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ワールズダスト ~現世に現れし黒き森~  作者: Hekuto
第一章 救出と救済

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第四十一話 獣人の村ハラリア

 どうもHekutoです。


 修正等完了しましたので投稿させていただきます。最近文書量が増えて行ってますが、気にせず楽しんで頂ければ幸いです。



『獣人の村ハラリア』


 名も無き異世界で、身体的にも精神的にも疲れ切ったルカ達を護衛しながら、エルフを先頭にユウヒが森を歩くこと小一時間。何事もなく行程が進む中、ユウヒの周囲では何事か起きているらしく、周囲のエルフや合流したネムの部下である獣人少女たちが目を丸くしていた。


「おお、これもよさそうだな」


<わかった!><もっととってくる!>


 どこからともなく宙を舞い現れ、ユウヒの手に収まるのは瑞々しい多肉植物。しかしそれは精霊の姿を見ることが出来ない者の視界であり、ユウヒの蒼い左目には、あちこちから様々な物を拾ってくる小さな精霊達がしっかりと見えていた。


「ほどほどでいいぞ?」


≪はぁい!≫


 ユウヒの腕の中には、彼女たちがユウヒを喜ばせる為に拾ってきた物が複数おさめられており、ユウヒが腕に抱えた大きな葉で作った簡単な入れ物の中は、きれいな石ころや薬草に、どこからどう見ても枯れただけの樹皮にしか見えない物が入っている。


『・・・・・・・・・』


「まさに奇跡の光景だな」

 森の中を明らかな意志を持って舞う様々な草や石ころ、それがユウヒの周りでくるくる回り踊る光景に、獣人たちは驚きで声を失い、エルフ達は感動した様に見上げ、それは常に落ち着いた雰囲気の精霊騎士隊長も同様であり、ユウヒに視線を向け自然と口を開き小さく呟く。


「ん? 何が?」


「いや、そろそろ集落の門が見えるころだ」

 しかし、普通なら見えないモノが普段から見えてしまっているが故に、そんな異常な光景を今一つ理解していないユウヒは、隊長の呟きに気が付くと不思議そうな表情で問いかけ、その問いかけに隊長は困った様に笑みを洩らすと、進行方向に視線を向けて目的地が近い事をユウヒに伝える。


「・・・そか、着いたら合成の準備にかかるとするよ」

 伝えられた内容に視線を前方に向けたユウヒは、【探知】の魔法により視界の中に存在している円形のレーダーに映し出された複数の光点で、獣人の里がある大体の場所を確認すると一つ頷き、会話を交わす間も加速度的に増えていく腕の中の薬草を抱え直して見せて楽しそうな笑み浮かべた。


「なら着いたらすぐに私の家に案内するにゃ」

 ユウヒの言葉に隊長が笑みで返す中、ネムはユウヒの顔を見上げると尻尾をゆらりと揺らしどこか楽しげな声を上げる。


「本当にいいのか?」

 道中会話を交わす中で、ユウヒが傷薬などの薬品を作れると言う話をした結果、何時の間にやらネムの家で厄介になることになっていたユウヒは、すでに決まってしまったことであるが再度ネムに確認を取る様に首を傾げてみせた。


「あまり使わない家だから物は少ないけど、場所だけなら十分にゃ」

 薬を作る環境に広さと一人になれる場所を求めたユウヒに、大して考える間もなく自分の家を提案したネム。彼女曰く、現在主に使っているのは世界樹の社の近くにある家らしく、獣人の里であり彼女の実家のあるハラリアの家は、里帰りしたときに使うだけで荷物は少ないものの、逆に場所だけはあるとの事であった。


「そうか・・・それじゃ問題は俺だけだな」


「うにゃ? 何かあるのかにゃ?」

 妙に機嫌の良さそうなネムに不思議そうな表情で頷いて見せたユウヒは、現在も増え続けている荷物に目を向けると小さく眉を寄せながら肩を竦めて見せ、そんなユウヒの仕草に大きく首を傾げながら、草臥れた印象を感じる彼の顔を興味深そうに見上げるネム。


「さすがに魔力が少なくなってきたみたいでなぁ・・・ふむ、今後の事を考えると一工夫必要かな」

 どうやらユウヒは、今までとは違う明らかな魔力の消耗を感じているらしく、困った様な表情でネムにそう説明すると、荷物に目を向けながら思考の世界に意識を埋没させるのだった。


「・・・薬を作るのに魔力が必要なのかにゃ?」


「・・・そうですね、霊薬と言われる一部の薬には魔力を込めることもありますが、そう多くは必要ありません」


『へぇー』

 思考の世界に埋没して反応が薄くなったユウヒを見上げていたネムは、ユウヒの隣から隊長の隣に早歩きで移動すると、ユウヒの言葉の中で気になった部分について問いかける。ネムの問いかけに、一度ユウヒに目を向け苦笑を洩らした隊長は、ネムを見下ろしながらこの世界の薬、特に霊薬と呼ばれる効果の高い薬について簡単な説明を始めた。


 長く難しい説明が苦手なネムの為に簡潔にまとめた内容に、周囲のエルフや獣人たちが揃って声を洩らした霊薬とは、ユウヒが最初に降り立った異世界『ワールズダスト』における回復薬に近い。


 彼の世界では普通に薬を作ると、大気中の膨大な活性魔力が勝手に作用して、現代医学に喧嘩を売っているような薬が出来上がるのだが、この名も無き異世界では空気中の活性魔力濃度が希薄過ぎてそう言った反応は示さず、代わりに製作者が魔力を込めることで多少差異はあるものの、似た様な薬を作る技術が発達していた。


「どうやらユウヒ殿には相当な無理をさせてしまったようですね・・・」


「・・・やっぱり無理してるのかな?」

 しかしその技術で使用される魔力はそれほど多く無く、魔力を少量しか使わない作業にも苦労しそうな言葉を漏らして考え込むユウヒに、隊長は申し訳なさそうに眉を寄せ、ネムは心配そうにユウヒの顔を見ると、小さくいつもと違う雰囲気の声を洩らす。


「それはしてるでしょう。・・・いくら精霊様も驚くほどの魔力とは言え、所詮有限ですから」

 普段とは違った素の表情とも言える顔で小さくつぶやく彼女の言葉を、困った様に肯定した隊長は、難しい表情で考え込むユウヒに少し視線を向けると、すぐに前を向き直りながら一般的な常識に照らし合わせてネムの呟きに答える。


 すでに常識の範疇に収まらないユウヒであるが、流石に魔力が無限にあった頃と違うため為、隊長や彼の言葉に難しい表情を浮かべていたネムの考えも強ち間違いではない。しかし、ユウヒが基準にしているのがほぼ無限だったころの感覚や、合成魔法と言う燃費の悪い魔法が前提である為、割と大きな認識のズレがあるのは否めなかったりする。


「集落ついたらゆっくりしてもらうにゃ、まぁ家は無駄に広いし好きに使ってもらうにゃ」


「・・・さすがですね。しかし、よろしいのですか? お父上が黙っていないような気もしますが」

 しばらく難しい表情を浮かべていたネムは、ユウヒのもてなしについて気合いを入れ直すと、先ほどまでと違った柔らかな笑みで隊長を見上げてそう笑い語り、そんなネムの言葉に肯定的な笑みで頷く隊長。そんな彼には一つだけ懸念される事項がある様で、再度問題はないのかと言葉を濁しながら問いかける。


「あれは・・・気にしてもしょうがないにゃ、何をしてもどうせ出てくるんだから、父親と言うのはこまったものよね」


「・・・ははは」

 どうやら隊長の懸念はユウヒ達の世界でも割とよくある部類の話しの様で、鬱陶し気な表情で肩を竦めて素の表情を浮かべるネムに、隊長はなぜか乾いた笑い声を洩らして明後日の方向に何か考え込むような視線を向けるのであった。





 どこか哀愁の様な空気を背負った精霊騎士団隊長を先頭に、バラエティに富んだ集団が森を歩く事数時間、細かく休みを入れながら歩き通したルカ達が見ていた狭く鬱蒼としていた森は、急激に開いて視界の先には大きな建造物が姿を現した。


「ふわぁ・・・」


「あらぁ~」


「はぁ~これはすごいね」

 ルカはその光景に呆けた様な声を洩らし、彼女を背負うメロンはいつもと変わらない間延びした声を漏らしている。そんな彼女たちの隣では、精神的な疲れにより背中を丸めていたリンゴが、自然と背筋を伸ばして建造物を見上げ、感心したような声を上げた。


「こいつは、集落って言うか砦って感じだな」


「お、おお、おおお! ファンタジーだ!」

 また彼女達の後ろではクマがその建造物を砦と評し、その隣ではつい先ほどまで真っ白に燃え尽きていたパフェが、色を取り戻し花が咲いたように目を輝かせ、歓喜の声を上げながら先を進むメロン達を追い越し建造物を見上げる。


「お、元気が出たみたいだな」


「出過ぎなきゃいんだけど」

 ホッとした声でクマが呟きリンゴが苦笑を浮かべ見守るパフェが見上げる先には、日本の某祭りで使われる御柱以上の太さと長さの大木が、何十何百とそそり立って一つの巨大な木の壁を作り出していた。


「おお! おお! 人間が一人もいない! あっちもこっちも! すごい! すごい!」

 またその木の壁には窓や門があり、頂点部分は真っ直ぐ横に切りそろえられて見張りの姿も見受けられる。しかもそこにいるすべての人影が、パフェたちから見て異種族であることが彼女の興奮をさらに大きなものへと昇華させていく。


 しかしそんな興奮も束の間、


「うわぁ・・・あ、おにいちゃん!」


「!?」

 メロンに背負われたまま呆けた声を漏らしていたルカが、とある人物の接近に嬉し気な声を上げた瞬間、パフェの顔は真っ蒼に染まり、しかしその顔色に反した機敏な動きで駆け出すと、追いついてきたクマの後ろに素早く隠れる。


「・・・なんで隠れるんだよ姉さん」


「や、その・・・えっと」

 勢いよく背後に駆けこまれたクマは疲れたように背後へ視線を送ると、なんとなく理由を察してはいるものの聞かずには居れず、その問いかけに対し、クマの背中から頭だけ出しているパフェはしどろもどろになりながら、色々と思考を巡らせているのか視線を忙しなく彷徨わせていた。


「・・・姉さん」


「っ!?」

 そんな彼女の思考が纏まるのを待たずに、挙動不審の原因はパフェのパーソナルエリアに一歩踏み込み、彼が小さな声で呼びかけるとまるで少女のように恐怖で肩を跳ねさせるパフェ。


「もう怒ってないって、これから休憩できる場所に案内してくれるって言ってるから、治療を受けたらゆっくり休んでてくれ」

 怯えて震える小動物然とした彼女の様子を見て、ルカが心配そうに、ヤメロンのメンバーが苦笑を浮かべる中、ユウヒは幼子に向ける様な優しげな表情を浮かべるとそっと彼女の頭に手を乗せ、優しく語り掛ける。


「ぁ・・・うん」

 頭に感じる程よい重みと暖かさに小さく声を洩らしたパフェは、その暖かさの元へとそっと視線を上げ、潤んだ視線の先で微笑むユウヒの顔と声を感じとると恥かし気に小さく頷く。


「ファンタジーに溢れてるからってはしゃぎすぎないでくれよ? ほどほどなら構わないけど」


「・・・いいのか?」

 普段の異常にテンションが高い姿と違うパフェの姿に苦笑を浮かべながら、しかし一応軽く釘を刺す意味でユウヒが口にした言葉に、パフェはおずおずと言った様子で視線を上げて不安と好奇心の混ざった目でユウヒを見詰め問いかける。


「姉さんは止めても無駄なことくらい十分知ってるよ、流華も足をしっかり治すように、帰るのはそれからだ」

 パフェの問いかけに肩を竦めて見せたユウヒには、過去の経験上、彼女を押さえつけたところで徒労に終わることなど解り切ったことであるらしく、竦めていた肩を下ろすと同時軽く息を吐き、不安そうに成り行きを見ていたルカに目を向けると、いつもは見せない爽やかな笑みで笑う。


「うん、わかった・・・」


『・・・』


「とりあえず、しばらくは夏のバカンスを異世界で過ごすしかなさそうだからな」


「んだな、なんだかんだで怪我だらけだし、この状態で森歩きは推奨できねぇわな」

 ユウヒの笑みを見たルカはホッと息を吐き出すと同時に、頬に熱を感じて顔をユウヒから背ける。そんなルカと同じよな仕草を見せる女性陣を気にすることなく、ユウヒはクマと向き合うとそれまでの表情とはどこか印象の違う少年の様な表情で苦笑を浮かべ、そんなユウヒにこちらも同質の表情でうなずくクマ。


「とりあえず、俺は治療とか一段落着いたら向こうに一回戻っていろいろ報告してくるから」


「うぐ・・・弁護の方をお願いします先生」

 そんなクマの楽しげな笑顔も、ユウヒが何でもないように話す今後の予定を聞いた瞬間硬く引き攣り、ユウヒを拝むように手を合わせたクマは、表情と同時にひきつけを起こしたらしい喉から声を絞り出す。


「わかってるさ・・・て、誰が先生か」


「ユウヒが友でよかったよ」

 拝まれたユウヒが、苦笑を洩らしながら当然だと言った顔で了承すると、久しぶりに感じた友からの純粋な優しさにほろりと涙を流し太い腕で目元を覆うクマ。


「・・・それもどうだかな?」


「ユウヒ! 準備できたにゃ」


「おう」

 いつもと変わらぬ大げさな友人の態度に懐かしさを感じるユウヒは、しかし自分が友人であるからこそ騒動に巻き込まれているのではないか、と言う感情が脳裏をよぎり首を傾げる。そんな感情がユウヒの頭の中を支配する間もなく、ネムから呼ばれたユウヒは彼女の声に振り返ると手を上げて応える。


「ユウヒ殿の御友人である皆さんは、こちらのウタルが案内します」


「ウタルです! よろしくお願いします!」

 手を上げて応えたユウヒの下に部下を伴い歩いて来たネム、そんな彼女の後ろから一歩前に出た黒毛のネシュ族少女であるチャコは、一人の獣人少女を案内役として紹介した。


「おお」


「むむむ」


「あらぁ」


「・・・」

 ニコニコと心の底から楽しそうな笑みを浮かべるその少女、ウタルを目の前にしたクマ、パフェ、メロン、ルカは、純白の毛並みと真っ赤な瞳、さらにすっと伸びた長い耳を、感嘆や驚きの籠った声を洩らしながら見詰める。


「はぁ、私はリンゴよ、案内よろしく頼むわね」


「はい! ではこちらです!」

 まるで不思議の国に住んでいそうな、ウサギの特徴を色濃く残した彼女の姿を見て固まる四人に、困ったような溜息を洩らしたリンゴは、一歩前に出ると不安そうに耳を動かす彼女に微笑みながら声をかけ、そんなリンゴにぱっと笑みを浮かべ直したウタルは元気よく返事を返して案内を始めるのだった。


「・・・ケモ度は高めだけど、これはこれでいいわね」

 きびきびとした動きで案内を始めるウタルのふかふかとした太腿や、そこからシュッとしなやかに伸びる足先、さらには歩くたびに揺れる丸くふわふわもこもことした尻尾をじっと見詰めたリンゴは、クマの隣で小さく呟く。


「はげど」


「はげど?」

 その呟きを聞いたクマは、鋭く細められた目に魅惑的な毛並みを映しながら徐に頷き、低く渋い声で同意を示す。その声にパフェとメロンが追順して頷く中、ルカはきょとんとした表情で聞きなれない言葉に首を傾げるのであった。





 まるで、某夢の国の可愛いスーツアクターについて行く人間になった気分を味わうルカと別れたユウヒは、巨大な丸太の壁に作られた大きな木製の門を潜り、ネムの案内で彼女の家の前までやってきていた。


「ユウヒこっちにゃ」


「はぁ・・・でかいな」

 その家は平屋であるものの、合掌造りに似た構造なのか屋根が見上げるほど高く、また緩やかな傾斜から中の広さを想像させ、日本の一般? 家庭出身のユウヒには十分以上に大きく感じられ、ユウヒの口から思わず感嘆の溜息を洩れさせる。


「大きいだけなんだけどね」


「いやそれだけでもすごいだろ、井戸もあるのか」

 入口で手招きするネムに気が付いたユウヒは、招き猫に誘われているような感覚を覚えながら家の門を潜り、純粋な感想に照れるネムに続いて奥の玄関へと足を踏み入れた。


 玄関を潜った先には広い土間が広がっており、家具などが少ない事もありより一層広く見える土間には、昔話に出てくるような滑車と釣瓶が取り付けられた井戸がその存在を主張している。


「大きい家には大体ついてるにゃ、好きに使ってもらって構わないけど・・・先ずその大荷物を置くといいにゃ」


「うむ、俺も重くてな」

 ユウヒの感想にくすぐったそうな笑みを浮かべたネムは、自分の荷物を適当に放ると、井戸から水をくみ上げる準備を始め、ユウヒの手元に目を向けると小上がりの先にある板張りを指さしながらくすくすと笑い声を洩らす。


 ユウヒが両手に抱えていた大量の荷物から解放され、水で濡らした手拭いや足を洗う水桶を用意するなど、ネムが甲斐甲斐しくユウヒの世話をすること十数分後、ユウヒはネムから家の中を簡単に案内してもらっていた。


「作業するなら土間のある部屋がいいと思うから、ここを使ってほしいにゃ」


「何から何まですまんな」

 大きく広いネムの家の中は、広い土間を囲むようにコの字に板張りが引かれており、家の中心に位置する場所には大きな大黒柱を囲むように竈が据え付けられている。そんな不思議な構造をした異世界の建物に只々感心していたユウヒは、入口から少し離れた場所にある一角を自由に使っていいと言われ、日当たりもよく風通しも悪くない場所に満足げな表情を浮かべると、小上がりに腰を下ろしながらどこか爺くさい雰囲気を醸し出してネムに礼を述べた。


「何を言ってるのにゃ、このくらいでは感謝の気持ちを表せないにゃ」


「感謝ね?」

 自然と腰が曲がっていたユウヒは、腰に手を当てながら困ったように鼻息を洩らすネムの言葉に首を傾げ、感謝と言う言葉に思い当たる様な行動をしたかなと、不思議そうな表情を浮かべる。


「そうにゃ・・・あ、そうだ! 後で世界樹の苗木様の様子も見てほしいにゃ。もう植樹も終わってるはずだからにゃ」

 今一つ理解していないような表情を浮かべるユウヒに、じとっとした視線を向けるネムは、ユウヒに感謝していることを思い浮かべると何か思い出した様で、大きく目を見開く。どうやらそれは世界樹の苗木の事であったようで、すでに植樹自体は終わっていると思われるが、樹の様子を見てもらうのにユウヒほどうってつけな人選はなく、一度見ておいてほしいと言うことであった。


「ああ、それは俺も気になっていたからな」

 世界樹の苗木についてはユウヒも気になっていたらしく、一応苗木に良さそうな魔法を付与した魔石もどきは渡してあるものの、現在自分の魔法に不安のあるユウヒは、光る壁に植樹し、瞬く間に成長させてしまった世界樹の件もあり、より慎重になっているのかそれともやらかした現実を思い出してしまったのか、若干その表情を引きつらせている。


「よかった、それじゃお茶淹れるから一息入れたら広場に案内するのにゃ」

 そんなユウヒの内心に気が付かないネムは、目を線の様に細め嬉しそうな笑みを浮かべると、長い尾を揺らしながらお茶の用意をするためその場を離れた。


「わるいなぁ・・・さて、試行錯誤といくか」

 彼女の後ろ姿を見送ったユウヒは、申し訳なさそうな苦笑いを浮かべたのも束の間、その目の奥に心の底から楽しげに揺れる光を灯すと立ち上がり、三本杉のシルエットが描かれたスニーカーを脱いで板張りの小部屋に上がると、自由に使っていいと言われた小部屋いっぱいにいそいそと荷物を広げ始めるのであった。


 もしここに某忍者達が居たならば、これから始まる狂気の実験に身を震わせていたかもしれない、しかし今この場にはそのことを察することのできる者は誰一人として、居ない。



 いかがでしたでしょうか?


 どこでも精霊に愛されるユウヒ、と言うよりは自分の存在を正しく認識できる相手に興味が尽きない精霊の姿は、書いていて心が癒されます。そんな精霊や異世界の人々との交流をまだまだ書いていきますのでお楽しみに。


 それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー

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