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ワールズダスト ~現世に現れし黒き森~  作者: Hekuto
第一章 救出と救済

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第二十一話 エルフの騎士

 どうもHekutoです。


 修正作業完了しましたので投稿させて頂きます。お暇の合間にでも楽しんで頂ければ幸いです。



『エルフの騎士』


 忍者達がその胸にそれぞれの決意を抱き、ドームへ突入するべく走り出している頃、名もなき異世界にある石造りの淡い光に満たされた一室には、一組の男女の声が響いていた。


「お客様、ですか?」

 女性の声に対して男性は非常に丁寧な言葉を使いであるが、しかしその声は驚きと困惑のせいかうまく発音できていない。


「そうです。私にとって・・・いえ、我々この地に住まう者達にとっての希望を持つ方」


「希望、それは・・・いったい」

 男性にとっては、目の前の女性にお客が来ること自体が非常に稀な事であり、その相手がさらに目の前の存在をもってして希望と言わしめた。二人の関係を知らない者でも、男性の驚く姿を見れば少しはその感情が伝わるほど驚きに満ちている男性は、神妙な表情で絞り出すように女性へと問いかける。


「・・・それはまだ言えません」

 しかし男性の問いかけに対して、女性はゆっくりとかぶりを振ると、どこか申し訳なさそうに眉を寄せて言葉を濁す。


「そうですか・・・その方が今、ネシュ族と共にこちらに向かっていると言うのですか」


「はい、基人族のように見えますが、高度な魔法を使う全く別の種族の様です」

 問いかけに答えてもらえなかった男性は、特にその返答を気にする事無く頷くと、今度は聞かされていた内容を確認する為の質問に切り替え、女性はお客と言われる者の事を嬉しそうな微笑みと共に話し始める。


「・・・なるほど、こちらから出迎えてほしいと言う事はそう言う事でしたか」

 だが微笑む女性に対して、男性は険しい表情を浮かべると納得したように頷いて見せた。


「私は差別意識など無いのですが、一部の者はちがうでしょうから」


「そうですね・・・ではすぐに、何かしでかす前に迎えの者を出します。すぐにこちらに御呼びしたほうが?」

 どうやら、その人物は基人族と呼ばれる種族に酷似しているらしく、男性や女性の周囲にはその種族に対し根強い差別意識があり、出迎えを用意しなければお客である相手に何らかの害が加えられかねない様であった。


「早きことに悪いことはありません」


「わかりました。では失礼します」

 そういった背景もあり、落ち着いた表情で男性の問いかけに受け答える女性であったが、その言葉の端々には男性を急かす様な雰囲気が感じられ、その事を察した男性は静かに部屋を後にすると、扉を閉めた瞬間素早く踵を返し走り出す。


「・・・私の準備は整っております。お待ちしてますわ・・・旦那様」

 閉じられた重厚な扉の向こうで男性が走り出す様子に満足気な表情で頷き、男性をねぎらうように微笑みを浮かべた女性。しかしその表情も、待ち人の来訪を望むほどに緩んで行き、最終的に頬を朱に染めた妖艶な女の表情へと変わっていたのだった。





 一方、ネシュ族たちと共に割と楽しげに森を歩くユウヒはというと、


「・・・ぶえっくしゅん!」

 何かを感じ顔を少し上げたかと思うと、盛大にくしゃみを放っていた。突然のくしゃみの様であったが、ネシュ族達から顔をしっかりそむけたあたり、どうやら前兆現象はあったようである。


「にゃ!? ・・・びっくりしたにゃ」


「ああ、すまんすまん」

 しかし突然隣でくしゃみをされれば驚くのは必然で、びくりと毛を逆立てた三毛猫少女は、かわいい鳴き声を洩らすとまんまるに目を見開き、鼻を押さえるユウヒを見上げた。同じ様に視線を向けてくる周囲の猫耳少女達に、ユウヒは軽く謝罪をしながら首を傾げて鼻を擦る。


「私たちがくしゃみするならまだしも・・・病気かにゃ?」


「いや、誰かが噂してるんだろ」

 鼻を擦るユウヒを見上げた三毛猫少女は、彼の隣を歩きながら首をかしげて問いかけた。先ほどまで極寒を体感していた自分たちならまだしも、そうでもなさそうなユウヒが急にくしゃみをしだしたことに心配しているようで、短い時間の割りにユウヒと彼女たちの仲はだいぶ縮まっているようだ。


「噂されると、くしゃみがでるのかにゃ?」


「さぁ?」

 ちらちらと廻りから気遣わしげな視線を受けるユウヒは、特に体調は問題ないため噂されているのだろうと、いつもの感に任せて返答するも、どうやら彼女たちネシュ族には噂とクシャミが繋がるような思考形態は存在しないようだ。


<風の噂は鼻をくすぐるのよ> <きっとそれね> <でも、風の居ないのにわかるのすごい>


 しかしその思考形態は思わぬところから肯定される。それはネシュ族には見えないものの、ユウヒの周りを増えたり減ったりしながら常に飛び回っている樹の精霊たちであった。


「なるほど、そう言う理論なのか・・・でも地球では精霊とか見当たらなかったし、うぅん・・・暇があったらどっかそれっぽいところ調べてみるかなぁ」

 どうやらこの世界でも誰かが噂をするとクシャミが出るらしく、しかもそれは風の精霊達が噂話の本人に噂されていることを教えているのだという。


「んにゃ? そろそろ里だけど、あまり中はうろうろしない方がいいにゃ」

 そんな、異世界で初めて知ることになった噂とクシャミの関係性に、ユウヒが真剣に感心していると、いつの間にか目的地のすぐ近くまでやってきていたらしく、ユウヒの独り言に首をかしげた三毛猫少女が歩く速さを緩めて教えてくれる。


「私たちが居るからだいじょうぶだと、おもうけど・・・」

 しかしその表情は言葉ほど芳しくなく、それは周囲のネシュ族少女たちも同様であった。


「まぁなるようにしかなんねぇだろ、攻撃されたらその時はまぁな?」

 その表情の理由をすでに聞かされていたユウヒは、彼女たちからの心配げな視線を受けると、軽く肩をすくめ笑って見せる。


「もう、氷漬けは勘弁だにゃ」

 しかしユウヒの言葉にどこか攻撃的な印象を受けた三毛猫少女は、仲間たちと肩を寄せ合うと蒼い顔でそんな声を漏らす。


「・・・善処する。氷以外は水? 火は危険だし風は・・・コントロールの練習してないし、次は石だな」


『!!?』


 そんな彼女たちの心配事を察したユウヒは、悪戯心をくすぐられたのか、ニヤリとした笑みを浮かべると恐怖を煽るようにわざとらしく思案するのだった。


「ん? ・・・何か来るな」


「へ?」

 蒼い顔で石と言う言葉に何が起きるのかと困惑する猫耳少女達を面白そうに眺めていたユウヒは、ゆっくりとした足取りで歩いていた足を急に止めると、狭くなった【探知】のレーダーに新しく映し出された光点の方向に視線を向ける。


「御前を失礼します」

 その光点の数は五つ、急速に接近してきた光点はユウヒから少し離れた場所で停止すると、そのうちの一つがさらに接近し樹の上から舞い降り、ユウヒの目の前に静かに降り立ちそのまま片膝をついた姿勢でユウヒ達に頭を下げた。


「にゃにゃっ!? 精霊騎士団長!? ちちがうのにゃ! この人は悪い基人族じゃないニャ!」

 急に現れた人物に驚き、体を半身にするといつでも動けるように僅かに姿勢を低くし構えるユウヒ。それ以上に驚いたのは三毛猫少女、より正確に言うならばネシュ族少女達全員であった。


 三毛猫少女は目の前に現れた人物を確認すると、あわててユウヒを庇うように前へ出て身振り手振りを交えてユウヒをの説明を始める。また彼女の動きに追順するように、他のネシュ族達もユウヒの周り集まり始め真剣な表情で身構えるのだった。


「・・・勘違いなされるなネシュ族の者たちよ、我らは母樹ぼじゅ様の命により、お客人を迎えに参っただけだ」

 しかし、ユウヒの目の前で膝をついて頭を下げていた人物は、ゆっくりと立ち上がり顔にかかっていた銀糸のような髪をそっと払うと、困った様な表情でそう説明した。


 下げていた頭を上げたその姿に、ユウヒは個人ではなく種族という意味で見覚えがあったようで、細めていた目をゆっくりと開く。彼の目の前で困った表情を浮かべていたのは、長い耳に透き通る様な白い肌と美しく整った顔、すらりと言う言葉が良く似合う長身が特徴の男性エルフであった。


「ぼじゅさま? だれそ?」


「世界樹の精霊様の事にゃ」

 以前に出会ったエルフとはまた少し違う印象のエルフの姿に、しかしエルフ=イケメンであることを再確認していたユウヒは、聞き覚えのない言葉が耳に入り、右斜め下方ちょい前にある猫耳ヘッドに疑問の声を投げかける。


「なるほど、母の樹でぼじゅか」


「母樹様が御呼びとの事、先ずはグランシャの下までご案内いたします。貴方様の見た目は基人族と酷似しており、この森では少々危険故、どうかご容赦を」

 三毛猫少女の返答になるほどと頷くユウヒ、そんな彼の顔を見つめていたエルフの騎士は、冷静かつ丁寧な言葉遣いで精霊の元まで案内するとユウヒに提案する。どうやら彼はユウヒの護衛という意味と共に、不要な諍いを避けるために遣わされたようであった。


「それは助かるにゃ、実はどうしようかと思ってたのにゃ」

 そんなエルフ騎士の提案に一番ほっとしていたのは、提案されたユウヒではなく三毛猫少女の方である。


 実際問題、彼女はユウヒを世界樹の下まで案内した場合、武装した仲間に囲まれるか、最悪説明を聞く前にユウヒ共々自分たちも拘束される可能性があると考えていたのだ。そこにきてこのエルフ騎士の提案はまさに精霊様のお導きだと、脳内でこれまで以上に精霊へ感謝の祈りをささげる三毛猫少女。


