第二百四十一話 学校の異変 前編
修正等完了しましたので投稿させてもらいます。楽しんで頂けたら幸いです。
『学校の異変 前編』
夏の陽射が残暑に向けてより一層鬱陶しく輝く中で、ユウヒは風の通る高校の渡り廊下から室内に入りながら前を歩く流華の言葉に耳を傾けていた。
「なるほど、昔からの七不思議を踏襲しているが内容が少しおかしいと」
「作り話じゃないんだけど……」
先頭を歩きながら高校の七不思議を案内する流華は、ユウヒの言葉にどこか不服そうな表情で呟き、そんな呟きと振り向いてくる妹の視線に兄が苦笑を浮かべる後ろでは、校長室にも居た女性教諭が蒼い顔で震えついてくる。
「まぁそう言うな……ふむ、ここもだな」
「なに?」
どこか楽しそうな表情を浮かべる兄に不服そうな鼻息を洩らし、歩く速さを早めようとした流華は、ユウヒが立ち止まった事を少し離れた場所から聞こえて来た声で理解すると、すぐに足を止めて振り返った。
「妙な痕跡がちらほらとな」
ユウヒの動きに敏感な反応を見せる流華も、女性教諭ほどではないがその心に不安を感じており、ずっと話し続けている事やユウヒから離れて歩かない所からその心情が伝わってくる。そんな心配そうな感情が寄せられた眉に出ている流華に、ユウヒは確実に異常があると呟きながら、透明なガラス張りの窓の向こうに見える無人の調理実習室を見渡す。
「な、何か出たんですか!?」
独特の雰囲気を醸す調理実習室を見渡すユウヒの傍では、つかず離れず着いてきていた女性教諭がずれた眼鏡を直しながら周囲をきょろきょろ見渡し震え、引き攣る声を不自然に上げて思った以上に大きな声が出たことに自ら驚き顔を赤くしている。
「あぁいえ、あの……怖いなら無理しないで良いですよ? 妹もついてきてくれていますし」
そんな声に驚いたのは天野兄妹も同様で、互いに少し見開いた目を見合わせ合うと無言で女性教諭を見詰め、少し不安そうな顔をしたユウヒが無理についてこなくても大丈夫だと話す。
「いいえ! 大丈夫です!」
「そうですか?」
「はい!」
この女性教諭は、本来流華が校長室に来た時点でお役御免だったのだが、国が直々に動く様な事態に保護者同伴とは言え生徒だけで行動させるのは危険だと、自主的に流華の為に着いて来た真面目な女性である。今も心配そうなユウヒに向かって怯えて牙を剥く子犬の様な声で大丈夫だと叫んでいた。
「大丈夫かな」
「高橋先生そっち系駄目なんだよ」
弱さを見せないための虚勢であるが、ユウヒにその虚勢がわからないわけもなく、今驚かせばそのまま気を失いそうな女性の姿に頭を掻いたユウヒは隣に目を向けるも、そこには兄とよく似た困った表情の流華が高橋と呼ばれた女性教諭を見詰めており、彼女曰くこの女性教諭はお化けなどの話が本当に駄目らしい。
「……っ」
「うぅむ」
今も、何もない空間にきょろきょろ視線を向けながら怯える高橋を見詰めるユウヒは、小さく唸ると諦めた様に肩を落とし廊下の先に目を向ける。
「次はあっちだな」
「あっち……それだと音楽室かな?」
考える事を止めたユウヒは、感じるままに異常がありそうな方向を指差し、斜め上の天井辺りを指さす兄の姿に、流華は七不思議を思い出しながらその位置を音楽室であろうと予想した。
「そっち行ってみるか」
「目が光る音楽家……」
音楽室にも七不思議があるようで、その不思議は定番と言ってもいい様なよくある音楽家の肖像の目が光ると言うものであるらしく、大概は目に画びょうを刺される悪戯によるものだが、高橋にとってはいたずらで済みそうにない。
「倒れたらよろしく」
「えー……」
ぼそぼそと呟きながらついてくる高橋にちらりと視線を向けたユウヒは、少し速足で歩くと流華の耳元に口を寄せて小さな声で話しかけ、お願いをされた流華は肩を僅かに躍らせて不満を零すと、ユウヒの顔が離れていった耳を手で押さえながら頬を少し赤くするのであった。
