ女と聞いて
22:名無しの研究員
顔真っ赤脱げ女と聞いて
23:名無しの研究員
人気だな脱げ女
24:名無しの研究員
ここまで誰も19を心配していません。それでなにがあったんだよはやく話せよ
25:再度お尻噛まれし研究員
扱い酷くね? まぁいいや、自衛隊脱げなくなったみたいで普通に出入り頻繁にしてた。あとニンジャがいた。
26:名無しの研究員
なんと、ニンジャめ国家の犬に成り下がったか
27:名無しの研究員
あいつらだけはしんじてたのにー
28:名無しの研究員
棒読み乙
でもそれって忍者も自衛官だったって落ちじゃないの?
29:再度お尻噛まれし研究員
自衛官ならそれなりの服装するだろけどニンジャは忍者だったよ
30:名無しの研究員
自衛隊の特殊部隊と言う可能性も微レ存
31:名無しの研究員
ねーわ
それだったら俺も特殊部隊入れるわww
32:名無しの研究員
お前それサバンry
この後も報告会と言う名の雑談が交わされ、最終的に脱げ女と会話をしていた忍者死すべし慈悲は無しと言う結論に至るのであった。
そんな掲示板は、特に鍵も掛けられていないので書き込みは別として誰もが回覧することが出来る。それはそこで話題に上がっていた人物も、それらの会話を見ることが出来ると言う事で、
「今日の事もう上がってるんだが?」
「流石ネット民、行動が早いでござるな」
「とりあえずこの煽ってるやつ特定はよ、反撃すっぞ」
暇を持て余し、地球に戻ってパソコンで情報収集(笑)を行っていた三人の目にも止まっていた。実名の出ない世界であるが故に好き放題言えてしまうインターネット掲示板、そのあまりにひどい言われようにニコニコ顔で怒気を漏らす三人は、早速行動に移ろうとする。
「・・・作戦中は書き込みやめてくださいね?」
「「「あ、はい」」」
しかし彼らの行動は、調査部隊の隊長に言われ彼らを監視、もとい観察をしていた女性によって即座に止められる。背後から聞こえて来た女性の冷たい声に背中を震わせた三人は、そっと後ろを振り返ると同時に返事を返すのであった。
ちなみに、彼女はネットで大人気の自衛隊脱げ女と言うグループにカテゴライズされている一人である。後日その事を忍者達に聞いた女性は、一瞬とは言え本気で彼らに暗殺を頼もうか悩むのであった。
そんなネットの世界の街と違う現実世界の街、その中でも歓楽街と呼ばれる街の一角では、路肩に駐められた大型バイクのサイドカーから、一人の女性が駐るや否や軽い身のこなしで飛び降り、そのままとあるお食事処の暖簾を軽い足取りで潜っていた。
「ジェニいる?」
暖簾を潜り勢いよく扉を開けたその女性は、店に入ってすぐ目に映ったスキンヘッドの黒人男性に手だけで挨拶をすると、軽い調子で問いかける。
「こりゃ珍しいですね・・・姐さん!」
引き攣りそうになる顔に全力で力を込めた男性は、目の前に居る天野明華と言う女性に愛想笑いを浮かべると、即座に後ろを振り向き蒼い顔で声を上げ店の主を呼び出す。
「何よぉ? いきなり大きな声あげぇ!?」
「げぇってなによ失礼ね」
すでに解っているかもしれないが、ここはユウヒがちょくちょく出没する歓楽街にあるトレビ庵、そしてユウヒの母親である明華の顔を見た瞬間恐怖に顔を歪めたのは、お食事処の店長兼情報屋のじぇにふぁーである。奥から顔を出すなり、明華を見て潰されたカエルの様な声を洩らしてしまったじぇにふぁーに、明華は頬を不満そうに頬を膨らませって見せた。
「い、いやそんなこと言ってないですよ?」
「ふぅん・・・まぁいいわ」
一方、蛇に睨まれたカエルの様な心境のじぇにふぁーは、女優顔負けの発汗制御で背中だけで大汗を流しながら、いつもと違うまともな口調で言い訳を口にする。明らかに嘘をついているじぇにふぁーをジト目で見上げていた明華は、しかしすぐに笑みを浮かべて見せ、
「ほ」
「それで? ユウちゃんに何させようとしてるのかなぁ?」
その明るい笑みにほっと息を吐いたじぇにふぁーに爆弾を投下した。
「・・・」
「・・・」
目を細めニコニコとした笑みを浮かべていた事で、じぇにふぁーも気が付かなかったのだが、問いかけると同時にゆっくりと見開かれた明華の瞳は全く笑っていなかったのだ。
「黙ってちゃわかんないなぁジェニー?」
