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ワールズダスト ~現世に現れし黒き森~  作者: Hekuto
第一章 救出と救済

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第五十一話 揺れ動く世界情勢

 どうもHekutoです。


 修正等完了しましたので投稿させていただきます。量はそれほどでもないですが、楽しんで頂ければ幸いです。




『揺れ動く世界情勢』


 ある日、世界中で一斉発生した異常現象『ドーム』は、それまで様々な問題を報じていたニュースをあっという間にドーム一色で塗り替えた。しかしそれも次第に落ち着きを見せ始め、芸能人の離婚報道や事件事故の報道などが少しづつテレビに戻り始めた今日この頃、しかしこの日はまたテレビがある事一色に染まる。


『速報です。日本時間14時頃、各国で出現及び拡張を続ける巨大ドームに対する効果的な対象方法が発見されたと、中国政府が正式に発表しました』


「お? まじか」


「・・・怪しさいっぱいね」

 それは異常現象『ドーム』に関する話の中でも、誰もが求めて止まない対処方法に関する話であった。世界中がこの報道を食い入るように見詰める中、天野家でも二人の男女がテレビに視線を向けていたようだが、その視線はどこか懐疑的である。


『またこの方法には核兵器の使用が前提であるとし、現在中国では軍による準備が進められていると言うことです』


「・・・おいおい」


「なんとなく予想はしていたけど、実際にやっちゃうなんて流石ね」

 二人の視線は、テレビに目を向け報道を聞けば聞くほど呆れたものへと変わっていく。それも当然と言えば当然かもしれない、いろいろと問題の絶えない国からの情報であり、また核兵器の使用ともなれば日本人としてあまり良い感情は抱かないであろう。それが例え自分たちに向けられたものでないとしても、嫌悪感を抱かずにはいられない。


「自国内で使うことに躊躇しないな、大きい国ってやつぁ」


「とばっちりは嫌だけど、私の予想だと日本が一番安全なのよね」

 懐疑的な表情がキナ臭げなものへと変わった二人は、少しだけ起こしていた上体をソファーの背に沈め直すと、何とも言えない表情で呆れた声を洩らす。


「そか、しかしどうにもキナ臭すぎるな」


「うふふ、大方どこかの国に踊らされてるんじゃないかしら」


「あー・・・これが最初で最後じゃないと?」

 明華の言葉に少し安心したような声を出した勇治は、彼女に向けていた視線をテレビに向け直すと、やはりキナ臭げな目をニュースに向け、そんな勇治の姿を横目で見つめていた明華の可笑しそうな笑い声に、嫌そうに顔を歪めると言外に含まれた意味が気になり問いかける勇治。


「そうね、効果が本当にあれば躊躇しなくなるんじゃないかしら?」


「今の大国のトップはどこも過激な人だしなぁ」

 嫌な予想に思わず背中を丸め考え込み、その姿勢のまま見上げるように問いかけてくる勇治に、明華は良くできましたとでも言いたげな表情で頷くと、まるで他人事のように語りながらテーブルに置いていたスマホを手に取り操作し始め、そんな明華を目で追っていた勇治はだらしなくソファーに身を預けると、険しい表情で頭を抱える。


「円安が進んでる・・・買いね」


「株は?」

 一方、口元を緩め鼻歌混じりにスマホを操作していた明華は、急に表情を引き締めると、目を光らせ小さく呟く。どうやら世界は経済的にも騒がしさを増しそうで、険しい表情を浮かべていた勇治も身を乗り出すと、真剣な表情で明華の手元を覗き込む。


「もう少し行ったら中国系は全売りね」


「ふむ上がってるな・・・下がる感じか?」

 今にも不敵な笑い声が聞こえてきそうな明華の手元では、急上昇を始めた折れ線グラフがいくつも流れて行き、その画面を興味深そうに見詰める勇治は、姿勢を正しながら明華を見詰め問いかける。


「為替も一緒にどん」


「まぁ核なんて使えばなぁ」

 問いかけに対して満面の笑みで振り返った明華は両手を広げ、その勢いのままスマホを放り投げると、株価と一緒に為替も同時に大きく変動を見せると言う。そんな彼女の勘に納得したような表情を浮かべてソファーに身を預け直す勇治。


「それだけで済めばいんだけどぉ」


「え?」

 しかし、彼が予想した未来と明華の感じた未来とでは差異があるらしく、彼女の不穏で曖昧な言葉と苦笑いは、勇治の背中に嫌な汗を流させる。なぜなら、彼女がこう言った表情を浮かべる時は何かしら大事件が起きる前触れなのだ。


『今入りました。中国政府の発表に対し、日本政府は最大限の遺憾の意と共に核の使用中止を求めていくとの事です』

 静かに苦笑を浮かべる明華と、沈黙したまま蒼い顔に一筋の汗を流す勇治が見つめ合う部屋では、テレビだけが空気を読まずに一定のリズムで報道の音声を流し続けるのであった。





 そんな日本の一般? 家庭から遠く離れた地球某所では、真っ白で大きな建物の一室で椅子に深く座った男性と、その前で背筋を伸ばして立つ男がテレビに目を向けていた。


「・・・ふふ」


「ご機嫌ですね」

 テレビで流れているのは、天野家で報道されていたものとほとんど変わらない内容であるが、それを見詰める男性の表情は天野家とは違い楽しそうな皺が寄せられている。


「思った通りの展開なのだから仕方がない」


「まぁそうでしょうが、流石ですねあの国は」

 それもそのはず、テレビで報道されている某国のドーム対策は、彼らが裏で糸を引いた結果であるからだ。彼らが故意にセキュリティを下げた機密情報は、特定の国に所属する諜報員の手によって彼らの国から持ち出され、その情報が今ニュースで流されている報道の素となっている。


「そう言うところは好感が持てるよ」

 どう聞いても褒めているようには思えない男性の言葉に、直立する男は思わず苦笑を洩らす。


「ロシアはまだ様子見の様ですが、すでに核の準備は終わっているようです」


「ふん、そうだろうな」

 機嫌の良い表情を隠すことのない男性に、苦笑を洩らしていた男は表情を真面目なものに戻すと視線を男性に向けながらテレビでは伝えられていない情報を口にし、その言葉を聞いた男性はどこかつまらなさそうに鼻息漏らすと、少しだけカーテンの開けられた窓の外に目を向ける。


「結果が出次第すぐに次の段階に移行しますが、本当に大丈夫なのでしょうか?」


「わからん・・・が、やるしかない。このまま眺め続けても良い事など何もないのだ」

 男は男性の姿に不安そうな表情を浮かべると、彼らも含めて複数の国が行おうとしている行為について疑問を口にした。彼の疑問については、椅子に座り暗い窓の外を見詰める男性も少なからず抱いているものであるようで、疑問に対して明確な答えを出せないようだ。


「わかりました。それでは失礼します」


「・・・・・・」

 しかし、進み始めた歩を止めることの許されない立場にいる男性の言葉に、男は覚悟を決めた様に頷くと、一人で使うにはずいぶん広く豪華な部屋から静かに退出する。男の退出を耳から聞こえる音で確認した男性は、肩から力を抜いて溜息を吐くと、柔らかな革張りの椅子に深く背中を預け、右手の親指と人差し指で自らの目頭を挟み込むように揉み解すのであった。





 一方、こちらも日本の首都からは遠く離れたとある寒い地域。その中でも、赤く大きな壁が映える建物の一室では、椅子に座った鋭い目つきの男性が、手元の書類に視線を落としたまま目の前で直立した女性から報告を受けている。


「調査員の報告では開始には十分間に合うとの事です」


「調査機器の調達に時間がかかると言っていたが、大丈夫なのか?」


「はい、そちらも解決して今は観測地の準備も終わっている頃かと」

 女性の報告に手元の資料に視線を落としていた男性は、顔を上げると以前に報告されたのであろう内容との差異について問いかけ、その問いは女性も予想していたのか、一つ頷くと淀むことなく受け答えていく。


「なら良い、どんなことがあってもデータは持ち帰らせろ、なるべく早期に排除したいからな」


「はっ!」

 女性の答えに満足そうな表情を浮かべた男性は、机の上で手を組むと鋭い目つきで女性に指示を出し、指示を出された女性は男性の目つきにも負けないような鋭い敬礼を見せると、無駄のない動きで部屋から退出する。


「・・・忌々しい限りだ」

 女性の退出を見送った男性は、手元の資料とディスプレイに映し出された、凍てつく大地を浸食するように広がる黒く巨大な半円球の物体を睨みつけると、小さく呟いて椅子の背もたれへとからだをあずけるのであった。





 各国の首脳が黒く巨大なドームに頭を悩ませている頃、日本のとある建物の一室でも、頭を悩ませる首脳が居た。


「・・・ふぅ」


「・・・」

 日本の首脳と言えば総理大臣である。その総理大臣は椅子に座り背中を背もたれに預けたまま、目元を揉んで溜息を洩らしている。この態勢のまま溜息だけ洩らし続けること数分、彼を見詰める二対の瞳は何とも言えない表情を浮かべていた。


「・・・総理」


「・・・私は何も知らんからな?」

 すぐそばの椅子に座り手元に資料を持つ男性の声に、体を起き上がらせた彼は睨むように、それでいて気だる気な視線を向けて自分は何も知らないと口にする。


「だろうな、一応何か動きがありそうだと聞いてはいたが・・・むぅ」

 総理大臣の苦虫を噛み潰しているような声に、資料を持つ男性は肩を落とし、少し離れた場所に座る防衛大臣である石木は、解っていたと言った表情と言葉を漏らし唸る。


「呼び出して最大限の言葉を使ったものの、無駄ですかね」


「無駄だろ、目的が目的だからな・・・それで? いろいろとせっつかれてんだろ?」

 彼らが現在頭を痛めている事とは、隣国の核を使用したドーム対策についてであった。世界で唯一の核兵器被害国としては当然非難すべきことであるが、非難した所で変わるのなら苦労はしない。


「いろいろね、制裁案から日本も核を使うべきとかアホな案までな・・・どうも今回の話は故意に隠されていた気がするな」

 そんな頭の痛い問題に対して、さらに頭の痛くなるような声を上げるのが国の政をつつがなく執り行うはずの政治家達。予想もしない、正確にはあってほしくない予想としては一部でささやかれていた事態に、大部分の人間は混乱をきたしている様である。


「外務省の方で何か?」


「明確には何もないが、あっちもそっちも声だけな感じがするとか」

 疲れた表情の総理に対して、呆れた表情で資料をめくる副総理は、石木の質問に対して資料の内容を見ながら肩を竦めて見せた。


「計画通りってか?」


「それを言うときは口元を隠してくれないと」

 そんな副総理の言葉と仕草に、石木が軽口を突くように呆れた声を洩らすと、総理は目元をキラリと光らせ、机に肘をついて掴み合う様に組まれた両手で口元を隠す。真剣な話の途中で急にボケだす総理、どうやらその行為は良くあることの様で、目の前の二人は呆れた様に総理を見詰める。


「・・・はぁぁ、まったく。忙しすぎて動画鑑賞一つできねぇぞ」

 どこかの国の真剣な空気しか流れない室内とは違い、急激に空気が緩みだした空間に、石木は椅子の背凭れに体重を預け大きなため息を吐き出す。スマホを取り出した石木が詰まらなさそうな表情で動画鑑賞と口にするが、その動画とは日本の誇るアニメーションだったりする。


「石木さんの独自ルートはなんと?」


「外向けは頼んでないんだよ、高くつくからな」

 今季アニメまとめスレと言う文字が画面に大きく映し出されたスマホを弄りだし、完全に仕事モードから私事モードに切り替わってしまった石木に、こちらもどこか気の抜けた様に眼鏡を拭き始めた副総理が声をかけ、その言葉にスマホから視線を上げずに答える石木。


「・・・」


「・・・」


「そんな目で見るなよ、予算使えるわけじゃないんだ。ただ・・・」

 お金がかかるからと言う理由で情報収集を限定している石木にジト目を向ける二人。責められるは彼では無く、二人も本心から責めているわけではない冗談交じりの視線に、妙な圧力を感じて顔を上げた石木は、不貞腐れた様な声を零すもすぐに真剣な表情でスマホを弄り出す。


「ただ?」


「ドーム関連については進展がありそう、だそうだ」

 真剣な表情で言葉を濁しスマホを見詰める石木の言葉に食いつく総理、彼の問いかけに対して、石木は切り替えられたスマホの画面の文字を追いながら、その内容を簡潔な言葉に直し視線を前に上げる。


「ほう・・・そう言えば今話題の救助隊も民間人でしたな」


「ニンジャですか、接触できないんですよね・・・本物なんじゃないかって秘書まで言ってますよ」

 石木の独自ルートは民間であるらしく、興味深そうな声を洩らした総理は、巷をにぎわす民間人たちについても口にした。それは様々な憶測が流れ、しかしマスコミも諜報機関もその正体を未だに掴めていない通称ニンジャ。


「んー・・・本物云々は分からんが、世の中とんでも人間は割りと居るからなぁ」

 奇しくも彼らの思惑は彼らが思う以上に政府、正確には総理や防衛大臣に興味を抱かせているらしく、楽しそうな表情の総理に対して石木は少し考え込むと、どこか厄介そうな表情を浮かべた。


「お知り合いの?」

 眉を寄せて考え込む石木に、副総理が不思議そうに問いかける。どうやら石木の知り合いの中には、巷で話題になっているニンジャ達の噂程度の事をやってのける人物が複数いるらしく、その危険性と有用性に頭を悩ませている様だ。


「ちょっとした戦友だよ、あいつにも頼んでみるか・・・でも子供が出来てからあまり危険な事はやってくれなくなったし・・・どうしたもんか」

 それでもその為人を知っている戦友は、危険性よりも有用性が勝るらしく、しかしそういう人物に限って頼ることが出来ない現実に、石木は目元を揉みながらため息交じりの声を洩らす。


「ままなりませんか、とりあえずはその進展がドーム対策に役立つものであることを祈るとしましょう」


「安全なドームの消し方とかだとありがたいのですがね・・・ふぅ」


「そりゃもう勲章もんだろ・・・」

 どこか草臥れた空気の満ちた部屋の中、その空気の発生源である総理は副総理の言葉に目を向けると、願望に満ちた呟き零しついでに溜息も洩らす。そんな呟きに思わず突っ込みを入れる石木の言う様に、核など使わない安全な方法を見つけられたならば、その人物や団体には世界中から表彰や勲章がダース単位で並びそうである。


 石木の突っ込みを境に何とも言えない無言の空間となった室内は、石木の秘書官がやってくるまで停滞し続け、返事のない室内に訝しんで入室した秘書官曰く、動く者のいない室内は、まるでマネキンチャレンジでもやっている様であったと言う。



 いかがでしたでしょうか?


 これからもこんな感じでちょこちょこ世界情勢的な話を挟んでいこうと思っていますでの、こういった話が好きな方は楽しんで頂けると幸いです。


 それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さよならー

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