第六話 不運な者達の雑談
どうもHekutoです。
修正等完了しましたので投稿させて頂きます。暇つぶしのお供に、食後の一時に、自由に楽しんで頂けたら幸いです。
『不運な者達の雑談』
月も歪んで見える様な蒸し暑い夏の夜、ユウヒの部屋を訪れた妖怪・・・あまり間違っていない気もするが、忍者三人は無事部屋に入れてもらえた様である。
「いやぁ申し訳ないでござる」
「すまんな、もう頼れるのはユウヒしかいなくてなぁ」
「どんだけ友達いないんだよwww俺もだけどな!」
部屋に入れてもらえた当初こそ、エアコンから吐き出される冷気に身を任せていた三人であったが、今は床に座るユウヒの前で胡坐を掻いていつもの調子を取り戻していた。
「・・・で? 昨日ぶりだけど何がどうしたのさ」
そんな忍者達の姿に苦笑を洩らすユウヒは、姿勢を若干崩しながら首を傾げ、目の前の三人が別れて早々にも関わらず自分を訪ねることになった理由について問いかける。
「そ、それが」
「まぁなんだ・・・あれだよ」
「じつはでござる・・・」
明らかに何か理由があってやって来たであろう三人は、当然尋ねられることになる訪問理由を、ユウヒに問いかけられた瞬間、ぎこちない声と顔で目を泳がせ、
「ん?」
ユウヒが不思議そうに眉を寄せると、三人で目配せしあって覚悟を決めた様に表情を引き締めた。
「「「職を失いますた!」」」
「・・・」
そんな三人が声をそろえ吐き出すように告げた言葉に、ユウヒは一瞬きょとんとするも、すぐにその顔を何とも言えない表情で緩めて肩の力を抜く。
「や、八百屋の正面出入り口をふさいだドームが! ドームがすべての原因なんだよぉ!」
「ドームに巻き込まれたビルが倒れ掛かって来て、バイト先のコンビニがぺしゃんこに!」
「拙者はバイト先の半分がドームに飲み込まれたでござる」
そんなユウヒの表情など気にする事無く三人はそれぞれに職を失った理由を話しはじめ、その理由がどれもドームに関わる理由な事に、ユウヒは口元が勝手に引きつっていくのを感じた。
「・・・はぁ、お前らもかぁ」
「「「え?」」」
しばらくの間、三人の身に起きた不幸な出来事に耳を傾け続けたユウヒは、表情を元に戻すと頭を掻きながらため息を吐いて、自分と同じように職を失ったらしい三人に生暖かい目を向け、そんなユウヒが告げた一言に三人は驚いた表情で顔を上げる。
「あー・・・うちは本社ビルが丸々ドームに巻き込まれたらしくてな、俺はそのドームに巻き込まれたと思われて行方不明者扱いになっていたらしい」
「おぅふ、ユウヒ乙」
「丸ごと・・・なんだろ、自分より悲惨な奴見たら落ち着いてきた」
驚いた表情でユウヒを見詰める三人は、困った様な笑みを浮かべるユウヒの話しに驚愕と憐みの混ざった表情を浮かべて肩を落とす。
「いやしかしユウヒ殿は正社員だったはずでござるして・・・まさか、ユウヒ殿マジで」
またバイト戦士である自分たちと違い、正社員だったと言うユウヒならば早々切られるわけがないと思ったのか、ゴエンモはそっと視線を上げてユウヒを見詰めるも、
「まぁ、あれだ・・・いつの間にか栗鼠と虎さんだよまったく」
「「「うわぁ」」」
そこにあったのは哀愁が漂い悟りを開きそうなユウヒの顔と、ユウヒの言葉に小躍りする栗鼠と虎を幻視してしまいそうな負のオーラであった。
「ふぅ・・・それで? 何しに来たの? 報告?」
社長に対しては何でもない様に話していたユウヒであったが、その本音の部分では思わず魔力が反応してしまうほどの精神的ストレスを感じていたようである。そんな気持ちを溜息一つで振り払ったユウヒは、幾分すっきりした表情で顔を上げると、何とも言えない表情を浮かべる三人に首を傾げて見せるのだった。
「いやぁ正社員ならわんちゃん仕事紹介してもらえないかと・・・なぁ?」
「うんむ、でも考えが甘かったとです。むしろ俺らより酷いとは」
ユウヒの表情に困った様な笑みを浮かべたジライダは、頭を掻きながら仕事の紹介をしてもらいたかったと言うが、ジライダの視線を受けたヒゾウは頷きながらも、正社員から一気に無職となったユウヒに慈愛の籠った視線を送る。
「むしろ支援が必要なのはユウヒ殿でござったか・・・」
また支援を求めてやってきた三人の心を代表して語った険しい表情のゴエンモに、ジライダとヒゾウは無言で頷く。彼等にとって正社員とは、自分たちのバイト以上の価値がある様だ。
「支援? ああ、何かドーム被害者には支援金なるものが出るらしいぞ?」
「なぬ?」
三人の様子に思わず苦笑いを浮かべたユウヒであったが、支援と言う言葉に引っ掛かりを覚えると、社長から聞いた話を思い出し、その新しく出来た法令は彼等にも適応されるのではないかと口にし、その言葉にジライダは思わず疑問の声を洩らす。
「ドーム災害うんたら法とかって言ってたような、これってバイト先が急に無くなったなら出るんじゃね?」
「真でござるか!?」
「バイト先の人そんな事言ってなかったぞ!」
社長の話やニュースの聞きかじりを思い出しながら告げられたユウヒの言葉に、忍者達は俄かに歓喜の感情で色めきだす。
「聞いてみれば? 役所とかそれっぽい団体とか? よく知らないけど」
ユウヒは詳しく知らないのだが、日本はドームの出現の数日後にはいくつかの新しい法案を可決しており、彼らにしてみれば最近できたものである。【ドーム災害対策基本法】と【ドーム災害復興基本法】と呼ばれるこの法の中には、直接ドームの被害を受けた者はもちろんの事、間接的に被害を受けた人間の保護も含まれていた。
「ふぬ・・・色々思うところはあるが、とりあえず聞いてみるか」
「バイト先にも聞いてみるでござる」
「だな、でもうちのバイト先は馬鹿ばっかだからなぁ・・・ア、ナニカムカツイテキタ」
その為、忍者達のように、ドームの影響が間接的とはいえ職を失った者にはそれなりの支援が国からなされることになっている。
「・・・あれだ、犯罪だけはおこすなよ?」
「ははは、マサカ」
「拙者等は善良な忍者でゴザルヨ」
「まったくだよ、闇から闇に葬ったりしないさ★」
しかし彼らの支援云々の話しに関する根本的問題は、急に彼らを解雇した勤め先にも有りそうで、バイト先の人間も、まさか詳しい説明や対応をしなかったことで、三匹の黒鬼から怒りを買ったとは思いもしないであろう。
「・・・まぁ家の住所をどうやって割り出したかも聞かないでおくが」
黒い負のオーラをまき散らす三人に、ユウヒは住所を教えていないにもかかわらず自分の部屋までやって来た三人に向かって呆れた目を向ける。
「ああ、それなら天野さんて家を一軒一軒のぞ「「ばかばか!」」・・・あ」
「・・・もしもし警察ですか? こいつらです」
「「「ちょま」」」
しかしそんなユウヒの呆れた表情は、ヒゾウの不用意な言葉を聞いた瞬間にこやかな笑みへと変わり、自然な流れでスマホを取り出すとそのまま息するように通報を始めた。一般住宅に対して忍者の力を使っての覗き行為、どう考えてもアウトである。
「冗談だ」
しかしそこはある程度彼等とも付き合いのあるユウヒである為、彼らが犯罪に抵触する様な行為までは行っていないと信じて、通報する振りと言う冗談で済ませた様だ。
「し、心臓にいくないお」
「まったくだ・・・」
「・・・・・・」
ただ、やられた方としてはたまったものでは無かったようで、明らかな心拍数の上昇を感じるヒゾウと引きつった表情のジライダ、ゴエンモに至っては声も出ない様子である。
「くくく・・・あ、そういえばさ」
「ござ?」
神の力によって忍者と言う新人類に進化した三人であるが、その性根は変わらず一般市民のそれであった。そんな三人の様子を可笑しそうに見ていたユウヒの上げた突然の声に、声を失っていたゴエンモは不思議そうに首を傾げる。
「三人ともうちの妹に会ったことあるんだよな?」
「む? 確かに一度魔窟清掃中に話しかけられたが」
「それがどうかしたでござる?」
ユウヒは彼らといつものノリで話す中、以前彼等から聞いた妹の話を思い出したようで、何か手掛かりになることは無いかと思いもう一度その時の話を聞くことにした様だ。
「・・・は!? べべ、別に手なんか出してにゃいで・・・・・・」
そんなユウヒの考えなど知らないジライダとゴエンモが首を傾げる中、ヒゾウはびくりと肩を跳ねさせ顔を上げると、勝手に自分から言い訳を始め、そして大事なところで言葉を噛んでしまう。
「「はい噛んだのでダメー」」
「オウシット!」
大事なボケを披露するところで噛んでしまうという大失態を犯してしまったヒゾウは、そっと視線をジライダとゴエンモに向けるも、その視線の先に居た二人が手で×を作りダメ出しをする光景に、思わず頭を抱えてしまうのであった。
「・・・まぁ、法の許す範囲内なら手を出してもいいけど、身の保証はできないぞ?」
全力でユウヒをおちょくる為の冗談を思いついたが、不発に終わってしまった事で恥ずかしそうに顔を赤くするヒゾウ。そんな姿に何とも言えない苦笑を浮かべたユウヒは、犯罪にならなければ構わないと言って肩を竦めて見せる。
「出たシスコン発言!」
「妹を手に入れたければ俺を倒して逝け! だな!」
