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ワールズダスト ~現世に現れし黒き森~  作者: Hekuto
第一章 救出と救済

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第七十三話 名も無き異世界の王国事情

 どうもHekutoです。


 修正等完了しましたので投稿させていただきます。ほんの一時、一笑出来る程度にでも楽しんで頂ければ幸いです。



『名も無き異世界の王国事情』


 異世界を全力で楽しむ友人たちの所業を一通り確認して廻ったユウヒが思わずため息を吐き、そんな彼の言動に納得のいかないパフェがユウヒに噛みつくも、お土産をもらってすぐに機嫌をなおすと言う珍事から小一時間後。


「なんとも・・・ユウヒ殿には驚かされてばかりですね」


「俺も驚いたけどな」

 ハラリアの中でも特に大きく豪華な建物の一室で、ユウヒはリーヴェンや騎士団、獣人の長であるウォボルらと共に囲炉裏を囲んでいた。そこではココの世界樹周辺の基礎工事完了報告がされていたようで、ユウヒの説明を聞き終えたリーヴェンは驚きながらも感心した様に笑みを浮かべて見せ、ユウヒはいつもより特に疲れを感じる表情で肩を竦める。


「わかりました。すぐにとはいきませんが、こちらの用事が終わり次第そちらに人を派遣します」


「用事?」

 移住場所の準備が整ったことで、すぐにでも動き出したいリーヴェン達エルフの民であるが、予想より早い準備の完了と言う事もあるが、どうも彼の表情と言葉尻から察するに、エルフ達の準備はまだ整っていない様だ。


「はい、母樹様の事もありますし、怪我人の治療やハラリアの増築の手伝いに防衛設備の拡充など、いろいろとやることが増えてしまい・・・」

 ハラリアに避難してきたエルフの里の人々の中には、怪我人もそれなりに存在し、特に世界樹の精霊である母樹は未だ疲れが癒え切っておらず移動に不安があった。また基人族の攻勢がハラリアにまで及びかねないことから、エルフと獣人は共同でハラリアを中心にした防衛網を築いており、その一つがパフェ監修の兵器群である。


「・・・うちの馬鹿が申し訳ない」

 縁側の向こう側、遠く離れた場所で頭を出している投石機の先端に目を向けながら、語尾を濁らせたリーヴェンの表情を見て何を言いたいのか察したユウヒは、目を瞑って眉間にしわを寄せると脱力するように頭を下げた。何故なら、リーヴェン達の予定が延長されている理由は、偏にパフェのやる気に当てられた獣人たちや、リンゴの的確な采配に感銘を受けたエルフ達からの要望によるものであったからだ。


 何がどうなって今のような状況になっているのかまではわからないユウヒも、パフェやリンゴが影響を与えているであろうことは、長い付き合いで知る事となった彼女たちの持つカリスマ性や、リーヴェンや騎士団の浮かべている苦笑いだけで十分理解できた。


「はっはっは! あの女子おなごは面白いからもっとやってくれて構わんぞ?」


「こちらとしても、先々の事を考えると防衛設備は必要だと考えていましたから、特に問題はありません。固定型の大型連弩など、職人が居なくなって久しいので大助かりですよ」


「むぅ・・・」

 大体において、パフェの行動の大半は良い意味で周囲を巻き込むことが多く、実際今の状況も獣人の長やエルフの長から好意的に受け止められ、才能なのかそう言う星の下に生まれたのか、すごいと思う反面割を食う事が多い立場としてはなんとも評価に困り、思わず唸るユウヒ。


「まぁしばらくゆっくりしてからでもいいじゃないか、どうせ奴らの事だすぐにこっちまでやってくるだろうからな、人は多い方がありがたい」


「そうですね・・・サーキス達ならあり得ますね」

 縁側から見える里の様子に上機嫌な笑みを浮かべていたウォボルは、顎髭を扱きながら視線をユウヒとリーヴェンに戻し、彼がゆっくりしろと言う反面ゆっくり出来そうにない話題を聞いて、エルフ達は難しい表情を浮かべる。


「だれそれ?」


「基人族の国であるマルターナ王国の貴族で、この森と隣接した領地を持つ貴族です」


「ほうほう・・・」

 そんな難しい表情を浮かべるリーヴェンの口から、人の名前と思われるものが出てくるとユウヒは首を傾げ問いかけ、さらに貴族と国の名前が出てくると相槌をうちつつ密かに眉を寄せた。


「度々森に兵を入れていたがまさか攻めてくるとはな、今まで敵対なんかしてないんだがな?」


「関係悪化の原因は?」


「関係悪化、ねぇ?」

 ユウヒと質問に答えるリーヴェンを眺めていたウォボルは、腕を組んでキナ臭げに眉を寄せると、騎士団長に目を向け小首を傾げ、首を傾げられた騎士団長は一つ頷いて見せる。どうやら今回の事態はエルフも獣人も予想外の事態であるらしく、ユウヒに関係悪化の理由を問われても、各々に視線を向け合いながら首を傾げるばかりであった。


「むぅ・・・むしろあの国とは最近は逆の方に話が進んでいたのですが」

 そもそも、森の民とマルターナ王国との間では一度も戦争が起きておらず、多少の問題はあれど比較的平和な関係であり、騎士団の副官的立ち位置のアブルと首を傾げ合っていた騎士団長のザック曰く、最近はさらに良い方へと話が進んでいたと言う。


「良好?」


「いえ、良好とまではいきませんが、貿易協定の話しが進んでいたのですよ」

 その話とは、国家間での貿易に関する話であったと言う。森の民である獣人族とエルフ族は、平原の民と呼ばれる基人族と過去長い争いの歴史があるため、里と村レベルの細々とした付き合いこそあれど、基本的に貿易は行っていない。


「基人族の国はどこも大なり小なり飢餓に苦しんでいてな、マルターナの王家から食料を輸出してくれないかって言う提案をされてたんだ」

 しかしこの世界の基人族の国は、どこも飢餓に苦しんでいるのが現状であるらしく、その打開策の一つとして、比較的森の民と良好な関係であるマルターナ王国が国として貿易の話を打診してきたのだと言う。


「・・・王家」


「ええ、マルターナ王家と言って割と他国への発言力がある王家なのです」

 リーヴェンから説明を引き継いだ、この件に関して詳しいらしいアブルの説明を聞いて僅かに眉を上げたユウヒに、リーヴェンはマルターナ王家について軽く説明する。


 リーヴェン曰く、基人族国家の中でも発言力があると言うマルターナ王家は、元々隣接する国が多いことで各国間の緩衝材として役割を担っており、その事が小国ながらに大きな発言力を持つことに繋がったと言う。今回もその緩衝材役としての役割を、基人族各国に期待されているのであろうと付け加えるリーヴェン。


「交渉役を立てるって言うから迎え入れの準備もしてたんだが、これだ。・・・あのお人好し王がだまし討ちをするかと言うと微妙でな」


「お人好しって」

 リーヴェンの説明が一通り終わると、アブルは頭を掻きながら交渉役の迎え入れ準備も進んでいたとユウヒに話し、王様の為人を知っているらしい彼曰く、お人好しな王様が今回の事に関わっているとは思えないと言い、その言葉にとある異世界の王族を思い出したユウヒは苦笑を漏らす。


「基人族にしておくにはもったいないほどで、多分ですが今回の件は貴族の暴走ではないかと、一部の貴族には好かれてませんからね、彼らも私たちも」

 苦笑を漏らしたユウヒに同じ様な笑みを浮かべたリーヴェンは、アブルの少し乱暴な物言いを肯定し、今回の事は王家ではなく貴族の暴走ではないかと、ある程度確証を持って語る。


「はぁどこの世界もそんなもんなのかね? それで、交渉役ってのはもしかしてマルターナ王家の第四王女とか?」

 ユウヒは、やはりどこかで聞いたことのある様な王家の事情に、何とも言えない表情を浮かべて肩を竦めながら、ずっと気になっていた事を確認するためにとある人物について触れ、


「な!?」


「おま、なんで知ってる!?」

 そんな、いつもと変わらず覇気の感じられないユウヒの言葉に対する反応は劇的であった。驚きの声を上げるザックに、腰を浮かすほど驚き問い詰める様な声を上げるアブル、他の面々も声は出さずとも一様に驚いた表情である。


「お、当たった・・・ふむ」

 驚きが広がる空間でも、ユウヒは変わらず呑気な様子で自分の勘が当たったことに満足気な表情を浮かべて見せ、しかし同時に怪訝な表情も浮かべた。


「あてずっぽかよ!?」


「あーいや、世界樹の周りを見に行った時に森で見かけてな、他の貴族や兵隊と雰囲気が違ったから覚えてたんだよ」

 一番驚いて見せたアブルが、呑気に喜ぶユウヒに対して思わずツッコミを入れてしまうと、ユウヒはそのツッコミに目を光らせ満足気に頷き、しかしすぐに表情を戻すと森で見かけたと話す。


「・・・なるほど、襲撃とお姫様の移動が重なったと言うことですか」


「もしくは重ねたか、だな。・・・救援隊を向かわせるか」

 ツッコミを入れるアブルと頭を掻くユウヒの姿に大多数の者が苦笑を浮かべる中、あごに手を添えながら考え込んでいたリーヴェンは訝し気に呟き、彼の懸念を肯定するように呟いたウォボルは、リーヴェンとザックに目を向けると一つ頷き救援を出すと口にする。


「ええ、そうしていただければ今後もやりやすくなりますね」

 彼らの懸念は第四王女が何者かによって森の中で負傷、もしくは殺されることであった。万が一にでもそのようなことが起きれば、真実など関係なく基人族と森の民との間で大きな争いが起きる事態へと繋がるのは当然であり、現状を鑑みると、サーキス達はそれらの事態を前提として行動している様にも思えるのだ。


「あー、貴族って暗躍好きなのかね? 救援ってことは大義名分の確保か・・・手伝おうか? 俺の魔法があればすぐ見つかるだろうし」

 彼らの話しからなんとなく状況を察したユウヒは、暗躍は貴族の嗜みなのかとよくわからない感心を示すと、軽い口調で三人に声をかける。


「それはありがたいのですが、良いので?」

 ユウヒの問いかけに答えたのはザック、いくら彼らの庭と言える様な森の中だと言っても、人探しに時間が掛かるのはユウヒの依頼でルカ達を探した時に十分理解しており、その為ユウヒの提案は彼らにとってもありがたかった。しかし同時に、手助けばかりしてもらっている現状に申し訳なさも感じている様だ。


「乗りかかった船だし、あとは・・・森が安全になってもらわないと、妹の移動も不安だし?」


「ふはは! 流石ネムが見込んだだけあり剛毅な男だな!」

 一方ユウヒは至っていつもと変わらず、何でもないかのように返事を返すと、まるで取って付けたかのような理由を口にし、そんなユウヒの様子にウォボルは楽しげに笑う。


「よっこらせっと、そいじゃさっそく準備しますかね」

 ウォボルの笑い声とリーヴェンの静かな笑みを了承と受け取ったユウヒは、何処か爺臭く立ち上がると、ストレッチなのか腰を伸ばし始める。


「・・・そうだ、救援隊はネム達に頼むか」

 そんなユウヒをじっと見つめていたウォボルは、何か面白いことでも思いついたのか、牙を見せる様にその犬顔をにやりと歪め小さく呟き、


「むむ、これはうちからも足の速い神官を派遣した方がいいですね。特に・・・見目の良いものを」

 その呟きに目を細めたリーヴェンは、耳の良い者にしか聞こえない程度の呟きを漏らす。


「ほう?」


「ふふふ」

 リーヴェンの呟きに目を細めたウォボルは彼に目を向け、その視線を受け取ったリーヴェンは剣呑な視線に冷笑で返すのだった。


「ん?」

 目に見えない火花と冷気を感じ、まだ年若いエルフや獣人たちが肝を冷やす中、ユウヒは不思議そうに首を傾げる。目の前で自分に関する何かしらの戦いが行われて居るにも拘らず、いつもの勘が働かないユウヒは無事に救援を遂行できるのであろうか・・・。





 笑みと笑みのぶつけ合いを行ったウォボルとリーヴェンが、ユウヒを一見した後素早い動きでどこかへと走り去って見せる機敏な動きに、状況の飲み込めないユウヒが呆けた表情を浮かべている頃、エルフの里のほど近い森の中には横並びで走る二頭の馬と、その馬にまたがる女性の姿があった。


「くそ、やはり今回の事は偶然ではなかったか」

 半馬身ほど先を走る馬に一人で跨っている女性は、二頭横並びで走らせるには幾分細い森の道を、少し早いペースで走らせながら悪態をついている。


「当たり前でしょ! こんなタイミング良く派兵があるなんて、今は刈入れ始めの時期なのよ?」

 もう一頭の馬も同じ速度で走っているが、その背中には隣の女性と同じ軽装鎧姿の女性ともう一人、体の要所を守る最低限の鎧しか装備していない女性の二人が乗っていた。


「そうだよなぁ、しかしここまで大胆に襲ってくるとは、サーキスを甘く見ていたな」


「・・・そんなわけないでしょ」

 軽装鎧の女性の前で守られるように座る女性は、丈が膝までありそうなコートの下に乗馬用のキュロットを履いており、姿や立ち居振る舞いからは前方を見たまま話し合う二人の女性の実戦的な鎧姿と違い、どこか儀礼的な雰囲気と高貴さが感じられる。


「なに?」


「サーキスは担がれただけよ」


「そうなのか?」


「そうなのですか?」

 背後から体全体をすっぽり包まれながらもどこか不安そうな表情を浮かべていた女性、いやマルターナ王国の第四王女は、頭上から聞こえて来たどこか呆れの含まれた言葉にきょとんとした表情を浮かべると、後ろの女性へと頭だけで振り返った。


「はい姫、十中八九フルヘンル家が今回の黒幕だと思われます。あの細身の男はフルヘンル侯爵の派閥構成員名簿で見た覚えがありますから」


「それは・・・あまり信じたくはない話ですね」

 振り返ったお姫様に小さく笑みを浮かべて見せた女性は、しっかりと頷いて見せると前方に目を向け直して話し始める。姫と呼ばれた女性は前を向き直しながら、彼女の話に出てきた人物の事を思い出すと苦悩に満ちた表情を浮かべ小さく呟く。


「お気持ちはわかりますが」


「いえ、大丈夫です。確かにその可能性はありますから」

 一通り状況を話し終えた女性は、申し訳なさそうな表情で胸の前に抱えた姫を見詰める。しかし彼女の話した内容は、お姫様自身ある程度想定していたものであるのか、首を小さく振ると振り返り苦笑を浮かべて見せた。


「むむ、良くわからんがとりあえず今は先を急ごう。少しでも距離を稼がないとこの子も長くは持ちそうにないし」


「そうね、獣人かエルフが私たちに気が付いてくれればいい・・・と思いはするけど」

 白く美しい馬に二人で乗る騎士然とした姿の女性とお姫様の会話に、一人さびしく馬を操る女性は眉をこれでもかと寄せながら首を傾げると、考えることをやめたのか軽く頭を振るって走ることに集中するように促す。その言葉に苦笑を浮かべた女性は、先を走る茶色い毛並みの馬に目を向け頷く。


「・・・」

 背中から聞こえてくる都合の良い願いに心の中で賛同したお姫様は、だいぶ汗ばんできた愛馬の真っ白な背中を愛おしそうに一撫ですると、鬱蒼とした森を蒼い瞳で不安そうに見上げるのであった。



 いかがでしたでしょうか?


 いつも通りなんだかんだと騒動へ自ら足を踏み入れて行き、またいつも通り一定の方向性に関して今一勘の働かないユウヒでした。


 それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー

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