一方その頃、流華のクラスでは本来の授業が実習となり教師の居ない教室内で生徒が与えられた課題に取り掛かっている。
「ねぇねぇ」
「……なに?」
しかし全員が真面目に取り組んでいるかと言うとそうでもないらしく、真面目に実習を行っているのは一部で、大半は友人と雑談に興じていた。その声は彼らが思っている異常にうるさく、本人たちは小さいつもりなのであろうが注意されるのも時間の問題であろう。
「そんな顔しないでよ」
「ごめん、折角授業サボれると思ってたからさぁ」
そんな教室の中でどこか不貞腐れた様子で実習を受けていたのは、先ほど流華と一緒に校長室に行っていた女生徒、彼女は呼びかけられ振り返るもその表情を取り繕う事を忘れていたのか、話しかけてきた相手に眉を寄せられるとようやく自分の表情に気が付いたのか、頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。
「いやいや普通に無理でしょ」
「やっぱり?」
しかし、元々からして彼女の思惑には穴しかなく、突っ込まれて笑う姿に友人たちは呆れた様にジト目を向ける。
「どうせ自習なんだし良いじゃない」
「まね」
本来なら世界史の授業だったこの時間は、担当の高橋が急遽流華に着いて行くこととなったため実習に変わっており、歴史などが苦手な彼女は友人の言葉に頷くと、ファッション誌のページが開かれたスマホをポケットに仕舞い、雑談をしていたグループに体を向けた。どうやら本格的に雑談を始める気になったようだ。
「それより流華どうしたの?」
「んー? ふふふ」
そんなグループの現在の話題は高橋同様に姿が見えなくなった流華についてである。特別担任でも何でもない高橋と流華が同時に居なくなると言う状況に疑問しかないらしい彼女たちは、校長室にまで着いて行った目の前の友人に何か知っているんだろと言いたげな視線を向けていた。
「ちょっと隠さないで良いじゃない」
「別に隠すつもりはないけど、流華のお兄さん来てるのよ」
彼女は以前にユウヒと会っており名前を沙良と言うのだが、彼女の得意げな表情に周囲の友人たちは詰め寄る様に雑談の輪を狭める。そんな友人の圧に思わず背中をのけぞらせた沙良は、少し頬に熱を感じながらユウヒの事に触れる。
「え? ……流華何かやったの?」
「……ぷふふ、笑わせないでよ」
その瞬間周囲の友人たちは息を飲み一様に心配そうな表情を浮かべる。流華に歳の少し離れた兄が居る事はその場に居る友人たちにとって知っていて当たり前の情報であるが、そんな保護者の様な親類が学校にやってくるなどただ事ではない、と言った雰囲気に思わず笑いだす沙良。
「だって家族が来るとか……ねぇ?」
「ちょっとね」
その笑い出した姿で自分たちの心配が杞憂であると理解した友人たちは、思わず思い浮かべてしまった不安の分だけ恥ずかしそうに視線を彷徨わせる。
「お仕事で来たんだって、色々学校見て回るから付き添いだって」
そんな彼女達の姿で込み上げてくる可笑しさを飲み込んだ沙良は、校長室で聞いてきた話を語り始めた。特に緘口令の一つも敷かれなかったため話しているのだが、当然重要な部分は何一つ知らされていない為、彼女も当たり障りのない事しか話せない。
「見て回るって、もしかし学校のお偉いさんなのお兄さん!?」
「マジ!?」
そんな彼女のどこか勿体ぶった話し方は気の早い友人たちの勘違いを加速させてしまい、私立の高校を見て回ると言う事が視察と言う言葉へと繋がった彼女たちの中で、ユウヒはとても偉い人間なのではと言う事になってしまったようだ。
「学校? あぁそう言う勘違いか、ちがうよ?」
「じゃなんでよ」
それは流華も学校の偉い人の親類となることを示しており、少し不安になる彼女たちに沙良は不思議そうに首を傾げて見せる。なぜそういう結論に繋がったのか理解出来ない沙良に、目の前の友人は少し恥ずかしそうに詰め寄り、いつの間にか集まった周囲の人間も興味深そうな表情を浮かべていた。
「内容は守秘義務があるから言えないって、でも」
『でも?』
当然そのあたりの詳しい内容は無駄な混乱を与えないために守秘義務となっており、ユウヒの口からも聞けなかったが、僅かにその内容に近付くヒントをユウヒの口から聞いていた彼女は、圧を感じる友人たちの揃った声に再度少し仰け反ると口を開く。
「防衛省の関係者らしいよ」
『……国家公務員』
防衛省の関係者であると、そこまで言えばもう防衛省の職員としか考えられず、すなわち国家公務員である。社会を知らぬ学生からしてみればまるでエリートの様に感じられ、流華の兄がそんな人物だと初めて知った彼女たちは様々な表情を浮かべていた。そんな友人の姿を眺めていた沙良は、いたずら心が沸いたのか追加の爆弾を用意する。
「しかもイケメン」
『!?』
ユウヒは普段から覇気を感じさせない表情でいる為に、イケメンと言う評価を受ける事は少ない。しかし仕事をしている時や真面目にしないといけない時は表情が引き締まり好印象を与え、家族や親しい人にしか見せない柔らかな笑みは度々面倒を起こす原因となる。
今回もまたその笑みは余計な問題を引き起こしそうだ。
そんな雑談が加速して隣の教室から男性教師が出動している頃、音楽教室を見終わったユウヒは一階に降りて棟を繋ぐ渡り廊下を目指して歩いていた。
「ふ!?」
「ひえ!?」
しかしその歩みは前方を歩く流華が突然変な声を出して立ち止まった事で強制的に停止させられる。突然の動きに疲労困憊であった女性教員の高橋はか細い声を洩らし震え、思わず壁に手をついてしまう。
「どした?」
「なんだか嫌な予感が……」
どうやら彼女の教室から発せられる良くない気配を感じ取ったらしい流華は、小首を傾げるユウヒを見上げると険しい表情で呟く。
「嫌な予感? ふむ、なんだろうな?」
流華の感じた予感について不思議そうな表情を浮かべたユウヒであるが、しかし自分の勘を万能だと思っていない彼は、彼女の感じた予感について胸の前で真剣に腕を組んで考え始める。
「へ、変なこと言わないでよ天野さん」
「あ、いえ……脅かすとかそう言うんじゃなくて、なんだか別の意味で嫌な予感が」
流華の中では漠然と理由がわかっている様で、壁に手をつきながら震える高橋の弱々しい抗議の声に目を見開くと手をわたわたと振り、驚かすつもりはないと話しながらその視線をちらりとユウヒの真剣な顔に向けた。
「ふぅん?」
割と真剣に何事か考えていたユウヒは、流華の視線に気が付くと顔を上げて向けられる視線を見詰め返しながら不思議そうに目を瞬かせる。
「ところで先生」
「え?」
そんなユウヒの姿に呆れを含んだジト目を向けた流華は、訝し気に眉を歪め首を傾げるユウヒから視線を外すと、話を変える為に高橋に水を向けた。
「今更ですけど、実習にしてよかったんですか?」
「うん、校長先生にも頼まれたからいいのよ、平戸先生も見てくれるそうだから」
流華の言う通り今更であるが、本来であれば高橋は流華のクラスの授業を行う予定があったのだが、彼女が校長の依頼で急遽流華に着いて行くことが決まったことで実習に変更、その世話は隣のクラスで授業を行っている男性教諭が見る事になったようだ。
「クラスのみんな騒いでないといいけど……」
「あー実習の時間は自由時間だからなぁ」
目の前の実習話を聞いていたユウヒは、少し驚いたように肩眉を上げると懐かしそうな笑みを浮かべる。どうやら自分の高校生時代を思い出し、その頃から変わらないであろう学生たちの行動に思い出を重ねた様で、思わず肩を竦め呟く。
「駄目ですよ、実習もちゃんとした授業ですし、ちゃんと課題も出してあるんですから」
「はは、若く元気のある子たちにそんな理論は通じませんよ」
そんな呟きに調子を戻して来たのか、どこか几帳面な印象のある眼鏡の位置を調整した高橋は、言い聞かせるような口調でユウヒに注意してその視線を流華にも向ける。思わぬ飛び火にびっくりしている流華の隣で、ユウヒは声を出し笑うと教師の目を離れた子供の行動など制御不可能だと言って首を横に振った。
「お、兄さんもそうだったの?」
「ん? 俺か? 俺は寝てたからなぁ」
ユウヒの言う事も良く解るらしい高橋は、彼が寝ていたと話し流華が興味深そうな表情を浮かべている事に、僅かな危機感を感じて一歩流華に近付くとジト目を浮かべ、
「駄目ですよ?」
少し低い声で念を押すように呟く。
「ね、寝たりはしないですよ」
「寝たりは?」
「お兄ちゃん!」
何かのスイッチが入ったらしい高橋の問い詰めるような視線に後退った流華は、その視線と無言の圧力に負けたのかユウヒを盾にするべくその背中に隠れる。風通しの良い林の見える渡り廊下で高橋の体調の回復を待っていたユウヒは、ジャケットの背中を握って隠れる流華と、目の前から見上げてくる高橋の視線に挟まれ困った様な笑みを浮かべ周囲を見回す。
「んー……ふむ、ここから先は立ち入り禁止でお願いします」
「え?」
すっかり高橋の体調が良くなったことを右目で確認したユウヒは、林を指さしながら立ち入り禁止と告げ、その言葉に一瞬何を言われたか理解できなかった彼女は、徐に林に目を向けると顔からすっと血の気を引かせる。その林もまた七不思議の舞台なのであった。
「あぶないの?」
「あぶないな」
「……」
どうやら光の精霊が危ないと言っていたのはその林の奥であるらしく、その事を確信したユウヒの返答に流華が真剣な表情を浮かべ、その前では高橋が手摺を掴みまた顔色を悪くしている。
「次行こうか」
「あ、あの! 何もしないんですか!?」
このままここに居ても高橋が倒れてしまうなと、ユウヒは少し困った様に目を細め次の場所に移動しようと口にする。そんな彼の言葉に高橋は少し大きな声で彼を引き留め、何もしてくれないのかと、縋る様な表情で問いかけた。
「それは、生徒が居なくなってからにしましょう」
「生徒が?」
校長から急に呼び出され話を聞いた時は彼女もまだ訝し気であったが、それが国からの正式な要請であると知り、さらに最近よく耳にする異常な事態が多発している事で、ユウヒの話す内容を信じ切っている高橋は、彼の返答にキョトンとした表情を浮かべる。
「何が起きるか分からないので、それに必要な物もありますし」
「そ、そうですか……そうですよね」
元々超常現象などに興味があり、知れば知るほど恐怖を感じるようになったと言う経緯を持つ高橋は、ユウヒの言葉を理解すると少し落ち着いたように頷く。
ドームから始まった異常な現象は、日本中でちょっとした超常現象ブームを起こし、今の彼女の様に今まで鼻で笑われた様な事を真剣に信じる人間が増えている。それ故に、流華の高校だけでなくあちこちの学校で七不思議ブームが起きていたことも、今回ユウヒのお願いがすんなり通った要因になっていた。
「次はあっちだな」
「あっちは、部活棟だね」
「その奥だな」
各学校間でも話し合いの場が設けられる様な問題となっている現在、ユウヒの調査は学校側としても歓迎できることである。そんな事態になっているなど知りもしないユウヒは、高橋が落ち着いてきたことを再度確認すると、次の場所へ向かって歩き出す。
「おく? 物置になってた様な」
「天野さん知らないわよね、あそこは元々焼却炉があって、廃炉になった頃は色々変な噂があったのよ」
「へぇ」
ユウヒが指を差し歩き出した方向には部活棟があるらしく、彼の目的地はさらにその奥の様だ。左目の青い目を僅かに輝かせ先頭歩くユウヒの後ろからは、いつの間にか手を繋いでいる高橋と流華が続いて歩き、今は使われていない焼却炉について話していた。
「ふむ(俺が居た頃にはすでに使ってなかったがそんな噂無かったな)」
ユウヒが高校に通っていた頃にはすでに使われなくなっていた焼却炉、法改正により使用禁止となった後も、撤去するだけでも費用が掛かると言う事で封鎖され物置状態になっていたようだが、ユウヒはそこに纏わる噂など聞いたことが無いらしく二人の会話に耳を澄ます。
「そこも変なの?」
「ん? 色々痕跡があるから追いかけているんだが……もう二、三カ所回ったら一旦帰って、今度は放課後になったら来ようかな」
高橋教諭と言う女性に見覚えのないユウヒは、時系列に疑問を覚えながら元焼却炉に向けてゆっくりと歩く。どうやらその場所以外にも気になる場所がまだいくつかあるらしく、その調査が終わったら一度帰宅する予定の様だ。
「私も?」
「だめ」
「……」
放課後にまた来ると言う言葉に高橋がどこかほっとした表情を浮かべる横で、流華は興味深そうな表情で一言呟くも、その言葉ノータイムで切り返され、その即答に彼女は思わず頬を膨らませる。
「そう言うとこは姉さん達に似なくていいから、似るのは成績だけで良いぞ」
「え?」
どうやら、某女性陣との出会いは流華の心に妙な積極性を芽生えさせたようで、環境も相まって超常現象に興味を抱いて居るらしい彼女にユウヒは釘と苦言を刺し、刺された流華は目を見開く。どうやら彼女の中では、その女性陣と成績と言う言葉が同居しない様だ。
「ん? ミカン以外は天才秀才ぞろいだぞ? 行動は別としてだが……知らなかったか?」
「うそ、いやでも確かに何でもすらすら答えてくれたけど……うーん」
先を歩きながらちらりと振り返ったユウヒは、彼女の表情を確認すると不思議そうに片眉を上げながら一人を除けば全員頭がいいと話し、しかしその行動以外はと、どこか悟ったような表情で付け加える。一方、そんなことを聞かされた流華はと言うと、夏休みの宿題を手伝ってもらった時の事を思い出しながら一度は頷くも、彼女達の言動を思い出すとどこか引っ掛かりを覚える様だ。
「ミカンの学力もみんなから教えられているからそこそこ良いと思うが、いやどうだろう?」
一方そんな中で断トツで頭がよろしくないのは一番若いミカンであるらしく、経験云々と言った話ではないのか、一時は褒めていたユウヒも少し不安になって下方修正し始める。
「今度、勉強教えてもらおうかな」
「変な事は教わるなよ」
過去にユウヒとミカンの間で何があってそんな評価なのか、若干気になる流華であるが、一番年の近い相手に対する兄の評価に、流華は自分の評価を重ねてしまい不安そうに呟く。その呟きに、ユウヒはなぜかより不安そうな表情となって小さな声で注意を促す様に呟くのだった。
「二人は仲が良いのね」
短い会話の連続以外は目で語り合うように視線を合わせて頷いたり首を傾げたりする兄妹、そんな二人の様子を窺っていた高橋は、とても楽しそうに話すと目尻を細め、最近彼女がひそかに気になってきている目尻の小じわの本数を増やす。
「悪くは無いですね」
「ま、まぁ……」
「ふふふ、兄妹っていいわね」
兄妹で肯定しながらも異なる反応を示す姿に高橋はすっかり気分を良くしたのか、その後の調査は終始流華と手を繋いだまま何事もなく調査の引率を努める。しかし校長室に戻り、ユウヒが詳しい報告と今後についての相談をすると彼女の顔色は次第に悪くなって行き、最終的には流華に付き添われ保健室送りとなってしまうのだった。
いかがでしたでしょうか?
流華に案内されながらユウヒにしか見えない世界では何が起きていたのか、何かを理解しているような彼は放課後の学校で何を見るのか、次回もお楽しみ頂けたら幸いです。
読了ブクマ評価感想に感謝しつつ今日もこの辺で、また会いましょうさようならー