呆れた笑みを浮かべるユウヒの言葉におちょくる隙を見つけたヒゾウは、元気を取り戻してユウヒをシスコンと呼び、ジライダは定番と言えるユウヒの言葉に目を輝かせると、身振り手振りを交えてドヤ顔付きで楽しそうにユウヒを煽のだった。
「煽るでござるなぁ・・・まぁユウヒ殿に挑む気は無いでござるが、ユウヒ殿にもそういうところあるんでござるな?」
ユウヒから度々制裁を受けているにもかかわらず、煽る事を止めない二人に呆れと尊敬の籠った目を向けたゴエンモは、その視線をユウヒに向けたかと思うと今度は生暖かい目に変えて微笑ましげに見つめる。
「いあ、俺じゃなくてうちの父とその仲間達がなぁ・・・」
しかし煽りや生暖かい視線を受けたユウヒは、怒るでもなくただ困ったように笑うと、床を見詰めながらその視線の向こうで母親のご機嫌取りをしているであろう父親の姿と、その仲間達を思い出す。
「「「え?」」」
ユウヒが見せた予想外の行動と言葉に、三人は思わず声を揃えて首を傾げる。
「親馬鹿モードの父さんを筆頭に手加減とか自重を知らない奴らが暴走し始めたら・・・うん、俺は間違いなく逃げる!」
「え!?」
「そこは助けてよ!?」
「てか、ユウヒ殿が恐れるってどれだけでござる・・・」
ユウヒの家族である天野家の両親は、自他共に認める重度の親馬鹿なのだが、そんな中でも勇治は流華に対して非常に甘く、本人にこそ見せないが彼女に近づく虫を排除する為、日夜暗躍している姿をユウヒは昔から見ていた。
しかもその暗躍には勇治の古い知り合いが多数加担しており、彼らは既に勇治の手によりRFCの正規会員となっている始末。
ユウヒ自身良く分かってはいないのだが、様々な方面のスペシャリストであるその知り合いたちは無駄にスペックが高く、彼らはユウヒから『住む地域と時代を間違っている人達』と言う評価を貰って喜んでいたとか・・・。
「まぁ最悪母さんに頼めば? チクれば? いいんだけど、その場合は・・・」
一方、明華はこれまでの行動を見て分かる様にユウヒに甘く、それはユウヒが本能で貞操の危機を感じるほどである。こちらもまぁ知り合いと一緒に暗躍しているのだが、流華の様に実害はあまりないのでユウヒは放置することにしているようだ。
「「「ごくり・・・その場合は?」」」
また天野家のヒエラルキーの頂点は明華であり、やり過ぎた勇治を最終的に止めるのはいつも明華である。
「父さんが寝込む事になる・・・物理的なダメージで」
ただ彼女の辞書に書かれた『容赦』や、それに類似する文字はだいぶ薄くなっているらしく、おいたが過ぎた勇治に対しては余計に薄くなるのか、ユウヒが危険を感じて最終手段を講じた翌日は、確実に父親は部屋で寝込む事になっているのだった。
「ユウヒ父が弱いのか」
「ユウヒ母が強いのか」
「要は天野家が人外魔境だった件でござるな」
これは勇治が絶対的に明華に手を上げない事と、ユウヒに頼まれ事をして張り切った明華の容赦のなさが原因であるのだが、顔を蒼くしたゴエンモの呟きも強ち間違いでも無いのかもしれない。
「失敬な・・・まぁそんなわけで気を付けて手を出してくれ、と言うかそろそろ帰れ」
ゴエンモの呟きに眉を寄せて心外そうな表情を浮かべたユウヒは、その視界に短針がだいぶ上に近づいて来た掛時計を入れると、ユウヒの妹に手を出すリスクを語り合う忍者達へストレートに帰宅を促す。
「もうこんな時間か・・・んじゃ帰るか、てかこんな話しされて手を出すとか相当なドMだろ、まぁ女子高生は捨てがたいが・・・」
「んだ、まぁ下手に手出したら今のご時世ロリコン裁判でござる。紳士は紳士らしくでござるよ」
「イエスロリータノータッチだな・・・でも、女子高生なら十分大人だと思うのだが? どうよそこんとこ」
ユウヒに促されるまま時計を見たジライダを筆頭に、窓を開けて生温く重い空気の立ち込める外へと、いつの間にか変わった議題ついて語り合いながら身を乗り出す三人。
「・・・女の心配するより自分の将来を心配しる、帰って大人しく次の職でも探すんだな」
「「「ぐふっ!?」」」
彼等の何処までも不審者にしか見えない言動に、思わず洩れだしたユウヒの言葉は、目には見えない剣となって彼らの胸を刺すのであった。
翌日、とある商店街や繁華街で職を探し走り回る三人の男の姿が見られたが、夕方ごろには哀愁を背負って公園のベンチで燃え尽きて居たそうな・・・。
いかがでしたでしょうか?
当然のように窓から出ていく忍者達はこの先どうなるのか、そして割と精神的ダメージを受けていたユウヒは、さらに痴話げんか・・・あぁそっちはいいですね。
それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー