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ワールズダスト ~現世に現れし黒き森~  作者: Hekuto
第一章 救出と救済

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第四十七話 異世界の里でバカンスを 前編

 どうもHekutoです。


 修正等完了しましたので投稿させていただきます。今回もそこそこな量ですので楽しんで頂ければ幸いです。



『異世界の里でバカンスを 前編』


 青々とした葉が茂る大木に囲まれた獣人の集落ハラリア。その規模の大きさから森に住む獣人達にとっては首都の様な扱いとなっている。


「それじゃ行ってくるわ」

 そんな集落を守るのは、森に聳える大木を数え切れないほど使い作られた高い城壁の様な壁、その壁の中と外を繋ぐ門の前では、ジャージの腰に香り袋を括り付けただけの身軽なユウヒが、森の中を歩く時より少しだけ明るい色合いの服を着たネムと向かい合っていた。


「一人で大丈夫かにゃ? ついていこうか?」


「大丈夫だよ、と言うか・・・ついてくるなよ? 向こうでネムみたいなのが出たら大騒ぎだからな」

 どうやらネムは、これから地球へと戻るユウヒを見送りに来ている様で、大して心配した風でもないネムの心配する声に、ユウヒは軽く返すと何かに思い当たった様な表情で念押しをする。


 確かにユウヒの言うように、ネムの様な獣人が日本に現れたとなればどんな騒動に発展するかわからない。


「なんだかお化けみたいな扱いにゃ・・・」

 ただでさえ色々な異常が続いて敏感になっている日本である、それ故にユウヒの心配も分かるわけだが、そんな心配など解らないネムは、不貞腐れたように目を細めて口をすぼめると、頭の上の耳を伏せて不満を口にする。


「・・・ふむ、妖怪扱いされるかもしれんな?」


「余計にひどいにゃ!?」

 ユウヒの言い方に不満を漏らすネムであったが、彼女の姿をじっと見つめたユウヒは、親指と人差し指を顎に添え少し考えると、小首を傾げ神妙な声で妖怪と口にし、その言葉にネムは軽く傷ついたように驚きの声を洩らす。


「まぁそんなに日数はかからんと思うから、その間妹たちをよろしくな」


「わかったにゃ、いってらっしゃーい」

 先ほどまでの不機嫌そうなものとは違う力なく伏せられたネムの耳を見て、ユウヒは苦笑を浮かべながらルカ達の事を頼むと踵を返してゆっくり駆け出し、返事を返したネムはふわりと空へと飛んで行くユウヒの背中に、元気よく手を振るのであった。


 ちなみに、この時ユウヒの姿を見ていた獣人やエルフ達は、驚きの表情で小さく空へ消えて行くユウヒを呆けたように見上げており、その光景に門の外まで見送りに来てよかったとネムは苦笑を浮かべる。


 実は、ネムに門まで連れてこられなければ、彼女の家から飛び立とうとしていたユウヒ。その先で待っているであろう一騒動を予想したネムは、あえて門の外までユウヒを見送ったのだった。





 ユウヒが地球を目指し濃い緑の葉が生い茂った森から空に飛び出った頃、彼が空の上で心配する友人達は、ハラリアの中で思い思いに過ごしていた。


「・・・どうしたのぉ?」

 こちらはその一人であるメロン。彼女は土間の小上がりに腰を下ろし、手の中には包み込むようにして小さな壺を持っている。彼女が常に浮かべている微笑みは、気のせいか今はより嬉しそうに輝いていたのだが、自分に向けられている視線に気が付くと、すぐに母性を感じる笑みで視線の相手に首を傾げて見せた。


「あ、あの・・・メロンさんは、本当に基人族なのでしょうか?」


「んふ? よくわからないけどちょっと違うかしら? 異世界人だし・・・?」

 首を傾げるメロンの前には、すらっとした長身のネシュ族と思われる女性と、鳥の様な羽毛が特徴的な女性が少し腰をかがめて立っていた。二人は獣人と言うよりも彼女が良く知る人に近い姿をしており、そんな二人からの質問にメロンはきょとんとした表情を浮かべたり、悩むように小首を傾げたりしながら答える。


