第六十七話 情報屋トレビ
どうもHekutoです。
修正等完了しましたので投稿させていただきます。休憩やお暇の共にでも楽しんで頂ければ幸いです。
『情報屋トレビ』
遅めの昼食を摂り始める人々が、暑い外気に顔を歪める時間帯のとある歓楽街。そこで働く人間達が、普段は開いているはずのお食事処が閉まっていることに、そろって首を傾げている頃、その店内では店の主がユウヒの話に眉を寄せていた。
「なるほどねぇまさか神様が本当にいるなんて、世の中まだまだ不思議でいっぱいね」
「俺も自分の運命がどこに向かっているのか不安になるよ」
ユウヒが話したのはこれまで暈してきた異世界についての話である。忍者達との関係を話すうえで予備知識的に必要であり、またこれからの事を考えると話しておいた方がユウヒ自身も楽だと考えた様だ。
「でもよかったの? 私にそんな話しをして」
「ん? うーん・・・まぁ売れないだろうしな、誰も信じないだろ」
今のところ友人にもある程度暈してある話を割と詳しく話したユウヒは、じぇにふぁーの問いかけに少しだけ思案すると何でもないように応える。実際荒唐無稽な話の連続である為、ユウヒの言う様に信じる人間は極めて少ないであろう。
「そうねぇ、いきなりそんな話されても普通は信じないわよね。でも今はこんな状況だから信じる人はいるし、今の内容はどの国にとっても貴重なものよ? 特にこの国のトップは頭柔らかいほうだしね」
しかし、現実としてドームと言う異常現象を目の当たりにしている最中の人間にしてみれば、信じざるを得ない状況とも言え、知り合いの事を語る様な口調のじぇにふぁーが言う様に、国のトップにとっては非常に貴重な情報とも言える。
「ふぅん? まぁママを信頼していると言うことにしておいてくれ」
ユウヒもあまり流布する類の話ではないと分かっているが、それ以上に目の前の人物ならその情報を悪いようには使わないと理解しているらしく、何でもないような軽い口調で信用と信頼を口にするのだった。
「・・・もうこれはOKと言う事よね!」
「なんのだよ! こら近づいてく「あああ!!」お、来たか」
そんな風に、当然信用してますよと言った事を言われれば、誰だって大なり小なり喜ぶものである。ましてやそれが少なからず好意を寄せる相手からの言葉となれば、その喜びは一塩であり、乙女? の感情を暴走さるのも仕方ないものであろう。
ユウヒの言葉に興奮したじぇにふぁーは、机に飛び乗りそのままの勢いでソファーに座るユウヒに迫ると、ユウヒとコニファーに押しとどめられながらも、口先を窄めユウヒの顔にじりじりと接近していく。が、その行為は店内に入ってきた人間の声でピタリと止まる。
「ユウヒが美女と美少女を侍らしてる!」
「流石ユウヒ殿、向こうでもこっちでも変わらないでござるな」
「おまいう」
閉まっているはずの店内に入ってきた人物とは、ユウヒが呼び寄せた忍者の三人であった。傍から見たら両手に花状態のユウヒに対して、ヒゾウは指を突きつけながら妬ましそうに声を上げ、ゴエンモは何か深く理解した様に頷き、その後ろからはジライダがジト目でゴエンモに突っ込みを入れている。
「あらあら・・・忍者ね」
「忍者です」
一気に騒がしくなった店内で、ユウヒに迫ったままの態勢で面白そうに忍者を見詰めるじぇにふぁーと、ユウヒの腕に抱きついたまま顔だけ忍者に向けて物珍しげに目を輝かせるコニファー。
「遅かったな?」
「いや無理言うなし、これでも早すぎるくらいだし」
「少なくとも公共交通機関より早いでござるよ」
「そんなことより、この状況はどういう事なんだ? 浮気か? 浮気なのか? てかこの内装でお食事処ってどうなの?」
二人を引剥がしながらソファーに座りなおしたユウヒは、三人に目を向けながら軽い調子で話しはじめ、忍者達も店内の様子に目を向けながらユウヒの座るソファーに近付くと、冗談交じりに会話を始める。
「人間やめてるよな・・・」
しかしその内容は冗談に聞こえるところこそ事実であり、電車やバスを使うより早く自らの足だけで駆けつけた忍者達に、ユウヒは何とも言えない表情で自分の事を棚の上にあげるのであった。
「あなたたちが今巷で噂の忍者さんたちで、いいのかしら?」
「はは、はいそうです!」
一方、そんな談笑を始めるユウヒを珍しげな目で見詰めていたじぇにふぁーは、身だしなみを整え、いや意図的に胸元などを着崩すとヒゾウに近づき、体をそっと寄せると耳元を擽る様な声と表情で問いかけはじめる。
「あら? うふふ、緊張しているの?」
「はぅおほぉおう!?」
見た目美女であるじぇにふぁーに急接近されれば、大体の男は今のヒゾウの様に取り乱す。特にそういった事に対する耐性が三人の中で一番低いヒゾウは、その事を見破ったじぇにふぁーに翻弄され、耳元に寄せられた唇から漏れる吐息に背中を震わせる。
一方的なじぇにふぁーの攻勢に、今にも落城しそうなヒゾウであったが、
「そそ、そんな「それ動物学的に雄だぞ」・・・はぁっ!?」
「「ふぁっ!?」」
ユウヒの呆れた様な声を耳に入れると、一拍遅れて驚きの声を上げてじぇにふぁーから慌てて飛び退く。その驚きは、ヒゾウを羨ましげに睨んでいたジライダとゴエンモも同様であったのか、ヒゾウより遅れて驚きの声を上げると残像を残しながらじぇにふぁーから一歩後ずさる。
「ユウヒ君、ネタバレはやすぎよぉん」
一方、目にも止まらぬ速さでヒゾウに逃げられたじぇにふぁーと言うと、どこかつまらなさそうに口を窄めて科を作ると、いつもの調子に戻ってユウヒに不満を漏らす。
「これで・・・男?」
「うそよ、嘘だと言ってユウヒ!」
「世の中は不思議でいっぱいでござる」
驚きで口の塞がらない三人は、ソファーに座るユウヒの後ろに隠れると、匂い立つような色気を振り撒くじぇにふぁーを見詰め、悪い夢でも見ているような表情を浮かべると、ウィンクしてくる美女に恐怖するのであった。
尚、コニファーはいつの間にか席を立って裏の男性の下に行っていたため、忍者達とじぇにふぁーの様な接触をすることは無かった。ある意味これは忍者達の精神衛生上、余計なダメージを負わず良かったとも言えるが、どのみち事実を知れば彼らがダメージを負うことは確かなのであった。
忍者達がユウヒにいろいろな説明を受けながらじぇにふぁーと距離を開けて話し合っている頃、東京の某所ではとある男性が高そうな椅子に勢いよく腰を下ろしていた。
「あぁくそ、こう忙しいと漫画一つ読む暇もねぇな」
その男性とは、日本の現防衛大臣を務める石木である。どうやら彼は現在多忙の極みにあるらしく、遅めの昼食であろうコンビニのサンドイッチを秘書から受け取ると愚痴を零し、反対の手では机に置かれたパソコンの電源を入れていた。
「とか言ってPCの電源入れてますが、違いますよ・・・ね?」
どこか冷たい印象を感じるすまし顔の秘書は、石木の好みに合わせた昼食を袋から取り出し机に並べると、じとっとした目で石木を見詰める。彼女の視線はとても上司を見る様なものとは思えないほど凍える雰囲気纏っており、問いかける声もまた凍え震えだす様な声だ。
「ちっとくらいいいだろ? 撮りためた今季のアニメがぁ・・・トレビからメールだと? 早いな」
「情報屋ですか」
しかしそんな視線と声を突き刺されている石木は、めんどくさそうに眉を寄せると肩を竦めて見せ、否定することも無くブラック缶コーヒー片手にマウスを動かすと、あっと言う間に立ち上がったPCのモニターを見詰めてクリックを繰り返す。悪びれもしない石木にどこか優しげな苦笑を浮かべる秘書の女性であるが、真剣な表情でPCの画面を睨み呟く石木の声を聞いてすぐに表情を引き締める。
「諜報って言った方が正しいかもしれんがな・・・くそ、仕事が増えた」
「ご愁傷様です」
彼女の表情変化に気が付いていない石木は、いつもと変わらないすまし顔にちらりと目を向けると、すぐにメールの内容に視線を戻して悪態をつき、秘書の女性は軽く頭を下げると手帳とスマホを取り出す。
「スケジュールを繰り上げて時間を作ってくれ」
「すぐに調整します」
「・・・トレビの協力者か、存外優秀じゃないか」
机の上に準備されていたサンドイッチの包装を纏めて開きながら指示を出す石木に、女性は返事を返しながらすでに何処かへ電話をかけていた。いつも通りな秘書の有能ぶりに、石木は苦笑を浮かべながら二切れ纒て掴んだハムサンドに齧りつき、再度メールの文章を目にしながら口の中身を荒く噛み飲み込むと、機嫌よく笑みを浮かべ呟くのだった。
自分の上司が、最近では珍しいくらいに上機嫌な笑みを浮かべたことに、驚き目を僅かに見開いた秘書が、その笑みを向けられている対象に小さな嫉妬心を抱いている頃、その嫉妬の対象は、
「へっぷし!」
盛大にくしゃみを放っていた。
「うわえんがちょ!?」
くしゃみを放ったのは食後のアイスコーヒーを飲んでいたユウヒで、その対面には三人の忍者がユウヒと同じくソファーに座り水を飲んでいたのだが、コーヒー混じりの飛沫は逃げ遅れたジライダにかかってしまう。
「よし切ってやろう!」
「とか言って渾身の力を込めるなでござる。お店の備品に傷をつけたら弁償できないでござる」
子供のように指で輪を作るジライダに、彼を盾に使いユウヒのくしゃみから逃れていたヒゾウは、勢いよく立ち上がり手で手刀を作り大きく振り上げるが、明らかに尋常じゃない力の込められている手にゴエンモは呆れた様に現実的なツッコミを入れる。
「すまんすまん、何か噂されたみたいでな・・・最近多いんだよ」
ゴエンモの弁償と言う言葉を聞いてピタリと動きを止める二人に、ユウヒは手で鼻を押さえながら謝罪すると、ピンク色にデコられたティッシュ箱をさりげなく持って来たじぇにふぁーからティッシュを受け取り鼻を顔ごと拭う。
「そういうところ姐さんとそっくりよねぇ」
「まぁ親子だしね、それで? 雇ってもらえそう?」
鼻や口元を拭うユウヒの姿を見詰めるじぇにふぁーはその目に懐旧の色を揺らしながらくすくすと笑い、機嫌よさげな彼女を見上げたユウヒは小首を傾げ不思議そうな表情でそう答えると、テーブルに置かれたノートPCに目を向け問いかける。
「今日の夜にでも直接話す予定になると思うから、詳しい内容はその時に聞いてみるわぁ」
「「「おねしゃーっす!」」」
ユウヒの問いは、目の前で期待に満ちた表情を浮かべる忍者達の国家公務員計画に繋がるもので、そのキーマンに連絡していたじぇにふぁーはいつもと変わらない口調で答え、彼女の前向きに感じられる言葉に表情を明るくした忍者達は、座ったまま勢いよく頭を下げるのだった。
「傭兵部隊とかだったらぁ、すぐに何軒か仕事紹介できるんだけどねぇ? 南米とか中東辺りなんてどぅ?」
「平和なところでお願いします!」
「我も男臭そうなところはちょっと・・・」
「どういう伝手でござる。・・・ちょっとユウヒ殿の友人関係に不安を感じるでござる」
しかし、彼らの暑苦しい顔は続くじぇにふぁーの言葉を聞くと急に輝きを失い、ヒゾウは引き攣った表情で叫び、ジライダは何を想像したのか顔を蒼くし、同じく顔を蒼くしたゴエンモはそっとユウヒを見詰める。
「うふふ、ユウヒ君ならすぐにでもゴリ押しで要職につけさせてあげるわよ?」
「いえ、仕事は自分で探すんで」
ゴエンモの視線に無言で心外そうな表情を浮かべたユウヒは、太ももを撫でながら耳元で語り掛けてくるじぇにふぁーの言葉に苦笑いを漏らすと、彼女の手の甲を摘んで引き剥がしながら丁重な声で断りを入れるのだった。どうやらユウヒはじぇにふぁーの言葉に嫌な予感を感じている様だ。
「ユウヒ大丈夫なのか?」
「今のとこは問題無い、むしろここで情報を売った金額が多すぎるくらいだ」
一方、含みを感じるじぇにふぁーと違い、純粋に心配するジライダの言葉に視線を戻したユウヒは、問題ないと軽く笑う。
「マジカ! 俺らもそれで・・・いや、やっぱ国家公務員は捨てがたいな」
「・・・あ、そう言えば今回の分まだ払ってなかったわね。仲介分は契約完了後に渡すとして、さっきの分持ってくるわね」
「あいよ」
軽く笑うユウヒの言葉を完全に信じたわけではなさそうなジライダの隣では、ヒゾウが腰を浮かしながら情報を売ったという言葉に反応を示す。そのままぶつぶつと呟き考え込むヒゾウに、目を僅かに光らせたじぇにふぁーはユウヒへ渡す報酬の事を思い出すと、色気を感じる所作で立ち上がり奥へと消えて行く。
「さっきのでござるか?」
「ああ、ドームに持ち込める物の制限の話しでな」
じぇにふぁーの動きを目で追うヒゾウとジライダが苦悩に満ちた表情を浮かべる中、ゴエンモはユウヒに目を向け問いかける。二人の苦悩に歪む表情の意味を察し苦笑を漏らすユウヒは、ゴエンモの問いかけに対して簡単に説明しながらアイスコーヒーを一口飲んだ。
「ん? そういえば【ヒゾウ探し棒】は持ち込めたけど持ち帰れなかったんだよな?」
「拙者の腰に差していたでござるが・・・」
「・・・あれ? 名前変わってね?」
夏に合うすっきりとしたコーヒーの味に、ユウヒがもう一口とコップを傾ける前では、ユウヒの言葉に何かを思い出したように表情を戻したジライダがゴエンモに問いかけ、その問いかけにゴエンモは眉を寄せ、ヒゾウは二人を見詰めると戸惑ったような声でつぶやく。
「手荷物オンリーらしくてな、片手で持ってかつ1キロまでみたいだ」
「なるほど、それで持ち込みは出来たのでござるな」
「また戻れば持ち帰ってこれんのか?」
「ああ、たぶん腰に差していたんなら同じ場所に差した状態になるかな」
小さくとも聞こえていたはずの呟きをスルーしながら話を続ける二人の姿に、どこか寂しそうな表情を浮かべ水を飲むヒゾウ。そんな迷子の常習犯に苦笑を浮かべたユウヒは、ジライダの問いかけに頷いて答える。
「妙に人為的な匂いを感じる条件だな」
「ふむ、やはりこの事態は人の手によって引き起こされたと言うことでござろうか?」
「もしくはあのデブ神みたいなのか?」
ユウヒの話を一通り聞いた三人は、その説明の中にユウヒが感じた感覚と同じ人為的な気配を感じた様で、何とも言えない表情を浮かべると原因を想像しはじめ、その想像の先は彼らを忍者たらしめる原因となった神へと至っていた。
「可能性はあるけど、そう何度も神様案件が舞い込むかね?」
この世に神が存在し、その世界が思った以上に広いことを体験したユウヒも、彼らの想像を全否定する事は出来ず、しかしまさに雲の上の者たちが頻繁に人の世へ関わってくるものかと、希望的観測も含めて首を傾げる。
「そらユウヒが居るし」
「だよな」
「否定はできないでござる」
しかしそんなユウヒの考えたくないと言う思いに反して、忍者達の言葉は辛辣であった。
「なるほど、お前たちの気持ちは分かった。よかろうならばせんそ「おまたせぇ」う?」
神様案件=ユウヒの方程式が成り立ってしまっている忍者達は、表情に影の差したユウヒの、口元にだけ張り付いた笑みを見て即座に身構えるも、軽い足取りで現れたじぇにふぁーの声に表情を戻したユウヒを見てその体から力を抜き息を吐く。
「はいユウヒ君今回の情報量よぉ」
「「「!?」」」
しかし、息を吐いたのも束の間、目の前に置かれた封筒の厚みに目剥いた三人は、封筒とユウヒとじぇにふぁーの間で挙動不審に視線を彷徨わせ始める。
「・・・ママ、なんだか自立できそうな封筒なんですが? 中身は全部千円札デショウカ?」
また驚きに感情を乱していたのは三人だけではなく、数舜前まで戦争を起こそうとしていたユウヒもまたその厚みに驚き、震える声でじぇにふぁーに向かって不安そうに問いかけていた。
「うふ、ユウヒ君の好きな諭吉さんよぉん」
「いったいいくら入ってるお」
「2、いや3でござる?」
「やっぱ俺らも情報を売って生活するべきか・・・」
しかし返ってきた答えはユウヒが求めた内容ではなく、じぇにふぁーの言葉に顔を蒼くするユウヒの前では、忍者達が戦々恐々とした表情で分厚い封筒を遠巻きに見詰めており、彼らの言葉で目の前の報酬額を再認識したユウヒはそっとじぇにふぁーを見上げる。
「税金が大変そうなんですが・・・」
「その辺の処理は引き受けてあげるわよぉん? 他に収入は無いでしょ?」
「ないですね」
どう考えても無職で通らなくなるような金額の報酬に様々な心配が脳裏をよぎったユウヒは、そんな心配の中でも一番よくわからない税金を口にするも、にこりと笑ったじぇにふぁーはもっと自分を頼りなさいと言った笑みを浮かべて見せた。
「経費とかいろいろあるけど、ちゃんと青色でうまくやってあげるわん」
「青ですって奥様」
「まぁ、稼いでらっしゃるのねでござる」
「フリーの方は大変ですこと」
個人で一定以上の稼ぎを出した者に待っているのは所得に対する課税、そして確定申告である。その中でも青色などと呼ばれるものは控除額が多くなっている代わりに処理が面倒だったりするので、じぇにふぁーの提案はユウヒにとって渡りに船と言った感じであろう。
一方、忍者達は青色申告=稼いでいると言う素人丸出しの認識のもと、ユウヒに視線を送りながらひそひそとよく聞こえる声とにやにやとした表情でユウヒを煽るのであった。
「若干イントネーションが気になるけど、お願いします」
忍者達の鬱陶しい表情に呆れたながらも、面倒事が無くなるならとじぇにふぁーに諸々の処理の代行を依頼するユウヒ。
「任せときなさい。何ならオハナシして税金かからなくしてもいいわよぉん?」
「え、なにそれこわい」
珍しく素直に頼ってくるユウヒの姿に、じぇにふぁーは頬を赤らめて興奮したような吐息を漏らすと、必要以上にはりきり始め、その言葉にユウヒはドン引きしたように後ずさる。
「俺達ヤヴァイとこ、来ちまったか?」
「流石ユウヒ殿繋がりでござる」
控除額が増えても払う事になるであろう金額を目の前に、税金をゼロにすると言い始めるじぇにふぁーにドン引きしていたのは忍者も同様で、自信満々の笑顔を浮かべる彼女の姿にそれが冗談ではないと察すると、ユウヒの電話につられてきた場所が急に危険な場所に感じ始めた三人。
「頂点がアレだから今更驚かないお」
「「あぁそうか」」
「うふふふ」
「・・・・・・」
しかし、よく考えてみればユウヒの知り合いには神が何人もいるのだから、今更そんなことを怖がってもしょうがないかと、妙な落ち着きを取り戻した三人は、上機嫌に微笑むじぇにふぁーと引き攣った笑みのユウヒの見つめ合いを肴に、ぬるくなったグラスの水を飲み始めるのであった。
いかがでしたでしょうか?
奇妙なお食事処トレビ庵の本質がじわじわと見え始め、忍者達の異常性がより鮮明になる中、ユウヒの人間関係も同様にその可笑しさを増しているようです。そんな複数の関係性が、ユウヒのこれからの行動にどう影響し合っていくのか、楽しんで頂ければと思います。
それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー




