第三百三十七話 突入! リトルムーン
修正等完了しましたので投稿させてもらいます。楽しんで頂けたら幸いです。
『突入! リトルムーン』
育兎の言葉に渋々ユウヒが頷いてからわずか五分後、今後の流れを軽く決めた二人は宇宙服の気密チェックをしていた。その片手間でナーズダルの艦橋と通話回線を開く育兎は、確実に通話が行えているのを確認すると口を開く。
「これよりユウヒと育兎はリトルムーンに突入し内部調査に入る。深き者は安全圏に退避後、いつでも動けるように待機してもらうと助かるよ」
いつもより硬い口調と声色で話し出した育兎は、これからリトルムーンに突入することを告げると、護衛の為に来ていたナーズダルには安全圏、要はコロニー建設現場付近で待機しているように伝える。
「ちょっと待ってくれ! いくらなんでも危険すぎる」
しかしそんなこと言われてはいそうですか、と了承するわけにいかないのがシールド艦ナーズダルの艦長、彼が受けた任務に今の要求を叶えることが出来る要素は無く、ユウヒの身の安全を優先するよう言われている彼は、行き当たりばったりにしか思えないユウヒ達の行動に声を荒げた。
「いやいやどう考えても今がチャンスだからね、時間をかけてもこの手の事態は好転しないよ」
「しかしだな」
だが、育兎とて思い付きだけで行っているわけでは無く、半分以上思い付きであっても残りの部分では冷静に計算を行っている。そんな彼が必要だと言うのだから、嫌な予感を感じつつも危険な予感をあまり感じないユウヒは、静かに彼らの話を聞いていた。
「育兎さん、帰ってきたら色々説明お願いしますね?」
「やぁ僕は説明苦手だからブラザーに任せるよ」
「おれぇ? まぁしょうがないか、さっきの攻撃とかですよね?」
そんな落ち着いたと言うよりやる気なさげなユウヒの表情を見ていたのか、突然割り込んできたメーフェイルは困った表情を浮かべながら育兎に声をかける。彼女が聞きたいのは彼らを救う事となった支援攻撃に付随したあれこれ、そう言った説明は管轄外だと言いたげな表情で肩を竦めた育兎は、爽やかな笑みを浮かべながらユウヒに水を向け、水を向けられたユウヒは育兎の後ろから顔を出すと、背凭れを掴んで体を固定しながら確信を持って問いかけた。
「え、えぇ……そうですね」
聞きたいことはいっぱいあるメーフェイルであるが、艦隊の総火力に匹敵するどころか超えてしまいそうな火力の出所はどうしても気になる事の一つである。確実にユウヒから説明を求めたい彼女であるが、感情の読めない微妙な表情を浮かべる彼にどう返事をしたものかと声が淀んでしまう。
「うちの子が仕出かしたことですし、無事帰って来れたら説明します」
強力な手札をそう簡単にさらすとは思えないメーフェイルであるが、彼女のそんな考えとは裏腹にユウヒの返事は非常に軽く、さらに前々から気になっていた話題も絡んでくるとなっては是が非でも聞きたい、そんな感情が彼女の単色の目を見開かせ虹色に縁を輝かせると、そこに育兎が顔を割り込ませる。
「よし話は付いた! 日本政府にも説明宜しく! 以上!」
「え!? ちょ―――」
帰ってきたらと言わず、さわりでも聞こうと口を開くメーフェイルであったが、ユウヒの顎をかすめる様に顔を出した育兎は、無理やり話を切り上げると通信装置を遮断して浮いたお尻を座席に落ち着かせるよう沈み込む。
「あとで怒られそ」
わざとらしく話を切った育兎が性格の悪そうな笑みを浮かべる後ろで、ユウヒは無重力に身を任せながら顎を擦り小さな声で怒られそうだと呟きため息を漏らす。
「まぁいいじゃないか、それじゃさっさと問題児にはご退去願おうか!」
「りょうかい」
育兎が何を考えて今のような行動に出たのか今一つピンと来ていないユウヒは、わからないことは考えてもわからないと諦め鼻から息を抜くと、育兎の元気な声に返答して座席に座りなおす。育兎の操る宇宙船がリトルムーンに向かって加速を始める中、せめてもの手向けと戦闘時とは違う綺麗な輝きをみせるシールド艦ナーズダルは、静かにスラスターを起動させゆっくりとその巨体を後退させるのであった。
急遽新しい作戦が決められた一方で、リトルムーンの内部では擦れた様な声が聞こえていた。
「重力フィールド大破……アイドリング状態へ移行、第一装甲損耗率70%第二装甲損耗率40%中央区画への被害軽微、常駐艦隊99%未帰還」
どこからか聞こえてくる擦れた声はリトルムーンの状態について一つ一つ確認していく。百発前後の核爆弾を防ぎ切ったと思われる一番外側の防御は綺麗さっぱり無くなり、今はかろうじて動いているだけ、さらに核では傷一つ付かなかった化粧は地表の約七割が剥がれ、その内側も四割が損傷を受けている。
接近する脅威へと全力で向けた艦隊はほぼ全滅、かすれた声が目を向けた広大な空間にはもうなにも見当たらない。
「侵入者確認、波形パターンに管理神と同期するものを確認、特一種警戒体制に移行」
地表が半壊している様な攻撃を受けてもまだかろうじて息をしているリトルムーン、そこへ更なる驚異の接近、脅威の侵入が確認されて声の周囲は急に見晴らしが良くなる。声の主はその体つきから女性のようで、綺麗な凹凸のシルエット照らし出す光の中には管理神と言う言葉が躍り、警戒フローチャートを一足二足跳びに繰り上げていく。
「緊急事態条項により本要塞は全工程を破棄、強制的に最終シークエンスに移行。精製完了まで残り89%」
どう言ったマニュアルによりフローチャートが作られているのかわからないものの、行き着いた先で示される命令は、順番を無視した何かの精製、明らかに正常な機械が出してはいけないような音をリトルムーンのあちこちで鳴らすと、女性は体に巻き付いた多数のコードから手足を抜いてどこかに消えるのであった。
リトルムーンが警戒する侵入者である二人は、丁度白い化粧が捲れ内部の構造が良く見える大穴の中に向かって落ちていた。
「にょおおぉぉおお!?」
「重力なくねぇか!?」
しかし彼らが落下しているリトルムーンには大気も重力もない様で、加速した分だけ急速に落下していく、一方で砲撃によって散らばるリトルムーンの装甲や内部の金属建材は、重力の枷がないことで無軌道に飛び回り育兎の操船を妨害する。
「なんでだろうね! ワイヤー射出! ……よし食った! 巻き取り!」
「ぐえ!?」
大気による減速や重力による秩序ある物理現象が見られない空間で、宇宙船のスラスターを小刻みに吹かせる育兎は、意を決した様に顔を顰めると宇宙船の底に取り付けられたワイヤーアンカーを射出、損傷の少ない大きく頑丈な区画に打ち込むと一気に巻き取り宇宙船を無理やり動かし、シートベルトが緩んでいたユウヒはその加速で頭をキャノピーに打ち付けて変な声を洩らしてしまう。
「だ、大丈夫かい!?」
「ヘルメット被っとけばよかった」
あまりに予想外なリトルムーンの表層に思いのほか焦っていたらしい育兎は、何の合図も指示もしなかった事を思い出し、慌てて後ろのユウヒに振り返って謝罪する。彼が目を向けた後部座席では、キャノピーに頭をぶつけた反動で座席に戻ったユウヒが頭を抱えており、どうやら宇宙服のヘルメットを脱いでいたばかりに、頭の中でも特に痛い場所を打ち付けた様だ。
「とりあえず被っておいてくれるかい?」
「おう……」
魔法や神の力以外で視界に星を飛ばすユウヒは、困った子を見る様な苦笑いを浮かべる育兎の指示に対して素直で力のない返事を返すと、ごそごそとシートの下に入れていたヘルメットを取り出す。
「着底するよ!」
「おっと、ずいぶん乱暴だな」
その間にも長く伸ばされたワイヤーアンカーは巻き戻され、着陸用の足を出した宇宙船は壁にへばりつくようにして船体を固定する。その際の衝撃で体が浮いたユウヒは、少し驚いたような声を洩らしながら、今度は頭を打つことなく座席に収まり、シートの下から出していた透明な素材が多く使われたヘルメットを胸に抱えた。
「これだけ大きいくせに重力が無いからね、無理やり壁に張り付くしかなかったんだよ」
巨大な質量はそれに見合った引力を生み出すのが普通であるが、どうやらリトルムーンはその世界の法則に該当しないらしく、それ故に宇宙船の高性能な予測も裏切られることが多いのか小さな傷がボディのあちこちに刻まれ荒れている。
「さて、ここからは徒歩で内部調査と行きますか……。周りが騒がしいから右目は控えめにしとくよ」
「そうだね、あそこから入ってみようか。中で何が起きるかわからないから右目は要所要所でね」
要塞からの攻撃により大きく抉り取られた空間は今も多数のデブリが飛び回り、生身は愚か宇宙船でも奥まで入るのは危険、そう判断した二人は着底した場所から少し離れた壁に見える穴からは内部に入り調査を始めるようだ。元は通路であったのであろう長方形の穴に目を向けたユウヒは、右目の輝きを消すと比較的静かになった視界に溜息を一つ吐くのであった。
一方その頃、大量の核兵器を日本国民が向かっている先に打ち込んだ馬鹿な国に対して、遺憾の意を伝えた日本国総理大臣は、そのままリトルムーンの動向と核による様々な被害が発生した時にすぐ動けるよう、緊急対策本部とだけ名を付けられた部屋で複数の大臣と待機していた。
『…………』
「石木さん」
すでにアメリカなどでは通信障害が発生しており、その影響を受ける日本でも国全体にピリピリとした空気が溢れ、米軍と自衛隊は慌ただしさを増していた。一方で重苦しく静かな対策本部には石木の姿もあり、男性秘書はしかめっ面で目を閉じる彼に声を掛ける。
「……どうした?」
「実は……」
「ばっ!? ……馬鹿だろ、本当か?」
蒼い顔をした男性秘書に目を向けた石木は、耳元でささやかれた言葉に目をかっぴらいて振り返ると、男性の顔を見上げながら意味のない問いかけをしてしまう。重苦しい空気が支配する場所で冗談を言える者など早々居るわけも無く、確認するまでも無く彼から告げられた内容は正しく事実なのだ。
「深き者から事実だと言われたようです」
「何やってるんだ、今回はちょっとした調査……いやまぁ調査で間違いないんだが」
周囲の人間の視線が集まる中、頭を抱える石木に伝わって来たのはユウヒと育兎の突拍子もない行動、ある意味彼らの行動は本来予定していた流れと大きく変わるわけではないが、現状でリトルムーンの調査だと言って突入するにはあまりに状況が悪すぎた。
「あと、各国からリトルムーン攻撃に関する質問が続々と来ています。一応質問は纏めましたが……」
「ふん……それは俺が聞きたいな」
また世界の国々は核の攻撃もその後の結果もすでに把握しており、まったく効果が無かったと落胆する中で行われた核以上に異常な宇宙戦争の光もしっかり確認していた。さらにその宇宙戦争の光を次々飲み込んだ宇宙を切り裂く長大な光も見られており、その説明を求める声は日本に集中している。しかし、今の日本政府の人間に事実を知りえる者はおらず、思わず呆れて鼻息を洩らした石木の口から愚痴が漏れてしまうのも仕方がないと言えた。
地球全体が上も下も騒がしくなっている一方で、世界の外側でも地球を中心とした騒ぎは大きく取り沙汰され、各方面へ協力要請の声が広がっている。
「ふむ……」
その協力を求められた一人である管理神イリシスタは、ベッドの上でうつ伏せになりながら高速で流れていくタブレットの映像を見詰め溜息を洩らす。しかし彼女が溜息をもらしたのは映像を見ていたことによる影響ではなく、その小さな背中にあった。
「何かわかったかしら?」
「姉上、いきなり現れて背中を踏んづけるの止めてもらえんじゃろか?」
「あらごめんあそばせ? つい踏みやすくて」
「ひどいのぉ……」
原因はイリシスタの背中に飛び乗って来た姉のフェイトである。正規の手段ではなく緊急用の転移で現れた彼女は、目の前にあった踏み心地のよさそうな背中に飛び降りた様で、すでに慣れっこと言った様子のイリシスタは特に嫌がることも無く唯々呆れている様だ。
「それで? 何か面白い事わかったの?」
「面白くは、ないかの……乙女が知ったら激怒間違いなしの案件じゃな」
「……詳しく?」
フェイトの小さな足裏の感覚からお尻の柔らかい感触へと変わった事に眉を寄せるイリシスタが何を調べていたかと言うと、ユウヒの世界に衝突した別の世界がどこから来たのか、それはとある女神と男神から届いた情報にも繋がっていた。
「もう乙女様にメール送信済みじゃから、わしらがすること何もな「失礼します!」……いはずじゃよ?」
しかしそこまで調べた彼女はあまりの内容にめんどくさくなったらしく全ての情報を一番怒っていそうな乙女に流した様だ。管理神でも手に負えない案件だと、言外に語る妹に眉を寄せたフェイトは、突然部屋に入って来た管理神に目を向ける。
「高速移動世界が衝突した世界で異常な数値が検出されました」
「どんな異常なの?」
いつもイリシスタの側で働いている三人娘とは違う、少し幼い管理神に目を向けたフェイトは、妹をお尻で踏んだまま少し困惑した表情の報告者に向けて何があったのか問いかけた。異常と言っても千差万別、それが世界規模ともなれば異常の一言では何があったのか分からない。
「はい! 世界全体の総エネルギーが低下、境界部において実体化現象が発生して世界のいたる所で流出現象が起きています」
「流出?」
興味深気なフェイトに対して、お尻の下のイリシスタは何かを察しているのか聞きたく無さそうにジト目を浮かべ、そんな上司の視線に困惑しながらも指揮系統としてより上の神物からの問いかけにはきはきと答える女性管理神。
「実体化から破損までは?」
「ほぼ同時です」
「……」
淀みなく報告する姿は褒められるべきだが、報告を受けたフェイトにはその余裕がないようで、目を瞑ったかと思うといつもの健康的な肌を蒼く白く変えていく。
「……あなた、このこと知ってたの?」
「知っていたらこんなに悠長な格好しておらん」
一方、元から肌の白いイリシスタは顔色こそ変わってないがその目からは生気が失われており、腰に感じる急に湿っぽくなった感触が背中へと重心位置を変えたことに顔を少し上げると、姉の問いかけにどこか不機嫌そうに、それ以上にひどく疲れたように返す。
「困ったわね」
「あの、いったい何が?」
妹の返事に理解を示すようにため息を静かに漏らすフェイトは、心底困った様に呟くと天を仰ぎ、その下のイリシスタも力なく柔らかいソファーに顔を埋める。そんな二人の様子に不安を感じた女性管理神は思わず問いかけてしまう。
「知りたいかの? 知ったら逃げられぬぞ?」
「そうね、馬車馬のように働いてもらわないと」
「え?」
柔らかなソファーから顔を横に半分だけ向けて女性管理神を見詰めたイリシスタは、くぐもった声で問いかけ、フェイトは天を仰いだまま視線だけ前に向けると、弧を描くような笑みを口元に浮かべ、小さく笑いながら不穏な事を呟く。
相手に不安を与えるような反応を魅せる顔色の悪い二人が、罪のない女性管理神を同じ場所に引き込もうとしている頃、リトルムーンの中に侵入した育兎とユウヒは特に何の問題も無く奥へ進んでいた。
「だいぶ降りて来たけど、全く重力が無いな」
「ふつう大きな質量があると勝手に生まれるものなんだけど、攻撃もないね」
壁を蹴ったエネルギーに見合った速度で星の中心に向かって落ち続けるユウヒは、目の前に迫って来た隔壁の残骸を手で受け止めて減速、ゆっくり退かすと前方の安全確認をして育兎の手を引っ張りながらまた壁を蹴る。
「あー確かに、触手お化けの時はだいぶ居たけど、ここはまるで何も感じない。もしかしてプラズマ弾で?」
