第三百三十五話 放て超光速砲 前編
修正等完了しましたので投稿させてもらいます。楽しんで頂けたら幸いです。
『放て超光速砲 前編』
膨大な熱と光と衝撃を生み出し、リトルムーンを覆い隠す様にガス雲が発生するもすぐにそれは拡散し消えていく。
「馬鹿な……これはどういう事だ!」
その姿はとある大国のトップが見詰めるモニターにも映し出されており、霧が晴れた先から白くどこも欠ける事なく現れた小さな月に、北の大国を牛耳る男性は思わず立ち上がり声を荒げる。
「その、想定以上に頑丈であったと、予定した攻撃は成功していると思われますので……」
「また私を騙すか!」
彼も経験したことが無い核爆弾による飽和攻撃、これによりリトルムーンは最低でも半壊はするだろうと言う科学者の予想とは裏腹に、モニターの向こうの小さな月は一見して傷一つないように見えた。過去に何か騙されたことがあるのか、軍人と思われる男性に険しい視線を向ける大統領に対して、男性軍人は顔を蒼くして後退る。
「そそ、そのような事は!? 専門家も十分な攻撃であると」
「結果はこれだ!」
「しかし詳しく調べてみない事には……」
軍人は大統領を騙したわけでは無い、ただし科学者の言葉を鵜呑みにして功績を求めて詳しく調べる前に事を勧めただけだ。かつての上司は大統領への恐怖からイエスマンに成り下がり国の暴走を招き結果として消えて行ったが、その教訓を生かしても結果が同じであれば意味が無く、それでも食い下がろうとする男性に大統領は眼光を鋭くする。
「誰がだ?」
「そ、それは……」
もしかしたら見えないだけでダメージがあるのではと、そう言外に語る男性を睨む目は怒りに歪み今にも引き出しの銃を取り出しそうな気配すら漂わせ、誰が調べるのだと言う静かな問いに男性は恐怖で声が出なくなっていく。
「日本の発言力が手の付けられないところまで増すのを押さえたかったが、まぁよい」
アメリカの監視衛星が撃ち落とされた今、詳しくリトルムーンを調べられる者と言えばユウヒや深き者などが居る日本くらいで、元々日本の発言力が増すことを嫌ったこともあって彼は軍部からの提案を受けたのだ。それが裏目に出れば怒りもしようものだが、自ら日本と言う国の名前を出したロシアのトップは、ため息混じりに呟くと椅子に座りなおす。
「データを送ってきた中国科学者は切れ」
「は、はいっ!?」
覇気が緩んだことで重く圧し掛かっていた空気が軽くなったように感じたのも束の間、大統領には一切教えていない情報が彼の口から出てきたことに、男性軍人は思わず震え上がると、引き攣った甲高い声で返事を返すことしかできないのであった。
ロシアの高官に秘密裏に接触し科学的データに基づいた計画を立案した科学者の故郷では、ロシアと同じ様にリトルムーンの状態に、苦虫を噛みつぶした様な表情のを浮かべる男性が複数の人間に囲まれながら拳を肘掛の上で握りしめていた。
「もっと、もっと強力な兵器が必要だ」
「これ以上と言いますと、奴らしか……」
科学者の計算であれば十分な損害を与えられるはずであったが、計算に使われたのが月や彗星と言った小惑星程度の耐久力だったのが根本的な間違いである。それでも全く損傷が無いとは考えられず、純粋に火力が足りないと考えるのは可笑しいものでは無いだろう。
「なんでもいい、方法は問わん! 何とかして手に入れ研究するのだ!」
「は、はい!」
現状の地球において核兵器以上の破壊力を持った兵器を探そうとすれば、それは地球人の手元ではなく異世界人の手元にある可能性の方が高く、魔法と言うよく解らない力より一瞬で大陸弾道ミサイルを撃ち落としたような解りやすい科学力の方が彼等には魅力的に映るようだ。
「いくら核があったところ効果が無ければ意味がない!」
