第三十九話 救助隊ニンジャ、日本へ急いで帰還す
どうもHekutoです。
修正等完了しましたので投稿させていただきます。いつの間にか文書量が増えてしまったので、そこそこ満足いただけるのではないかと、おもいますのでゆっくりしていってください。
『救助隊ニンジャ、日本へ急いで帰還す』
名も知らぬ異世界の地で忍者達が天敵と遭遇するも、日本伝統の緊縛術を巧みに使い飢える獣を封印することに成功して小一時間。ドムオ教団の女性達から、より熱い視線を向けられる事に首を傾げながらも、ヒゾウとゴエンモは目標の人物を探して走り回っていた。
「本当によいのか?」
「ああ、俺らは依頼達成できればそれでいいからな・・・奴隷とか金品とかもらっても邪魔なだけだ」
一方ジャンケンで負けたジライダは、万が一捕まえた兵士と女性B群、さらには妙に体のラインを強調するように縛られたドムオ教団の女性達が逃げようとした時の為、厳重に封印した鉄の檻の前で助けた兵士や初老の辺境伯と共に残っている。ついでとばかりに飢える彼女らの檻周辺に木の柵まで作ったジライダは、辺境伯の疑問に特に興味も無さそうに答えながら二人の帰りを待つのだった。
「なんと欲のない・・・もし我が領地に来ることがあれば領主館を訪ねてくれ、この礼は必ずするでの」
辺境伯の疑問とは、忍者達が捕まえた人間や戦利品をすべて辺境伯や被害を受けた一般市民に譲渡すると言う行いであった。それらをお金に変えると、ちょっとした貴族の総資産ほどになりそうな量であるが、この世界の人間ではない上に持ち帰りが出来るか怪しい忍者達には邪魔なだけである。そんな事情を知らない人間からしてみれば、彼らの行いに首を傾げたとしても可笑しくはなかった。
「機会があればなぁ「ジライダ!」ぬお?」
無事では済まない状況から救助されたと言う恩の上、さらに戦利品まで譲渡されてしまい、さらにさらに礼の一つも返させず去ろうとする忍者達に、辺境伯はせめてこれだけでもと言った表情で礼をする約束を口にし、その言葉にジライダは苦笑を洩らす。
しかし、そんな男性の言葉に返事を返していたジライダの声は、遠くから彼を呼びつける大声で遮られ、遮られたジライダは少し驚いたように声の聞こえて来た方向に振り返る。
「急いで帰るでござる!」
「三人をすぐ呼んできてくれ!」
「お、おう? どうした?」
流石は人をやめた新人類忍者、まだ豆粒ほどであったゴエンモとヒゾウは、瞬きをする間にジライダの目の前に迫ってきており、特に珍しくもない慌てた様子の二人に彼はきょとんとした表情で首を傾げた。
「・・・命は無事でござったが」
「お、おいまさか・・・心が?」
何があったのかと、嫌な予感を感じながらも問いかけたジライダに、ゴエンモは表情を暗くすると言い淀み、その表情と切れの悪い言葉に今度はジライダが慌てはじめ、命が無事な場合で最も最悪な状況を予想する。
「いや、そういうことはなかったらしいんだけどさ・・・足がな」
「ふむ・・・腱を切られたか」
ジライダの予想は否定されたものの、足がと口にしながらやはり言い淀むヒゾウ。その言葉を引き継いだのは、苦虫を噛み潰した様な表情で眼光を鋭く細めた辺境伯の男性であった。
「・・・」
「え? え? ・・・まさか!?」
「逃亡防止だって、子供が二人」
男性の言葉に俯くゴエンモ、その姿から男性の言葉が正解だと察したジライダは、その理由も察すると答えを求めてヒゾウに目を向けると、ヒゾウは頷きそう答える。
「奴らのやりそうなことじゃな、子供が動けなければ親は逃げぬし、逃げても遠くには逃げられん・・・昔からある反吐が出るやり方じゃ」
死と言う最悪の状況ではないにしろ、到底良いとは言えない状況を聞いて顔を蒼くさせるジライダに、男性は補足するように説明すると悪態をつき、それは周囲で彼らを見守っていた者も同様であった。
「切り方がひどくて最悪の事態もあり得るでござる」
「あれじゃ日本の医療でも完全にはなおんねぇかもしんね」
「そんなにかよ・・・ユウヒか」