重力がないから上も下も無く、狭い通路の中では自分が今どっちに向かっているのか分からなくなるが、そこはユウヒの可笑しな魔法の力があるのでしっかりと怪しそうな星の中心へと向かっているようだ。
「いやぁ、この辺は割と生きてる機械もあるし、ドローンの一つも稼働してて良いと思うんだけど」
明らかに人が歩きまわることが前提であろう通路を進み続ける二人であるが、ここまで邪魔な障害物はあれ、命の危機を感じる攻撃は受けていない。あっても突然現れた障害物でユウヒがヘルメットを思い切りぶつけた程度なもので、鋼鉄より丈夫なヘルメットには小さな傷もついていない。
「うーん……ん? あいた!?」
「うわっと!? 大丈夫かい?」
そんな話をしていたらまたもユウヒは頭を何かにぶつけ、少し開けたホールのような場所に、ぶつかって来た何かと一緒にくるくる回転しながら飛び出す。ホールには固定されていなかったベンチや机が自由に宙を移動しており、そんな家具に手を添えながら育兎はユウヒの後を追う。
「右目を強めに使ってたら何か……んんんん?」
「どうしたの? 箱? いや本かな?」
ホールの突き当りまで無重力に弄ばれ飛んで行ったユウヒは、近付いて来た壁に足を付いて態勢を整える。どうやら右目で周囲の様子を調べていた様で、一瞬の視界不良が運悪く腕に抱えた何かとの激突を演出してしまったようだ。そんなユウヒが抱えていたのは箱のような本の様な物体、それが何なのか解らない育兎は透明なヘルメットの中で不思議そうな表情を浮かべた。
「おかしいなぁ目が疲れてるのかな? いやでもこれだけなら……」
ユウヒが手にしたものは分厚いファイルであり、中に入った書類の汚損を全力で防ぐと言う意思が伝わってきそうなほど頑丈な作りであった。そんな書類に何が書いてあるのか自分の目を疑うユウヒは、袖を伸ばして腕を宇宙服の中に入れ込むと首元から手を出してヘルメットの中の目頭を指で揉む。
「むむ、この部屋からだね? 資料庫だったのかなっと!」
そんな頑丈なファイルは足元の壁の一画で口を開いた扉から出てきているらしく、別のファイルがゆっくり外に出ようとしている事に気が付いた育兎は、軽く足元の壁を蹴ってファイルを手に取るとその反動で体の角度を変えて扉の向こうを覗き込む。
「ふーん? ほーん? なんでこんな本? 書類束? で残してるんだろうか」
「多分これ管理神のものだよね、あいつらが本で残すってことは隔離していつでも燃やして破棄出来る様にとか? あまり残しときたくないけど置いとかないといけないとかかな? データだと回線繋がってなくてもハッキングとかで簡単に抜き盗られる可能性有るからね」
地球の言語ではない文字で書かれたファイルが何なのか、すでにユウヒの右目にはその詳細が映し出されており、疑問が疑問を呼ぶユウヒの独り言に、顔を上げた育兎は小首を傾げる。どうやらそれらのファイルは管理神が使う形式によく似ているらしく、何となくユウヒの表情から可笑しなものであることを察した育兎は、管理神の行動と傾向からこれらのファイルが捨てたくても捨てられない資料だと推測したようだ。
「そっかー……そっかぁ」
育兎の説明に眉を寄せて唸るユウヒは、手に持ったファイルと育兎から受け取ったもう一つのファイルを見比べ、足元の部屋に多数置かれたファイルに目を向けるとそっとその体をファイルが並ぶ部屋へと向けて蹴り出す。
リトルムーンの調査に乗り出し、安全を確保するつもりだったユウヒと育兎はそこで何を見つけたのか、そしてその手にしたファイルは彼らの行く道をどう変質させるのか、それはまだ誰にもわからない。
いかがでしたでしょうか?
チャンスが来たら迷わず掴めとリトルムーンへ突入する二人は、そこで妙な物を見つける事になった。果たしてそれはユウヒ達をどこに連れて行くのか次回もお楽しみに。
読了ブクマ評価感想に感謝しつつ求めつつ今日もこの辺で、また会いましょうさようならー