手段は問わないと言う言葉を受けて部屋から一斉に退出する人々を後目に、アルコール臭を漂わせるグラスを握りしめる中国の長は、日本の思わぬ行動によって核の優位性に亀裂が入り、その事による国家運営への不安と焦りに顔を深く歪めるのであった。
世界各国で今回のリトルムーンに対する核攻撃が様々な波紋を生み出している頃、月と地球に挟まれる位置でリトルムーンを睨むシールド艦の中では、核攻撃の余波が薄まるのを待っていたユウヒが口を開く。
「それで、これから調査するの? めちゃ警戒されてない?」
「まったく余計なことをしてくれるもんだよ」
彼が見詰める大型モニターには大きな砲口の奥まで覗けそうな砲台が映っており、その敵意剥き出しの姿に嫌そうな表情を浮かべて問いかける。問いかけられた育兎は宇宙船に上がる梯子に足をかけながら険しい表情を浮かべたまま溜息を洩らし、攻撃を行った某国に向かって吐き捨てるように悪態を洩らすと梯子を登っていく。
「周辺宙域に高濃度の放射線の滞留も確認しています。と言っても宇宙空間ですので大した差はないかと」
「そのうちどこかに飛んでくだろうから気にしない気にしない」
宇宙船のコックピットに頭を突っ込んでゴソゴソと何かしている育兎は、出撃準備で最終チェックにやってきた整備兵からの説明に軽く手を振って見せ、気にしないと言うとまたコックピットに頭を突っ込む。
「リトルムーンに落ちていくんじゃない?」
「大丈夫だと思うよ? あれ相当硬いバリア張ってるし、逆に言えばあのバリアをどうにかしないとゴミだろうと人だろうと兵器だろうと地表まで届かないよね」
リトルムーンの地表へ向かって降り注いだ核弾頭が爆発したのだからリトルムーンに放射性の物質が降り注いでいてもおかしくないと思うユウヒであるが、小さな月を覆うバリアを調べ終わった育兎曰く、その程度の攻撃で地表まで何かを到達させられるほどリトルムーンを守るバリアは柔らかくないらしい。
「確かに」
そう言われてもう一度モニターの中のリトルムーンを見上げるユウヒは、まったくと言って良いほど変化していない白い肌に険しく眉を寄せると、小さく納得した様に呟く。彼が再認識した通りリトルムーンの白く滑らかな肌を一切煤けてすらおらず、その映像には深き者も追加の派遣艦隊を準備し始めたほどだ。
「と言うわけで攻略のヒントを探しに行くぞー!」
「いくのかー」
異常に強固な守りとその大きさの割に少ない攻撃、まだまだ分からないことだらけのリトルムーンは、やはりユウヒの金の目で調べないといけない様で、コックピットから真新しくスタイリッシュな宇宙服を取り出し笑顔を浮かべる育兎を見上げたユウヒは、覇気のない顔で大きく息を吸うと、大量の息を吐きながら残念そうに呟くのであった。
それから小一時間後、
「電子系統よし、動力よし、駆動系よし、バッテリーよし、燃料よし、後付け増加スラスターパックよし!」
お揃いの宇宙服を着こんで育兎の宇宙船に乗り込んだ二人は、シールド艦のカタパルトへと宇宙船ごと移動させられると、それぞれに最終チェックを行う。元気な声で指差し確認をしていく育兎の後ろの席では、ユウヒが宇宙服のあちこちに取り付けた四角いポーチの中身をマジックテープ特有の音を鳴らしながら確認しているが、その表情は育兎と対照的に暗い。
「シートベルトよし……危険物よし」
「全然よくないよ!」
スタイリッシュで薄手の宇宙服は手袋も薄くぴったりと体に吸い付き動きを阻害しない、そんな手袋越しにシートベルトを引っ張って安全確認したユウヒは、最後に腰のポーチから四角い箱を取り出し、中から金色帯が光り輝き不穏な音を鳴らす球体を出して外気に晒すと、そっと人差し指で突いて安全確認するが、そんなユウヒの呟きに育兎は体をひねって後ろを向きながらツッコミを入れる。
「えー? ちゃんと危険を感知してるじゃん?」
「そうだけどそうじゃない! あぁ……リトルムーンは気になるけど、そっちはいらないんだよなぁ」
釈然としない表情で眉を寄せるユウヒに対して育兎はもどかしそうに体をくねらせると、今の今まで勤めて考えないようにしてきた危険物の状態をまざまざと見せ付けられ頭を抱えた。先ほどまで楽しそうであった育兎も、管理神お墨付きの厄介ごとは勘弁してほしいらしく、ぼそぼそと呟く育兎に目を向けるユウヒの手の中では、球体の表面を帯状の文字列が金に光ってぐるぐると回り続け、異音も伴うその反応は以前にも増して激しい。
「俺はどっちもいらないんだけど?」
「そこは付き合ってよ、僕らの仲じゃないか」
カタパルトに固定された宇宙船の周りで深き者達が飛び回る中、面倒事はどれも求めてないと呟くユウヒ。外で触手を大きく伸ばし振るジェスチャーを行う深き者に手を振り返した彼は、座席の背凭れから顔半分だけ出し、潤んだ赤い瞳で見詰めてくる育兎にため息を漏らす。
「報酬に期待させてもらおう」
「まぁ危ない事させてるわけだしねぇ……うーん、何がいいかな」
今更帰らせてもらう! などと言う気もないユウヒは、しかし何の報酬もないのではやる気も起きないと目を細めながら育兎を見下ろし、事実とてつもなく危険な場所に連れて行こうとしている自覚がある育兎は、どんな報酬が良いか悩み始める。
「それじゃ鍋だな」
「……いいね! そろそろ良い時期だもんね、それでは鍋を求めてぇ発進!」
別にユウヒは多額の報酬を求めているわけでは無い、ただ報酬と言う逃げ道があった方が育兎の気も楽だろうと言う配慮をしただけで、その事に気が付いた育兎は嬉しそうにそしてどこか生暖かい感情で顔を綻ばせると、低重力だからこそできる急な回転運動で座席に収まると、シートベルトは締めて操縦桿に手を置く。
「肉多めで頼む」
育兎の動きを見ていた深き者はチカチカと発光信号を出して一斉に宇宙船から離れ、カタパルトの信号が黄色から青に変わるといくつものスイッチ切り替える音がコックピット内で鳴り始める。エンジンの唸り声が高まる中、ユウヒの要求に親指を立てて見せた育兎はその手で左のスロットルレバーを思いっきり引くのであった。
エンジン出力の上昇に合わせて電磁カタパルトが育兎の船を宇宙空間に押し出す一方、二人を送り出したシールド艦の艦橋は次のフェーズに移り僅かな緊張が走っていた。
「育兎殿の宇宙船が離艦しました」
宇宙船の離艦を確認した彼らの目には、格納庫のカタパルトから飛び出し青白い二本の光跡を描く宇宙船が、艦の前方に躍り出る姿が窓越しに映る。
「針路そのまま増速、電磁フィールドの外に出すなよ」
「了解」
艦の前方広範囲にわたって電磁バリアを発生させることが出来るシールド艦の艦橋は出し入れが出来る機構であり、現在は有視界による監視も出来るように各所が外にせり出しガラスの様な窓の向こうには大きなリトルムーンが迫って見えていた。
「それにしても楽しそうですね」
修理後の試運転もかねてくるくると踊るように飛ぶ育兎の宇宙船に、艦橋のクルーは思わず楽しそうだと洩らし、シールド艦の舵を取る深き者の男性は電磁バリアの外に飛び出さないかハラハラした表情で苦笑いを浮かべる。
「軍人より肝が据わっているよ、高次生命体と付き合うにはそうでなくてはならないのだろうか?」
そんなクルーのやり取りに、シールド艦の艦長は自らの席にゆったりと座りながら感心と呆れと僅かな畏怖を感じる声で呟き、クルーたちは思わずその言葉に振り返り艦長の顔を見詰めた。
「あー確かに、そうですよね? あんな恐ろしい存在の傍にいて笑ってられるなんてどういう精神構造してるんでしょうか?」
彼らにとって高次生命体とは非常に恐ろしい存在であり、そんな精霊と自然体で対話できるユウヒは驚くべき人種なのだが、オープン回線から聞こえてくる二人の笑い声に艦橋のクルーは様々な表情を浮かべており、しかしどの顔にも未知に対する困惑が伺える。
「さぁな、もしかしたら彼自身が我々には計り知れない恐ろしいナニカなのかもしれん」
「奴らみたいにですか? こっちにはいないのでは、まさかその代わりが彼等だと?」
「そうなると、地球人と事を構えるのは得策ではないな」
ユウヒと言う人間がただの地球人ではない別の何かなのかもしれないと嘯く艦長は、神妙な表情を浮かべる若い男性に対して眉を一つ上げると、大げさに肩を竦めてため息混じりに事を構えられないと話す。若い男性の脳裏には深き者にとって不俱戴天の仇と言える敵の姿が浮かんでいる事は艦長にはお見通しであり、彼の大げさな態度は言外にそれとは別の脅威だと言っていた。
「派閥変えます?」
どうやらこのシールド艦の乗組員の一部はユウヒに対して少し思う所があるらしく、それは彼らが所属する派閥の意向でもある様だ。そんな派閥に対してあまり良い感情を持ち合わせていないのか、艦長もその彼を見詰めるクルーも単色の瞳に僅かに期待するような光を宿している。
「そのうちな……まだ艦隊再編も終わっていないのだ。変な行動を起こせばどの道潰される」
「了解です。大人しくしてます」
しかし、深き者達の内部はまだまだ落ち着きを取り戻しているわけでは無いらしく、下手に動けば過激な反応に晒され危険であると話す艦長に周囲の空気は僅かに騒めき落ち着きを取り戻す。
「そうしてくれ(話には聞いていたが、あの目は死地を経験した老兵の目だった)」
クルーがそれぞれの仕事に集中する一方で、ユウヒの事を気にしていた彼らと違い、艦長は一人作戦開始前に少し話すこととなった育兎の目を思い出し、震えそうになる体に力を籠めて目を細める。ユウヒは当然として、彼はその周囲の人間にも注意を払う必要があると自らを戒めるのであった。
そんな噂話にクシャミ一つ洩らしたユウヒは、鼻を擦りながら金色に光る眼で闇に浮かぶ白いリトルムーンを見詰めていた。
「どうだいブラザー? そろそろ何か見えたかい?」
宇宙服のヘルメットを足元に置いた二人は順調にリトルムーンへ近づいており、そろそろユウヒの右目にも何か有用な情報が映りだしたのではないかと、背凭れから少し顔を出す様に振り返る育兎。地上であれば前を向いて運転しろと言いたくなるところであるが、ここは宇宙で何かにぶつかる方が難しい。
「いやまだだなー、それっぽいのは見えてない」
振り返った拍子に操縦桿を揺らされ機体と一緒に体が少し揺れるユウヒは、育兎の問いかけに小さく唸るとしかめっ面でそれっぽいのは、何も見えてこないと話す。
「それっぽいのは? 何かもう視えてるの?」
しかしその返答の違和感に育兎はさらに体をひねりユウヒに目を向けると、それっぽくない有用じゃないものが見えているのか問う。ほとんど何もないはずの宇宙空間であるが、ユウヒの目には何かの情報が浮かび上がっている様だ。
「おう、視界不良レベル100ってくらいだな」
「え、それっぽくない何がそんなに見えてるの?」
それはちょっとどころの問題ではないくらいの情報が押し寄せているらしく、彼の視界はその情報で完全に視界不良となっていると言う。いったいどんな情報を、このだだっ広く何もない空間から読み取っているのか気になる育兎は、深き者の電磁バリアや宇宙船なんかを頭の中で候補に上げつつ好奇心に輝く瞳でユウヒを見詰める。
「んー例えばブラザーの髪に付いたリンスの銘柄とか、女性用なのは良いとしてもちゃんとすすぎなよ」
「……ええ!? ちょっとやめてよ何か恥ずかしい! てかそんなの視なくていいからリトルムーンを見てよ!」
しかし返って来たのは予想もしないリンスの銘柄についてであり、一瞬何を言われたのか分からなかったが育兎はゆっくり目を見開くと頭を押えながら大きな声を上げた。どうやら思いのほか恥ずかしかったのか、珍しく顔を赤くする彼の表情はどっからどう見ても美少女のそれであり、右目を閉じたユウヒは左目で育兎を何とも言えない表情混じりで見詰める。
「ブラザー……」
「な、なに?」
片目を瞑りジトっとした表情で見詰められ、育兎が赤い顔でたじろぎ宇宙船がふらふら揺れる中、上目遣いで見詰められるユウヒはゆっくりと右目を開きその金色の瞳を露わにすると徐に口を開き問いかけた。
「神様の力が人間にコントロールできると思ってるの?」
「思わない」
「即答かぁ」
神様から貰った力を人間程度が正しくコントロールして使う事が出来るのかと、問いかけた瞬間返ってくる育兎の返答は否定、人間が神の力を使いこなすことなど不可能、そこには純然たる事実があるだけで希望は無い。
「でも普段は制御してるよね?」
「普段は手加減してるだけ、元々距離に影響される能力っぽいから、遠くの物を調べるなら手加減とか無理だよ、全力全開でピッカピカでしょ?」
一見神から貰った力を使いこなしているように見えるユウヒであるがそれはただ単に出力を抑えているだけで自由に使っているわけではないらしく、彼に出来るのは蛇口の開度変えたりホースの先の摘まみ具合を変えたりするだけで自由に操っているわけではない。
「うん、ちょっと直視できないくらい眩しいね」
事実ユウヒの右目は全力で使っているが故に暴走気味な輝きを放っており、あまりに眩しいためユウヒ自身反対の左目を閉じている。
「最近使い慣れて来たからか、今まで以上に力を籠められるようになったけどこれだよ、それでもまだ遠くの物を視るのは無理っぽい、代わりに近くのどうでもいい情報が視界を埋めていくんだよね」
「えー、想像できないなぁ」
「んー、そうだな。変なリンク押して次々とウィンドウが開いていくパソコンみたいな感じ、しかも意味のないウィンドウじゃなくてしっかり文字が詰まってるやつ」
地球に帰って来た当初は乙女に何かされた影響で魔法や能力が安定しなかったユウヒも最近はずいぶん使いこなせる様になってきている。それでも金の右目は遠くの物を調べるために出力を上げれば上げるほど、必要としない余計な情報をユウヒに提供していく。現在もユウヒの視界には複数のウィンドウが非常に短い間隔で出現し消えて行く事を繰り返しており、彼の例え話に育兎は理解した様に無言で口を開き頷いて見せる。
「ぶらくらかぁ……よくそれで判別できるね」
「慣れかな、時間もかけてるし」
育兎もその現象には覚えがあるのか、懐かしそうな表情を浮かべて何度も頷くと、その状態でも視界を埋める内容を理解出来る事に感心した様に唸り、
「だからって僕のリンスの銘柄気にしなくてよくない?」
「偶然目に入ったんだ……」
だからと言って使っているリンスの銘柄をピンポイントに例として挙げるのはどうなのかと、まだ少し赤い顔でユウヒにジト目を向ける育兎。これに関しては完全な偶然であり、割と高級で髪の綺麗な女性御用達な銘柄だったことで、ユウヒも何となく名前を憶えていただけである。
「ぐぅぜんー?」
特にそう言った物に対するフェチズムを持ち合わせていないユウヒであるが、見えない視界の向こうから感じる視線の圧に顔をリトルムーンから逸らす。
「……質問です」
「はいどうぞ!」
しかしその視線をずらした方向で何かを見つけたユウヒは、右目の光量を落とすと育兎に真剣な表情を浮かべた顔を向けて問いかける。
「ワープ粒子って何?」
ワープ粒子とは何であるのかと……。突然の質問にきりっとした表情で受け答えた育兎は、その質問の内容にキョトンとした表情を浮かべ小首を傾げるのであった。
いかがでしたでしょうか?
爆発の衝撃と光と煙の晴れた向こうに現れたのは変わらぬ小さく白い月、ようやくユウヒ達が調査に乗り出すもそこは安全とは言えない状態で……。果たして二人は無事調査を終える事が出来るのかそれとも、次回もお楽しみに。
読了ブクマ評価感想に感謝しつつ求めつつ今日もこの辺で、また会いましょうさようならー