目的の人物は、特別より分けられる様に隔離されていたのだが、簡素な布を羽織っただけの彼女たち三人を見つけたゴエンモとヒゾウが見たのは、両足の腱を切り裂かれ血止めの為に傷口を焼かれた二人の少女と、泣き疲れ焦燥しきった顔で少女達を抱きしめるサラに良く似た女性の姿だった。
現代日本では早々目にすることが無い状況に、一瞬動揺した二人であるが、すぐに彼女達の容体を確認すると女性に対し自分たちの説明をし、忍者達に協力していた女性兵士にその場を任せるとそのままここまで走ってきたのである。
「それしかないでござる」
「ここまで依頼にゃ入っちゃいねぇけどさ・・・」
それは相談する為、本来彼らは三人の少年少女の救出と、ついでにという建前でサラ家族の救出の依頼を受けた。しかしその依頼の中には救助者の治療などは入っておらず、しかし目の前で少女の細い脚に刻み付けられた酷い怪我を見てしまった二人は、その足をしっかり治してやりたいと言う思いでいっぱいになったのだ。
「馬鹿野郎! 当たり前だろうが、ユウヒには俺も一緒に頭下げてやるさ」
いっぱいになったと言っても、今回の依頼は三人で受けたものであるため勝手に決めてはジライダに悪いと思った二人であるが、そんな二人にジライダは声を荒げると、一緒にユウヒへ頭を下げてやると言ってヒゾウの胸に軽く拳をぶつける。
「・・・お人好しが、泣かせおって」
互いに見つめ合いながら漢らしい笑みを浮かべあう三人の姿に、感極まったのか目頭を押さえ溢れる涙をごまかす男性と、同様に目を潤ませる周囲の兵士や救助を手伝っていた一般人達。
「行動開始でござる!」
「「おうさ!」」
彼らが眩しそうに忍者達を見詰める中、ゴエンモの声に返事を返したヒゾウとゴエンモは迅速に動き始め、周囲で話を聞いていた者達はその行動に追順する様に動き出すのであった。
それから数十分後、忍者達はいつもより幾分緩めの速度で森の中を駆け抜けていた。
何故なら、彼らはそれぞれに二人の人間を抱え、そのうち二名は足に深刻なダメージを負った怪我人だからである。彼らの身体能力をもってすれば人を担いだままでも大して速度の低下には繋がらない、しかし怪我人や担いだ人間への負担を考えると、いつもの様には動けないのであった。
「おねえちゃん・・・」
先頭を走りマッパー役も担うゴエンモは、両足を厳重に布で包んだ赤毛の少女の背中とひざ裏を両手で抱え、背中には簡素な布をおんぶ紐のように使い、金髪の少女サラを背負っている。
「サラ・・・大丈夫だから」
「・・・うん、ゴエンモさん本当にありがとう」
ゴエンモの右肩から顔を出し、すぐ目の前の姉の顔や本当なら綺麗なはずの赤毛を汚す土埃に悲しそうな表情を浮かべるサラは、姉と視線を交わした後、何度目になるのかわからないお礼の言葉をゴエンモに呟く。
「かまわんでござる。これは拙者がやりたいからやってることでござるからして」
そんなサラの呟きと、終始ゴエンモの顔を見詰めてくる青い瞳に、彼は子供を安心させる様に心がけた笑みを浮かべ、照れる内心を隠すための言葉を口にする。
「・・・」
「・・・」
微笑みを浮かべるとすぐに視線を進行方向に向けたゴエンモは、二人の少女に至近距離から見つめられ、何とも照れくさい感情を隠しながら言葉少なに直走るのだった。
一方、新たな異世界に来てから言うもの、どうにも運が回ってこないと内心がっかりしているジライダはと言うと、
「解せぬ・・・なぜ我はカップルに挟まれながら森を走っているのだ」
ジャージにタンクトップと言う姿の少年、駿を左腕で小脇に抱え、反対の手ではおんぶ紐を頑なに拒否した奈々を背中に背負い、背中にしがみ付く彼女が落ちないようにお尻と太腿のあたりを押さえている。
「かか、カップルじゃないもん!」
「そ、そうだ! 俺たちはまだそんな・・・」
割と際どい部分を触っているジライダであるが、先ほどからステレオサウンドで交わされる痴話喧嘩のおかげで、その感触を楽しむ前にストレスで精神的に死にそうな状態であった。
「はぁい奈々ちゃんはかわいいからいいけど、雄が照れても気持ち悪いのでだめぇ」
ある意味、よからぬことに思考を傾ける余裕が無い今の状況は、彼の社会的生命にとって良い事なのかもしれない。ただ、少なくとも小脇に抱えられる駿少年にとっては良い状況とは言えなかった。
「ぐえ!? 締まってる締まってるから!?」
ゴエンモとヒゾウの状況に対して自分の状況を不遇に感じていたジライダは、その鬱憤を騒がしいイケメン少年を抱える腕に軽く力を籠め、彼を締め上げることで発散していたのだ。
「絞めてんのよ、恥ずかしから言わせないでよ」
「・・・ジライダさん大人げないよ」
一応しっかりと手加減をしているのだが、その姿は奈々が呟いた通り大人げないとしか言いようが無く、恥じらいの表情を浮かべながら左腕に力を入れ続けるジライダは、顔の右側から柔らかい棘で刺すような視線を感じ、そちらに視線を向ける。
「いんだよ? 男の子はこのくらいやらないと社会の厳しさがわからないんだから」
「わかった! わかりました! ごめんなさい!?」
「ほらね?」
「・・・駿」
その視線の先で、何とも言い難い表情を浮かべている奈々に、ジライダは大して気にするでもなくいつもの調子で妙な持論を語りだす。一方その言葉に活路を見出した駿は、両手を振ってアピールすると、ジライダの言葉を理解したともとれる声を上げ、その様子に奈々は言葉にできない感情を顔に浮かべ、少年の名を呟く。
「・・・」
いろいろと評価が落ちている駿であるが、腕の力を緩めてもらった今は、疲れによって只々ぐったりとしたままジライダに身を委ねる事しか出来ないのだった。
一方、不遇に不満を洩らすジライダとは対照的な表情を浮かべた忍者が一人、ゴエンモとジライダに続いて最後尾を軽い足取りで走っている。
「おかあさん・・・」
「大丈夫、ぜったい助かるからネ?」
「うん」
その忍者の名はヒゾウ、サラの姉であり長女である中学二年生の美少女をお姫様抱っこしながら、背中にはその母である金髪碧眼の美女をおんぶ紐で背負っていた。
「おう、まかせるお! 光の速さで日本へ帰還だお!」
ジャンケンで勝ち取った幸運を、その両手にかかる適度な重みと柔らかさ、そして背中に押し付けられる豊満かつ柔軟な二つの果実から感じ取る彼は、正面左と左耳のそばで交わされる会話にテンションを上げると、少女に明るい笑みを浮かべながら声を上げる。
「ワタシ、ニンジャ初めて見ました。とてもステキです」
「い、いやぁ、まぁそれほどでも」
少女がヒゾウの言葉に小さく頷き、その姿に優しい笑みを浮かべた金髪碧眼美女は、視線をヒゾウに向けると僅かにたどたどしさの残る日本語で、自らと娘を担ぎ森を疾走するヒゾウに話しかけ、その声は娘と話していた時の声と違い、僅かに興奮した印象を感じられた。
「でも、重くないですカ? ワタシ少し自信ないから・・・」
「いえいえいえ、まったく! もう羽のようですよ奥さん!」
褒められたことに思わず頬を緩めるヒゾウに、女性はすこし恥ずかしげに口ごもると、ヒゾウの耳に口を寄せて重くないかと小さく問いかける。その声と吐息に、寒気にも似たしかし心地よい感触を感じたヒゾウは、声のトーンを一つ上げて問題ないと返事を返し、その証拠とばかりに目の前に迫ってきていた倒木を負荷など全く感じない足取りで跳び越えて見せた。
「うふふ、リサってよんでください。ヒゾウさん」
「は、はいリサさん!」
軽い足取り倒木を跳び越えながらも、背負った金髪碧眼美女であるリサの体に負担がかからないように足や膝で衝撃を吸収し、抱きかかえた少女には特に配慮しながら森を疾走するヒゾウ。そんなヒゾウの気遣いに気が付いたリサは、微笑みを浮かべながら名前で呼んでほしいとヒゾウの耳元で囁き、その囁きに再度何とも言えない感触を感じたヒゾウは、顔を赤くしながら元気よく返事を返すのであった。
「・・・(この人お父さんになるのかな?)」
普段は自分にも他人にも厳しく隙を見せない母親が見せる女の顔に、彼女の娘である少女は、母親に良く似た目を大きく開きヒゾウの顔を見上げると、
「うふふ」
「うひょー」
「・・・ふふ(それは、少し楽しみかも)」
そこに映る微笑む母と奇声を洩らすヒゾウの姿に、誰にも気づかれない小さな笑みを浮かべるのであった。
異世界の森で黒くない忍者が疾走し始めてから数時間後、名も知らぬ異世界の空で日が中天を通り過ぎている一方、地球はそろそろ昼食の時間帯へと差し掛かっていた。
「・・・戻ってこないな」
「まだ一日しか経ってないのよ、当たり前じゃない」
そんな地球の日本某所にある黒いドームの前には、何時頃からそこに居るのか、忍者達が調べた異世界と日本との起点となる場所で、ひもじそうにお腹を押さえて背中を丸める男性と、男性の呟きにジト目を向けながら呆れたように声を洩らす女性。
「でも来てるじゃねぇか」
「当たり前でしょ!」
「な、なんだよ・・・おこんなよ」
さらにその後ろには、間伐材に腰を下ろした優しい目元が特徴の男性が、ちょっとした会話から口喧嘩に発展してしまったいつもの友人二人に微笑みを浮かべていた。
「落ち着け二人とも、俺たちは待つことしかできないんだ」
「くそ・・・」
このまま行くと、眉をしかめ腰の引けた友人が女性に言い負かされると悟った男性は、少しだけ大きな声を出して二人に落ち着くよう促す。そんな男性は、友人の男性から小さな悪態を呟かれ、女性からは無言で顔を逸らされ、いつもの事で慣れているとは言え思わず苦笑いが洩れるのだった。
「―――」
顔に苦笑を張り付けた男性が肩を竦めた瞬間、それは黒いドームの向こうから近づいて来た。
「・・・あれ? 今何か」
「――――――」
「あ?」
その存在が発する、地の底から這い出てくるような呻き声を最初に耳にしたのは、顔を背けたことで耳をドームに向けていた女性である。不機嫌だった彼女が急にドームを見て呟いた声に、眉をしかめたことでいつも以上に険しい表情になっている男性は、その表情のまま不思議そうに首を傾げた。
そしてその男性が女性の視線に導かれドームに目を向けた瞬間、それは現れる。
「――――――ォォオオカミトッパー! 我様が一番じゃー!」
黒々とした霧の奥から滲み出るようにドームの奥から現れたそれは、うまく聞き取れない叫び声を上げながら現れ、強く足を踏み込んでいるせいか背後に土煙を背負っていた。
「ジライダさん前! 前!」
「いき、てる・・・」
それはドームに救助隊として突入した忍者、ジライダである。
異世界ではクロモリジャージを着ていた彼だが、今は真っ黒な忍び装束を身に着けており、その背には動きやすそうな全体的に丈の短い服を着た奈々と、またこちらも身軽な格好の翔を小脇に抱えていた。
「ジライダ三段じゃーんぷ! からの三回転ひねりぃぃ!」
どこか対照的な表情を浮かべた二人を抱えているとは思えない速さで走り込んできたジライダの目の前には、顰めていた表情を驚きで固めた男性が立っており、そのことに気が付いた奈々の慌てた声に、ジライダは男性を飛び越える為に周囲の樹を使って三段跳びをやって見せ、ついでとばかりに体操選手の様に体をひねって男性の頭上を跳び越える。
「きゃあぁぁぁあああ!?」
「おぅぇ・・・」
「「「は? ・・・はぁああああ!?」」」
突如ドームの闇から現れ、二人の少年少女を担いだまま何メートルも飛び上がったジライダの背中からは、楽しげな少女の声が聞こえ、小脇に抱えられた少年からは苦悶に満ちた小さな声が洩れ聞こえ、そんなわけのわからない混沌とした飛行物体を見上げた三人の男女は、呆けた表情を驚愕に染め同時に叫ぶのだった。
「ジライダ楽しそうだな」
「抱えてるのがけが人じゃないでござるからな・・・と言うか、奈々ちゃんも喜んでないでござるか?」
ジライダと言う混沌飛行物体が三人の男女の目を釘付けにしている間に、ヒゾウとゴエンモはゆっくりとドームの中から姿を現し、背中に楽しげな笑みを浮かべる少女を背負うジライダに、何処か羨ましげな表情を浮かべていた。どうやら注目の的になっていることが羨ましいようだ。
