第五十二話 鬼胎する仁王と華やかなパン屋さん
どうもHekutoです。
修正等完了しましたので投稿させていただきます。今回は少し多めなのでごゆるりと楽しんで頂ければ幸いです。
『鬼胎する仁王と華やかなパン屋さん』
とある国の発表に世界が震撼している頃、そんな話など知らないユウヒはある目的地目指して住宅地を疲労と共に歩いていた。
「割と時間喰っちまったな・・・」
トレビ庵でじぇにふぁーに一通り情報提供をした後、さっさと店を出るつもりがファオとコニファーに引き留められ、なぜか二人にパフェを奢ることになったユウヒは、日の落ち始めた空を見上げると、トレビ庵でのやり取りを思い出したようでその口元に笑みを浮かべている。
「さて、森野家は誰ぞいるかな・・・弁護、弁護ねぇ?」
しかしそんな表情も束の間、目的地である【森野総合警備会社】の会社倉庫兼住宅の扉の前で立ち止ると、インターホンのスイッチを奥までゆっくり押し込み、友人の依頼に沿うような会話が出来るか、悩むように眉を寄せて首を傾げた。
数秒後、
「お、きた「ユウヒ君!? 倅は! 家の倅は何をしたのだ!!?」・・・はぃ?」
重厚な扉の向こうから近づいてくる足音に顔を上げたユウヒが、一歩後ろに下がって扉が開くのを待とうとした瞬間、ユウヒの鼻先を高速で掠める複層構造の金属扉。その向こうから現れたのは、蒼い顔で息を切らした森野久馬。服の上からでも分かるほど鍛えられた上半身の筋肉を、仁王のごとく盛り上げた彼は、悲壮な感情がありありと伝わる声で、捲し立てる様に声を張り上げる。
「この間ユウヒ君が訪ねてきた後お二人が揃ってここを訪れてな・・・旦那は終始殺気塗れの視線を送ってくるし、姐さんはいつも通りだったけどいつも以上に過激だったし、てか旦那はよくあれで生きてるな?」
「何やってんだか・・・」
きょとんとしたユウヒの表情に一縷の望みを感じた久馬は、息を整えると焦りを隠す様に何があったのか話す。どうやらユウヒが名も無き異世界へと行っている間に、彼の両親がここを訪れていたようで、唯でさえ二人に頭の上がらない久馬は、二人が見せるいつもと違う空気にすっかり怯えきってしまったようだ。
「ユウヒ君が来たと言うことは何かしら進展が、いやまさか進展してしまったのか!? 馬鹿な! なんてことだ!?」
今頃家でいちゃこらしてるであろう両親に溜息を吐くユウヒの前では、ネガティブスパイラルにとらわれた大男が、その体を小さくかつ苦悩に歪め、どんな妄想をしたのか急に目を見開くとユウヒの両肩を掴み、彼を揺すりながら己が想像の答えを求める。
「・・・てい「へぶ!?」とりあえず落ち着いてください」
季節は夏、どんなに顔面蒼白になろうと広い家を玄関まで全力疾走し、さらに捲し立てる様に声を張り上げ無駄に力めば汗も掻く。顔面汗だくの大男に、キスでもしそうな距離で肩を揺すられるユウヒは、その目に冷たく暗い光を点らせると、どこまでも軽い気合の声を洩らして右手を力いっぱい突き出す。
「ごふっ・・・さすが、あねさんの、むすこ、初動の見えないところがそっくりだ」
「ありがとうございます? まぁとりあえずご心配の件は問題ありません。彼は良くやってくれてますから」
若干急所からずれているものの、明らかに腹筋にめり込む鋭角に握り込まれたユウヒの拳。奇妙な声を漏らした久馬は、その容赦ない一撃に怒るよりも、彼の姿に彼の母親がダブって見えたことに畏敬の念を覚え腰が引けてしまう。そんな久馬の痛みに震えるような声に首を傾げお礼を言ったユウヒは、友人から頼まれた通り弁護を試みる。
「・・・現在進行形!?」
しかしその試みは微妙にねじ曲がり、久馬の表情を驚愕と恐怖で歪めさせるのだった。
「ないない、変わらず巨乳好きのままで、家の流華の事も守ってくれてますから」
友人の父親が心底恐れる状況を察しているユウヒは、苦笑を浮かべながら、クマがルカに手を出したと言う想像を否定し、変わらずクマは巨乳好きだと言う公然の秘密を笑いながら暴露する。
「そ、そうか・・・それで倅と流華ちゃんはどこに?」
「あれ、聞いてない・・・と言うか不確定だから話さなかったのかな?」
ユウヒの表情と言葉に、自分の想像が想像のままであることに安堵した久馬は、冷や汗と脂汗が混ざった気持ち悪い汗を額から拭うと、幾分マシになった顔色で連絡の取れない息子の所在について問いかけた。どうやら森野家を訪問した明華と勇治の二人は、どこに居ると思われるかについては話さなかったようだ。
「あぁ、姐さんからユウヒ君が報せに来るだろうからと・・・気が気じゃなくて仕事を休んで待っていたよ」
「あぁはは・・・二人はとあるお馬鹿な友人たちに唆されて? ドームの中でバカンス中です。しばらくしたらもど「はぁあ!?」おう・・・」
心の余裕が生まれて来たからか、苦笑を浮かべながら仕事に手が付かなかったと語る久馬に、ユウヒは乾いた笑い零す。互いに笑みを浮かべ合い少し軽くなった空気の中、ユウヒはその空気と同じくらいの軽さで現状を報告する。しかしその報告は、ユウヒの求めた様な軽い流れで流されることはなく、久馬はユウヒが予想した通り驚愕の表情と声を上げるのだった。
「・・・これは、わしギルティ?」
それから数分後、ユウヒの報告を一通り聞いた久間は、どこか可愛さすら感じるしょぼんとした表情を浮かべると、魂の抜けかかった弱々しい声でユウヒに、自分は有罪かと問いかける。
「・・・」
「・・・・・・!?」
不安のみで形作られた表情を浮かべ問いかけてくる久間を、ユウヒは無表情かつガラス玉のような目で見つめ返す。ユウヒの表情から、またもやネガティブな想像に至り膨らませた久馬は、ゆっくりと顔から血の気を失っていくと、生れたての小鹿の様に震えはじめる。
「・・・のんぎるてぃ?」
「そこは確定で頼むよ!?」
しばらくの間震える久馬を見詰めていたユウヒは、徐に首を傾げはじめるとどこか自信なさ気な表情と声でそう告げ、必死な表情の久馬に再度肩を掴まれ揺すられるのだった。
いつもなら冴え渡る勘で的確に状況判断を行うユウヒであるが、一部勘が働き辛くなる事があり、その一つがユウヒの父である勇治が絡む事柄である。それ故、良い意味でも悪い意味でも予想を覆してくる父が、今回の件に関してどう動くかは今一はっきりとせず、たぶん大丈夫と言った程度にしか言えなかったのであった。
「まぁ・・・いろいろあったけど、結果として何もなかったので問題ないと思いますよ? そのお知らせに来たので、球磨の事は責めないであげてください」
「そ、そうか・・・」
今一つ確約出来ないものの、クマがルカに対して特に変な事をしていない事は確かなので、目の前のクマ父が酷い目に合うことは無いだろうと、ユウヒは首を傾げながらそう告げると、クマから言われた弁護を思い出しクマを擁護する言葉を付けたす。
「なんだか苦労性なところは似てますよね」
「そこは似なくてよかったのだがね・・・血筋かもしれん」
「血筋ですか」
ユウヒの言葉でホッとした様に肩を丸める久馬の姿は、今も異世界で振り回されているであろうクマの姿と重なって見え、思わずユウヒの口から零れ出た言葉に久馬は困った様に笑って見せ、ユウヒはどこか感心した様に呟く。
「しかし、これで少しは安心して眠れるよ。時間があるならお茶でも飲んでいくかい? ユウ君が来たと言えば家内も喜ぶ」
ユウヒを出迎え扉を開けた時より少しやつれて見える久馬は、玄関を少し押し開くと気のいい笑みを浮かべ、ユウヒを招くように手を動かしお茶を勧めてくる。
「あぁいえ、この後よるところもありますし、早く帰らないと母がうるさくなりそうなので・・・あ、スマホ持ってきてない、こりゃさらにうるさくなりそうだな」
「・・・ユウヒ君、君も苦労してるんだな」
しかしユウヒにはまだ予定が残っているらしく、だいぶオレンジ色に染まってきた空を見上げると申し訳なさそうに断りを入れ、まさぐったズボンのポケットにスマホが入っていないことに気が付くと、心底面倒そうな表情で頭を掻く。その表情に明華のめんどくささが脳裏をかすめた久馬は、ユウヒを労うような表情を浮かべるのであった。
「ははは、この程度家族ならなんてことはないですよ」
「苦労は否定しないのだね・・・」
「・・・・・・それじゃまた来ます」
労うときの表情がクマと良く似ている久馬に軽く笑って応えたユウヒだが、その言葉には一切苦労を否定する言葉が無い事を久馬につっこまれると、笑顔のまま静かに視線を逸らしその場を後にする。
「あぁ気を付けてな」
言葉は無くともそこに含まれたユウヒの思いを敏感に感じった久馬は、小さく頭を下げて去りゆくユウヒの背中を見詰めると、まるで戦友を見送る様な目で彼の無事を祈るのであった。
それから数十分後のここはとある町のパン屋さん。店名もそのまま『パン屋さん』と言うその店の中は、数日前に警察が駆けつける騒動があったとは思えない、いつもと変わらぬゆったりとした空気が流れている。
「・・・はっ!? 奴が来る!」
しかし、売る物の無くなった店内で、二人の女性がティータイムをゆったりと過ごしていたのもそれまで、ふわりと風に揺れるアホ毛がチャームポイントのまだまだ子供っぽい少女は、急に顔を上げると驚愕の声を上げた。
「ど、どうしたのミカン? ユウヒの恐怖にあてられておかしくなったの?」
「え? 私今何か言った?」
彼女たちはユウヒの友人であり、クロモリではギルドメンバーでもあるミカンとパン屋。急に顔を上げて奇声とも言える声を上げたミカンに驚いたパン屋は、心配そうな表情で隣に座る少女へ声をかけるも、声を掛けられたミカンはきょとんとした表情を浮かべて首を傾げる。
「重症ね、ユウヒの精神汚染恐るべし・・・」
急な彼女の言動に、魔王襲来による精神的ショックが抜けきらないのかと、割と真剣に心配したパン屋は、その原因であるユウヒの怒りに恐怖を感じ、その感情は思わず口から零れだしてしまう。しかしその言葉あまりに不用意なものであった。
「え? なんで俺、来て早々にディスられてるの?」
何故なら彼女たちの背後には魔王、もといユウヒが、話しかけようとしたタイミングでミカンに叫ばれ、再度話し出すタイミングを伺っていたのである。そこからまるでユウヒを軽蔑するような、恐れる様な言葉が聞こえてしまっては、彼も悲しそうに首を傾げずにはいられない。
「「!?」」
「にげんな」
背後から聞こえて来た良く聞き覚えのある声に、普段なら喜ぶ二人も間が悪すぎることを感じ取ったのか慌てて目の前のカウンターを飛び越え厨房側に逃げようと動く。しかし魔王からは逃げられないようで、スカートを履いたままはしたなく足を上げようとした二人は、即座に伸びて来たユウヒの手に頭を鷲掴みされてしまい、緊張と重心を押さえられたことで身動きを封じられてしまうのであった。
「まだなにもしてません! ごしゅじんさま!?」
「わたしいいこにしてました、まおうさま!」
動きを封じられた二人は、唯一動ける回転運動で後ろを振り向くと、呆れた表情で自分たちを見下ろしているユウヒに対して良くわからない弁明を始める。
「おいこらまて、いろいろと突っ込みどころ満載なんだが落ち着け」
不必要な弁明、なのかよくわからない声を上げる二人に脱力感を感じたユウヒは、突っ込むことを放棄してとりあえず落ち着く様に促す。
「もちはついてません!」
「だだ、だいふくだけはどうか! きょうのおやつなんです!」
しかし二人は落ち着くどころかさらに支離滅裂な言葉を捲し立てる様に話しだし、その姿はまるでPTSDを発症した人間の様であった。そう、様なだけである。
「てい!」
「「あいた!?」」
目の前でパニックを起こしている二人を見下ろしていたユウヒは、彼女達の頭から手を離すとそのまま軽いチョップを二人の頭に落とす。何故なら彼女たちはパニックを起こしている間も、口元がにやけないように力を籠め震わせていたのである。
「正気に戻ってるだろおまいら」
「「てへぺろ」」
異常に勘の鋭いユウヒがそんな二人の拙い演技に気が付かないわけもなく、呆れた様に肩を落としたユウヒの言葉に、二人は示し合わせたかのようなタイミングで、小さく舌を出した同じ表情で片目を瞑るのであった。
「はぁ・・・まったく、まぁかわいかったので許してやろう」
実は、前回の説教が彼女達のトラウマになってないか心配していたユウヒは、どこかほっとした溜息を吐くと、世間一般的に美少女と言う範疇に入る二人の可愛らしいジェスチャーに苦笑を浮かべると、軽く肩を竦めて見せる。
「か、かわ!?」
「今日のユウヒはデレの方だ!」
「デレとらんわ」
ユウヒにとっては何気ない一言も、ある種の人間にとっては非常に効果がある様で、ユウヒの言葉を聞いた瞬間パン屋は顔を赤くし固まり、ミカンは驚きと嬉しさに目を輝かせユウヒをおちょくる様な声を上げて見せた。
「もうこれは、おkと言うことよね!? ぬぐぅ!?」
少し照れたように突っ込みを入れるユウヒをミカンが嬉しそうに見上げていると、まるでパソコンがフリーズした様に固まっていたパン屋が急に動きだし、どこか深く粘質的な闇が渦巻いていそうな目でユウヒに掴み掛ろうとするも、再度頭を掴まれ動きを封じられる。
「何がだよ・・・あれだ。家のトラブルメーカー共の安否報告だ」
「ほんと!? 無事だったんだね!」
体格の関係上、手の届かないパン屋は手をユウヒに向けて彷徨わせ、その姿に溜息を漏らしたユウヒは、本来の目的である安否報告を二人に行う。その報告にミカンはパッと明るい笑みを浮かべると心底安堵した表情を浮かべる。
「完全に異世界で遭難してたけどな、詳細は帰ってきてからパフェかリンゴに根掘り葉掘り聞いてくれ」
「やっぱりドームは黒森なんだねユウヒ!」
まじめな雰囲気で正気を取り戻したパン屋を開放したユウヒは、無事という言葉に微妙な表情を浮かべると、詳しい話は異世界から帰ってきた人間に聞いてくれと肩を竦めて見せ、その言葉にミカンは興奮した声を上げた。
「非現実的ですが、ユウヒが言うのなら本当なんですね・・・ふむ」
ネットの情報を真に受けないと言うネトゲユーザーの心得を持っているミカンは、信頼できる情報源からもたらされた確定事項に異世界の存在をようやく確信できたようで、それはユウヒを心の底から信頼している、正確には依存している異世界否定派のパン屋も同様の様だ。
「あぁ異世界の様だな、まぁなんで今の様な状況になってるのかまではまだわからんが」
「・・・その口ぶりですと、まるで調べればわかる様な印象を受けるのですが?」
眼鏡の位置を調整しながら考え込むパン屋に頷いて見せたユウヒは、少し目を細め腕を組み考えを巡らせながらそうごちる。そんなユウヒに目を向けたパン屋は、その口ぶりに苦笑を浮かべると、ユウヒの異常な勘を知っている身としては強ちその印象も馬鹿に出来ないと、やはり困った様に笑みを浮かべた。
「なになに! ユウヒ探偵はじめるの? 今の仕事辞めちゃうとか? なら私が助手一号になってあげる!」
「な!? 一番は私です!」
そんな大人びた微笑も束の間、子供の様な笑みを浮かべたミカンの言葉を聞いて過敏に反応したパン屋は、椅子に座ろうとしていた体を慌てて立ち上がらせると、本気で焦りを感じさせる表情でミカンに噛みつく。
「えーいいじゃん、ねーユウヒ」
言葉だけでなく実際に噛みつきそうな勢いで立ち上がったパン屋から、ミカンは慣れた様子で逃げると軽い足取りでユウヒの後ろに隠れ、そのまま背中に抱きつくと人懐っこい笑みを浮かべてユウヒを見上げる。
「探偵か・・・なるほどそれも悪くないが、資格とかいるのか?」
「ぐるるる・・・え? いえ、探偵に特別資格はいらないはずです。確か公安だかどこかに届け出が必要だったとは思いますが・・・何かあったのですか?」
見た目以上に幼さを感じさせるミカンの言動に、ユウヒは苦笑を浮かべながら少し考え込む。一方パン屋は嫉妬で歪んだ表情と黒くドロドロとした目を、ユウヒの背中に隠れながら舌を出して見せるミカンに向けていたが、ユウヒに問いかけられたことに気が付くと、慌てて表情を元に戻してその問いに対する答えを思い出す様に答え、ユウヒを見上げる。
「ん? あぁ・・・仕事クビ、と言うかリストラされてな、一応の生活費は確保できたけど、これからどうしようかなと」
唐突な質問にもかかわらずスラスラと答える天才に感心していたユウヒは、不思議そうに首を傾げるパン屋に気が付くと、ハラリアでクマ達にリストラの事を話した時の事を思い出したのか少し気まずそうな表情を浮かべ、訝しげな表情を浮かべるパン屋に会社をリストラされたと話す。
「ええ!? あれ、私もしかしなくてもタイムリーに悪い事言っちゃったかな? ごめんねユウヒ・・・」
その瞬間、一瞬の間をおいて驚きの声を上げたミカンは、急にしおらしくなり体を離すと、申し訳なさそうにユウヒを見上げる。
「・・・ユウヒをリストラ? そいつは殺すべきそうすべき・・・いやでもそれなら家で雇って、住み込み・・・同棲、既成事実・・・・・・ハァハァ」
申し訳なさそうなミカンにユウヒが苦笑を浮かべる一方、またもフリーズしたように見えたパン屋は、小さな声でぽつぽつと呟きだすと黒い気配を噴出させ、しかしすぐにその気配を掻き消すと、今度はピンク色の空気をまき散らしはじめ、興奮した様に息を荒げるのだった。
「・・・何を考えてやがる此奴は、ミカンも気にすんな? 元々ブラックだったから特に気にもしてない」
ユウヒにとってはパン屋のこういった姿もいつもの光景であるが、それでも呆れることには変わりなく、感情そのままに呆れた声を漏らしたユウヒは、申し訳なさそうな上目使いで見詰めて来るミカンの頭を撫でる。
「そうなの? ユウヒブラックでずっと働いてたとか・・・もしかしてMなの? でも大丈夫私はどんな性癖でもうけイタイ!?」
しかし、そんなユウヒの言葉にきょとんとした表情を浮かべたミカンは、どこか心配する様にユウヒを見上げると割と失礼な事を口にし、引きつった表情を浮かべるユウヒに向かってフォローにならないフォローをはじめるが、その声はユウヒのアイアンクローによって強制停止させられるのだった。
「社長は真面だったんだよ」
「ふへへ・・・大丈夫よユウヒ、縛り方もマスターしてみイタイイタイイタイ!?」
ミカンをアイアンクローから解放したユウヒは、疲れた表情で一応の言い訳を口にするも、正気を失った目で妄想を口にしだすパン屋を見下ろすと、無言でその顔面を鷲掴みにしてゆっくりと力を込めていく。
「はぁ、毎度ながら失敬な娘どもめ・・・」
瞬く間に二人の女性を沈黙、正確には呻いているのだが、静かにさせたユウヒは、椅子に座ると深い溜息を吐いて疲れた様に肩を落とした。
パン屋とミカンが復活するまで待ったユウヒは、そのまま帰ろうとするも二人に引き留められ、なんだかんだと言いつつしっかりお茶してお土産まで持たされて帰ることになる。そんなユウヒの背中を見送った二人の女性は、それぞれに異なった笑みを浮かべるもその笑みは同種の笑みなのであった。
いかがでしたでしょうか?
震える大男と、ユウヒが居ると姦しくなる女性二人のお話でした。ユウヒによる暑い日本での報告廻りはまだ続くと思われるので、そのたびに見れる新たなユウヒの一面を楽しんで頂ければ幸いです。
それではこの辺で、またここでお会いしょう。さようならー




