第二十四話 異なる世界の樹精霊事情 後編
どうもHekutoです。
修正等完了しましたので投稿させて頂きます。最近では毎度文章量が増える傾向にありますが、これが良いことなのか悪いことなのか判断しずらい今日この頃、でも皆さんに楽しんで頂けるなのなら幸いです。
『異なる世界の樹精霊事情 後編』
夜も深まり時刻は良い子が寝る時間に差し掛かり、異世界の空には一層美しい星空が広がっている。
「う、おにいちゃん・・・」
「ん? 寝言か・・・仲の良い兄妹なのだな」
建て付けの悪い木戸の隙間から見える異世界の星空を見上げていたパフェは、傍らで眠るルカの寝言に気が付くと、彼女を見詰めて柔らかく微笑む。自分にはわからない兄という存在に対する羨望を感じさせるその微笑みは、昼間皆に見せている表情とは随分と雰囲気が違うものであった。
「・・・その女の人は、誰? ・・・もう何人目、なの?」
「何?」
しかし、そんな大人の女性らしい落ち着いた表情は、ルカの寝言の続きにより脆くも崩れ去る。
「そんな、顔を近づけて・・・抱き着いて、不潔」
「なな、何人目!? ど、どういうことなの? 何が不潔なんだ!?」
眠りにつくルカの口から飛び出た思いもよらぬ言葉で、静かに驚愕の声を洩らしたパフェは、驚きや困惑、嫉妬と言った感情でその表情を子供のように歪めると、眠るルカの耳元で小さく問いかけてみるのだが。
「スヤー・・・」
当然眠っている人間がその問いに答えてくれるわけもなく、返ってくるのは何とも安らぎに満ちた寝息だけであった。
「・・・・・・気になるぅっ!?」
その日の夜、パフェは仮眠すら取らずに一人悶々としたまま次の日を迎えることになり、そんな現場をクマに見つかってしまい、思わずクマの鳩尾をグーパンしてしまうのだが、それはこの数時間後のひ・・・喜劇である。
一方、名も無き異世界の世界樹とその精霊に出会っていたユウヒはというと、
「も、申し訳ありません。いろいろなことが重なりすぎて心の制御ができなくなってしまって・・・ああ、お恥ずかしい」
出会った直後の涼やかな印象と違い、どこか幼さすら感じられる真っ赤な顔の母樹に頭を下げられていた。
「お、おう、それなら仕方ないな・・・うん、元気出せ?」
母樹と同じく顔を赤くしたユウヒは、両手で赤くなった顔を覆い恥ずかしそうに俯く母樹の、その細い腕に挟まれる巨大な母性の象徴に視線がいかないように抗いながら、慰めるように声をかける。
「これほど感情を露わにする母樹様など、今まで生きた中で一度も目にすることなど・・・ハァハァ、なんと貴重な体験でしょうか」
そんな二人の様子に、リーヴェンはひどく感動した表情で目元をぬぐい、そのまま鼻を覆うように手で抑えると荒い息を洩らしながら感動に打ち震えていた。
「・・・リヴ忘れて」
「いえ! このことは私の心に深く刻んでおきます。決して洩らさぬのでご容赦を」
感動しているのか興奮しているのか判断に困る様子を見せるリーヴェンに、母樹は真っ赤な顔で睨むように彼を見詰めると、幾分低い声でぼそりと呟く。しかし、当のリーヴェンはその言葉を即座に否定すると、キラキラと輝く一点の曇りもない瞳で、声高々と絶対に忘れないと宣言してみせるのだった。
「何がどうなってるにゃ、置いてけぼりはちょっとさみしいにゃ」
顔を赤くして苦笑を浮かべるユウヒ、その隣で祭壇の方を見ながら今までに見たことのない表情で興奮してみせるリーヴェン、そんな二人の様子にネムを頬を膨らませると少し不機嫌そうに、それでいて詰まらなさそうにぼつりぼつりとつぶやく。
「・・・知らないほうが幸せなこともあるんだよ、不要なことを知ったら・・・消されることもあるし」
「・・・なら知らなくていいにゃ」
しかしそんな不満げな表情も、引きつった笑みを浮かべたユウヒの顔と、その口から零れだした疲れを感じる言葉を耳にすると、びくりと肩を跳ねさせ玩具のように頷いて見せる。どうやらネムはユウヒの表情と声に、これ以上踏み込んではいけない何かを感じ取ったようだ。
「・・・ふぅ、いいですもう。姿が見えるのならば話が早くていいですから、リーヴェンはしばらく席を外してなさい」
ネムがユウヒの言葉に野生の勘を発揮する姿を見ていた母樹は、自分を落ち着かせるような溜息を吐き、表情と居住まいを整えるとリーヴェンに向かって退出を命じる。
「ええ!? そんな!」
普段ならすぐに母樹の言うことを聞くところであるが、今のリーヴェンは興奮のあまり若干判断能力が低下しているようで、彼女の言葉に本能のまま抗うように不満そうな声を上げた。
「いいから出ていきなさい!」
いつもは聞き分けの良いリーヴェンのテンションが可笑しいように、普段は慈母と言った雰囲気を纏っている母樹もまたどこかおかしく。心に余裕がないのか、まるで聞き分けのない子供を叱りつける母親のように声を張ると、リーヴェンに向かって手を払うように振って見せる。
「母樹様ぁぁ!?」
「ぐ、グランシャ!? ぐわ!」
その瞬間、重厚な引き戸であるこの部屋の扉が勢いよく左右に開き、さらに木製の床から植物のツタが素早くリーヴェンに巻きついてその体を部屋の外へと運び出す。
部屋の外には、先ほどまで一緒に居た騎士姿の男性が待機しており、突然開いた扉と、そこへ飛び込んで来るツタで簀巻きにされたリーヴェンに驚いた声を上げる。さらに、急な展開に体が付いてこなかったのか、動くことすらできなかった彼は、部屋から投げ捨てられるように追い出されたリーヴェンになすすべなく押しつぶされるのだった。
「・・・すみません、騒がしくて」
「・・・あぁ」
母なる怒り? によって投げ捨てられたリーヴェンの姿に呆けていたユウヒは、肩で息をしながら振り返った母樹の取り繕うような笑みを見て、僅かに肩を跳ねさせ引きつった笑みを浮かべながら小さく呟く。
「あ、はは・・・」
そんなユウヒの表情や精霊にしかわからない感覚で、その感情を理解してしまった母樹は、思わず乾いた笑いを浮かべ視線を彷徨わせる。
「な、何が起きてるのにゃ・・・ユウヒ、私ここにいても大丈夫にゃ?」
「あぁ、まぁおとなしくしとけ。・・・それで、聞きたいことがあるんだが、それよりも先にそっちの要件から聞くことにするよ」
一方、ユウヒもまたそんな母樹の状況を理解すると、傍らで耳を伏せて肩を縮め不安そうな声を洩らすネムの柔らかい髪を撫でつけながら声をかけた。
その柔らかさと彼女の細められた目に笑みを浮かべたユウヒは、先ほどまでの引き攣った表情が嘘だったかのように、いつものやる気なさげな顔で母樹に向き直ると、彼女の要件を聞く事にするのだった。
「え?」
「その方が俺の話も落ち着いて聞けるだろうしな」
そんなユウヒの変化に、きょとんとした表情で驚きの声を洩らした母樹は、肩を竦めて見せるユウヒの言葉に、思わず力の入っていた肩から自然と力が抜けるのを感じていた。
「ご配慮痛み入ります」
「気にすんな」
母樹はユウヒの配慮とその表情で心にゆとりを取り戻し、ユウヒは隣で喉を鳴らすネムの撫で心地に癒され、ネムは妙に慣れた手付きのナデナデに心の平穏を取り戻す。
「はい、それでは単刀直入に申し上げます」
「おう」
この場に居る者の心が落ち着いた事により、ようやく本題を話すことが出来る環境が揃い、先ずは樹の精霊と母樹がユウヒをこの場に招いた理由から聞くことになった。ここに来るまでの道中、小さな樹の精霊に母樹のお願いを聞いてほしいと頼まれていたユウヒは、微笑みを浮かべる母樹に頷くと、姿勢を正した彼女同様に姿勢を正す。
「私と・・・私の子供を作ってください!!」
そしてユウヒが見詰める中、震える唇に力を込めて彼女は力いっぱい願いを口にして、
「・・・・・・・・・は?」
姿勢を正していたユウヒの時を止めるのだった。
目の前で顔を真っ赤に染めて目を瞑り、大きな声で叫ぶように願いを口にしたあと動かなく、いや微妙に震える母樹を前にして時が止まったかのように硬直したユウヒは、長い長い間を置いて小さく短い声を洩らす。
「ユウヒ様との子供が欲しいのです! お願いします! どんなことでもします! 求められればどんなことでもやりますから、何卒お情け「ちょいちょいちょい! ちょいまち!?」へ?」
話を始める環境が整っていたはずのその場は、ユウヒの口から漏れ出した小さな音をきっかけに、混乱の坩堝へと蹴落とされた。
疑問とも、聞き返している様にも聞こえるユウヒの声に、目を見開いた真っ赤な顔の母樹は、明らかに正気を失った目でユウヒに詰め寄ると感情のまま懇願するも、すぐに思考を再開したユウヒによって押し留められる。
≪・・・(ごくり)≫
その間、高い天井の通気口付近に身を隠していた小さな樹の精霊達が、頬を赤くしながら成り行き見守っていたのは、彼女達だけの秘密である。
「なんで!? え? なんでそう言う話なの!? 予想外過ぎて時がとまっちゃったよ?」
ユウヒの勘をもってしても予測することが出来なかった母樹の話、いや願いを聞いた彼は、急激にその顔を赤く染めたかと思うと身構えるように半歩後ずさり、じっと見つめてくる母樹に疑問を投げかけた。
「それは、その・・・」
「・・・・・・」
当然ともいえる疑問を投げかけられた母樹は、なぜか顔を俯かせると上目使いでユウヒを見上げながら口元を両手で隠す。一方、ネムはユウヒの反応だけを見て首を傾げると、長い尾をゆらゆらとせわしなく揺らしながら丸く開いた瞳孔でユウヒの横顔を見詰める。
「いやまて焦るな、相手は精霊だし、ここは異世界だから子供を作ると言う言葉にはほかにも意味が「交尾するのかにゃ?」・・・それしかないですよねー」
焦りからか、じっと隣から見つめられていることに気が付きもしないユウヒは、焦る自分を落ち着かせるように独り言を呟き、心の平静を取り戻そうとするも、その目論見は無邪気な隣人によって切って捨てられる。
「はぅ・・・は、初めてなので優し「言わせないよ!」きゃっ!」
ネムと視線を合わせて首を傾げあうユウヒに、母樹は自分の両頬を包み込むように赤くなった手で押さえて恥ずかしそうにつぶやくも、すかさず入れられるユウヒの突っ込みにうれしそうな悲鳴を洩らす。
「・・・にゃ?」
「同じ樹の精霊でもだいぶ違うもんだな・・・まぁいいや、とりあえず理由を教えてくれ」
ユウヒの突っ込みに目を見開きながらも、先ほどより幾分忙しなさを増した尾を手で押さえるネムの前で、ユウヒは肩を落としてため息にも似た声を出すと、気を取り直して母樹に説明を求めるのだった。
一方その頃、閉ざされた木戸の向こう側には、
「ぐ、グランシャ?」
「ぐぬぬぬ、気になりますが・・・やはり遮音の魔法が使われてますか」
地面から生えたツタによってぐるぐる巻きにされながらも、必死に木戸へ耳をあてるリーヴェンと呆れ顔で声をかけるエルフ騎士の姿があった。
「・・・痛くないのですか?」
先ほど母樹から追い出されたリーヴェンに押し潰されていたこの男性は、ユウヒをここまで案内したエルフの騎士である。ユウヒを案内する間も常に背筋を伸ばし、微笑こそしていたがその表情を著しく崩すことなかった彼も、流石に目の前で地を這い木戸に耳をあてるリーヴェンの姿には、思わず背を曲げ呆れた様な表情を浮かべてしまう。
「ふふふ、母樹様に抱かれていると思えばこのてい、ぐぅっ!? 締付けが、急に、つよ・・・ぐふ」
男性騎士の問いかけに向かって不敵な笑い声を洩らしたのも束の間、急にツタの締め付けがきつくなったのか、赤らめていた頬を次第に蒼く染めて行ったかと思うと、咳き込むように息を吐き出して気絶するリーヴェン。
「・・・はぁ、これがなければ良い御方なのだが」
疲れた表情で肩を落とした男性騎士は、目の前で気を失いようやくツタから解放されていくリーヴェンを見詰めると、溜息を吐いてそう呟く。
この地に住まうエルフ族の中でもトップに位置するシャーマンの長であるリーヴェン、普段はその立ち居振る舞いにより皆から尊敬されている彼には、一つ致命的な問題があった。
「はぁはぁハァ」
「・・・誰か手伝ってくれ!」
それは極度の、いやより正確に言うならば変態的に母樹を慕っているというものである。そのことを如実に表すように、母樹のツタによって絞め落とされた彼は、地に伏せ苦しむどころか恍惚とした表情で頬を朱に染めているのだ。
男性騎士は長い付き合いであるようで、その姿を見て諦めにも似た表情を浮かべると、リーヴェンの顔にハンカチを被せてだらしない顔が隠れたことを確認し、応援を呼ぶのであった。
そんなことが木戸の向こう側で行われているなど、母樹がこっそり使っていた遮音の魔法により気が付かないユウヒとネム。
「それでは説明します」
「今、何かヤらなかったか?」
しかしユウヒは持ち前の勘と、一瞬表情の引きつった母樹の姿から何かあった・・・いや、彼女が何かヤったことを確信すると、何事もなかったかのように話を続ける彼女にジト目で問いかける。
「うふふ、気のせいです」
「・・・なんだか今、ぞくっとしたにゃ」
またネムはユウヒの問いかけのあとに感じた奇妙な寒気に驚くと、ユウヒの袖を摘まみながらキョロキョロと周囲を警戒し、そっと自らの長い尾を股の間に挟むのであった。
「・・・こほん、それでは私が子を成したい理由から説明しますね」
「ああ、うん」
自然とユウヒに寄り添うような立ち位置となったネムに、何処か羨ましげな視線を注いだ母樹は、わざとらしく咳き込むと笑みを作り話しの続きを始める。
「詳しくはこの世界と私たちの成り立ちから説明をしないといけませんが、そこを抜きにして簡単に言いますと・・・世界を支える役割を持つ世界樹の枯渇、これが最大の理由です」
「・・・ふむ」
母樹が言うには、世界樹とはこの世界を維持するためにどうしても必要な存在であるが、現在その数は減少し枯渇と言うほかないほどにその数を減らしているというのだ。
「世界樹と言われる樹と私たち世界樹の精霊は、元々この世界には存在しない種なのですが・・・」
またそれらの話に関係があるのだろう、母樹は神妙な表情を浮かべると世界樹とその精霊である自分は、この世界にとってある意味異質な存在なのだと言う。
「・・・ん? ということは、世界樹と同時に精霊もまた造られたってことか」
「・・・存じていたのですか?」
伏し目がちに話す母樹の言葉が、少し前から気になっていた事と繋がりを見せたことで、ユウヒは思わずそう声を洩らし、その言葉に今度は母樹が驚いたように顔を上げると、軽く目を見開きユウヒに問いかける。
「世界樹が、多分人の手で作られたのだろうということはな」
世界樹の里に到着し、遠目から巨大な世界樹を眺める事となったユウヒは、その時に右目で世界樹の詳細を軽く調べており、視界に記されていた情報の中に人工的な名所が多数散見出来ていたことで、この世界の世界樹も人の手で作られたものであることを理解していた。
「そうでしたか、はい・・・私たち樹の精霊は古代の人々によって生み出された人造精霊なのです」
「ふむ」
その前知識もあったことで特に驚くことなく話を受け入れるユウヒに、母樹はどこか安心した微笑みを浮かべ頷くと、自らの事を人造精霊だと話す。
「我々が生み出された理由は世界を救うためであり、私たちもその契約を誇りに思っています。しかし、現状ではその役割もままならないほどに世界樹が少なくなってしまい・・・」
そんな彼女の役目とは、何かから世界を救うことであるらしく、その役目を全うすることに彼女自身誇りを持っていると言い、そしてその役目がままならない現状を歯痒く思っているようだ。
「それで子ってことか・・・しかし得体のしれない来訪者に頼らなくても、ほかにいくらでも信奉者達がいそうなんだが?」
そんな現状をどうにかするには、減少した世界樹とその世界樹から生まれる世界樹の精霊を増やすことが必要であり、それがユウヒとの間に子を成すことへと繋がるのだが、ユウヒは、はてと首を傾げて見せる。それはこれまでの説明の中に、相手が自分である必要性に関する話が無かったからであった。
「それは、その・・・あの子たちを殺してしまうのはちょっと・・・」
その言葉に、母樹は笑みを引きつらせて視線をさまよわせると、ユウヒの視線に耐えかねて小さな声でぼそぼそと呟くように話し出す。
「ほう・・・さて、帰るかネム」
「にゃ?」
そのつぶやく声は小さかったものの、間近にいるユウヒの耳に聞こえないわけもなく、彼女の言葉を聞いたユウヒは、目をすっと細めるとネムの頭を撫でて一声かけると踵を返す。
「まって! 待ってください! 説明を説明を聞いてください!」
そのまま出口へ向かうかと思われたユウヒだが、しかし、ユウヒの逃走は目に涙を浮かべた必死な表情の母樹が、即座に彼の腰へと飛びついたことで失敗に終わってしまう。
「あほ抜かせ!? 死ぬような子づくりってなんだよ! どんだけ激しいだよ!」
「は、はげしいだなんて・・・そ、そう言うんじゃないんです!」
必死なのは何も母樹だけではない、腰にしがみ付かれているユウヒもまた逃げることに必死である。なんせ母樹と子作りすると死ぬという可能性を知らされてしまったのだから、魅了された男でもなければ裸足で逃げ出すこと請け合いな状況だ。
「激しくない? ・・・まさか、捕食系?」
ユウヒの言葉に対し羞恥で顔を真っ赤にして叫ぶ母樹、そんな彼女が恥ずかしそうに否定する言葉は、状況を好転させるどころか、ユウヒの脳内で繰り広げられる恐怖の妄想をさらに加速させる。
「カマキリとかクモと一緒にしないでください!?」
妄想の中に頭から丸齧りされる自分の姿を見て恐れ戦くユウヒに、何を考えたのか敏感に察した母樹は怒りと悲しみと羞恥が綯交ぜになった真っ赤な表情で叫ぶ。
「・・・じゃあなんなんだよ?」
その声に一時妄想を中断したユウヒは、母樹を引き剥がそうと彼女の両肩を掴んでいた腕の力を抜き問いかける。
「それはその・・・・・・世界樹の精霊が子を成すには、尋常じゃない魔力が必要で、その・・・」
「へ? 魔力?」
すると、ユウヒの腕の力抜けるのに反比例して強く彼の腰へとしがみ付いた母樹は、ユウヒからの視線から逃げるように顔をそむけると、ユウヒの程よい固さのお腹に頭をうずめながら、ぼそぼそと恥ずかしそうに声を洩らすのだった。
いかがでしたでしょうか?
ところ変われば性格も変わる樹の精霊、でも根っこは案外同じかもしれません。その事にユウヒが気が付くのはいつの日か、いや来ない気がします。
それではまたここでお会いしましょう。さようならー