「奈々ちゃん、絶叫系大好きだから」
「なるほど」
「拙者らは絶叫系の乗り物でござるか」
羨ましそうな表情を浮かべながらも、ジライダの背中で横回転を楽しむ奈々の姿に首を傾げるゴエンモ、そんな彼の疑問は彼の背中におぶさったサラが簡潔に説明し、その言葉にヒゾウは頷きゴエンモは何とも言えな表情で肩を落とす。
「サラ!」
「あ、おねぇ」
そんな風にダラダラと会話を交わしながら歩いてくる黒い二人の忍者に気が付いた女性は、そこに義妹の姿を確認すると、彼女の名を大きな声で呼び駆け寄ってくる。駆け寄ってくる女性の声にサラはパッと表情を明るくすると、ジライダにしがみ付く腕により一層力を籠め、反対の手を振ってこたえるのだった。
サラとその義姉が感動の再開を果たし、リサとも抱き合い無事を喜び合っている一方、囮となり狼を引き付けついでとばかりに罠に嵌め、さらには最初にドームから脱出したジライダはと言うと、
「おぉい! 無事だ「んなことより救急車呼ばんかいきーっく!」うおわぁ!?」
跳び越えすぎて男女の後方遠くに降り立ち、そんな彼に駆け寄ってきた奈々の兄であるイケメン男性に、理不尽な跳び蹴りをかすめている。
「からのお荷物パージ!」
「ぐえ!? ・・・ひどい」
さらに駿の兄である男性が駆けよてくると、地面を滑り跳び蹴りの勢いを殺した急制動の勢いを使って少年を放り投げてしまう。この際、怪我をしないように深い草叢の上へと少年を放り投げたのは、ジライダなりの優しさである。
「駿! おい駿しっかりしろ!?」
「にいちゃん・・・知ってる? 人って、空、飛べるんだぜ? あはは・・・けふ」
「駿、しっかりしろしゅぅぅぅん!?」
そんなジライダの優しさも空しく、森を抜けた先で狼の群れに追われたことで最後の精神力を使い切った駿は、兄に抱きかかえられると安心した表情を浮かべながら、今日最後の言葉を残して気を失うのであった。
「はい奈々ちゃんは丁寧着地」
「ありがとう」
気を使いつつも粗雑に扱われた駿少年が、兄に抱きかかえられ揺すぶられている後ろでは、奈々がジライダに両脇を抱えられそっと地面に下ろしてもらっており、楽しげな表情を浮かべお礼を口にする彼女の姿に、救急車を手配している彼女の兄はホッとしたような、それでいてどこか意外そうな表情を浮かべている。
しかし次の瞬間、
「あのねジライダさん・・・また、上に乗せてくれる? ふわふわして気持ちよかったの」
恥じらうような表情と上目使いをジライダに向けて、彼女が洩らした一言によってその微笑ましげな空間は終わりを告げる。
「・・・・・・・・・ごふっ!」
「え? ジライダさん、ジライダさん!?」
彼女にとっては特に他意も無く、純粋に楽しかったことからまた背中に乗せてほしいと頼んだ言動も、心の底から汚れきった大人のジライダにとっては、致命的なダメージを与える凶器となった様で、彼女の視線と言葉に打ち抜かれた彼は口と鼻から大量の血を吹き出すと地面に崩れ去るのであった。
「・・・・・・あの、救急車追加できますか? 今また一人倒れて、あ、いえそっちじゃなくて」
救急車を手配していた奈々の兄は、いろんな意味で理解した引き攣る表情を必死に抑えながら、固まっていた口を再度動かすともう一台の救急車を要請する。
「無邪気かぁ・・・」
「・・・傷は、深いでござるなぁ」
無邪気とは、時に大人の心を癒すこともあれば、深く傷つけることもあるのだが、今回のジライダに関しては癒し過ぎるのもよくないと言う良い例? なのであろう。
いかがでしたでしょうか?
割といろいろな問題を起こしつつ、救出を成功させたドタバタ忍者達でした。これで忍者のターンはいったん終了の予定ですが、彼らの救助は始まったばかりなので、まだまだお楽しみに。
それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー




