第六十三話 魔法大工ユウヒ
どうもHekutoです。
修正等完了しましたので投稿させていただきます。日常の暇になる一時にでも楽しんで頂ければ幸いです。
『魔法大工ユウヒ』
地球とは違う異世界の空にも月の様な衛星は存在する様で、ハラリアを斜めから見下ろす青白い光は、木戸の隙間や窓の隙間から家屋の中へとそっと注がれている。
「・・・おぅ、寝てたのか」
そんな優しい光に照らされていたユウヒは、瞼を撫でる光にゆっくりと目を開くと木窓に取り付けられた格子の隙間から見える暗くなった空を見上げ、いつの間にか自分が寝ていたことに気が付いたようだ。
「よく寝てたにゃ」
ユウヒの独り言は近くにいたネムの耳に届いた様で、土間を挟んだ反対側の板張りに座っていた彼女は軽い足取りで起き上がるユウヒに近づくと、くすくすと楽しそうに笑う。
「ネムか・・・散らかしっぱなしですまん」
「かまわないにゃ、何もない家だから少しは賑やかにしてあげないとにゃ」
頭を無造作に掻きながら起き上がるユウヒは、笑うネムを見上げると、そのまま周囲を見渡し寝ぼけ眼で申し訳なさそうに眉を寄せるも、そんなユウヒの言葉にネムは可笑しそうに目を細めて問題ないと応える。
「そんなものか」
彼女が言う様に、この家の中は非常に物が少なく殺風景であった。囲炉裏の明かりで照らし出された部屋の中を見渡したユウヒは、自分の周囲以外はほとんど何もない事に、何とも言えない寂しさを感じ、同時に自分の周囲のなんと騒がしいものかと肩を竦める。
「そんなものにゃ、それでユウヒ・・・お腹すいてる?」
「あぁ割と空いてるな」
周囲を見渡し片付けを始めるユウヒの姿を細めた目で見ていたネムは、少しもじもじし始めるとどこか不安そうに問いかけ、その問いに顔だけで振り返ったユウヒは、暖かな食卓の香りを鼻先に感じた瞬間思い出したかのように空腹感を訴えるお腹を見下ろすと、ネムに向かって頷く。
「よかった、すぐ準備するね!」
「手伝うぞ?」
「もうよそうだけだから! 囲炉裏でまってるにゃ」
ユウヒの返事にホッとした様に長いしっぽを揺らしたネムは元気よく踵を返すと、爺くさく立ち上がるユウヒに囲炉裏で待っている様に言い、真新しい食器に数種類の料理をよそい始める。
「何から何まですまんのぅ」
「気にする必要ないにゃ」
テキパキ、とは言えないものの楽しそうに夕食の準備をするネムに、まだ眠気が残っているのか、やはりどこか爺くさい緩慢な動きで礼を言いながら囲炉裏へと移動するユウヒ。
「・・・強くて家庭的か、良い嫁さんになりそうだな」
囲炉裏の火に当たりながらゆらゆらと揺れるネム尾を見ていたユウヒは、なんとなしに彼女のこれまでの姿を反芻すると、今見せる姿を合わせて再評価したようで、目を細めどこか娘を見る父親の様な目でそう小さく呟く。
「ふぁっ!?」
「ん?」
普通の人なら距離もあることで聞こえることのないだろう小さな呟きであるが、こと獣人にとっては良く聞こえる大きさの声であったらしく、思いもよらぬユウヒの言葉に頭の上の三角耳をこれでもかと立てたネムは、同じくまっすぐ立てた尾をパンパンに膨らませると、そのまましばらくの間硬直してしまうのだった。
その後顔を赤くして頬を膨らませた無言の彼女に、ユウヒは首を傾げ、表情に反して嬉しそうに揺れる尾を見てやはり首を傾げることになる。
そんな噛みあわない二人が何事も無く同じ屋根の下で一夜を過ごした翌朝、
「と言うことがあってな?」
ユウヒの姿はハラリアの中央に聳える世界樹の足元にあった。
「それは、あなたが悪い気もしますし、それはそれでありな気もしますね」
昨日の夜の不思議な出来事について語るユウヒの隣には、少し大きくなり肌の艶が良くなった母樹の姿があり、男女の機微を全く理解していないユウヒの姿に苦笑を漏らすと、何事か考え始め悩ましげに眉を寄せている。
「よくわからんなぁ・・・さて、これでいいかな?」
「お父さんこれなぁに?」
一方母樹の言葉に首を傾げているユウヒはと言うと、宙に浮きながら興味深そうに見つめて来る世界樹の精霊の目の前で、成人男性と大して変わらない大きさをした円柱状の物体を弄っていた。
「ちょっと待ってくれ、うんいいな。あー・・・これは、【大体全自動魔力活性化装置一号】だ」
「ほえ?」
ドラム缶の様な中空の円柱物体には竹の様な節があり、その部分から分解することが出来る仕様の様で、すべての接合部を繋げ終わったユウヒは、一通りのチェックを終えて顔を上げると娘の質問に良い笑顔で応える。
【大体全自動魔力活性化装置一号】
ユウヒが妄想魔法によって再現した付与魔法と、強力な合成魔法を自重なく使い、魔力を枯渇寸前まで使い作り上げた逸品。円柱下部から空気中の不活性魔力を取り込み、内部に張り巡らされた複数の魔道具により活性魔力へと変換させるだけの装置である。
「それは・・・まさか活性魔力を作り出す装置ですか?」
「おう! なかなかうまく組み上がらなかったけど、なんとか形にはなったよ」
「・・・すごすぎてもう何も言えません」
「そなの?」
だけの装置と記載したものの、この説明はユウヒの右目で見た一文にしか過ぎず、嬉しそうに話すユウヒの顔をまじまじと見詰め言葉を失くした母樹の驚いた表情からわかる様に、この装置は異世界であっても異常なまさに逸品なのであった。
「元々その役目を担っていたのは私たち世界樹なのです。と言っても本来世界が持っていたはずの自浄作用の足元にもおよびませんが・・・」
「ほうほう、それがこの世界の秘密ってやつか」
娘と一緒に円柱状の物体を興味深そうに触る母樹が話す様に、本来この世界において不活性魔力を活性化させる役割を担っていたのは、世界樹と彼女達世界樹の精霊である。しかし、それは本来なら世界自体が持つ自浄作用の一つであり、その機能が失われた結果彼女たちは生み出されたのであった。
「そうです。もしかして歪さに気が付いて・・・」
「いやまぁ活性魔力少ないなぁと思てたけど、世界の秘密とかには気が付いてないかな?」
「・・・本当ですか? 行動を見るに気が付いているとしか思えないのですが」
しかし彼女達も長い年月と共に数を減らし、そのことがユウヒの気にしていた活性魔力の希薄さに繋がっていたのだ。そこに現れたのが大量の魔力を保有したユウヒであり、母樹の起死回生の一手とも言えるお願いの大本でもあった。
母樹にとっては救世主そのものであるユウヒが、さらに自分たちの助けになる様な装置を作ったと聞けば、彼女がまだユウヒにも話していない異世界事情に気が付いたと勘ぐるのも仕方ないが、当のユウヒはそんなこと知りもしなければ今のところ調べる気もない。
「さてなーっと、魔力活性化装置一号、起動」
疑わしげな眼差しを受けて思わず苦笑を洩らすユウヒは、世界の秘密の取っ掛りに指をかけている事に気が付くことなく、陽気な声で魔道具を起動させる。
「風が出てきたあぁぁぁ!」
「すごいです! 空気中の不活性魔力が本当に活性化されてます」
その瞬間僅かな魔力の波動を周囲に放った魔道具は、下部から空気を吸い込み、上部から勢いよく活性化された魔力を吐き出し始めた。噴出した風は渦を巻くように高く上がり、上から覗いていた世界樹の精霊を周囲の小さな精霊ともども宙に吹き飛ばす。
「あれ? 思ったより効率が悪いな、不活性魔力少ないのかな?」
楽しそうな声を上げながら空高く舞い上がる精霊達を見上げ、隣で興奮した声を上げる母樹に耳を傾けると満足そうに微笑むユウヒ。しかし右目を使いながら魔道具を調べ始めるとその表情は僅かに曇り、どうやら想定していたスペックほどの効果を発揮していないらしく、不思議そうな表情で大きく首を傾げている。
「十分活性化してると思いますけど? あ、でも確かに空気中の魔力は大半が上空に抜けますし、地面に近いと逆に地中へと吸われていきます」
「あぁなるほど、下から上に空気を取り込む構造は失敗だったか」
不満と疑問に満ちたユウヒの言葉に母樹は少し驚いた声を洩らすも、魔道具の周囲を見回すと何かに気が付いたらしくユウヒの肩に抱きつくように掴まると、不活性魔力の特徴について語り始め、その説明にユウヒは納得した様に頷く。
自然界に存在する魔力は常に安定した場所を求めて動き、特に不活性魔力はその動きが顕著である。その中でも人や獣の影響を受ける低い場所は不安定であるらしく、すぐに地面に吸収されたり、上昇気流に乗って空高く舞い上がり水蒸気と共に雨となり最後には大地に吸収されるのであった。
「これで失敗と言われると、かつての賢者たちも立つ瀬がないのですが・・・」
そのため、低い場所の空気ごと不活性魔力を吸い込むユウヒの魔道具は、吸い込める不活性魔力の量が少なく最高効率での変換が出来ていなかったのだ。しかし現状の変換量は、この世界で十分驚きに値する量であるのか、顎に手を添え不満そうに唸るユウヒを見詰める母樹は、何とも言えない困った表情で微笑むのであった。
「まいっか・・・一応活性化できてるし、預かっててくれるか?」
≪ひゃー♪≫
「きもちい~ん? うんわかった!」
母樹の声がまったく聞こえていなかったユウヒは諦めた様に肩を竦めると、円柱状の魔道具の上部を掴み、吹き出す風に身を任せていた娘に声をかける。どうやらこの装置はこのままここに置いていく様で、ユウヒに頼みごとをされた彼女は嬉しそうに返事を返す。
「壊れたりしたら教えてくれ」
「はい、行ってらっしゃいませ。あなた」
「いってらしゃーい!」
どうやら魔道具の試運転はそのまま耐久テストに移行したらしく、母樹に一言そう頼んだユウヒは精霊達に見送られながら世界樹の広場から離れるのだった。
そんなユウヒは、ある人物を探しとある場所に現れていた。
「おー、エルフがいっぱい。ほかの種族もいっぱい・・・いたいた、リーヴェンさん」
「おや? これはユウヒ殿、おはようございます」
その人物とはエルフ族の長と言っても過言ではないリーヴェンである。魔法の力を人探しに使いながらユウヒが向かった場所には多くのエルフ達が集まっており、リーヴェンに手を振り歩いて来たユウヒに様々な感情の籠った視線を向けている。
「おはよう、今いいか?」
「はい、何かご用でしょうか?」
にこやかな表情でユウヒを迎えるリーヴェンの姿に、一部不躾な視線を向けていたエルフ達は慌てた様に視線を逸らし始め、そんなエルフの姿に苦笑を浮かべ合う二人。
「ああ、出入り口の方に行く前に一声かけておこうと思ってたんだけど・・・何をやってるところなんだ?」
「なるほど、私たちは仮住まいを建てる用地を確保した所です」
ユウヒは自身があまり良く思われていない事はエルフの里を訪れた当初から解っており、リーヴェンも未だに感情が改善されないエルフが居ることを解っていた。そんな状況でも気にしないようにしてくれているユウヒに感謝しているリーヴェンは、ユウヒの言葉にどこか嬉しそうに微笑むと頷き、指をさして今何をしているのか説明をし始める。
「なんか悩んでるようだけど?」
リーヴェンが指をさした方向では、獣人とエルフが空き地となり使っていなかった広場を拓いており、すでに拓かれた場所では木の杭が打たれ、資材の搬入なども始まっていた。しかし、広場の中央に集まる如何にも大工と言った風貌の獣人とエルフ達の表情は優れず、遠目から見たユウヒの目にも何か悩んでいることがわかる。
「ええ、仮住まいは私たちが出た後に獣人族の皆さんで使うとなったのですが・・・」
「ふむふむ?」
避難してきたエルフはハラリアに定住しないと言うことはすでに決まっており、それ故一時的な住まいであるのだが、ここで建てられた家屋は今もハラリアを目指して集まる獣人たちの家として流用される予定である。
「何分エルフの生活様式が元々彼らと違うところに、獣人族同士でもいろいろと違うらしく、どのように建てようかと」
いかに周囲が森に囲まれ資材に恵まれているとは言え、無駄にするわけにも行かないのは共通の認識であるらしく、しかしエルフと獣人の生活スタイルの違いは割と大きく、それは同じ括りで呼ばれる獣人族同士でも違うようだ。
「ふーん? 仮住まいなら適当に箱でも作って並べたり重ねればいんじゃね?」
「箱?」
獣人様式もエルフ様式も一度建てると立て直しも移動も難しく、両方の様式を見て来たユウヒは悩みの理由をなんとなく察し、小さく唸りながら周囲の建物を眺めると、記憶の中にある簡易住宅の一種を思い出しながら軽い調子で提案する。
「そそ、同じ規格で大きな木箱作って組み合わせれば、少なくとも人数の制限はクリアできるだろ? あと個室も同規格なら分けやすいだろうし、あとから移設もできるからな、他には何かこだわり的なものはあるのか?」
広場の中央に集まる大工達の下へゆっくりと歩きながら、隣を歩くリーヴェンに語るユウヒの頭の中には、現代日本にも存在する丸ごと運搬可能なコンテナハウスや、海外で考案された箱型の家などが思い浮かんでおり、その利便性を理解しているユウヒの説明にリーヴェンは真面目な表情で聞き入っていた。
「なるほど・・・そうですね、大半の獣人族は地面の上ですが、鳥獣族は樹上生活の者が多いのでなるべく高い場所が良かったり、逆に地中を好む種族もいますな」
ユウヒの質問に問題としている部分に触れるリーヴェン。それは獣人の多様性の中でも特に違いの大きな種族である鳥獣族とその真逆の様な種族についてであった。
その名が表す様に鳥に近い獣人族であるその者達は、一部を除き大半が樹上生活の種族であり、しっかりとした家を異世界らしい巨木の上に作り生活している。
「・・・同じ場所に全員が暮らすのは根本的にどうにかしてもらうとして、仮設なら箱でもなんとかなりそうか」
「ほんとですかい!?」
リーヴェンから懸念事項を聞いていたユウヒは、二人に気が付いた大工達にいつの間にか囲まれていた。そんな囲みの中心で、懸念される問題を聞き終え考え込むユウヒの口から漏れ出る独り言に、体格の良い獣人男性の大工が嬉しそうな声を上げる。
「ああ、しゃちょ・・・知り合いの趣味でコンテナハウスとか移動住宅に関わったことあるから構造も分かるし・・・そうだな、いくつか試しに作ってみるから参考にでもしてくれ」
ユウヒがいつの間にか退職することになった会社は、社長の思いつきのまま手広く事業が広げられており、その要望に応えることが出来ていたユウヒは社長に気に入られ、よく直接仕事を頼まれていた。それは同時に同僚や上司からの妬みに繋がっていたのだが、その一つである社長からの依頼のおかげでユウヒの知識は建築方向にも広がっている様だ。
「ユウヒ殿、予定は大丈夫なのですか?」
「ん? そんなに時間はかからないし、材料もそろってそうだしいけるんじゃないかな? あ、少し使わせてもらって良いかな?」
リーヴェンと大工達にそう語り、意気揚々と言った雰囲気を振り撒きながら資材置き場に置かれた木材へと近づくユウヒは、予定の心配をするリーヴェンに笑顔で問題ないと応え、同時に大工達に資材の使用許可を求める。
『・・・・・・』
無言で頷く大工達に笑みを浮かべたユウヒは、妄想魔法で大きな丸太を何本か浮かせると、クロモリ由来の魔法を再現しながら次々と木材を加工していく。
夢でも見ているのでは無いかと目を丸く見開き頬を抓る大工達の目の前で、満足そうに頷くリーヴェンから見つめられているユウヒは、心底楽しそうに様々な知識で妄想した箱型住宅を試作していくのであった。
それから数時間後、広場には混沌とした光景が広がっていた。
「なんじゃこりゃ・・・」
「なんで異世界にビルみたいな高層建築物が」
クマが驚きの声を洩らし、パフェが下から上へと舐める様に見上げながら驚きの声を洩らす中、彼女の言葉にもあったそれは威風堂々とその体を空高く聳え立たせている。
現代日本の建築物から言えば大して大きくは無いものの、まるでジェンガやキャンプファイヤーの丸太の様に積み上げられた同規格の長方体は、木造とは思えない安定感でそこに建っていた。
「・・・まさか、ねぇ?」
ビルと言う概念が無いはずの異世界で、こんなことをしでかしそうに人物に覚えのあるリンゴは、同時にその予想を認めたくないと言った表情を浮かべ、隣のメロンに目を向け同意を求める様に声をかける。
「どぉかしらぁ?」
一方のメロンは珍しく目を開いて目の前を見上げると、手摺り付きの外階段が取り付けられた軽く50メートルは超えそうな木造の建築物にどこか楽し気な声で答えるのだった。
様々な表情で互いに見つめ合う4人は、何がどうして目の前に数種類の真新しくまた非異世界的な箱型住宅が出来たのか、誰かに聞こうと周囲に視線を彷徨わせ始めるも、その答えは早々に彼女らの耳に届く。
「お前ら! 見本はあるんだから大工の誇りに掛けて再現してやるぞ!」
『応!』
それはユウヒの提案に驚きの声を上げていた、厳つい獣人大工男性の大きく気合の入った声と、その声に短く応えるエルフや獣人達の声であった。また彼ら彼女らの姿からは、そこに居るのが大工だけではなく、狩人や騎士など建築に関係なさそうな者も混ざっていることがわかる。
「基本はみんな同じらしいから、先ずはこのユウヒ一型の再現から始める!」
『応!』
獣人男性が張り上げる最初の指示に答えるのは、大工と思われる者たちの半分ほどで、短く大きな声で答えた大工達は、目の前に置かれた一つの大きな箱型住宅を一見すると、我先にと資材へ走り去っていく。
「ボウスイカコウ班は精霊騎士団と一緒にニュート狩りだ! 気合入れていけ!」
『おー!』
次の指示は材料の採取であるらしく、慣れない用語でたどたどしく指示を出す親方に、騎士や狩人、大工達は腕を振り上げまとまりは無いものの気合の籠った声で応える。
「木材の一次加工にコウソウ用石柱の設置、その上区画分けまでユウヒ殿にやってもらってんだ! できない奴は獣人大工失格だ! やってやるぞ! 魔法大工なんかに負けるな!」
『オオオッ!』
最後に獣人大工の男性は何があったのかよくわかる事実を語りだし、彼の大きな気合とも悔しさともとれる嬉しそうな叫び声に、すでに作業に入っていた大工も、これからの大工も等しく工具を振り上げ、戦場で突撃前に上がる兵士の雄たけびの様な音の津波を起こして作業に入っていく。
『・・・ユウヒェ』
目の前で行われた演説と圧倒されるような咆哮に、等しく呆然とした表情と虚空を見詰める様な遠い目をしたクマ、パフェ、リンゴ、メロンは、全く同じタイミングで全く同じ人物の声を力なく呟き大きく頭を抱えだす。
4人が頭を抱える中、大きく長い石柱を囲むように設置された箱の集合体は、ハラリア周辺の少し背の低い大樹より少しだけ高い頭を森から出し、遠い空を北に向かって飛んでいく人の後ろ姿を見送っているのであった。
いかがでしたでしょうか?
右目と魔法を使って軽くやらかすユウヒでした。大体テンションが上がってたりおかしい時は、人間普段抑制している部分を解放してしまうものです。
・・・抑制、してるか?
ゲフン! それではこの辺で、次回もまたここでお会いしましょう。さようならー