「じゃじゃ! タウロス族系の血が入ってるんですか?」


「タウロス? あぁ牛さんのことね、流石に血は入ってないけど実家にはいっぱい居たわね、ジャージーとかホルスタインとか」

 申し訳なさそうに質問をするネシュ族女性と違い、少し高い声で興奮したように質問を口にする鳥っぽい見た目の女性に、メロンはぷっくりとした唇に人差し指を添えながら小首を傾げると、何か思い当った様で楽しそうに話し出す。


「違うのですか!?」


「それじゃあの説じゃない?」


「あの? ああ! もしかして一緒に居ると似てくるとかあるんですか?」

 一方、メロンの返答に驚きと困惑の表情を浮かべた女性達はと言うと、驚き固まる羽毛女性にネシュ族の女性が耳打ちし、その言葉に何かを思い出すと前のめりになりながら再度メロンに質問を投げかけた。


「そうねぇ・・・みんながみんなじゃないけど、結構似てくるかもね」

 忙しなさを感じる羽毛女性と、好奇心に満ちた目で見つめて来るネシュ族の女性からの質問に、頬に手を添えて小首を傾げた彼女の実家では、農業のほかに酪農なども行っており、メロンが物心着いた時にはすでに牛達と接していた。そんな牛のお世話をする中で、家畜の性格が家族に似てくる様な経験もしており、その事を思い出しながら話すメロンの表情はとても楽しそうである。


『やっぱり・・・』


 昔の事を思い出しながら話すメロンの言葉は、彼女たちの予想にそったものであったのか、確信を得た様な表情でメロンを、より正確にはその豊かな胸部装甲を生唾を飲み込み見詰める二人に、メロンは良くわからないなりに微笑ましげな笑みを浮かべるのだった。


「うふふ? それじゃ私も聞いていいかしら?」


「あ、はい何でも聞いてください!」

 返答を聞いて以降ただ見つめ続けてくる二人の様子に、楽しげな笑い声を零したメロンにも気になることがあるらしく、羽毛女性の目の前で手をひらひらと動かして見せたメロンは、正気を取り戻して背筋を伸ばした二人に質問をするため口を開く。


「それじゃこの里には何種類ぐらいの種族の人がいるのかしら?」


「そうですね、基本ネシュ系列とオロウ系列が多くて、この子は鳥族系列のキィ族で、お世話させてもらっている子の中には熊人族の娘なんかもいます。それから―――」

 メロンが気になっていた事は、多種多様な獣人が住むハラリアにはいったいどれほどの種族が混在しているのかということと、住む環境は違ったりしないのかということである。


 動物の場合は種が違えば好む環境も違う、それらが獣人でも同じではないのかと考えたメロンにとっては、多種多様な種族が一緒に住めるハラリアと言う集落が不思議に見えたのであった。





 女性三人集まれば姦しいと言う言葉を体現したような集会場の調理場から、少し離れたこちらは裏手にある薪割り場。暖かい季節でも標高が高いせいなのか朝や夜はそれなりに冷えるハラリアでは、料理に暖にと常に一定の燃料として薪は必需品である。


「・・・・・・これは、どう言う状況だ?」

 そんな薪を用意するために、巻き割り台の丸太と鉄製の鉈がおいてある集会場の裏手では、薪割りくらい手伝おうと善意で行動を起こしたクマが、真剣に困惑した表情で首を傾げていた。


「ごめんなさい! ごめんなさい!」

 クマの後ろには、露出している肌がすべて短くきめ細かい茶色の毛で覆われた獣人の女性が二人、申し訳なさそうな表情で立っており、一人は謝罪の言葉を口にしながら、丸っこいクマ耳を生やした頭を何度も下げている。


「てめぇ! 聞いてんのかごらぁ! 俺の女にてぇだしてただで済むとおもんなや!」


「oh・・・生まれて初めてそんな言いがかりかけられたけど、思い当たる節が無いんだが?」

 一方、女性を庇うような位置取りで立つクマの前には、彼女たちと同じ種族なのであろうが、細身でそれほど身長の高くない女性達とは違い、がっしりとした体に2メートルは優に超えそうな巨体の男性が鼻息荒く恫喝するように声を荒げ、文字通り牙を剥いているのであった。


 生まれてこの方、熊獣人の男性が言ったような言いがかりを受けたことのないクマは、喜びと驚きの混ざった困惑の声を洩らすと、困った様に苦笑を浮かべて小首をかしげる。 


「誰があんたの女よ!」

 そんな恫喝の声よりその内容に困惑するクマの後ろでは、何度も頭を下げる女性を支える様に寄り添う女性が、きめ細かい茶色の毛を逆立てると牙を剥いて吠えるが、


「おめぇじゃねぇよっ! おい、このハーフの中途半端野郎! 俺のクキルだけじゃ飽き足らずこの阿婆擦れまで侍らしていい気になんなよごら!」

 どうやら熊獣人の男性が言う手を出された女性と言うのは、先ほどからクマに頭を下げている小柄なクキルと言う女性の方らしく、牙を剥いた女性に暴言を吐いた男性は今にも飛び掛かりそうな目でクマに迫るのだった。


「はべ? ・・・うんそれはユウヒの担当だな、よし俺は関係ない。さて薪割の続きを「おい!」」

 しかし、そんな怒り心頭な熊型獣人の熊人ゆうじん族男性に対して、クマは只々めんどくさそうな表情を浮かべたままで、終いには自分の担当では無いなどと言いだし薪割りの続きに取り掛かろうとする。そんなまるで覇気のないクマの言動を見て余計に怒りが込み上げて来た熊人男性は、隙だらけにしか見えないクマの背中に向かって、拳を振り上げ飛び掛かった。


「!?」


「あんた!」

 その突然の行動に驚き口を押えるクキルと、彼女を支える女性が声を上げ一歩前に踏み出した瞬間、まるで背後が見えているように拳を避けたクマは、


「おっと、よっと」


「んな!? くそちょろちょろ避けやがって!」

 さらに二度三度と飛んでくる拳を特に臆することなく軽い調子で避けていく。


 何ということも無い表情で、風切り音が聞こえてくる鋭い拳を避けていくクマに、熊人男性は驚き悪態をついて一歩下がり、彼の背後にいた同じく熊人の男性達は驚きの声を洩らす。


「・・・お兄さん素人? 駄目だよプロに噛みついたりしちゃ」


「な、なんだとお!」

 数発の拳が振るわれただけで、それ以上の攻撃が来ない事にほっとした表情を浮かべたクマは、女性達から少し離れた場所で熊人男性に向き直り苦笑を浮かべると、まるで子供を相手にしているような雰囲気で男性を諌める。


「自分で言うのもなんだけど、俺って家の中じゃ割と温和な方だからいいものの、プロ相手に掴み掛ったら下手すると怪我じゃ済まなくなるよ?」

 クマの言葉に熊人男性が驚きと怒りに染まった声を上げる一方、クマは腕を組むと彼の行動に対してこんこんと話し始めるのだった。


 ユウヒの友人であるクマが言うプロと言う言葉は、この場合戦闘のプロ、または白兵戦のプロと言う意味である。クマの家は家族全員が『森野総合警備会社』と言う個人経営会社の社員であり、個人経営とは思えない規模の社員を有しているのだが、その事以上に営業実績がおかしく、世間一般の森野総合警備会社に対する認識は、『民間軍事会社』であった。


 一般的ではないおかしな会社の一応次期社長にあたるクマは、当然民間軍事会社と言う評価に可笑しくない訓練を受けている。そのため、明らかに動きの拙い男性を一般枠の獣人だと思い、優しく諌めたのだった。


「うぐぐぐ、熊人ゆうじんの戦士を馬鹿にするな!」


「え? 友人? いや、馬鹿にはしてないが・・・(駄目だ、異世界コミュニケーション難しいです。助けてユウヒえも~ん)」

 しかし、どうやらこの熊人族の男性は一般枠などではなく、戦闘が専門だったようで馬鹿にされたと怒りだし、一方クマは微妙に食い違う言葉の壁にきょとんとした表情を浮かべ、思わず心の中で異世界経験の先輩であるユウヒに助けを求めてしまう。


「クマさん! こいつら頭悪いから口で言っても分からないよ、一発のしちゃわないと」


「ごめんなさい家の部族の雄が迷惑を・・・存分にやっちゃっていいですから」

 どうしたらいいものかと、首を傾げるクマに答えを示したのは、阿婆擦れなどと言われ完全にキレている熊人女性と、小柄で大人しそうに見えながら、こちらもやはり怒っているクキルの二人。


「え? あれ? 今攻撃的なターンなの? てか君らも結構過激だけど、獣人とかこういうもんなのかなっとと」


「にげんな!」

 女性陣の言葉に思わず振り返って驚きの声を洩らすクマ、見た目からそれほど攻撃的な印象を受けない女性陣からの攻撃的な指示に、獣人と言う種族特有の性質なのか、それとも熊と言う種族的な物なのかと、完全にヤル気な男性の攻撃を避けつつとりあえず納得する事にしたクマ。


「いやいや、普通避けたり逃げたりするでしょ・・・まぁいいか」


「あ!?」


「俺もこっち来てから気になってることがあってさ、ちょっと組手に付き合ってくれる?」

 まるでチンピラの様な言動の男性に向き直ったクマは、呆れた様に呟くと溜息のように息を一つ吐き肩から力を抜く。眉間にこれでもかと皺を寄せ、威嚇の声を上げる男性の目を見詰めると、気になっていることがあると気軽に話はじめ手招きをして見せる。


「減らず口叩きやがって! おめぇらやっちまうぞ!」

 

『おう!』

 そんなクマの様子に目を血走らせた熊人の男性は、同じく怒りを覚えていたのであろう眉間に皺を寄せてクマを睨んでいた男性達に呼びかけ、その呼びかけに答えた男性達は大きな声を上げると腕捲りや上着の首元を緩めながらクマを囲むように歩き出す。


「えぇ・・・タイマンじゃないのぉ」


『頑張ってください!』


 一対一だとばかり思っていたクマは、肩を落とすとどこかやる気を削がれた様な表情で小さく呟き、そんな様子が余裕に見えた女性陣は、いつの間にかその数を増やして一斉にクマへと声援を送る。


『・・・くっそしね! 中途半端野郎!』


「・・・(選択ミスったか? 教えてユウヒ先生!)」

 クマに贈られた声援は、彼のやる気につながることなく、かえって熊人族男性達の怒りの火に油を注いでしまったようで、暑苦しい筋肉の壁に囲まれたクマは一層肩を落とし、ユウヒへと自分の選択の正否を問うのであった。


 ちなみに、熊人族の恋愛は女性優位であり、結婚後もかかあ天下になることが多く、熊人族の男性は嫉妬深い傾向にあるのだが、いまさらそんなことをクマに教えたところで彼のやる気を削ぐだけかもしれない。





 そんなちょっとした乱闘騒ぎが起きているハラリアから遠く離れた場所では、日本につながる白く光る壁を太い根で守る様に聳え立つ世界樹の精霊にせがまれ、精霊達に囲まれたユウヒが御手製のお茶を振る舞っている。


「先生にはわかりません。キリッ!」

 お茶を飲む精霊達の微笑ましい姿に和んでいるユウヒ、そんな彼の下へ友人からの電波はしっかりと送信されてきたようで、いつも通り無駄に良い勘を働かせたユウヒは、しかしその問いの答えなど知らないと言った表情で虚空に向かってキメ顔を作る。


「何がですか?」


「ん? 今友人から答えの見当たらない質問をされた気がしてな」

 突然虚空に語り出したユウヒに驚いた世界樹の精霊は、きょとんとした表情を浮かべると小首を傾げて見せ、ユウヒは表情をいつものやる気なさげなものに戻すと首を振りつつそう答えた。


「質問ですか・・・」


「どした?」

 首を振って気にするなと言った雰囲気で話すユウヒを見詰めていた世界樹の精霊は、その少女らしい顔を少し俯かせ、ユウヒに作ってもらった木製のマグカップに満たされた温かいお茶の湯気を見詰めだす。そんな急に雰囲気の変わった彼女に、ユウヒは不思議そうに首を傾げる。


「あのお父様、質問良いでしょうか?」


「おう、なんぞ?」

 すでにお父様呼ばわりにもだいぶ慣れてきたユウヒは、僅かに照れ隠しの含まれた返事を返し、手に持っていた木のマグカップを同じく木で作られたテーブル代わりの箱の上に置く。


「お父様はいつになった私に名前を付けてくれるのでしょうか?」


「へ?」

 しかし、マグカップがテーブルの上にしっかりと置かれる前に問いかけられた質問に、思わず動揺してしまったユウヒは手を滑らせてしまい、騒がしい精霊達が一斉に動きを止めた奇妙な静寂の中で、マグカップはユウヒの動揺を表すかのように大きな音を立ててしまう。


「昨晩お話しをした樹の精霊さんたちが、子供はお父様に名前を付けてもらうのが普通だと・・・」


「あぁ・・・うぅん、母樹じゃだめなの?」

 彼女曰く、父親は娘に名前を付けるものだと精霊達に聞いたと話す。その言葉に動揺したままの表情で言い淀んだユウヒは、周囲で息をのみながら様子を窺う犯人せいれいたちに視線を送るが、その視線は尽く逸らされてしまう。すべての精霊が同じ反応を示すことに頭を抱えたユウヒは妥協案を提示するのだが、


「私は、お父様がいいです・・・駄目ですか?」


「コフッ! ・・・いいワンツーパンチだ。世界が狙えるぜ」


「ほへ?」

 帰ってきたのは少女の真剣な表情と、次第に不安になり滲みだす涙目による上目使いと言う強烈な連続精神攻撃であった。物理的な衝撃を伴っていそうな娘からの精神攻撃に、咳き込み口元をぬぐったユウヒは、きょとっとした表情を浮かべる彼女に世界の可能性を感じた様である。


「わかった考えよう。でもすぐには思いつきそうにないから帰るまでに考えとくよ、人の親も長い時間悩むものなんだ。それでもかまわないか?」


「はい!」

 きょとんとした表情を浮かべながらもじっと見つめて来る娘に、ユウヒは居住まいを整えると彼女の願いを了承し、しかしすぐに名前が出て来るとも思えない為、日本から帰ってくるまで待ってもらうことにしたようで、しかしそれでも世界樹の精霊は嬉しそうに頷くのだった。


<よかたねー!><けいかくどおり!><かいしょうみせろよ!>

 彼女が嬉しそうに微笑みながら頷いた瞬間、それまでピタリと動きを止めて動向を見守っていた多種多様な精霊達は、急に大きな声を上げると彼女を祝福し、同時にユウヒのそばに飛んできては様々な声を掛けていく。


「なんのだよ・・・それじゃ行ってくるわ」

 微妙に不穏な事を口走る幾人かの精霊達に苦笑を漏らしたユウヒは、いつもの5割増しで騒がしくなった精霊達に肩を竦めると、軽い足取りで立ち上がって白く光る壁へ歩きだし、壁の中に入る寸前顔だけ振り返って出かける前の何でもない挨拶を口にする。


「いってらっしゃーい」


≪いってらっしゃーい!≫


 ユウヒの声に明るい表情を浮かべた世界樹の精霊は大きく手を振って見送り、精霊達もまた同じように手を振りながら見送る。光る壁の中へユウヒの背中が完全に見えなくなるまで手を振り続けた世界樹の精霊は、少し寂しそうに手を下ろすと、気遣ってくれる精霊達に笑みを浮かべながら、夏を思わせる木漏れ日の下でユウヒの帰りを待つのであった。



 いかがでしたでしょうか?


 異世界でバカンス? を楽しむ? ユウヒの仲間達でした。今後はメロンさんの気になる異世界の種族も増えて行き、世界樹の精霊の名前も、ユウヒが頑張って考えるはずです。クマ? 彼はどうなんですかね? 次回辺り結果が出るとは思うんですが、まぁ彼の会社も異常だとは言っておきたいと思います。


 それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー

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