「そうか、まぁ俺も聞きたいことがあったし案内はありがたいが・・・なぜおまいは逃げようとしてる?」


「にゃにゃ!? ち、ちがうにゃ? あとは騎士様に任せて家帰って寝ようなんて思ってないニャ」

 そんな彼女は、自分の役目はここまでとばかりそっとユウヒから離れようとしたのだが、範囲が狭くなっても高性能な【探知】のレーダーには、その動きがはっきりと捉えられており、口よりも早く動いたユウヒの手により、後ろ襟をつかまれてしまう。


「なら、ついてきてくれるよなぁ?」


「うぅ」

 何がどう違うのか、声が裏返りながらも慌てて弁明しようとする三毛猫少女は、ユウヒにじっと見つめられると観念したように耳を伏せて、自分の体を吊るすユウヒの腕に身を任せるのであった。


「我々では不安と?」

 一方、そのやり取りに疑問を覚えたエルフの騎士は、眉を寄せて二人を見つめる。


「ふ、ふあんなのかにゃぁ? なぁんて・・・」


「いえ・・・確かに不安になるのもわか「いや、案内は罰だからな」なに?」


「ですよにゃー」

 同時に、二人の間に見え隠れする信頼関係に気が付くと、ユウヒの行動にも納得できてしまう男性エルフであった。しかし、自らの言葉を途中で遮ったユウヒの言葉にいぶかしげな表情を浮かべると、男性エルフの視線は自然と、項垂れ尻尾をだらりと垂らす三毛猫少女に向かう。


「罰?」


「と言うわけで、いきなり襲ってきた罰は代表でおまいが償うように」


「な、それは本当なのか!?」


「うぅ・・・」

 その視線は、続くユウヒの言葉を聞いた瞬間鋭く顰められ、問い詰めるように三毛猫少女に向けられる。ユウヒのどこか気楽な声とジト目に続き、エルフ騎士からの責めるような視線まで受けた三毛猫少女は、尻尾を丸めてお腹のあたりで抱えると、ふるふると震えながら視線をさまよわせ始めるのだった。


「まぁ過ぎた事だしそんな睨まんでやってくれ」


「いえしかし・・・そうですか、わかりました。襲われた本人がそう言うのでしたら」

 まさか目の前のネシュ族達がすでにユウヒを襲っていたとは思いもしていなかった男性は、視線を一向に合わせようとしない三毛猫少女を険しい表情で見つめるも、苦笑混じりなユウヒに諭され、どこか釈然としない表情を浮かべながらも引き下がる。


「悪いな」


「・・・いえ」

 ユウヒ自身襲われたとは言え、明らかに自分より年の若そうな少女達を返り討ちにしたと言う事実は、彼の心になんとも言えない罪悪感を感じさせており、その事が彼女たちの肩を持ち、苦笑いで擁護する要因となっていた。


「と言うわけで、付き添い兼知恵袋と言うわけで継続してよろしくな、ネム」


「わかったにゃ・・・口添えは、期待していいかにゃ?」

 そんなユウヒは、彼女、三毛猫柄のネシュ族少女『ネム』を地面に下ろすと、彼女の肩を軽くたたきながら彼女の名を呼び、名を呼ばれたネムは背を丸めながらユウヒを見上げる。


「ああ・・・それで、グランシャってなんぞ?」


「・・・信じるにゃ、グランシャと言うのは―――」

 自分に向けられるクリクリとした涙目と上目使いのコンボに、ユウヒは心の中で割と高威力な精神攻撃を感じながら微笑ましげな表情で頷くと、さっそくネムを知恵袋として頼るのであった。


「・・・(確かに、この者は普通の基人族とは違いすぎるな)」

 そんな二人の様子に、周りのネシュ族少女が笑みやほっとした表情を浮かべる中、男性エルフは目を細めてじっとユウヒを観察し、心の中で一人ごちる。


「ん? どした?」


「失礼、ではご案内いたします。それと周囲は私を含め5名の騎士で守らせて頂きます」

 一方、ネムから一通りの説明を受け終えたらしいユウヒは、頷きながらもじっと注がれる視線に気が付くと振り返って首を傾げた。きょとんとした表情のユウヒに、男性エルフは無粋な視線を向けたことに対して詫びると、笑みを浮かべながら背後に向かって手を振る。


「ああ、よろしく」

 その瞬間、周囲の木々の上から四名の軽装鎧を着たエルフが現れるも、元からその存在を知っていたユウヒは特に驚くことも無く、彼等に営業スマイルと言って良い笑みと軽い会釈で挨拶をする。


 そんなユウヒの姿に再度目を細めた男性エルフは、どこか機嫌よく歩を進め、一路ユウヒを世界樹の下へと案内するのであった。



 いかがでしたでしょうか?


 にゃんこと精霊に続いてエルフと出会ったユウヒでした。すっかりネシュ族少女と仲良くなったユウヒの様ですが、この先どうなっていくのかお楽しみに。


 それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー

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