口には弦月の様な笑みを浮かべ、しかしその目は決して笑ってはおらず、何処までも冷たい闇色の火が瞳の奥で揺らぐその表情は見る者の心を不安にさせる。ましてや彼女の事をよく知る者がこの表情を向けられれば、心臓を鷲掴みにされるような恐怖を味わうであろう。
「あわわわわ」
「やばいよぉ」
「ありゃ駄目だな、骨は拾ってやるか」
硬直するじぇにふぁーから一定の距離をとるように離れた後方では、カウンターに身を隠して様子を伺う店員三人が、それなりに場慣れしているにもかかわらず恐怖で体を震えさせ、スキンヘッドの男性に至ってはすでにじぇにふぁーの死期を悟っている始末。
「(たすけなさいよ!)」
「「「(無理!)」」」
気力を振り絞り背後を睨むじぇにふぁーと、まるで潜望鏡の様に顔を半分だけ覗かせた店員の間でアイコンタクトが行われるが、彼女の目から送られた救難要請は全力で首を横に振る三人によって拒否され、首を横に振った三人は明華の目を見た瞬間カウンターの後ろに頭を引っ込めてしまう。
「(ちょっと逃げないでよ!?)」
「それで? 相談は終わったかしら?」
どこまでも優しく甘く死を感じさせるような声で囁く明華、彼女の問いかけに色を失っていくじぇにふぁーは、錆び付き動きの悪くなった機械の様な動きで顔を明華へと向ける。
「あ、姐さんいろいろ誤解がある気がするの」
「うふふ、誤解?」
命を繋ぐために弁明を始めるじぇにふぁーに冷たい笑みを浮かべる明華、彼女がこの場に現れた理由は当然息子であるユウヒが関わっていた。
ユウヒがじぇにふぁーとの間で小遣い稼ぎを行っている事は、息子本人からの話でもある程度把握していた明華であったが、彼女独自の情報網により最近じぇにふぁーが妙な動きを見せていること、それにより複数の組織がユウヒの周辺を嗅ぎまわり始めたことが分かったのだ。
「別に危険な事をさせ様ってわけじゃなくて、今回の件についてはユウヒ君もOK出してくれてて―――」
「やっぱり何かさせるのね」
愛する息子の為なら世界を敵に回してもいいと本気で考えている明華が、息子に危険が及ぶ可能性を黙って見ているわけもなく、今回はその根本的な原因を調べに来ただけで、別にじぇにふぁーが何をしているのかなど知らなかったりする。
「・・・ぁ」
「退路自分で塞ぎやがった・・・」
しかし彼女の事を知りすぎているが故に、深読みしすぎたじぇにふぁーは自然と明華の誘導に乗ってしまう。
「なるほど、それは今この地域に自衛隊が集まってることと関係してたりするの?」
「ぃ」
そしてここまでくればあとは芋づる式である。ユウヒ以上に悪魔染みた勘の良さを持つ明華は、じっとじぇにふぁーの目を見詰めて問いかけ、真実へと近づいていく。
「うぅん、ちょっと違うかな・・・これは対価かな、と言うことは命令できる人に何か頼まれたのかな?」
「ぅ!?」
一つ問いかけ、修正しては問いかけ、そこから相手の心を見透かし喋らせることなく次々と情報を引き出していき、最終的に相手が隠す情報を丸裸にする。
「うふふ・・・自衛隊員? それとも大将格? それじゃぁせいじぃ・・・石ちゃんかしら」
「!!?」
問い掛けられるたびにじぇにふぁーの喉は引きつり変な声が洩れ、問うたびに細められすべてを見透かしているかのように見える明華の目に精神が疲弊していき、最後には声すら漏れずに追い詰められていく。同じ光景を昔何度となく見て来たスキンヘッドの男性は、じぇにふぁーの背中を見詰め固唾を呑む。
「もう声もでなくなったな」
「あんな尋問見たの初めてです」
「あれって尋問って言っていいの?」
一方その光景を始めてみることとなった二人の少女? は、男性の小さな声に合わせる様に声を潜ませ、それぞれに感想を言い合いながら背筋を震わせる。
「そう、ユウちゃんから魔法とか神様とか聞いてる? そう聞いてるの」
「その辺は詳しく話してません! 少しだけ魔法についての話しをしただけです!」
次々に情報を引き出していく明華は、ユウヒがじぇにふぁーに魔法や神についても話している事を確認すると口元の笑みを深め、その笑みに危機感を感じたじぇにふぁーは慌てて保身のために口を開く。
「あら、そんな無理して話さなくていいのよ? ・・・体に聞けばいんだから」
「ひぃ」
そんな慌てて口を開くじぇにふぁーの姿に感情の読めない笑みを深めていく明華は、彼女の胸の中央を指先でぐりぐりといじりながら小さく呟き。恐怖で小さく叫び声を漏らしたじぇにふぁーは、同時に心臓を絞められるような幻痛を感じる。
「ふふ、冗談よ・・・まぁ石ちゃんならいいわ」
「・・・」
精神的に感じる痛みで嫌な汗をこれでもかと背中に流し固まるじぇにふぁーであったが、明華が花の咲くような笑みを浮かべた瞬間痛みから解放された。普段と変わらない笑みを浮かべた明華の表情を認識するより早く、じぇにふぁーの体は窮地を脱したことを感じて勝手に脱力する。
「それじゃお邪魔したわね~」
体が前屈みになるも、なんとか崩れ落ちることだけは回避したじぇにふぁー。そんな彼女の姿に明華は軽く微笑んで踵を返すと、出口に向かって歩き出す。
「あ、姐さんどこに?」
「え? 石ちゃんとこよ? ダーリンが表で待ってるからすぐに行けるわ。じゃねぇ」
小さな足音を室内に響かせながら出て行こうとする明華に、慌てて声をかけるじぇにふぁーは、上半身だけ振り返ってくすりと笑い話す彼女の言葉に、少し良くなってきた顔を再度蒼く染める。
「・・・大臣、死んだな」
「次の防衛大臣は誰でしょうか・・・」
「割とマシな奴だったのに、惜しい人を失くしたわね」
答えるだけ答えた明華が室外に出ていく姿を、蒼くなった表情で見送ったじぇにふぁーの心の声を代弁するように、沈痛な面持ちで呟く三人の店員達。
「やめなさいな縁起でもない・・・今の姐さんなら大丈夫よ、まだ目尻が笑ってたもの」
「そうなの?」
しかしじぇにふぁーの心の声はそこまで酷いものではなかったようで、昔から何度か同じような尋問を受けた経験からか、今の明華はまだましであったと話す。
「ほんとにヤヴァイ時の目じゃなかったから、多分確認だけなんでしょ・・・・・・」
じぇにふぁー曰く、ヤヴァイ時の目ではなかったらしく、この後行われるのは石木防衛大臣への確認作業だと言う。しかしその結果、非常に高い確率でまた明華がこちらに来ることを察したらしいじぇにふぁーは、静かに頭を抱える。
「そか・・・ん? あぁお前かどうした? え? うちじゃねぇけど・・・探るのはやめとけ」
頭を抱えるじぇにふぁーの背中を、呆れと安心を感じる顔で見詰めたスキンヘッドの男性は、小さく呟くとズボンのポケットで震えるスマホに気が付き取り出すと慣れた手つきで操作し始めた。どうやらその着信は電話であった様で、スマホを耳に当てると砕けた口調で話し始めたのだが、すぐにその表情を蒼く険しいものに変えると、電話の向こうの人物に忠告するような声をかける。
「?」
「いまこの町でヤヴァイのが動いてるから、あ? そういうんじゃねぇ近づいたらダメなやつだ」
急に声色の変わったスキンヘッドを不思議そうに見上げるコニファーの目に映る男性の姿は、何処か先ほどまでのじぇにふぁーの姿に似ており、その理由が顔や頭に流れた冷や汗だと気が付く。
「??」
コニファーに釣られるように、ファオも自分の倍以上ありそうに見えるガタイをした男性を見上げると、その顔色の悪さに首を傾げて不思議そうに見上げ続けた。
「Aランク? 馬鹿かSランク連れてきてやっと互角なんだよ! しかも揃ったら規格外のが揃ってんの! 絶対手出すなよ! 分かったな! ・・・はぁ」
何やら電話口の向こうから笑い声が聞こえてくるが、その笑い声に対してスキンヘッドの男性は焦りを感じる声を上げ、その内容からなんとなく状況を察した少女二人は男性と同じように顔を蒼くする。
「今日だけで3つくらい潰しまわってるぞ旦那達」
溜息を吐きながらスマホを持った手を下した男性は、そっとじぇにふぁーと視線を合わせると小さく呟く。どうやら、明華達はここに来るまでの間にじぇにふぁーと同じような情報屋稼業を営む者や、堅気とはとても言えない職種の人間達と接触し、そのうちいくつかのグループに物理的制裁を下していたようだ。
「だから少しマシだったのね・・・」
次々と物理的制裁を行う明華達の姿が、手に取る様に想像できたじぇにふぁーは、脱力するようにソファーへと腰を下ろし頭を抱えると、自分への尋問が少し緩かった本当の意味を今になって悟るのであった。
いかがでしたでしょうか?
忍者が叱られ、じぇにふぁーは締め上げられたようです。以前から普通とは違う一面があったユウヒ家両親が、どうやら動き出したようです。この先どんな展開になるのか、次回もお楽しみに。
それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー




