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ワールズダスト ~現世に現れし黒き森~  作者: Hekuto
第一章 救出と救済

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第二十八話 前哨戦

 どうもHekutoです。


 チェック作業完了したので投稿させて頂きます。今回は少し長めですが、皆様のお好きな時間に楽しんで一笑して頂ければ幸いです。



『前哨戦』


 母樹が見上げ、ユウヒが突き進む森よりもどこか薄暗い森の中、鬱蒼と茂った葉はそこを通る黒い影により大きな音を立てながら地面へと散っている。


 その影の正体は三人の忍者であり、彼らが樹の枝から枝へと跳び移るたびに濃い緑色の葉は千切れ飛び、地面を這う生き物達はその異様な気配と音で驚き、見上げた空から降ってくる木の葉に鬱陶しげな表情を浮かべていた。


「進行方向に人と思われる熱源三」

「ふむ、反応の小ささからメイン救助者達でござろうが、はて? だいぶ離れて居るでござるな」


 足元でその様な事が起きているなど考えもしていない三人は、嵐が過ぎるのを待ったのち、その驚異的な身体能力と五感を使い捜索を開始してすでに三時間ほど、ようやく手がかりになりそうな気配を察知したようだ。


 ヒゾウが見つけた熱源とやらを確認したゴエンモは、まるでサーモグラフィー映像を視ているかの如く鮮明にわかる熱源に、その相手が子供であると推測しどこかほっとするも、訝しげに首を傾げる。


「一人と二人か・・・よし、ゴエンモは一人になっている方を! 俺とジライダは二人の方だ!」

「・・・・・・してその心は?」


 なぜなら、てっきり三人一緒に居るとばかり思っていた相手が二人と一人で別れていたからである。


 何かあったのかと思考を巡らせるゴエンモの隣で、ジライダと視線を交わしたヒゾウは一つ頷くと、行動方針を妙に大きな声で告げ、その意図を計りかねたゴエンモは、またアホな理由じゃないかと当たりを付けてヒゾウにジト目を向け問いかけた。


「ふふ、こんな森の中で女の子が一人っきりになるわけがなぁい!」

「颯爽と現れ少女たちを助ける! まさにヒーローの所業・・・万事我に任せるが良い!」


 ゴエンモの疑問に、どこからか軽快な効果音でも聞こえてきそうなポーズと勢いで立ち止り、ニヤリとした笑みで答えるヒゾウと、同じくニヤリとした表情で鼻息荒くポーズをとるジライダ。


「・・・・・・行っちゃったでござる。相手が裸だったら、どうするんでござろうか?」


 唖然とした表情で樹の枝の上に立ちすくむゴエンモに向かって、やはり効果音が聞こえてきそうな勢いで親指を立てて見せた二人は、無駄に颯爽とした雰囲気を醸し出しながら、二人の子供が居ると思われる場所へと走り去る。


 そんな二人を見送ったゴエンモは、当初から懸念されていた事柄を口にしながら、只々ジト目を元に戻す気力がわかないのであった。


「ロリ発言しなかっただけマシでござるが・・・拙者も急ぐとするでござる」


 しかしいつまでもそうしているわけにも行かず、気を取り戻した彼は、肩を落として頭を気だるげに掻くと、もう一つの熱源に向けて移動を開始する。


「男の子と言えど、一人は寂しいでござろうからな!」


 要救助者の一人、悪戯小僧と言う表現がよく似合う印象の少年が居ると予測される方角へと、木々の上を移動し始めたゴエンモは、この先で困っているであろう少年の事を思い浮かべると、一人苦笑を浮かべながら少しだけ走る速度を上げるのだった。





 一方その頃、世界の壁を越えて遠く離れた別の森の中でも、樹の上ではないが地面を走る人間の姿があった。ただ、その人間はゴエンモのようにボッチではなく複数の男女である。


「くそ、まだ一匹だけならやり過ごせただろうに!」


「一人ではさびしかったのだろう!」


「そう言う問題なん!?」

 さらに付け加えるならば、ユウヒの友人であるクマを先頭にした彼らは今、絶賛逃走中であり、後ろからは倍近くの小さな人影がまるで地を舐めるように迫ってきていた。


 ただ、先頭で悪態をつくクマであるが、パフェと冗談を言い合いながら走れているあたり、まだある程度の余裕はあるようだ。


「クマさん! 私大丈夫だから!」

 一方妙な余裕を見せるクマとパフェと違い、余裕がないのはクマにお姫様抱っこをされたルカである。いきなり抱えられた当初は恥ずかしそうにしていたものの、劇的に変わっていく後ろの状況に、心配の方が上回ったのかその感情がよく伝わる表情で、クマと周囲の女性陣を見詰める。


「舌噛むからしゃべらないほうが良いぞ! リンゴ! 相手さんどんな感じだ!」

 ルカがなぜクマの腕の中に居るのかと言うと、ただでさえ歩きなれない森の中を薄暗い時間帯に歩いていたルカは、地面に落ちていた樹の枝を踏んでしまい転倒、結果左足首を捻挫してしまう。


「いい感じに隊列伸びてるね! そろそろいけるよ!」

 ルカの転倒により発生した音の影響か、それとも単に偶然か、クマが気にしていた小さな人影の集団はまさに最悪のタイミングでクマ達に気が付いたらしく、騒がしくなった後方に舌打ちをしたクマ達は、そのままルカを抱えて走り出したのであった。


「おk! あの大きな樹まで行ったら反転! リンゴはルカちゃんを! メロンさんいけます!?」

 しかし、そこはいろいろと問題や異常を抱えるメンバーである。ただただ逃げ続けることなど最初から考えてはいなかったようで、クマの問いかけに対して楽しそうに返事を返した最後尾を走るリンゴの言葉に、ニヤリと口元をゆがめたクマはすぐに指示を出すと、すぐ後ろを走っているメロンに視線を向けないように注意しながら、確認を取るように声をかけた。


「はいはぁい、目は覚めてるわよぉ」

 廃屋を出た当初こそ眠気眼であったメロンは、すでに目が覚めているらしく柔らかくも楽しげな声色で返事をすると、軽く力こぶを作って見せて笑みを深める。


「うい! 姉さんは前でないように!」


「ぬぐ・・・わかった!」

 後ろで二つの大きな果実を揺らす姿を見ずとも、声だけでメロンの体調が良好なのを感じとったクマは、満足そうな声を洩らして隣に目を向けると、ヤル気に満ちたパフェに念を押すように声をかけた。


 クマの念押しするような声に苦虫をかみつぶした様な表情を浮かべたパフェであったが、クマの腕に抱かれているルカに目を向けたかと思うと、不承不承と言った表情を隠すことなく大きな声で了承するのであった。


「・・・一抹の不安が、まあいい! それじゃいくぞ!」


『おう!』

 パフェの返事に一抹の不安を感じるクマであったが、すでに予定ポイントは目の前に迫っていたため、いったんその考えを頭から破棄すると、大きな声で合図を出して滑るように停止する。クマの声に反応した女性陣も返事を返して同じように停止すると、反転し各々の役割を遂行するべく動き出すのであった。





 ルカ達が名も無き異世界での初戦闘を開始しようとしている頃、こちらでも不穏な気配が森で動き出していた。


「っ・・・っ・・・・ママぁたすけてよぉ」

 そこには、陰鬱な気配が支配する森には似つかわしくない小さな女の子が、その金色の髪で顔を隠して一人涙を流し、心細げに母を呼んでいる。


「たすけてぇ・・・ぇ?」

 しかしその少女の助けを呼ぶ声は、鬱蒼とした森に吸い込まれるだけで彼女の母の下には届かず、むしろ森にあふれる不穏な空気を呼び寄せてしまう。


「ギギギ! ギャッギャ!」


「ガギ! イキキキ!」


「ひっ! 何!?」

 少女の声に吸い寄せられるようにして現れたのは、彼女より少しだけ大きな人影であり、しかしその姿は人間と形容するには、些か無理のある異形の姿をしていた。


「ゲッゲ? ガギ? イキキキ!」


「ゲキキキ!」

 草木をかき分けながら、木が軋むような声を出す口は大きく左右に裂けており、黒々とした目の周りにはまるで年老いた老人のようにしわが寄っている。


「こ、こないで!」

 顔を蒼くして後ずさる少女の声に、欹てる耳は大きく長く左右に伸び、少女を威嚇、いや恐慌させるように跳ね跳び振るう腕や足は枯木の様であるが、跳ねるたびに揺れるお腹は丸々と膨れていた。


「・・・ゲギャ? イキキキ! ギャア!!」

 少女が恐怖していることが伝わったのか、彼女を指さし哂った異形の者は、勢いをつけて彼女に近づくと長い舌をその裂けた口から出して大きな叫び声を上げる。


「ひぃ!?」


「イキキキ」


『イキキキキキキ!』

 その恐ろしい姿に、少女は身を縮めると表情を引きつらせ悲鳴を上げ、彼女の姿が面白かったのか、異形の者は仲間の下に戻ると満足そうに笑い声を上げて、仲間と一緒に腰の筒に収められた男の象徴を見せびらかす様に腰を振って踊り出す。


「ひっ・・・」

 その姿に嫌な予感を感じた少女は、金色の髪を揺らして後ずさるも、その動きに気が付いた異形の者はその筒を手で握りながらゆっくりと少女へと近づく、その時である。


「幼き少女に欲情し、粗末な汚物で脅し悦に浸る・・・」


 どこからともなく人の声が森に響き渡り、その声は静かな声にもかかわらず、不思議とその場に居合わせた者すべての鼓膜を揺らした。


「え?」


「ぎゃ?」

 森の奥深く、今にも少女が襲われそうな場面には似つかわしくない不思議な声に、その場にいた者は等しくその声の主を探すべく周囲をうかがい始める。


「・・・人、それを外道と言う」


「ゲギャギャ!?」

 その声の主は、少女が背にする崖上に佇んでおり、その姿を確認した異形の者は、その枯木の様な手と指で崖上を指さし、仲間に知らせるような声を上げた。


「何を言っているか解らぬでござるが、貴様らに名乗る名は無いでござる!」


「ギャギャ!?」

 その者、名をゴエンモ、彼を見上げた異形の者達は一斉に耳障りな声で騒ぎ立て始めるも、その鳴き声を即座に切って捨てたゴエンモは、崖の上から飛び降り異形の者達を驚かせる。


「幼子よ! 目を瞑っているでござる!」


「え? あ、はい!」

 異形の者の中には自殺かと彼をあざ笑う者も居たが、彼が静かな着地音を鳴らして少女と異形の者の間に降り立ってみせると、狼狽えたように後ずさり、ゴエンモが背後の少女に振り向くことなく大きな声で目を瞑っているように指示を出すと、異形の者は各々に得物を取り出す。しかし、その程度の緩慢な動きでは目の前の変態紳士・・・もとい、新人類『忍者』を相手取るにはあまりに遅すぎた。


「忍法! 『進み過ぎた体術は魔法と変わらないの術』」


「ギギョ!?」


「ゲ、ゲギャッ!」

 異形の者が動いた瞬間、ゴエンモは目にも止まらぬ速さで加速し、五体の異形を蹴鞠のように蹴り上げ空中で一塊にすると、手に持っていた蔦を使いまるで荷物の梱包をするかのよう手軽さで一塊に縛り上げてしまう。


「ふんぬ! 纏めて逝くでござる! 秘技! 『武露不死むろふし』」


『グウゥゥウ! ゲエェェエ!? ギャアァァアアァァァ―――』

 さらには、一塊にされて地面に落下した異形の足を無造作に掴むと、気合の声を発しながらぐるぐるとその場で自分を中心に振り回し、竜巻でも起こりそうなほど加速させるとそっと手を足から放して、彼らの身を遠心力に委ねるのであった。


「ふん、また詰まらぬものを遠投してしまった」

 物理現象と生物としての限界に正面から喧嘩を売っているようなことを、平気な顔でやってのけたゴエンモは、木々を薙ぎ払いながら飛んでいく異形の者を眺め満足げに呟く。


「・・・っ」

 そんなゴエンモの後ろでは、両手で両目を覆った少女が、ゴエンモと異形との戦闘で聞こえてきた音に身を縮め、飛行物体と化した異形の塊が木々をへし折っていく音に肩を跳ねさせていた。


「む、これはいかぬでござる!? さぁこれを羽織って目を開けるで、いや・・・拙者今、上半身タンクトップだ・・・ぁ」


「・・・・・・」

 見つめ合うおっさんと少女。


 背後から聞こえてきた小さな悲鳴に振り返ったゴエンモは、今まで気が付かなかったことにここで初めて気が付き、慌ててクロモリジャージの上着を脱ぐと、細い肩に、いや全身を露出した少女に上着を頭からかぶせるように羽織らせる。そう、少女はクロモリと言う世界とは無縁の一般人であったようで、その体には一切の衣類を身に着けていなかったのだ。


「あぁ・・・大丈夫で、ござるかな?」

 そんな彼女に対して、上着を脱いだゴエンモは現在ジャージのズボンにぴっちりとしたタンクトップと言う姿であり、もしここが日本であれば確実にゴエンモは通報される側である。そのことに声をかけた後で気が付いたゴエンモは、ぱちりと開いた青い瞳でじっと見つめてくる少女に引きつった笑みを浮かべると、絞り出すように声をかけるのだった。


「・・・っはい」

 目の前のゴエンモをじっと見つめていた少女もまた、別の意味で緊張していたのか、声もなくゴエンモをしばらく見詰めると急激に顔を赤く染め上げ、肩にかけられたジャージを掴むと慌てて前を合わせる。


 その後、残像が残りそうな速さで後ずさったゴエンモは、彼女とまともに言葉を交わせるようになるのに十数分の時間を要し、その十数分後・・・。


「それで、お嬢さんのお名前はサラちゃんで、よろしいでござるかな?」


「え? あ、はい・・・そうですけど」

 ようやく互いに話をする心の準備が出来た二人、一回りも二回りも大きいジャージを着て倒木に座る少女サラの前で、ゴエンモは一応の確認をするために質問し、その質問に少し驚いた表情を浮かべた彼女は、笑みを浮かべたゴエンモを訝しげに見上げる。


「良かったでござる。お姉さん? 義理のお姉さんからの依頼で探しに来たのでござるよ」


「ほんと!?」

 そんな少女の見せる不信感に気が付かないほどほっとしていたゴエンモは、簡単に今の状況の説明をはじめ、その説明にサラはパッと明かりがついたかのように笑みを浮かべると、裸足の足で立ち上がりゴエンモに数歩近づく。


「本当でござる。一緒に居たと思う少年少女も、今仲間が救助に向かっているでござるよ」


「・・・うん」

 ほんのちょっとの説明でも、急激に近くなった心の距離であったが、ゴエンモが友人たちについて口にすると表情を暗くするサラ。


「何かあった様でござるが、とりあえず合流するでござる。まだ救助の必要な方が三人ほどいるでござるからな」

 状況から察するに何やら諍いがあったことは明確であり、そのことを理解したゴエンモは困った様な笑みを浮かべると、彼女の肩へと元気づけるようにそっと手を乗せる。


「・・・もしかして、ママ!? そうなんでしょ!?」

 しかしこの時、不用意にも彼女の家族に関することまで洩らしてしまうゴエンモ。当然そのためにこの場に居る彼女は、ゴエンモの言葉から家族の事を察して、悲痛な声でゴエンモに縋り付くと潤んだ目で彼の目を見上げる。


「あ、あぁ・・・そうでござるな」

 不用意な発言をしてしまったと気が付いたゴエンモであるが時すでに遅く、縋り付き涙をあふれさせる少女に顔を引きつらせるも、すでに取り繕うことが出来る状況ではないと察したのか、ゴエンモは申し訳なさそうに頷く。


「ママ!」

 自らの問いかけを肯定された少女は、半信半疑であった家族の行方がこの地のどこかであると理解すると、母を呼びながらふらふらと歩きだす。そんな彼女を慌てて追いかけ、さらに落ち着かせるまでに、ゴエンモはさらに数十分の時を要するのであった。





 少女が悲壮に染まった声を森に響かせている頃、世界の壁を越えた別の森では、


「あらあら、まぁまぁ」


「・・・・・・」

 いつもの温和な笑みを浮かべるメロンを見詰めるルカが、真っ蒼な顔で立ち尽くしていた。


「ルカちゃん、これは現実なの、心を強く持って」

 立ち尽くすルカの肩にそっと手を添えたリンゴは、いつもと違う真剣な表情を浮かべながら、慈愛と疲れを感じる目でルカに声をかけているが、その言葉は同時に自分にも言い聞かせているようである。


「うむ、見事だ!」


「俺が言うのもなんだけど・・・容赦ねぇ」

 またメロンの隣ではパフェがきりっとした表情で満足げに頷き、その隣ではクマがどこかげっそりした表情で肩を落として小さくつぶやく。


「そうねぇこん棒とか錆びた刃物とか、女の子に向けて振り回すなんて野蛮よねぇ」


「・・・」

 クマとルカが見つめる先には、パフェより少し高い身長に母性を多分に備えたメロンが、気を失っているのであろうピクリとも動かない人型の生物を踏みつけており、クマの呟きに返事を返した彼女は、足元に転がる荒削りされた木の棍棒や錆だらけの刃物に目を向け困ったように眉を寄せる。


「・・・俺は、メロンのねえさんにいったんだけどな」

 そんな彼女の表情と言葉に、小さくため息を吐いたクマはジト目を向けながら勘違いを正したのだが、


「んふ? クマさんに比べたこのくらい何てこと無いわよぉ」


「それは俺の事じゃなくてリアル熊のことですよね?」

 首を傾げて笑み浮かべながらそんなことを言い出すメロンに、びくりと肩を震わせると僅かに後ずさりながら引き攣った表情で問いかけた。


「ああ、紛らわしかったわねぇ」


「熊・・・」

 クマの目の前に居るメロンと言う女性は、とある寒い地域出身なのであるが、厳しい環境で自然と隣り合わせであった影響か、それとも本来彼女が持ち合わせていた資質なのか、過去に熊を素手で追い返した実績があるらしい。


「熊さんと違って大分小柄だったし、手加減もしたからメロンさん、まだまだいけるわよ?」


「もう、おなかいっぱいっす」

 その頃のことを思い出してコロコロと笑う彼女に、クマはわずかに身の危険を感じつつも、腕をまくりながら話す彼女に向けて、絞り出すような声と共に首を振るのであった。


「そう?」


「避けて掴んで捻って投げ踏み抜く。・・・無駄のない一連の流れには熟練を越えた慣れを感じたわね」

 パフェたち曰く『ゴブリン』を迎撃する為に反転した彼らは、隊列が伸びていたことで単体や少数で跳びかかってきたゴブリン達を瞬く間に鎮圧することに成功していた。


 力こぶを見せるように両腕を上げて不思議そうに首を傾げるメロンは、その戦果の大半を担っており、その光景はリンゴが言うように一種の慣れを感じさせ、それ以上に恐怖と言う名の傷をルカの深層心理に刻み付けたのだった。


「うむ、私もあの境地に至りたいものだ!」


「あんたはどこ目指してんのよ・・・」

 ユウヒの友人関係に不安を感じていたルカがより一層その感情を深める中、妙に元気なパフェは柄だけになった簡素な槍を振るとメロンに熱い視線を投げかけ、今にも倒れそうなルカを支えるリンゴは呆れた表情を浮かべる。


 その後、息を整える程度に休んだ一行は急ぎ足でその場を後にし、あとに残されたのは荒れた森と気を失い縛られた複数のゴブリンだけで、その光景は、通りかかった森の住民を等しく恐怖させるのだった。



 いかがでしたでしょうか?


 また一つ異世界を歩く人物たちの新たな一面を見ることが出来ました。これからも少しずつ露わになっていく彼ら彼女らの姿を楽しんで行ってください。


 それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー

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